2021年09月04日更新
会社の相続のポイントを解説!経営者の親が亡くなった時にやるべきことは?
会社経営者の親が亡くなって会社を相続する時、どのような手続きをすればいいか分からず混乱することがないようにしておかなければなりません。本記事では、会社の相続の方法や手順にはどのようなものがあるか、リスクや注意点は何かなどを解説します。
1. 会社の相続とは
会社の経営者、特に中小企業の経営者は高齢化が進んでおり、会社の相続をいかに推進していくかが重要な課題となっています。
しかし、会社の後継者となる予定がある方のなかには、会社を相続するというのはどのようなことなのか、具体的なイメージができていないこともあるるかもしれません。
いざ会社を相続する段階になって戸惑うことのないように、早い段階から基本的な知識を得ておくことが大切です。
この章では、会社の相続と個人事業の相続の違いといった、基本的な事項から解説していきます。
経営者の親が亡くなった場合は会社の相続が必要
会社を経営している親が亡くなると、株式などの保有資産を相続しなければなりません。単に後継者が会社の代表取締役に就けば済むというわけでなく、相続のためのさまざまな手続きが必要になります。
会社の相続には2種類がある
会社というと普通は株式会社などの法人を指しますが、親が営んでいた個人事業を相続するケースもあります。
法人と個人事業では相続の仕方が全く違うので、それぞれの相続の仕組みについて理解しておくことが大切です。ここでは、法人と個人事業では相続がどのように違ってくるのかを解説します。
法人の場合
法人とは、株式会社や合同会社などの、いわゆる法人格を持つもののことをいいます。法人は実際の人間とは違いますが、人と同じように法律上の権利や義務を持ちます。
法人は法律上は人として扱われるものなので、経営者の個人的な財産や所有物ではありません。よって、経営者が死亡しても、法人自体は相続の対象にはなりません。
ではどうすれば会社を相続できるかというと、経営者が持っていた株式を相続することによって事実上の会社の相続を行うことができます。
株式には議決権があるので、十分大きな議決権を持てば会社の経営に自分の意志を反映でき、会社の経営権を譲り受けたことになります。
個人事業の場合
個人事業の場合は、事業に関する資産は事業主の所有物となります。よって、事業主が死亡した場合は、事業に関する資産自体が相続の対象となります。
個人事業を相続する場合は、まず事業資産を相続して後継者の所有物としたうえで、死亡した前経営者の廃業届を出し、後継者が開業届を出すことで相続が完了となります。
2. 会社が法人の場合の相続手順
会社が法人の場合の相続手順は、まず自社株を相続して株式の名義変更を行い、次に代表としての地位を取得して、最後に金融機関などで変更手続きを行います。
これ以外にも細かい手続きはありますが、まずはこの大枠を理解しておくことが大切です。
【会社が法人の場合の相続手順】
- 自社株を取得(相続)する
- 取得した株式の名義を変更する
- 代表としての地位を取得する
- 金融機関などでの変更手続を行う
1.自社株を取得(相続)する
先に述べたように、法人形態の会社の相続とは、自社株を相続して会社の経営権を得ることです。よって、まずは亡くなった前経営者が保有していた株式を相続する必要があります。
自社株の相続では、まず株式の評価額を見積もらなければなりません。株式評価方法は、上場企業と非上場企業で違ってくるので注意が必要です。
また、会社の経営権を取得するには、少なくとも過半数の議決権を得る必要があり、できれば特別決議を単独で可決できる3分の2以上を取得することが望ましいとされています。
というのは、もし経営者以外の者が多くの議決権を持つと、彼らが会社の経営に影響を及ぼして、思うような経営ができなくなる可能性があるためです。
上場企業の株式評価方法
上場企業の株式は市場で取引されているので、市場株価が株式の価値となります。ただし、上場企業の株価は日々変化するので、どの時点の株価を採用するかが問題です。
相続において、どの時点の株価を採用するかについては規定があり、以下の4つの株価のなかから最も低いものを採用します。平均値は、各営業日の終値の平均をとります。
【次の4つの株価から最低価格を採用】
- 親が亡くなった日の終値
- 親が亡くなった月の株価の平均
- 親が亡くなった前月の株価の平均
- 親が亡くなった前々月の株価の平均
非上場企業の株式評価方法
非上場企業の株式には市場価格がないので、会社の資産などの情報から株式価値を見積もることになります。
評価方法にはさまざまなものがありますが、純資産の額を株式価値とみなす方法や、上場企業から似た会社を探してその株価を参考にする方法などがあります。これらはそれぞれ純資産価額方式、類似業種比準方式と呼ばれます。
また、株式を相続した後継者が同族株主でない場合は、配当還元方式という別な評価方法を使います。
このように、非上場企業の株式価値評価は専門的で難しいので、基本的には公認会計士などの専門家に依頼することになります。
2.取得した株式の名義を変更する
会社の株式は取得しただけでは議決権を行使することはできず、株主名簿の書き換えを完了して効力が発生します。よって、親の会社の株式を相続したら、次は株主名簿を書き換えて名義変更しなければなりません。
また、親が古くから経営している会社の場合、株券発行会社であるかどうかも確認しておく必要があります。
現在は商法の改正により株券は原則不発行なので、株主名簿の書き換えだけで問題ありません。しかし、昔の会社は株券を発行していることがあり、その場合は株券を取得しないと株式譲渡が成立しません。
もし親の会社が株券発行会社であるなら、株券を探してきて取得するか、どうしてもみつからない場合は再発行したり、もしくは株券不発行会社への変更手続きが必要になります。
3.代表としての地位を取得する
株式を相続して名義変更したら会社の実質的な経営権を持つことができますが、この時点ではまだ大株主というだけで、役職として代表取締役になったわけではありません。
そのため、次は後継者が会社の代表取締役に就く手続きを行います。取締役の選任は自分だけで勝手に行うことはできず、株主総会を開いて決議を得る必要があります。
しかし、実際は選任の前に株主から了承を得ることが多いので、株主総会で意見が割れて揉めるといったことはあまりありません。
また、小規模な会社で後継者が全株式を持っているなら、みなし決議といった手続きで株主総会を簡略化することもできます。
4.金融機関などでの変更手続を行う
株式を相続して代表取締役に就いたら相続手続きは一応済んだことになりますが、実際はほかにも細かい手続きが必要になります。
例えば、法人名義の銀行口座の代表者を変更したりといった、金融機関での手続きが必要になります。他にも、許認可が必要な事業なら、許認可の代表の変更手続きなども必要です。
さらに、取引先に代表取締役が変わったことを通知したり、主要な取引先なら直接出向いてあいさつする場合もあります。
3. 会社を相続する際に考えられるリスク
相続というのは親の会社を継ぐ後継者だけでなく、相続人全員が関わるものなので、相続人同士の利害関係を巡ってトラブルになることもあります。
会社を相続する際に考えられる以下の3つのリスクを考慮したうえで、これらが少なくなるように手続きを進めていきましょう。
【会社を相続する際に考えられるリスク】
- 経営権が掌握できない
- 負債まで相続してしまう
- ほかの相続人とのトラブル
経営権が掌握できない
親の会社を相続するには、株式の少なくとも過半数、できれば3分の2以上を取得が必要です。
しかし、株式を通常の相続財産として法定相続人に相続させると、株式が分散してしまい会社の後継者が十分な経営権を得られなくなる場合もあります。
実際、中小企業の事業承継では、後継者以外の株主が経営に口出しし、後継者を解任して会社を乗っ取ってしまう事例もあるといわれています。
親の会社を相続する際は、遺言や生前贈与などを活用して、後継者が十分な議決権を得られるように準備することが大切です。
負債まで相続してしまう
中小企業の経営者は、会社が融資を受ける際に、経営者個人が保証人になっていることも多くみられます。もし親が保証人になっていた場合、会社を相続した後継者が保証人を引き継がなければならない可能性もあります。
現在は「経営者保証ガイドライン」という、後継者ができるだけ保証人を引き継がなくて済むためのルールがあります。
親の会社を相続する際は、経営者保証ガイドラインをよく理解したうえで金融機関と交渉することが大切です。
また、経営者の個人的な負債だけでなく、会社の負債にも注意する必要があります。特に未払い残業代など法的に問題のある負債は、相続の際にできるだけ整理しておくようにしましょう。
ほかの相続人とのトラブル
親の会社を相続するには、親が保有していた株式を後継者一人に集中して相続させる必要があります。そのため、ほかの親族が不満を持ってトラブルになることがあります。
ほかの相続人とのトラブルを避けるためには、後継者以外の親族には会社の株式以外の財産を優先的に与えるなどして、不満が出ないように配慮することが大切です。
4. 経営者が望んだ後継者に会社を相続させる方法
前章で見たように、親の会社の相続にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。トラブルを避けて前経営者が望む後継者に確実に会社を相続させるためには、前経営者の生前から準備を進めておくことが大切です。
後継者に確実に会社を相続させる方法としては、遺言の作成・生前贈与・家族信託といったものが考えられます。
【経営者が望んだ後継者に会社を相続させる方法】
- 遺言で後継者を指定しておく
- 生前贈与によって事業承継する
- 自社株式を家族信託する
1.遺言で後継者を指定しておく
遺言書を作成せずに親が死亡すると、財産は法律に従って法定相続人に相続されます。これでは後継者に自社株が集まらず、経営権を取得できない可能性がでてきます。
確実に後継者に相続させるには、親が生前に遺言書を作成して、後継者が十分な自社株を相続できるようにしておくことが大切です。
遺留分に対する配慮が必要
相続財産には「遺留分」という、最低限もらえる権利のある遺産があります。もし後継者が株式を全て相続したためにほかの親族の相続財産が遺留分を下回った場合、親族が遺留分を求めて訴訟を起こす可能性があります。
遺言で自社株の相続を後継者に集中させる場合は、他の親族の遺留分に対する配慮が必要です。
中小企業の事業承継では、相続した自社株を特例として遺留分から除外できる制度もあるので、こういった制度も活用して、トラブルが起こらないように手続きを進めていきましょう。
2.生前贈与によって事業承継する
生前贈与とは、親が生きている間に親族に財産を相続することです。現経営者が生きている間に後継者に自社株を生前贈与すれば、確実に後継者に経営権を取得させることができます。
贈与税は相続税より控除額が少ないのがデメリットですが、生前贈与の場合は相続時精算課税といった制度も利用できます。また生前贈与は、他の親族からの遺留分請求の対策になる面もあります。
また、親が経営者として現役のうちに、後継者が経営に参加できるのも生前贈与のメリットです。
事業承継では、後継者に早めに経営者としての経験を積ませて教育することが多いですが、生前贈与で後継者に経営権を持たせておけば、より自覚を持って後継者となるための経験を積むことができます。
事業承継税制の活用
事業承継税制とは、事業承継のために相続・贈与した財産の相続税・贈与税を猶予・免除する制度です。
一定の条件を満たす場合に納税が免除され、後継者がさらに3代目に事業を承継した時点で納税が免除されます。
事業承継税制は大変有用な制度ですが、必ず納税を免除できるわけではないので、制度の内容をよく理解して利用する必要があります。
3.自社株式を家族信託する
自社株式の相続では、遺言と生前贈与以外に、家族信託という方法を利用する手もあります。
家族信託とは、成年後見制度のデメリットを改善したような制度で、自分の財産の管理を親族に任せることができるものです。
家族信託で自社株式を後継者に信託すると、株式の管理や処分は後継者が行い、利益は現経営者である親が受け取ることになります。そして最終的に親が亡くなると、自社株式は後継者のものとなります。
家族信託は事業承継税制と違って節税効果は少ないですが、3代目以降の後継者も指名できるなど、事業承継税制にないメリットもあります。
家族信託は新しい制度なので、熟知した専門家がまだ十分いないといった面もありますが、会社を相続するための新しい有力な手段として、今後普及してくる可能性もあります。
5. 会社相続の注意点・ポイント
会社相続の注意点・ポイントとしては、適切な株式評価を行う・相続税がかかるなど、以下の4点が挙げられます。
【会社相続の注意点・ポイント】
- 適切な株式評価を行う
- 相続税がかかる
- 事業用財産の相続方法を考えておく
- 会社を継がない場合はM&Aによる売却も検討する
1.適切な株式評価を行う
会社の相続はつまるところ株式の相続なので、株式の価値を適切に評価することは大変重要なポイントになります。
特に、非上場企業の株式価値は算定方法によって変わる部分もあるので、信頼できる専門家に依頼して適切な株価を算定してもらうことが大切です。
2.相続税がかかる
株式を相続すると相続税がかかるので、相続税対策を練っておくことが重要です。事業承継税制を活用して相続税を猶予・免除するのも有力ですが、株式の評価額をできるだけ下げて相続税を安くするという手段もあります。
株価の引き下げ方法は種類が多く専門的なので、専門家のアドバイスを受けながら進めていくことになります。
中小企業の場合は、株式以外の資産に相続税がかかる可能性があるのも注意点です。中小企業では会社の財産と経営者個人の財産の分離が曖昧なことが多く、事業に必要な資産が前経営者の個人名義になっていることもあります。
その場合は事業資産を親から相続する形になり、相続税が発生します。特に、前経営者が自分の個人的な貯金を会社の運転資金として使い、貸付金となっている場合は注意が必要です。この貸付金も相続税の対象となるので、想定以上に相続税が高くなる可能性があります。
3.事業用財産の相続方法を考えておく
事業用資産のなかに前経営者の個人的な所有物がある場合は、適切な相続方法を考えておく必要があります。
親が亡くなる前に全ての資産を会社名義に変えておくのが一番よいですが、個人名義のまま相続したい場合は、遺言や生前贈与、遺産分割協議などを利用することになります。
4.会社を継がない場合はM&Aによる売却も検討する
相続がうまくいく見込みがない場合や、会社を継いでくれる親族がいない場合は、M&Aで会社を第三者に売却する選択肢も有力になります。
M&Aは買い手をみつけて成約へと至るまでが大変ですが、もし能力と意欲のある会社へ売却できれば、親が築いてきた会社をさらに発展させられる可能性もでてきます。
中小企業はよい製品や高い技術を持っていても、販売力が弱いためにそれに見合う利益をあげられていないこともあります。
そういった会社をM&Aで販売力の高い会社へ売却できれば、シナジー効果で業績を伸ばせる可能性もあります。
しかし、M&Aの買い手には悪質な者もいるといわれているので、相手の選定は注意深く行う必要があります。
例えば、会社の売却価格を不当に安くしたり、買収後に放漫経営を行い業績が悪化してしまうといったケースが考えられます。
相続の代わりにM&Aで会社を売却する場合は、仲介会社などの専門家のサポートを得て、慎重に手続きを進めていくことが重要です。
6. M&Aのご検討の際はM&A総合研究所へ
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7. まとめ
会社の相続は、ほかの親族との相続トラブルや、相続税・贈与税の問題など、さまざまな注意点が存在します。
会社の相続のリスクや注意点を理解して、スムーズに手続きを進めていけるように準備することが大切です。
【会社が法人の場合の相続手順】
- 自社株を取得(相続)する
- 取得した株式の名義を変更する
- 代表としての地位を取得する
- 金融機関などでの変更手続を行う
【会社を相続する際に考えられるリスク】
- 経営権が掌握できない
- 負債まで相続してしまう
- ほかの相続人とのトラブル
【経営者が望んだ後継者に会社を相続させる方法】
- 遺言で後継者を指定しておく
- 生前贈与によって事業承継する
- 自社株式を家族信託する
【会社相続の注意点・ポイント】
- 適切な株式評価を行う
- 相続税がかかる
- 事業用財産の相続方法を考えておく
- 会社を継がない場合はM&Aによる売却も検討する
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