事業承継と消費税|生前贈与・相続・M&Aで変わる納税義務と節税対策

事業承継には様々な方法がありますが、それぞれで消費税の取り扱いが異なります。本記事では、生前贈与、相続、M&Aにおける消費税の納税義務や節税対策について詳しく解説します。

目次

  1. 事業承継における消費税の基本
  2. 生前贈与における消費税
  3. 相続における消費税
  4. M&A(売買)における消費税
  5. 事業承継における消費税の留意点
  6. 生前贈与・相続・M&Aの比較と消費税対策
  7. まとめ:事業承継と消費税
  8. 事業承継に役立つ制度
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1. 事業承継における消費税の基本

事業承継を実施するときに気になるのが消費税や法人税です。ここでは、事業承継でかかる消費税と課税方式について解説します。

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消費税の概要

消費税は、商品やサービスの提供に対して課される税金です。標準税率は10%ですが、軽減税率の対象品目(飲食料品など)は8%となっています。事業承継においても、特定の取引に消費税が課税されます。

消費税は、コンビニエンスストアの商品、ホテルや飲食店での飲食代金や宿泊代金などにも課税されます。

事業承継で消費税がかかるケース

事業承継において消費税が発生するかどうかは、事業の規模や譲渡方法によって異なります。一般的に、課税売上高1,000万円以下の小規模事業者は消費税の納税義務が免除されますが、事業承継の場合は、譲渡資産の内容によっては課税対象となる場合があります。

事業承継は「どのような方法で」「個人と法人か」などによってパターンが分かれます。事業承継の方法を見ると「売買」「譲渡」「相続」の3種類があり、「個人から個人」「個人から法人」など対象と方法を合わせると6パターンがあります。事業承継のパターンごとに消費税の納税義務や支払金額も大きく変わるでしょう。

事業承継における課税対象資産

事業承継により、会社を売却したときに消費税が課税される資産とは具体的にどのようなものがあるのか見ていきます。

事業承継において消費税の課税対象となる主な資産は以下のとおりです。

  • 棚卸資産:事業のために仕入れた商品や原材料など
  • 有形固定資産:建物、機械、車両運搬具など
  • 無形固定資産:特許権、商標権、ソフトウェアなど
  • のれん代(営業権):事業の収益力に対する対価

これらの資産を譲渡する場合、原則として消費税が課税されます。ただし、インプット課税制度を利用することで、既に支払った消費税を控除できる場合があります。
(参考:国税庁 No.6350 棚卸資産の評価 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/6350.htm)

棚卸資産は、商品や原材料などの仕掛品なので、その量や物によって消費税の額が変動しやすいです。

事業承継の種類と消費税

事業承継には、主に「売買」「生前贈与」「相続」の3つの方法があります。それぞれの方法によって、消費税の課税の有無や計算方法が異なります。最適な方法を選択するために、それぞれのメリット・デメリットを理解し、専門家への相談も検討しましょう。

ここでは、事業承継の方法を見ていきましょう。

生前贈与

生前贈与は「親族内事業承継」と「親族外事業承継」の2パターンがあり、生前贈与で最もポピュラーなのが親族内事業承継です。

これは個人事業主や前任の経営者が自分の子供や親族に会社を譲渡するイメージで、家族や親族が後継者となる方法なので一番安心感がある事業承継の方法です。自社株式の評価額が低くなったときを見計らって、事業承継を進められ、生前贈与によって現経営者の相続財産も減少できます。

生前贈与を個人と法人で行うときは、みなし譲渡所得が発生することがあります。個人から法人への事業承継では、会社を無料で売却したとされるのでみなし譲渡所得税がかかる可能性があるでしょう。

相続

相続による事業承継とは、経営者が亡くなり相続が発生したとき、保有していた相続財産の一部として自社株式を後継者が取得することです。遺言がない場合は、遺産分割協議によって相続人同士の話し合いで決めるため現経営者の希望に添わない場合があります。

いつ起こるか不明で、仮に遺言書があっても実際に相続が発生したときは、会社の業績や経営方針が変わっている場合もあります。この相続における事業承継では、相続が発生した時点での基準に評価額が査定され、相続税が課税されるでしょう。

不確定な要素と税負担を考えると、相続だけでの事業承継では自社株式を後継者に承継するのはリスクが高いといえるでしょう。

売買

売却による事業承継では、その後における値上がりなどの心配がなく、遺留分を計算するうえで対象外となるので相続や生前贈与の事業承継よりも後継者の権利が安定します。譲渡所得税は金額や規模にかかわらず一定ですが、資金調達をどのようにするかが課題です。

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法人と個人事業における消費税の違い

法人とは、法律で人としての権利能力を与えられた団体で、株主や経営者が変わっても人格は同一です。法人企業の事業承継では、経営者が変わっても経営者が変わる前と同じ納税義務者になります。個人事業では、個人が所得税や消費税などの納税義務者です。

例を挙げると、事業承継前と事業内容が同じでも、息子に引き継ぐ場合は自分と息子はそれぞれ別々の納税義務を負います。自分が事業主として個人事業を行っていた期間は、自分がその事業から生じる納税義務を負い、息子が引き継いだ後の期間は息子が納税義務を負うでしょう。

自分は廃業で生じる税務上の手続き、息子は開業で生じる税務上の手続きを要します。

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2. 生前贈与における消費税

事業を営んでいる人も売り上げに対して 納税義務がかかる場合があります。ここでは、事業承継の「生前贈与」で発生する消費税を見ていきましょう。事業承継では、納税義務が課せられる場合と課せられない場合があるのでしっかりと理解してください。

生前贈与と消費税の課税要件

まず消費税の仕組みですが、生前贈与において消費税がかかるかどうかは、譲渡する事業の課税売上高が基準となります。2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、原則として消費税の納税義務が発生します。ただし、特定の要件を満たす場合は、納税義務が免除されることもあります。

3. 相続における消費税

次に譲渡者が亡くなった後で事業承継を受ける「相続」の場合では、消費税がどのようになるのか見ていきます。「譲渡者の事業廃止」と「譲受者の事業の開始」という点は生前贈与と同じです。ただし、消費税の課税は違いがあるため注意しましょう。

相続と消費税の課税要件

相続の場合、被相続人の事業を引き継ぐ際に消費税が発生するかどうかは、被相続人の事業の規模によって決まります。被相続人の2年前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、原則として相続人は消費税の納税義務を負います。

その課税売上高にかかる消費税を2年後に納税します。

相続における課税売上高の計算

相続の場合、相続開始前の被相続人の課税売上高も考慮して消費税の納税義務が判断されます。そのため、相続人が事業を行っていない期間の課税売上高も、相続後の消費税の計算に影響を与える可能性があります。

例として、平成27年に譲渡者が亡くなり、その年における譲渡者の課税売上高が700万円、後継者の課税売上高が500万円の場合、譲渡者と後継者における課税売上高の合計は1,200万円です。事業承継後の後継者は消費税の納税義務が課せられ、2年後の平成29年に消費税を収める必要があります。

相続人が複数いる場合

相続人が複数いる場合の事業承継における消費税ですが、単独の相続では「譲渡人の基準期間における課税売上高+相続人の基準期間における売上高が1,000万円以上」となっており、この基本的な部分は変わりません。

ただし、相続人が複数の場合は少し複雑になり、譲渡人の基準期間における課税売上高に各相続人の事業承継割合を乗せて計算します。このときに、遺産分割が確定するまでは、その割合を法定相続分として計算します。

4. M&A(売買)における消費税

M&Aによる事業承継の場合、売却側には消費税と法人税が課税されます。消費税は、譲渡資産のうち課税対象資産の譲渡価額に対して課税されます。法人税は、譲渡価額から譲渡原価を差し引いた譲渡益に対して課税されます。

売買の際、個人から個人への事業承継でも個人から法人への事業承継でも、売却側は所得税と消費税を払うのです。

必要書類

売買にて事業承継をした場合、消費税が課税されますが、消費税課税者になった場合には原則として課税制度を使い消費税を納税するのか、簡易課税制度を使い消費税を納税するのかを決めます。

課税制度や簡易課税制度を使うときには書類が必要です。ここでは必要な書類や内容、誰が何のために提出するのかを見ていきましょう。

事業廃止届出書

事業承継をするときに、事業承継する側は「個人の廃業届出書」を廃業から1カ月以内に所轄の税務署長に提出しなければなりません。

このときに事業承継にて譲渡する側が消費税の課税事業者である場合は「事業廃止届出書」を早めに提出する必要があります。それ以外に個人で取得していた許認可は引き継げないので、行政機関に廃業届を提出しなければなりません。

消費税簡易課税制度選択不適用届出書

粗利が大きいほど消費税の納税額が少なくなる消費税簡易課税制度は、年間総売り上げが5,000万円より高ければ使用できません。原則課税制度が簡易課税制度での納税より消費税を抑えられます。簡易課税選択届出書をすでに提出している場合は、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を出せば、原則課税制度が使えるでしょう。

売り上げに対する粗利益率が10%以下の場合、原則課税制度の納税額は少なくなるので原則課税制度で納税することをおすすめします。個人事業主が廃業する場合で、消費税簡易課税制度選択不適用届出書や消費税課税事業者選択不適用届出書の提出書に事業廃止の旨を記入したときは、事業廃止届出書は必要ありません。

消費税課税事業者選択不適用届出書

この書類は、もともと課税事業者が免税事業者に戻ろうとするときに必要になります。

免税事業者とは年間売上高が1,000万円以下の事業者で、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日までに提出しなければならないため、事業承継後に注意が必要です。

課税事業者における選択の効力は、消費税課税事業者選択不適用届出書を提出するまで続くので、事業承継をして売上高が年間1,000万円以下になるときは提出しておくと良いでしょう。

消費税課税事業者選択届出書

消費課税事業者選択届出書は、免税事業者が課税事業者になるときに必要な書類です。

免税事業者よりも節税効果がある事業は輸入事業者で、免税事業者である場合は消費税額が0円ですが、輸入事業者の場合は課税事業者になることで、仕入れにかかった消費税を受け取れます。

消費課税事業者選択届出書も課税期間における初日の前日までに提出する必要があるため、輸入業などの事業承継では注意が必要です。課税期間中に年間1,000万円以上の棚卸資産や、調整対象固定資産が入った場合は例外として3年間に延長されます。

5. 事業承継における消費税の留意点

ここでは、事業承継における消費税に関するポイントを解説します。事業承継を行ううえでかかる消費税は変動するものが多いです。事業承継を行うときに注意すべきポイントともいえるので、しっかりと理解を深めましょう。

  • のれん代評価の適正化
  • 棚卸資産の評価方法
  • 消費税還付の可能性

のれん代評価の適正化

非上場の中小企業などが事業承継を行う場合、売却価格は純資産にのれん代という営業利益が経営利益の3〜5年分を加えた額で決定されることが多いでしょう。

事業承継のときにのれん代として評価されるノウハウなどがある場合は、消費税が課税されるのれん代も必然と大きくなってしまいます。

結果として事業承継にて大金を得ても、消費税によって自分の手元に残るお金が少なくなることがあるため、のれん代の金額が大きい場合は、事業承継以外の手法を検討しましょう。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産は毎日のように変動するもので、事業承継前に事前に棚卸資産額を決めていても、最終的な事業承継を実施する日に棚卸資産の額が変わることがあります。

棚卸資産も消費税が課税される資産なので、消費税額が増えることもあります。棚卸資産を多く抱えている事業であれば、この影響を受けるので事業承継を検討するときに注意しなければなりません。

6. 生前贈与・相続・M&Aの比較と消費税対策

事業承継の方法によって消費税の負担は大きく異なります。生前贈与、相続、M&Aそれぞれのメリット・デメリットを理解し、事業の状況や後継者の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。消費税の専門家と相談しながら、節税対策を検討することも有効です。

7. まとめ:事業承継と消費税

事業承継において消費税は重要な検討事項です。事業の規模や譲渡方法によって消費税の負担額が大きく変動するため、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な対策を講じることが大切です。

8. 事業承継に役立つ制度

事業承継を円滑に進めるために、国や地方自治体では様々な支援制度が用意されています。これらの制度を活用することで、事業承継に伴う負担を軽減することができます。

事業承継税制

事業承継税制は、後継者が先代経営者から事業を承継する際に、贈与税や相続税の納税を猶予または免除する制度です。この制度を活用することで、後継者は事業承継に伴う資金負担を軽減し、事業の安定的な継続を図ることができます。

経営力向上計画

経営力向上計画は、中小企業が自社の経営課題を分析し、具体的な改善策を策定・実施することで、生産性向上や経営基盤強化を目指す計画です。この計画を認定받을場合、様々な税制優遇措置を受けることができます。事業承継においても、経営力向上計画を活用することで、後継者による円滑な事業承継を支援することができます。

補助金・助成金

国や地方自治体では、事業承継を支援するための様々な補助金や助成金制度を提供しています。これらの制度を活用することで、事業承継に必要な費用の一部が補助されます。例えば、専門家へのコンサルティング費用や設備投資費用などが補助対象となる場合があります。

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