事業承継ローンとは?メリットや注意点、貸付条件・利率などの概要、利用する流れを徹底解説!

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企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業承継ローンは中小企業の事業承継への公的支援の1つです。国内全ての金融機関で用意されていますが、本記事では日本政策金融公庫の事業承継ローンを取り上げ、条件や具体的な手続き方法、注意点などとともに関連するその他の情報について掲示します。

目次

  1. 事業承継ローンとは
  2. 事業承継ローンの種類
  3. 事業承継ローンを利用するメリット
  4. 日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用するための流れ
  5. 日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用できる人の条件
  6. 事業承継ローンを活用するときの注意点
  7. 事業承継時の融資に関するその他の支援制度
  8. 返済不要の事業承継補助金とは
  9. 事業承継の費用を抑えるなら事業承継税制に詳しくなろう
  10. まとめ
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1. 事業承継ローンとは

事業承継ローンとは

事業承継ローンとは、事業承継を行うために必要な資金を融資してもらうことです。国内のどの金融機関でも用意されていますが、その名称は「事業承継応援ローン」、「事業承継サポートローン」、「事業承継支援ローン」など、各機関によって異なります。

なぜ、事業承継ローンが利用されているのかというと、事業承継をするとき、後継者には大きな費用負担があるからです。具体的には、事業承継の際に以下のような費用が発生します。

  • 贈与税
  • 相続税
  • 株式の買取り資金
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 法人税

事業承継の方法によって発生する税金・費用は異なります。いずれにしろ、事業承継をするには数百万円〜数千万円の費用が必要となるケースが多いのが現実です。

これらの税金・費用に加え、先代の経営者が会社の借入金の連帯保証人となっているのであれば、それも引き継がなければなりません。多くの場合、事業承継は後継者にとって費用面でも大きな負担があります。

そのような場合、金融機関などの事業承継ローンを利用することで一時のまとまった出費を補えます。もちろん、事業承継ローンは「借入」のため、返さなければなりません。

しかし、事業承継のために必要な資金だと認められれば、他の借入よりも借入期間や利息が優遇されます。なお、借入期間や利息などの条件は、ローンを組む金融機関やそのときの条件によって異なることには注意しましょう。

【関連】事業承継の相続税対策に悩む経営者に!節税対策を徹底解説!

2. 事業承継ローンの種類

事業承継ローンの種類

事業承継ローンは、大きく2つの種類に分けられます。

  • 政府系の事業承継ローン
  • 一般金融機関の事業承継ローン

政府系の事業承継ローン

事業承継ローンといえば、日本政策金融公庫の実施する「事業承継・集約・活性化支援資金」が有名です。

そもそも、日本政策金融公庫とは、国が100%出資している金融機関になります。起業時の資金調達や、個人事業主・中小企業経営者の資金調達に利用されることが多いのが特徴です。

「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用するには、さまざまな条件をクリアしなければなりません。しかし、条件が合致すれば、ほかの金融機関よりも優遇された貸付条件でローンを組める可能性があります。

日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金の利用方法や条件・利率などの詳しい内容は後述します。

一般金融機関の事業承継ローン

事業承継ローンは、銀行や信用金庫などでも用意されています。一般金融機関の事業承継ローンでも、以下のように、ほかの融資と比べると比較的審査が通りやすくなっているようです。

  • 担保や保証人なし
  • 不動産購入なら20年以内の融資期間
  • 5年・10年の据え置き期間あり

融資金額の限度や返済期間、金利などの条件は金融機関ごとに異なります。各金融機関の詳細条件については、取引実績のある金融機関担当者に確認してみましょう。「すぐに一括で事業承継資金が必要」というような場合には、事業承継ローンが役立ちます。

【関連】事業承継の資金調達に使える融資制度・保証制度を解説!

3. 事業承継ローンを利用するメリット

事業承継ローンを利用するメリット

事業承継ローンには、2つの種類があることを確認しました。どちらの種類であっても、事業承継ローンを利用するメリットがあります。

  • 事業承継で必要な費用を自費でまとめて払わなくてよい
  • 事業承継をきっかけに新しい挑戦をする資金ができる

事業承継で必要な費用を自費でまとめて払わなくてよい

事業承継ローンを活用することで、事業承継で必要な費用をまとめて払わずにすみます。先にも述べたとおり、事業承継をするには、さまざまな税金などの費用が必要です。しかし、全額を後継者が用意できない場合もあるでしょう。

そのような場合、事業承継ローンを利用することで分割して支払えるようになります。事業承継で必要となる費用を融資してもらい、融資された費用で納税や支払いを済ませた後、約定した返済期間で返済していくことができます。

当然、金融機関によって融資の限度額に違いがでてくるはずであり、審査もあるため必要な費用全額を融資してもらえるとは限りませんが、一定のまとまった資金を用意することが可能になります。

もし、「事業承継したいのに後継者にまとまった費用がなくて廃業するしかない」といった事態に陥っているのであれば、有効な手段でしょう。

事業承継をきっかけに新しい挑戦をする資金ができる

事業承継ローンを利用することで、事業承継をきっかけに新しい挑戦をするための資金を手に入れられます。

事業承継をするときには、事業承継計画とともに会社の中長期戦略を立てるでしょう。自分が経営者となったとき、会社を成長させるために何か挑戦したいと思うのは自然なことです。そこで、以下のような場合でも融資の対象となるケースがあります。

  • 新しい設備投資をしたい
  • 新規事業に進出したい

このように、事業承継を機に、新たな挑戦をするための資金も融資してもらえます。ただし、金融機関によっては、このような用途での融資はしてもらえない場合もあるので注意しましょう。

以上が、事業承継ローンを利用するメリットです。もし、事業承継ローンの利用を検討しているのであれば、利用するまでの流れも知っておく必要があります。

【関連】事業承継の費用・料金!税金はいくらかかる?【弁護士/税理士/会計士】

4. 日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用するための流れ

日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用するための流れ

事業承継ローンを利用したいのであれば、事前にどのように融資を受けるのか流れを確認しておくべきです。ここでは、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用する場合で説明をします。

日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用するための流れは、以下のとおりです。

  1. 税理士などの専門家に相談する
  2. 事業承継計画書を作成する
  3. 支店窓口に相談ヘ行く
  4. 必要書類の作成をする
  5. 事業承継ローンの申込み
  6. 審査
  7. 融資決定後、貸付契約の打ち合わせをする
  8. 返済を開始する

ほかの金融機関であっても、基本的にはこのような流れになります。それでは8つの流れについて、詳しく確認していきましょう。

①税理士などの専門家に相談する

まずは、いくらの事業承継ローンを組むべきか専門家に相談しましょう。特に、税理士への相談が欠かせません。なぜなら、事業承継でどれほどの税金が発生するのかを概算してもらう必要があるからです。

事業承継の形はさまざまですが、事業承継をすることで贈与税・相続税などの税金がどれくらいの費用になるのかを計算してもらいましょう。このとき、節税についてもアドバイスをもらうと安心です。

事業承継によって、総額でいくらぐらいの費用がかかるのかを知っておくことで、事業承継ローンでどの程度の融資をしてもらうか決めることができます。

また、事業承継に関する相談相手の専門家としては、M&A仲介会社もあります。M&A総合研究所では、事業承継に豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが在籍しており、事業承継をフルサポートいたします。

無料相談を受けつけておりますので、事業承継に関するお悩みがある際には、お気軽にお問い合わせください。

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②事業承継計画書を作成する

続いて、事業承継計画書を作成しましょう。事業承継計画書には、具体的に、後継者の教育方法、新体制の準備、相続税・贈与税の対策なども記していきます。

以下のような手順で計画書を策定するとよいでしょう。

  1. 事業承継の大枠
  2. 事業の経営理念
  3. 事業の中長期戦略
  4. 事業承継の進め方
  5. 年次ごとの計画表

中小企業庁のホームページでは、企業が参考にできる事業承継計画のひな形や計画表が公開されています。これらの内容に沿って内容を詰めていくと、具体的な事業承継計画を策定できるでしょう。参考にしてみてください。

特に、事業承継を機に大きな挑戦をしたいと考えているのであれが、事業の中長期戦略は具体的に書きましょう。

事業承継計画書は、事業承継ローンの相談や申込みのときに持っていくと、具体的に担当者に伝わります。内部の人間だけがわかる資料ではなく、自社を知らない人が見てもわかる資料になるよう仕上げてください。

③支店窓口に相談ヘ行く

事業承継計画書が完成したら、最寄りの日本政策金融公庫支店窓口まで相談に行きましょう。支店が遠ければ、電話や商工会議所の定例相談でも話を聞いてくれます

相談の際には以下のような資料を持っていくと、より具体的なアドバイスを受けられるのでおすすめです。

  • 事業承継計画書
  • 会社案内(パンフレットなど)
  • 直近3期分の決算書

そのほか、会社のことをわかってもらえそうな資料や、事業承継で発生すると考えられる税金の内訳などもあるとよいでしょう。

できるだけ詳しく事業承継の計画内容や事業承継ローンを利用したい理由を伝えることで、具体的な返済プランなどを聞けます。いきなり申請してしまうと事業承継ローンの審査が通らないかもしれませんので、事前相談に行きましょう。

④必要書類の作成をする

相談へ行った後は、申込みに必要な書類を作成しましょう。

事業承継ローンの申込みに必要な書類は以下のとおりです。

  • 会社案内、製品カタログなどの参考資料
  • 法人の登記事項証明書
  • 直近3期分の決算書・税務申告書
  • 納税証明書
  • 最近の試算表(決算月から時間が経っている場合)
  • 設備投資を行うときは、概要のわかる資料(見積書など)
  • 担保の内容がわかる資料(登記事項証明書など)

これらの書類以外にも、相談に行ったときに「こういった資料も添付した方が審査に通りやすい」などのアドバイスを受けるかもしれません。その場合は、アドバイスに従って資料を添付しましょう。

⑤事業承継ローンに申込む

必要な書類が揃ったら、日本政策金融公庫各支店の中小企業事業の窓口へ申込みに行きましょう。最寄りの支店はホームページから確認できます。

なお、事業承継ローンは、電話やホームページからの申込みはできません。

⑥審査

申込みをした後は、日本政策金融公庫が審査に入ります。審査期間には、担当職員が本社や事業計画予定地などへ視察にやってくるので立会いを行いましょう。

この際、資料だけではわからないことを具体的に質問されることとなります。事業や計画の内容を説明できるようにしておきましょう。専門家に相談している場合でも、同行してもらわずに1人で対応することが望ましいです。

なぜなら、担当職員は申込者本人の意思を聞きたいからです。したがって、専門家にフォローしてもらうと、印象はよくありません。

しっかりと受け答えできるように準備してください。

⑦融資決定後、貸付契約の打ち合わせをする

融資が決定すると、貸付契約の打ち合わせを行います。

貸付契約や抵当権設定などの手続きが終わると、希望の銀行口座へ融資金が振り込まれるので確認しましょう。

⑧返済を開始する

事業承継ローンは借入金なので、返済をしていかなければなりません。原則は、元金均等割賦返済で指定の取引金融機関の口座から自動振替です。しかし、ほかにも元利均等払い方式による返済もあるので、申込み時に相談をしましょう。

事業承継ローンの使い道を、「設備投資のため」としている場合には、融資対象の物件の取得が適正に行われているかの報告や、固定資産台帳への計上確認および現地確認なども行われます。

日本政策金融公庫では、最大の据え置き期間は2年です。返済期間についても無理がないよう、しっかりと申込み時に相談をしましょう。

【関連】事業承継における融資・保証・補助金の制度について徹底解説

5. 日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用できる人の条件

日本政策金融公庫で事業承継ローンを利用できる人の条件

ここでは、日本政策金融公庫の事業承継ローンである事業承継・集約・活性化支援資金の概要のうち、特に利用者条件について詳しく確認しておきましょう。

そもそも事業承継・集約・活性化支援資金は、地域経済の維持や発展のために事業や企業を承継・集約化するための資金調達を支援する融資のことです。

この融資には、活用できる人の条件と使い道が明確になっています。それぞれ目的に合わせて融資を受ける必要がありますので、以下の内容を確認してください。

  活用できる人の条件 決められた使い道
中期的な事業承継計画を現経営者や後継者が一緒に策定している 計画を実行するために必要な資金
長期運転資金
経営権を安定化させ、承継や集約を予定している 承継に必要な資金
長期運転資金
事業承継・集約によって多角化や転換などの新たな取り組みを予定している 事業に必要な設備資金
長期運転資金
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」で認定を受けた人 承継に必要な資金
長期運転資金
個人保証の免除を申し入れ、資金調達が困難である状態で公庫の貸付に関して個人保証を免除する人 取引状況の変化に合わせた長期運転資金

ただし、融資には限度があり、「直接貸付7.2億円まで」となっています。

返済期間は、それぞれの資金の用途によって異なります。代表的な設備資金・運転資金であれば以下のとおりです。

設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内)

担保や保証人は、融資を受けるときの相談の中で決めていくことになるでしょう。直接貸付では、経営責任者の個人保証を必要とするケースがあることにも注意しておき、不安なら詳細を確認しておいてください。

利率については、資金の使い道や融資額、返済期間、その他条件によって変わります。こちらについても、自社の場合はどのようになるか、最初の相談時に確認をしておきましょう。

【関連】個人事業主の事業承継のやり方と注意点まとめ!固定資産税や借入金はどうなる?

6. 事業承継ローンを活用するときの注意点

事業承継ローンを活用するときの注意点

ここまでは日本政策金融公庫の事業承継ローンを見てきました。ほかの金融機関でも、事業承継ローンを利用する流れはだいたい同じです。しかし、条件や融資額限度、金利、返済期間などは金融機関によって大きく異なりますので、依頼したい金融機関へ確認しましょう。

ここからは、事業承継ローン全てにあてはまる注意点を見ていきます。事業承継ローンを活用するときに気をつけるべき注意点は、以下の3つです。

  • 結果的にかかる費用は大きくなる
  • 申請してすぐに借入できるわけではない
  • 審査が通るわけではない

詳しく注意点を確認し、事業承継ローンを申込んだ後に「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないようにしましょう。

結果的にかかる費用は大きくなる

事業承継ローンを利用すると、利用しなかった場合よりも、結果的にかかる費用は大きくなります。事業承継ローンを組むと利率が発生するため、当然のことです。

そのため、事業承継で必要な費用をまかなえるだけの資金力があるのであれば、わざわざ事業承継ローンは利用しないようにしましょう。また、全額分を借入するのではなく、できるだけ融資額を少なくする努力も必要となります。

「事業承継の費用がないけど、ローンを組めばいいや!」と安易に考えるのは危険です。毎月返済する額が低く、返済期間が長引いたり据え置き期間を長くしたりすると、利率はその分、高くなります。

いつかは返さなければならないお金であることを、あらためて認識しておきましょう。

申請してすぐに借入できるわけではない

事業承継ローンの申請をしても、すぐに借入できるわけではありません。どの金融機関で申請しても、審査の期間があるからです。審査結果が出るまでに、早くて3週間~1ヶ月、遅ければ2ヶ月程度の時間がかかります。

実際に納税をしたり、その他の支払いをしたりするまでに貸付契約を完了できるよう、計画的に申請を行いましょう。

そのためには、早い段階から事業承継をいつ行うかを計画しておく必要があります。費用面以外にも、事業承継にはさまざまな準備をしなければなりません。

できるだけ早くから事業承継の計画を立て、準備を始めておきましょう。また、税理士や専門家への相談は事業承継を意識し始めた段階から相談しておくと安心です。

審査が通るわけではない

当然ですが、事業承継ローンの審査が通るわけではありません。事業承継ローンを利用するには、さまざまな条件をクリアする必要があるのです。

たとえば、以下のような場合は審査が通りにくいとされています。

  • 金融機関からの借入の返済に滞りがある
  • カードローンなどからの借入がある
  • 現在の売上がよくない
  • 今後の中長期計画があいまい

このような場合、返済能力が疑われ事業承継ローンの審査は通りにくいです。

事業承継ローンの審査が通らなければ、納税ができないなどの事態が発生するのであれば、通らなかった場合はどうするかまで考えておくようにしましょう。

以上が、事業承継ローンを利用するときの注意点でした。再三お伝えしていますが、事業承継ローンは、あくまでも借入です。そのため金利が発生し、いつか返さなければならないお金であることを認識しておきましょう。

もちろん、まとまったお金がなければ廃業してしまうような場合には、後継者を助けてくれるサービスです。しかし、できるだけ事業承継ローンを利用せずに事業承継する努力をするべきでしょう。

【関連】事業承継の費用まとめ【コンサル/弁護士/税理士】

7. 事業承継時の融資に関するその他の支援制度

事業承継時の融資に関するその他の支援制度

現在、国は中小企業の事業承継が円滑に進むことを支援するため、毎年、さまざまな施策を追加中です。そのなかから、事業承継ローンとも密接に関連する以下の施策について、その概要を掲示します。

  • 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)における信用保証
  • 事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家による支援
  • 事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度(事業承継特別保証制度)

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)における信用保証

経営承継円滑化法こそが、国が中小企業の事業承継支援を実施するための根幹の法律であり、2008(平成20)年の成立後、毎年、法改正が行われ、具体施策の改善や追加がなされています。

日本政策金融公庫の事業承継ローンにおいても、経営承継円滑化法での金融支援の一環である融資の特例が付されていますが、その金融支援策のもう1つが、信用保証の特例です。

この信用保証の特例とは、仮に後継者が別の借入をしていて、信用保証協会の保証枠が限度いっぱいだったとしても、通常の保証枠とは別枠で事業承継に関する借入の保証枠を使えます。

ただし、経営承継円滑化法による支援を利用するためには、法律で定められた申請手続きを行い、都道府県知事からの認定を得る必要があります。

なお、経営承継円滑化法による信用保証の特例の具体的な保証枠額は、以下のとおりです。

  • 普通保険:2億円
  • 無担保保険:8,000万円
  • 特別小口保険:2,000万円

事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家による支援

2019(令和元)年の法改正で制定された中小企業の事業承継策が、「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」です。

その具体的な対策内容には2つあり、その1つとして2020(令和2)年4月から開始されたのが、事業承継時の経営者保証解除を専門家によって支援する施策になります。

これは、各都道府県に「経営者保証コーディネーター」という専門家を配置し、経営者保証解除を目指す中小企業から相談があった場合に、金融機関との経営者保証解除交渉への支援を行うものです。

相談窓口は、各都道府県に組織されている事業承継ネットワーク事務局となっていますが、窓口は不明の場合は、最寄りの商工会・商工会議所や役所に問い合わせれば、すぐにわかります。

事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度(事業承継特別保証制度)

こちらも、「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」で策定されたもので、上述の経営者保証コーディネーターによる支援と同時に開始された施策です。

これまで、どのような場面であれ、中小企業が金融機関から融資を受ける際には、その経営者が個人保証を求められてきました。しかし、その個人保証や担保の提供は重いものがあるため、事業承継における後継者候補が、承継を躊躇する大きなネックです。

そこで、そのネックを取り除くために始められた施策が、この事業承継特別保証制度になります。これにより、一定の要件を満たす場合において、経営者保証を不要とする新たな信用保証制度が受けられるようになったのです。

なお、一定の要件とは、以下の全てを満たす場合となっています。

  • 資産超過であること
  • 返済緩和中ではないこと
  • 一定の返済能力があること(EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)が10倍以内)
  • 法人と経営者の分離がなされていること

この事業承継特別保証制度の詳細を知りたい場合には、やはり、事業承継ネットワークの構成機関である事業引継ぎ支援センターや最寄りの商工会・商工会議所などに相談してみましょう。

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8. 返済不要の事業承継補助金とは

返済不要の事業承継補助金とは

事業承継ローンは融資ですが、返済が不要な事業承継補助金というものについても知っておくと便利です。

この補助金は1年に1度募集され、条件を満たせば最大で600万円の補助を受けられます。そして、補助金ですから返済の必要もありません

2017(平成29)年度から始まり、当初は13%程度の企業しか受け取れなかったものの、近年では約80%以上の企業が受け取れるようになった補助金です。

ただし、毎年、申込期間が限定されています。2020(令和2)年度については、4月10日~6月5日が申込可能期間でした。翌年度の募集期間については、まだ開示されていません。

2021(令和3)年の申請を検討したい場合には、「事業承継補助金」という専用のウェブサイトがありますので、逐次、情報をチェックしましょう。

事業承継補助金における2つのタイプ

事業承継補助金には以下の2種類があります。

  • 後継者承継支援型(Ⅰ型)
  • 事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)

後継者承継支援型(Ⅰ型)

後継者承継支援型(Ⅰ型)は、経営者が代替わりしたことで新しい事業の取り組みを始めるという場合に受けられる経費の援助です。

したがって、新しく事業を進めることが目的でないと申請できません。代替わりしただけでは受けられないので注意してください。

なお、新しい取り組みとは、今後の事業を活性化させて拡大していく取り組みとなります。たとえば、新店舗であるという場合には、設備費などでなければ対象になりません。

事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)

事業再編・事業統合支援型(Ⅱ型)は事業再編や統合した際に新しい取り組みを補助するものです。

より具体的にいえば、企業間でM&Aを実施した際に受けられる補助金となります。合併や会社分割、株式譲渡事業譲渡株式交換、株式移転などが、その対象です。

補助金を受け取るまでの流れ

補助金を受け取るまでには、以下のようなプロセスがあります。

  1. 条件を確認する
  2. 新しい取り組みを具体化する
  3. 認定支援機関の認定書をもらう
  4. 申請用の書類を用意する
  5. 交付申請をする
  6. 取り組みを実施する
  7. 補助金を得る

①条件を確認する

まずは、条件を確認してください。

条件は、中小企業庁が公開している「事業承継補助金の募集要項」に記載されています。

②新しい取り組みを具体化する

具体的に新しい取り組みとして何をするのか、どこに補助金を使うのかを考えてください。補助金が受けられるのは、新しい取り組みを始めてからです。

したがって、手持ちの資金でスタートできる取り組みでなければなりません。

具体化ができて、動き出せる状態になれば、次のプロセスに移りましょう。

③認定支援機関の認定書をもらう

具体化ができたら、認定支援機関の認定書を受け取ります。

認定支援機関とは、経営革新等支援機関のことで、中小企業や小規模事業者が安心して経営相談などが受けられるように、専門知識や実務経験が一定レベル以上と認められる者に対し、国が認定する公的な支援機関です。

具体的には、商工会・商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などが該当し、中小企業庁のホームページで全国の認定支援機関一覧が公開されています。

認定書は申請するために必要になりますので、受け取るようにしてください。作成するときには、事業承継補助金募集サイトから必要な書類をダウンロードできます。

④申請用の書類を用意する

認定書が用意できたら、その他の必要な書類も準備しておきます。

必要な書類とは以下のようなものです。

  • 補足の説明に使う資料
  • 住民票
  • 認定支援機関が交付している確認書
  • 申請資格を確認するための後継者に関する書類

法人や個人事業主によって必要な書類が変わります。認定支援機関の認定書をもらう際に、合わせて確認してそろえておくと不備なく進められるでしょう。

⑤交付申請をする

交付申請の用意ができれば、電子申請にて手続きを進めていきましょう。

申請する際には、上述した専用のウェブサイト「事業承継補助金」からの手続きです。マイページを作成後、必要事項を入力したら書類を添付して送ります。

その後は、申請に対して審査が行われ、正しく手続きができている状態かつ条件を満たしていれば補助を受けられるはずです。結果は通知がありますので、届くまで待ちましょう。

⑥取り組みを実施する

通知を受けて交付が決まったのなら、具体化した新しい取り組みをスタートしてください。

そして、取り組みを始めてから30日以内に報告書を提出すると補助を受けられます。今後は、取り組みの経過報告などもすることになりますから、何度も報告書を提出することが必要です。

⑦補助金を得る

補助金を得られれば、活用して取り組みをさらに進めていきましょう。

補助金を受けてから5年の間は、収益状況などの報告書を提出します。一定の収益性が認められると、収益の一部を納付する必要も出てきますから、丁寧に報告してください。

なお、事業承継補助金については、以下の記事で、より詳細に解説していますので、よろしければご参照ください。

【関連】【2020年最新】事業承継補助金とは?採択率や申請書を解説!事例あり

9. 事業承継の費用を抑えるなら事業承継税制に詳しくなろう

事業承継の費用を抑えるなら事業承継税制に詳しくなろう

事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から事業承継した場合に、条件を満たせば事業承継に関する贈与税・相続税の納税を猶予または免除される制度のことです。

この制度も、経営承継円滑化法で定められました。中小企業を継ぐ後継者の税負担を軽減させて、多くの事業承継が促進されることを目的としています。

事業承継税制を利用するメリットは、事業承継に関する贈与税・相続税が猶予・免除されるため、後継者の資金面の負担が大きく軽減されることです。

ただし、事業承継税制の内容は複雑で、法人と一般(個人事業者)、一般措置と特例措置など、条件によって制度の内容が異なっています。早い段階で税理士などの専門家に相談し、後継者が猶予・免除を受けられる条件などを把握しておきましょう。

【関連】【中小企業庁】事業承継税制とは?相続税・贈与税の納税猶予(特例)を徹底解説!

10. まとめ

まとめ

事業承継ローンとは、事業承継を行うために必要な資金の融資を受けることです。事業承継ローンを利用することで、一時のまとまった出費を補えます。しかし、事業承継ローンは「借入」ですから、返済しなければなりません。

したがって、事業承継時の出費をできるだけ抑えるために、事業承継補助金を申請したり、事業承継税制で猶予や免除を受けたりなど、制度も極力、活用しましょう。

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