2024年11月29日更新
事業承継ネットワークとは?サービス内容や利用事例を紹介【東京/大阪/福岡】
中小企業の経営者の高齢化が進み、後継者不足などによる事業承継問題の解決は、国の大きな課題となっています。事業承継が円滑に行えるよう、事業承継ネットワークが全国の都道府県に配置されています。本記事では、事業承継ネットワークの事業内容や事例について解説します。
1. 事業承継ネットワークとは?
事業承継を後押しする制度には事業承継税制などがありますが、その存在や内容を知らないなどにより活用しないまま、事業承継がなかなか進まない中小企業も多いです。
事業承継ネットワークは、事業承継の悩みを抱える中小企業経営者をサポートすべく発足した取り組みであり、事業承継に関する相談対応や情報提供などのさまざまな支援が受けられます。
事業承継ネットワークについて
事業承継ネットワークは、中小企業庁が平成29年度に立ち上げた中小企業の事業承継を支援する取り組みです。
中小企業の経営者に対して、事業承継に関するさまざまな有益な情報を提供して、自社の事業承継に備えてもらうことを目的としています。
後継者不足などの理由で事業承継に悩んでいたり、事業承継の必要性は感じていても何から始めてよいかわからない場合など、経営者にとっては心強いネットワークといえるでしょう。
事業承継ネットワークが必要とされる理由
日本の中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、事業承継が課題となっているます。まだまだ事業承継のノウハウは浸透しておらず、加えて後継者不在に悩む企業も多いため、事業承継問題を解決できない中小企業が増えています。
もし中小企業における事業承継問題が解決されないまま進めば、廃業が増えて多数の雇用喪失を招くことになります。
このような中小企業の事業承継問題の深刻な状況を打破すべく、政府も事業承継税制をはじめとした対策を講じており、その施策の一環として事業承継ネットワークが創設されました。
事業承継ネットワークを構成する内訳
事業承継ネットワークはさまざまな役割を担っており、それぞれが以下のメンバーで構成されています。
【事業承継ネットワークを構成する内訳】
役割 | 機関・団体 |
事務局 | 県振興センター等 |
立案・とりまとめ | 都道府県・市町村 |
事業承継診断の実施 | 金融機関、商工会・商工会議所、中央会、士業等専門家等 |
診断方法等支援機関の研修等を実施 | 中小機構地域本部 |
M&A案件のフォロー・支援 | 事業引継ぎ支援センター |
専門的課題を含む案件の対応 | ミラサポ等の士業等専門家 |
施策情報の提供等 | 経済産業局・財務局 |
金融支援 | 信用保証協会 |
再生支援 | よろず支援拠点・再生支援協議会等 |
事業承継ネットワークは何処にある?
事業承継ネットワークは、各都道府県に1箇所ずつ事務局があります。ここでは、東京・大阪・福岡の事業承継ネットワーク事務局を紹介します。
東京の事業承継ネットワーク
東京都の事業承継ネットワーク事務局は、一般社団法人東京都中小企業診断士協会内にあります。事業承継時に、経営者保証なしで資金調達ができる経営を実現すべく事務局の専門家による支援を中心に活動しています。
具体的な支援の流れは、まず経営者保証コーディネーターが必要要件を具備しているかをチェックしてから、個別に面談します。
希望があれば、経営改善に向けた支援機関の紹介、保証解除に向けた金融機関との面談に専門家を派遣するなどの支援サービスを提供します。
大阪の事業承継ネットワーク
大阪府の事業承継ネットワーク事務局は、大阪産業創造館内にあります。大阪府・商工会・商工会議所・大阪府中小企業団体中央会・金融機関など120超の参画機関と連携して、事業承継問題解決のための支援活動を行っています。
大阪府内を8つのブロックに分け、各ブロックにコーディネーターを配置して、地域特性を活かした支援と事業承継に関する啓発活動に取り組んでいます。
福岡の事業承継ネットワーク
福岡県の事業承継ネットワーク事務局は、福岡商工会議所が窓口になっています。福岡を4つのブロックに分け、各地域にブロックコーディネーターを配置して、近隣の事業承継ネットワーク構成機関において相談や診断を行っています。
事業承継診断の結果をもとに、事業承継の計画作りをサポートする専門家を無料で派遣するなどの支援活動に取り組んでいます。
2. 事業承継ネットワークの事業内容
事業承継ネットワークは、以下3つの事業を柱としています。 ここでは、事業承継ネットワークの事業内容について、詳しく解説します。
【事業承継ネットワークの事業内容】
- 各都道府県の事業承継支援体制の整備
- 事業承継診断
- 事業承継支援の連携体制の構築
1.各都道府県の事業承継支援体制の整備
各都道府県の事業承継ネットワーク事務局では、事業支援体制の整備に取り組んでいます。都道府県を主体とする事業承継支援のためのネットワークを構築して、情報提供やとりまとめ役を担っています。
具体的には、事業承継はこうあるべきという方法論の検討や支援組織の構築、情報共有のためのさまざまな方策を実施しています。
事業承継ネットワークを活用して事業承継が成功した場合の事例集を作成したり、ポータルサイトを開設したり、その他情報発信媒体を活用して情報提供に努めています。
2.事業承継診断
事業承継ネットワークの組織構成員による事業承継診断も実施しています。事業承継診断とは、事業承継を行ううえでの課題を発見するための現況把握なので、気軽に受けることができます。
事業診断を受けることによって、適正な事業診断方法の模索、適切な専門家の紹介など事業承継が実現するまでのフォローを行っています。
また事業承継診断を適正に実施するため、診断票などのフォーマットを整備して、面談・電話やメール・WEB会議などで事業診断が受けられます。
そのほか、事業診断の個別案件の取組み内容について、各支援機関での情報共有して、公表もしています。
3.事業承継支援の連携体制の構築
事業承継支援を行うためには、支援機関の連携体制を構築する必要があります。各支援機関では、個別案件の診断結果や取組み状況、事業承継をどのように行うかなどの方法論の検討、および地域内で支援可能な専門家のリストなどを共有しています。
事業承継ネットワークの最大の強みは、地域のさまざまな機関や団体が連携して、中小企業の事業承継を支援する点です。
事業承継に関する中小企業経営者の悩みは多種多様であり、そのニーズに対応していくためには、地域の支援機関や団体でいかに連携して支援体制を整備していくことができるかがキーポイントとなることから、もっとも注力している事業内容になっています。
3. 事業承継ネットワークの事例
事業承継ネットワークをとりまとめるプッシュ型事業支援高度化事業の全国事務局は、中小企業庁より受託された野村證券株式会社が運営しています。
運営するサイト「事業承継ひろば」では、アトツギ甲子園など魅力的な企画も行われています。ここでは、事業承継ひろばに掲載されている「平成30年度事業承継ネットワーク事務局の事例紹介」から3つをピックアップして紹介します。
【事業承継ネットワークの事例】
- スポーツ用品小売業を営む老舗会社の事業承継事例
- 機械器具製造業を営む会社の事業承継事例
- 飲食業を営む個人事業の事業承継事例
1.スポーツ用品小売業を営む老舗会社の事業承継事例
1例目は、岩手県事業承継ネットワーク事務局が取り組んだ支援事例です。創業50年超のスポーツ用品小売業を営む老夫婦は、従業員はおらず老夫婦が役員となっている自社を長女に事業承継させたいが方法がわからないとから地元商工会に相談しました。
事業承継ネットワークによる事業承継診断では、後継者である長女に経営経験がないこと、会社は収益性が低く将来性が見込めない状況であること、ほかの子どもとの協議も必要であること、といった課題が抽出されました。
課題解決に向けて、中小企業診断士を派遣しての財務状況把握・資産調査・SWOT分析などが実施され、今後は具体的な経営改善策や事業承継に向けた課題整理、家族内での協議を経て、引き続きサポートを受けながら事業承継の実現を目指すとのことです。
2.機械器具製造業を営む会社の事業承継事例
2例目は、福島県事業承継ネットワーク事務局が取り組んだ支援事例です。従業員が30数名がいる機械器具製造業を営む会社は、本社のほかに3つの工場を操業していました。経営者が60代半ばであり、後継者候補は20代後半の親族であり、親族内事業承継に関する相談内容でした。
事業承継ネットワークによる事業承継診断後、専門家が派遣され、ホールディングス化スキームの組織再編の提案がなされました。今後は、事業承継計画を具体化するため、引き続きサポートを受けながら進めていくとのことです。
3.飲食業を営む個人事業の事業承継事例
3例目は、福岡県事業承継ネットワーク事務局が取組んだ支援事例です。経営指導員が長年支援しているラーメン店の個人事業主を訪問して事業承継診断を行ったところ、親族内承継のために専門家の支援を受けたいとの相談を受けました。
創業20年を超えるこの老舗ラーメン店には従業員も5名おり、経営者は長男を後継者として、法人成りも検討したいと考えていました。
相談を受けた事業承継ネットワークによって専門家が派遣され、複数回の面談を行った結果、個人事業のままでの親族内承継の提案がなされました。
経営者は、法人成りした場合の社会保険料や税金などのメリット・デメリット、事業用資産や借入金の引継ぎ方法も理解することができ、納得したうえで円滑に個人事業の親族内承継を行うことができました。
4. 事業承継ネットワークを利用するメリット
中小企業庁「平成29年度事業承継ネットワークの取組と今後の支援について」によれば、平成29年度では19ほどの都道府県でしか取組が開始されていませんでしたが、現在は全国すべての都道府県で事業承継ネットワークの取組が行われています。
事業承継ネットワークを利用するメリットは、地域において事業承継に関する相談先がなかった中小企業が、情報提供や事業承継支援を受けることができる点です。
しかし、事業承継ネットワークを実施する自治体によって事業内容や支援体制が異なるため、利用者側となる中小企業から積極的に支援を受けるための行動を起こすことも必要です。
5. 事業承継ネットワークの今後
事業承継ネットワークは取り組む地域も最近増えており、着実に全国各地に根付いてきています。しかし、都道府県ごとに取り組みの熱量も異なるのが現状であり、支援体制も十分というわけではありません。
そのようななか、中小企業庁の進める「事業承継・世代交代集中支援事業」が注目されています。事業承継・世代交代集中支援事業は、事業承継補助金を拠出して事業承継やM&A後の経営革新などを支援するものです。
また、事業承継トライアル実証事業により、後継者不在の中小企業に対して、後継者選定後の有効な教育の型を明確にして標準化も進めていくとしています。
今後は、このような事業承継ネットワークを基盤として、さまざまな事業承継に関する中小企業支援がさらに広がると考えられます。
6. 事業承継のご相談ならM&A総合研究所へ!
後継者がみつからず事業承継ができない場合、M&Aを活用すれば解決する可能性も高まります。M&Aによる事業承継をご検討の際は、M&A総合研究所へご相談ください。
M&A総合研究所は、さまざまな業種でM&A・事業承継の支援実績を多数有しています。経験豊富なM&Aアドバイザーが、親身になってフルサポートいたします。
料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。
お電話またはメールによる無料相談をお受けしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
7. まとめ
事業承継ネットワークは、誰にも相談できない事業承継問題に悩める中小企業経営者にとって頼りになる支援体制です。
事業承継を何から始めればよいか悩んだ場合などは、積極的に事業承継ネットワークの活用を検討みるとよいでしょう。
【事業承継ネットワークとは】
- 事業承継ネットワーク:各都道府県内に設置されており中小企業の事業承継を支援する
- 構成メンバー:都道府県・市町村がまとめ役となり、地域内の専門家と連携して支援体制を構築
- 支援体制の整備(各都道府県が主体)
- 担当ブロックコーディネーター・経営指導員・士業などによる事業承継診断の実施
- 支援ネットワーク体制の構築
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