会社を売りたい人必見!【M&A攻略マニュアル】

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

最近では後継者不足による事業承継の問題から、会社を売りたいと考える経営者が増えてきました。ただし、メリットおよびデメリット、どこに相談すべきかなど、検討すべきことはいくつもあります。会社を売りたい場合に抑えておくべきポイントをまとめました。


目次

  1. 会社を売りたい理由
  2. 会社を売るメリット
  3. 会社を売るデメリット
  4. 会社を売りたい!売却の流れ
  5. 会社を売りたい!売却のスキーム
  6. 会社を売りたい!価額算出方法
  7. 会社を売りたい!高く売却する方法
  8. 会社を売りたい!売却の際の必要書類
  9. 会社を売りたい!M&A攻略まとめ
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1. 会社を売りたい理由

会社を売りたい理由

経営者が会社を売りたい理由は無数にありますが、主だった動機で多いのは以下の通りです。

特に最近は、後継者不足を理由とした事業承継問題解決のために会社を売りたい中小企業が増えてきています。

後継者不足解消

最近多い会社を売りたい理由として、最もよくある理由として挙げられるのが、後継者不足です。つまりは事業承継の問題で、中小企業の経営者がオーナーである場合に、これは問題になります。

後継者不足の理由としては、単純に少子化により子供が減ったことと、子供が継ぐ意思がないケースが増えたことです。

経営者の子息に後継者候補がいないのであれば、社内や外部の人間にそれを求めるか、どこかほかの会社に経営を引き継いで事業承継を図るしか、会社を存続させる方法はありません。

事業からの解放

経営者に定年はありませんが、高齢化に伴うパフォーマンスの低下や健康不安は避けられません。なお、中小企業の経営者の引退年齢は平均して70歳前後です。

もちろん、経営者が経営の第一線から退くのみでしたら、経営を引き継いでくれる人物に役職を明け渡してしまえば済みます。しかし、オーナーであることを続けていると、株式を所持していることによる議決権は残っています。

また、会社を所有している以上、経営者自身に会社の債務の個人保証や担保があれば、それを別の人物なり会社に移すのには難があります。

つまり、会社の所有が続いている以上は、事業からは完全には解放されません。むしろ、議決権や借入などの、会社の存続の大事な部分は引続き手中にあると言えますし、会社が上手くいかなかった場合のリスクを背負い続けているとも言えます。

事業からの解放も、会社を売りたい理由の一つになります。

資金獲得

資金を獲得するために会社を売りたい場合には、2点考えられます。

経営者の老後の生活資金のため

オーナー経営者である場合、M&Aで会社を外部の企業に売れば、そこから株式の売却益を得ることができます。

これはかなりまとまった金額になりますから、経営者であることを辞めても、これで老後の生活資金を確保できるわけです。

社内のある事業に資金を投入したい場合など

これは、会社がM&Aで事業の一部を切り離して売却する場合です。

以下「選択と集中」にも繰り返しますが、よくあるのが社内の不採算事業を売却して、得た資金を別の事業に投下する戦略がとられます。

選択と集中

選択と集中とは、自社が得意としている事業分野に対して、集中的に経営資源を投下する戦略です。

会社の売却による事業の選択と集中は、ある程度規模が大きく、事業が多角化した企業において見られます。最もよくあるのが、不採算事業を売却して、主力事業に経営資源を集中させるために行うケースです。

M&Aによって得た売却資金を、主力事業の発展・強化のために投入できることから、会社を売りたい動機になります。

事業存続

後継者不足による事業承継の問題もありますが、経営不振により事業の存続が難しくなるケースもあります。

しかし、たとえ赤字が続いていた場合でも、会社を売却できる可能性はあります。M&Aの売却価格は、基本的に売りたい側と買いたい側の合意額で行われることがその大きな理由です。

たとえ赤字経営であったとしても、事業や保有している資産などが売却候補先に高く評価されれば、会社を売りたい希望は叶えることができることもあります。

つまりは、譲受企業に会社の再生を託す手段として、会社を売りたい動機が生まれます。

シナジー効果

シナジー効果とは、相乗効果のことです。

具体的に言えば、企業がM&Aや経営多角化戦略を行う際に、経営資源の有効活用や異なる事業を組み合わせることにより、単なる利益の合計だけでなく大きな付加価値を生み出す効果のことです。

会社の経営が行き詰まっていたり、もっと大きく事業を成長させたい時に、他社の経営資源を利用してこのシナジー効果を得るために、M&Aによる売却や買収の方法が取られることがあります。

従業員の雇用を守る

経営者には従業員の雇用を守るという使命もありますが、後継者不足なりで事業承継をせず、廃業を選択すれば、従業員は否応なく次の職場を探さなければなりません。

また、会社を売却する際には希望退職を募ったり、従業員の多くが会社を離れていくケースもありますが、それでも日本の労働規制では、経営者側から簡単に解雇するようなことはできません。

つまり会社の売却によって、従業員が無条件に失業する事態は避けられますし、また譲受先の企業の下で、まずは従業員に、簡単には解雇されない労働者としての地位が保証されるわけです。

映画やドラマでは、売却した会社の従業員が譲受先で冷淡な扱いをされるという構図がたまに見られますが、もし経営が悪化していた状態で売却後の方が事業が存続できそうな場合には、むしろ会社売却が従業員を守ることにつながるので、会社を売りたい理由の一つになります。

2. 会社を売るメリット

会社を売るメリット

一部は「会社を売りたい理由」で記載したことと被っていますが、M&Aで会社を売ることによるメリットは以下の通りです。

資金獲得

経営者がオーナーである中小企業の場合、後継者不足などで事業継続に難があっても、廃業を選択しますと会社に残っていた債務の返済を強いられます。

これに対し、会社を丸ごと売却した場合は、負債や借入金も譲受企業に引継いでもらえます。

さらにメリットとなるのが、所有している株式を売って得た金額は、そのまま自身のものになることです(課税はあります)。

M&Aで外部に会社を売却することによって、外部から資金が得られるのは、廃業に比べればメリットしかありません。

また、企業が事業の一部を売却した場合に、得た資金を他の事業などに投下できるのは、「会社を売りたい理由」で述べたとおりです。

事業承継問題の解決

経営者がオーナーの中小企業にとって後継者がいない場合には、社内や外部の人間、他の会社に経営を引き継いで事業承継をするしか会社を存続させる方法はありません。

しかしながら、社内や外部の人間に、会社の所有まで求めるのは、資金面や連帯保証の点からも難しいのが実情です。

一方で、外部の企業に会社ごと売却して、経営を引き継いでもらう形であれば、後継者不足による事業承継の問題は解決できます。

実際に、経済産業省が2017年10月に発表した「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、事業承継が行われないままに後継者不足による中小企業の廃業が進むと、2025年ごろまでに10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるという推定もあります。

そこで、経済産業省が2018年度税制改正に向けた要望書には、企業のM&Aに税優遇を設ける内容が盛り込まれました。これは、M&A・会社売却を税制面から後押しすることで、後継者難に苦しむ中小企業に会社を売りたい決断を促す狙いもあると考えられます。

連帯保証からの解放

オーナーでかつ経営者の場合、経営を辞めてもオーナーである状態が続いていると、会社の債務の個人保証や担保を、別の人物なり会社に移すのには難があるのは、「会社を売りたい理由」で述べたとおりです。

しかし、会社をM&Aで他の企業に売却すれば、それらも通常は譲受企業に全部引き継いでもらえます。

会社を外部に売却することで会社の所有も手放し、連帯保証や債務も含めて全部、本当の意味で事業から解放されることが可能です。これでリスクもなく、安心して引退後の生活を送ることができます。

業務からの解放

「会社を売りたい理由」でも述べましたが、経営の第一線を退くだけでしたら、役職と権限を手放してしまえば済んでしまいます。

しかしそれでも、オーナーであることが続いていると、議決権や借入などの、会社の存続の大事な部分は引続き手中にあります。新しい経営者も株主を無視した経営はできませんから、何かしらの業務には、必ず関わっていなければならないわけです。

そこで、会社を売却してオーナーであることも辞めれば、完全に業務から解放されることが可能です。

事業存続

会社が赤字や何かしらの問題を抱えており、経営に行き詰まっていたとしても、会社を売りたい希望を実現するのは不可能ではありません。

またそれができれば、まずは形式的に別の会社として事業は存続させることができます。

加えて、買った企業との相性が良ければ、後に述べるシナジー効果でさらなる発展が期待できます。

シナジー効果


赤字続きなど経営に問題を抱えたまま会社を売却した場合でも、その後に売却先の事業とのシナジー効果を発揮できれば、問題を抱えていた事業が復活することも大いにあり得ます。

いわば、M&Aによるシナジー効果を発揮した場合で、このシナジー効果は、M&Aを行う際に最も大事にしたい点でもあります。

もちろんこのシナジー効果は、問題のある事業に対してだけでなく、もともと順調だったり、これから伸びていく予定の事業がさらに伸びていくということも期待できるものです。

3. 会社を売るデメリット

会社を売るデメリット

会社を売りたいと思っても、デメリットもあります。法律によって禁止されている事柄もあるので、注意する必要があります。

競争避止義務による事業制限

競争避止義務は、事業譲渡の際に問題になるもので、会社法上で定められている「当事者の別段の意思表示がない限り、譲渡会社は、同一市町村及び隣接市町村の区域内において、事業譲渡の日から20年間、同一の事業を行うことができない」というものです。

わかりやすく言えば、売りたい側は売却した事業と同じ事業を20年間は行うことができません。

通常は売りたい事業と同じ事業を、直ちに一から始めるのはほぼあり得ませんが、20年間も禁止されていることには注意しなければなりません。

競争避止義務を回避するためには、M&A契約において、明確に、競業避止義務を負わないことを定めておかなければなりません。

会社を売りたいと考えたら、この点は注意が必要です。

ロックアップ

M&Aによるロックアップは通常、キーマン条項と呼ばれ、契約で売却企業のキーマン(基本的には経営者)が2〜3年間、企業に残ることを定めたものです。キーマンが抜けることで、買収後の事業が回らなくなるのを防ぐために定められます。

このロックアップの期間は、売りたい側のキーマンが次のキーマンへ引き継ぐための期間ですので、つまりは買収側のために設けられる条項です。

売りたい側の経営者、つまりロックアップをかけられる側からすれば、ロックアップ期間は会社をやめることができないため、かなり不自由な状態に置かれることになります。

会社を売りたいと考えたら、経営者自身は身の振り方のこともよく考えなければなりません。

会社イメージの低下

最近でこそ、会社を売りたいと考えることはそれほど珍しいことではなくなり、世の中の理解も深まってきましたが、今でも会社売却は「身売り」や「敗北」といった昔ながらのイメージで捉えている人がいるのも事実です。

売却が決まっても、取引先や地域の中でのそのような人たちへの説明不足によって、不必要にイメージの低下を招いたり、怪訝な目で見られることがあります。

また、従業員が自社に持つイメージも大事です。従業員が会社への信頼を無くすような事態になると、人材の流出やモチベーションの低下に繋がります。

会社を売りたいと考えた時から、関係者には最大限の理解を得られるようどう手を打っていくべきかを考えていくべきです。

4. 会社を売りたい!売却の流れ

会社を売りたい!売却の流れ

会社を売りたいと考えた後に頭に入れておくべき大きなイベントについて、簡単にまとめると以下の通りです。

仲介業者への相談

M&Aの一連の業務や、候補先をサポートしてくれる会社を業種別にみると、主に以下があります。

主だった特徴を挙げていますが、会社を売りたいと考えたら複数相談に行って検討するのがベストです。

特に最近は、事業承継問題の解決に力を入れているM&A仲介会社が多いです。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は売りたい側と買いたい側の間に入り、中立的な立場で双方の条件を詰めて成約に導くM&A専門会社です。

売りたい側・買いたい側の双方に、計画立案からクロージング、そして統合プロセスに至るまでの、一連のサポートをします。

売りたい側と買いたい側の双方と仲介の契約を結んでおり、M&Aが成約したら双方からフィーを請求します。メリットは早くM&Aが成約できることを期待できる点になります。

なお、M&A相談を誰にすればいいか分からない方はまず、M&A総合研究所にご連絡ください
他の仲介会社であれば資格のないような営業職の方が対応します。M&A総合研究所はM&A専門の会計士が対応しますので安心です。

M&A総合研究所の強みを整理しておきます。

  • 会計士が仲介業務をするので安心(他の会社は会計知識のない営業がする)
  • 手数料が業界最安値(他より高い場合はその値段まで下げる)
  • 圧倒的な実務のスピード感で決定(独自の会計士ネットワークがある)

まずはお気軽にご相談ください

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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M&Aアドバイザリー(FA)

M&Aアドバイザリー(FA)はM&Aにおける計画立案からクロージング、そして統合プロセスに至るまでの、一連のサポートを行ってくれるところは大体同じですが、ミッションと契約が違います。

FAは売りたい側・買いたい側どちらかの契約先の利益の最大化を目的とし、そのためのアドバイザリー契約を結びます。

このため、フィーは売りたい側か買いたい側の、契約した側のみに請求します。メリットは自社のためのアドバイザリーを専門でやってくれる点です。
 

金融機関(銀行・証券会社)

銀行や証券会社も、特に大手であればM&Aの専門部隊をもってサポートしてくれます。

ただし、銀行や証券会社は主に上場大手企業などのM&Aサポートに重きを置いており、フィーも高めです。このため中小企業のM&A案件についてはあまり扱っておらず、サポートしてもらえない可能性が高くなります。

各種専門家(税務・会計・法律事務所)

自社の顧問税理士や会計士や弁護士にM&Aの相談を持ち掛けることは、よくあることです。また、M&Aを進める上で税と会計の知識は必須ですので、どこへサポートをお願いしても、いずれどこかの専門家の協力は入ってきます。

ただし、M&Aに詳しい専門家は限られています。企業の顧問が一般的に備えている知識だけではカバーできない問題もあり、法律やファイナンスなどの知識がある専門家とのつながりがなければ、一部分についてのアドバイスしか受けられない可能性が高いです。

他の専門家とのネットワークを持っているかどうかが、相談相手としてふさわしいかどうかの分かれ目となります。

マッチングサイト

最近では、M&Aのマッチングサイトも発展してきました。インターネット上でM&Aの売りたい・買いたい相手を探せるサービスがのことです。

主に、スモールM&A(案件規模500万円以下の、個人でもM&Aができる範囲)を対象としていますが、仲介会社やFAに相談せずとも気軽にM&Aの売りたい・買いたい候補先を探せるようになりました。

サービスや料金体系は様々ですが、無料で利用できるサービスもあります。

仲介業者との契約締結

M&Aのサポートをお願いする仲介会社が決まったら、アドバイザリー契約を結びます。

アドバイザリー契約とは、不動産媒介契約でいう専任媒介契約のようなものです。通常は、M&A業務の全てを委託する契約ですが、状況によっては、M&A業務の一部を委託する契約を締結する場合もあります。

アドバイザリー契約の締結の手順を踏むと、仲介会社からは、自社のさまざまな資料について提出を依頼されます。

それをもとに仲介会社は「ノンネームシート」と呼ばれるA4用紙1枚程度の売りたい希望企業の社名を伏せた簡単な説明資料と、「企業概要書」と呼ばれるA4用紙20~30枚程度の社名も掲載した詳細な説明資料の二つの資料を作成します。

売却先の選択

その後、仲介会社からは、M&Aの候補先をリストアップしてもらえます。

リストアップは大体多くて30社程度で、業種・企業規模・地域・事業内容・資力などの条件に合う企業です。

売りたい側はそれを確認し、売却候補先企業への持ち込みについての可否、ならびに持ち込みの順位付けを行います。

売却先との交渉

仲介会社と「秘密保持契約」と呼ばれる、M&Aにおいて知り得た情報を他に利用しないことを固く定めた契約を結んだ後、M&Aの候補先に自社の情報を持ち込んでもらいます。

「ノンネームシート」や「企業概要書」を通じて情報を持ち込んだ候補先企業から、仲介会社あてに、自社に関心がある旨の連絡が来たら、経営者同士のトップ面談です。

売買契約の締結

トップ面談の後、双方でM&Aを進めることが合意出来たら、その旨を約束した基本合意書を締結します。その後、デューデリジェンスを実施したのち、それをもとに最終売買契約のまとめに入ります。

最終契約書には、以下の項目が通常は入ります。
 

  • M&A取引(売却)価格
  • 退職金をどうするか
  • 従業員の処遇
  • 役員の処遇
  • 支払い方法
  • 連帯保証や担保提供の解除方法
  • 契約書に書いていない債務が発生した場合どうするかなど。
  • その他細目事項の決定(社宅をどうするか、骨董品やゴルフ会員権の取り扱い、役員人事等)

また、M&Aのクロージングに向けて、スケジュールの調整や場所の手配の実務、株券の準備が必要な場合は株券の準備の実務、最終契約書の製本の実務、売却後の引き継ぎ計画の実務の他、様々な実務も、仲介会社や各専門家のサポートを得ながら進めていくことになります。

5. 会社を売りたい!売却のスキーム

会社を売りたい!売却のスキーム

会社売却のスキームは色々ありますが、中小企業を売りたい場合に限って言えば、株式譲渡と事業譲渡がほとんどです。

一部のみ紹介します。

株式譲渡

株式譲渡は、 会社のオーナーが保有する株式を買手に譲渡することで、会社の経営を承継させるスキームです。

売りたい側と買いたい側が合意した内容の株式譲渡契約書(SPA)を締結し、株式の対価の支払いと、株主名簿の書き換えのみで完了します。

他のM&Aのスキームと比べると簡便な取引ですので、中小企業が事業承継のために丸ごと会社を売りたい場合は、9割この株式譲渡のスキームが用いられます。

株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡のメリットは、簡便で対外的な影響が小さいことです。以下4つを挙げます。
 

  • ①原則、株主が代わる以外に大きな影響はなく、会社の事業はそのまま存続する
  • ②許認可や取引先との契約などもそのまま引き継ぐことができる
  • ③役所などへの手続きや法務局へ変更登記の申請は不要で、基本的には会社内部で完結することができる
  • ④買いたい側は、コストも時間もかけずに短期間で事業を拡大することができる

株式譲渡のデメリットとしては、会社の内部的な事情に与える影響があります。以下の通りです。
  • ①従業員の雇用や労働条件が変更されることもある
  • ②買いたい側は、望んでいない会社の負債も引き継がなければならない
  • ③すべての事業所を含めた会社を売却することになり、一部の事業のみ売却することはできない

株式譲渡での「売買」「贈与」「相続」

以下の話は、M&Aや会社売却とはちょっと違う話ですので、参考までにです。

よくある中小企業の会社売却における株式譲渡のスキームは、株の「売買」によるものです。売却主は株を売却して資金を得ます。

しかし後継者がいる場合には、後継者に株式を渡す形での株式譲渡および事業承継もあり得ます。この、後継者に株を渡す方法には会社売却の場合と同じ「売買」の他に、「贈与」「相続」による方法もあり、それぞれ以下のメリット・デメリットの種類があります。

【売買】

  • メリット…他の法定相続人ともめる心配が少なくなるので、後継者の地位が安定する
  • デメリット…後継者が多額の資金を準備しなければならない

【贈与】
  • メリット…後継者が株式を取得するための資金を準備する必要がない
  • デメリット…基礎控除額を越えると贈与税を支払う必要がある

【相続】
  • メリット…資金を準備する必要がなく、相続税は贈与税よりも基礎控除額が大きい
  • デメリット…相続争いが起きやすく後継者の地位が不安定になってしまう可能性がある

事業譲渡

株式譲渡が通常は会社の全部を譲渡する形なのに対し、事業譲渡は会社のある事業を第三者に譲渡(売却)することです。対象となる事業は、有形、無形の財産・債務、人材、事業組織、ノウハウ、ブランド、取引先との関係など、あらゆる財産の種類が対象となります。

また事業譲渡は、契約によって個別の財産・負債・権利関係等を移転させる手続きなので、会社が営んでいる全ての事業を譲渡することも、一部の種類の事業のみを譲渡することも可能です。

ただし事業譲渡をした会社は、今後、同じ種類の事業を行うことが制限される点は注意が必要です(競業避止義務)。

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は事業のみの売買で、その事業の運営会社がそのまま変わってしまうことになります。そのため雇用や契約などの手続きを改めてする必要がありますし、またこのスキームは株主総会の決議を経て行わなければなりません。

したがって、大会社の規模の大きな事業ほど手続きが煩雑で費用も掛かるため、売りたい側・買いたい側双方にデメリットが強くなります。

一方で、同族経営の規模が小さい中小企業の場合は、大企業に比べれば手続きも簡便でメリットが大きくなりますので、中小企業が事業の一部を切り離したい場合は9割このスキームが用いられます。

事業譲渡のメリットをまとめると、以下になります。
 

  • ①一部の事業のみを譲渡対象とすることが可能
  • ②買いたい側は、契約の範囲を定めることで、帳簿外にある債務(簿外債務、偶発債務など)を引き継がないことが可能
  • ③売りたい側は売却による資金調達が可能

一方のデメリットをまとめると、以下の通りです。
  • ①事業譲渡は原則として株主総会の特別決議が必要となり、これが上場会社の場合は手間と費用が掛かる
  • ②取引先あるいは従業員の契約先が全て相手の会社に代わるので、手続が煩雑で時間がかかる(特に事業規模が大きい程煩雑です)
  • ③事業にかかる許認可は、原則として承継することができず、事業譲渡によって事業主体が変わる場合は譲受会社が改めて許認可申請を行う必要がある
  • ④買いたい側と売りたい側との売買契約なので、買いたい側は資金を調達する必要がある
  • ⑤買いたい側に債務を移転させる場合には、債権者の同意を得なければならない

会社分割

会社分割は会社を複数の法人格に分割し、それぞれの法人格に組織・事業・資産を移転するM&Aのスキームです。分割した事業を新たに設立した会社が引き継ぐ新設分割と、既存会社が引き継ぐ吸収分割の2種類の方法があります。

主に成長部門の子会社として独立化、不採算部門の切り離し、グループ内の重複事業の集約化等、経営効率を高めるための企業グループの再編成に利用されます。

会社分割のメリット・デメリット

一部の事業のみを切り離すことが可能な点は、事業譲渡と似ていますが、いくつかの点では事業譲渡とは違い、メリット・デメリットが逆転します。

メリットをまとめると以下の通りです。
 

  • ①分割会社に債務を移転させる場合には、債権者の同意は不要
  • ②分割は株式の交付を通じて行われるため、資金負担は発生しない
  • ③取引先あるいは従業員の契約先などとの契約を結びなおす必要がない(ただし要件はあり)

一方のデメリットは、以下の通りです。
 
  • ①会社分割は原則として株主総会の特別決議が必要となり、これが上場会社の場合は手間と費用が掛かる
  • ②分割した会社の帳簿外にある債務(簿外債務、偶発債務など)も、引き継ぐ会社は承継しなければならない
  • ③事業にかかる許認可は、引き継ぐ会社がそのまま承継できるものと承継できないものがある

6. 会社を売りたい!価額算出方法

会社を売りたい!価額算出方法

会社を売るにあたっての、価額算出方法の代表的なものを以下に挙げます。

簡易の算出方法

最も簡易な算出方法としては、「純資産額+純利益×年数(3~5年)」で価額を算出する方法があります。

ただし、この方法は見た通りの大変簡単な算出方法ですので、用いられるのは同族経営の、規模が比較的小さい中小企業同士のM&Aに限られます。

なぜなら、同族経営の中小企業の場合は株主は経営者自身ですので、M&Aをするにあたっての説明責任が、大企業同士のM&Aに比べれば小さいからです(もちろん取引先や銀行への説明責任はあります)。もっと極端に言えば、買収価額は経営者同士が合意すれば、それで大丈夫なわけです。

そこで、これまで経営してきたストックとしての純資産に加え、今後3年から5年位は今の利益水準の維持はできるはず、という観点からの「純資産額+純利益×年数(3~5年)」という評価が妥当なものとして採用されることがあります。

DCF法

DCF法とは、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法と呼び、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算定する方法です。算出に当たっては、将来にM&Aの対象となる企業・事業が生み出すキャッシュフローを前提とするため、事業計画書が重要です。

DCF法のメリットは、企業が生み出す価値の将来の期待を反映できることです。これにより、修正純資産法では困難であるのれん等の無形資産の評価も行うことができます。

デメリットは、算定の基礎を事業計画書に置くため、事業計画の精度・客観性等により、算出される企業価値の信頼性が大きく左右されるリスクがあることです。

修正簿価純資産法

まず、単純な簿価純資産法では、貸借対照表に計上されている資産・負債に粉飾・誤謬(例えば、減価償却の不足分など)等の修正を加え、資産から負債を控除した純資産額をもって株式評価をします。

修正簿価純資産法は、これに一部の資産・負債の含み損益を取り込んで、株式評価をする方法です。実務的には、有価証券や土地などで大きな含み損益が認められるものについて時価の取り込みを行います。

このメリットは、会社の貸借対照表を基礎として資産・負債の積み上げで計算できるため、会社売却・M&Aの相場価格の算出が容易であることです。また、財務デューデリジェンスの中で何か留意すべき点が現れた場合、それを修正純資産に反映することもできます。

また、簿価純資産法のデメリットである時価を反映できない、という点を解決することができます。

デメリットは、のれんやブランド価値といった、会社の貸借対照表に載っていない無形資産の評価ができず、それらを売却価額の相場に反映できないことです。

類似会社比較法

類似会社比較法は、会社売却・M&Aの対象となる企業と事業内容等が類似する上場企業の株価を参考にして買収の企業価値を算定する方法です。

このメリットは、実際の株価や決算情報等の誰でも見ることのできる数字を基礎として計算するため、計算された会社売却・M&Aの相場価格の客観性が高いことです。

デメリットは、事業が特殊で比較する対象が少ない場合、会社売却の妥当な相場が計算しにくいことがあげられます。

【関連】会社売却、M&Aの相場を解説!企業評価とは?

7. 会社を売りたい!高く売却する方法

会社を売りたい!高く売却する方法

会社を高く売りたいと考えた場合に、やっておくべきことを整理します。

売れないことも多いと知る

まず、以下に買収されやすい会社に共通する特徴を挙げておきます。
 

  • 相応の売上規模がある
  • 利益が出ている
  • 無借金、または適切な借入水準である
  • 取引先が分散されている
  • 経営者への依存度が低い
  • ビジネスの仕組み化、組織化ができている

つまり、買いたい側にとってはこれらをすべて満たしているのが、理想の買収先ということになります。

しかしながら、中小企業でこれだけの条件をすべて満たしているのはほとんどないと言ってよいと思います。

つまり、買いたい側にしてみればかなり妥協して会社を買うケースがほとんどだということです。またこれとイコールで、売りたい側の自社が本当に買い手側の理想とする会社であることは、ほとんどないということです。

結論を言ってしまえば、会社はいくら売りたいと考えても、売れないことも多いです。売りたい事案全体の5%程度しか売れないとも言われています。

逆に言えば、買いたい側にとって理想の買収先は少ないわけです。細かい特徴は要望を満たしていなくても、買いたい側にとって自社が本当に望む買収先であった場合には、それだけで高く評価してもらえることもあり得ます。

主観の排除

売りたい側としては、なるだけ高く売りたいのは当然ですし、それは交渉相手もわかっています。

しかし、自分の経営している会社にはどうしても思い入れがあるので、主観的であまり客観性のない自社の評価をしてしまいがちです。

そこで以下のような、財務などの客観的な数値に現れない部分は、何らかの客観的な根拠を示せるように心がけておくべきでしょう。
 

  • アピールポイント
  • 自社の強み・弱み
  • 希望条件

優先順位の明確化

M&Aは売りたい側も買いたい側も一大イベントです。最終的に納得できる条件に落ち着き、成功すればよいですが、それでも相手を探してから交渉して合意するまでには、少なくとも数ヵ月で1年以上は当たり前と考えておくべきです。

もちろん、交渉の過程で想定しないなかった条件が提示されることはありますが、M&Aにおいて当然検討しておく事柄については、それら条件の優先順位も決めておくべきです。

譲れない条件を譲る必要はもちろんないですが、不必要に検討に時間がかかってしまうと相手の熱意も冷めてきますし、相手にとって別の良い候補先が現れる可能性も無きにしも非ずです。

高く売るためには、タイミングとスピード感も大事となってきます。以下条件については、優先順位をつけておきましょう。
 

  • 売却額に関する条件
  • 社長ほか、役員の処遇に関する条件
  • 従業員の処遇に関する条件

株式の収集

2006年5月1日以降、株式会社は原則として株券を発行しないこととなっています。それ以前は逆で、株券を発行するのが原則でしたので注意が必要です。

株式譲渡のスキームで全部を売却する場合にはなりますが、株券発行会社は株式譲渡の際に、株券を交付しなければ、その効力が生じません。また、第三者に対する対抗要件として株券の占有が必要とされます。

したがって、株券発行会社を売りたいのであれば、M&Aの実行までに発行している株券をすべて集めておく必要があります。

一方で株券不発行会社は、当事者間の意思表示で株式を譲渡することができるため、株券の交付は必要ありません。

属人性の排除

誰か一人に、これまでの事業の推進を負っていた場合は、やや注意が必要です。

会社売却後は組織が大きくなりますので、その属人的な事業も大きな輪の中に入ることになります。買収側の意向で人の異動や人材の投入が行われることも珍しいことではありません。

このため、事業評価を客観的に見て高くするためには、属人的ではなくシステム的に事業が動いていることを証明できた方がよいです。

また、事業が属人的だと、売却時にその人物が辞めることも無きにしも非ずです。その場合は一気に事業の価値が落ちてしまうことにもなりかねません。

本業の収益力強化

客観的で、揺るぎないものとして最も強く訴えられるのは、過去の実績です。

このため高く会社を売りたい場合に、本業の収益力は最も重要な要素と言っても過言ではありません。

もちろん、一朝一夕で強化できるものではないですが、5年10年先に会社を売りたいと考えるのであれば、むやみやたらに事業を拡大するよりも、最優先すべきは本業の収益力です。

信用力アップ

会社を高く売りたい場合には、信用を少しでも高くしていくことが大事です。

特に中小企業の場合は、書類や資料がしっかり管理されていないこともよくあります。何か質問や要求があった場合に、うまく答えられなかったり、答えるのに長い時間がかかっているようでは、不必要に交渉相手からの信用を失いかねません。

したがって、M&Aの検討を始めた段階で資料はできるだけそろえておき、資料がなくてもできるだけ、専門家の力借りるなどして精査しておくとよいでしょう。

資産や資料の洗い出し

「信用力アップ」と重複する部分ですが、根拠に乏しい不透明なものを相手は買いたいとは思いません。会社における根拠や実態を示すものには、働いている人物のほかに書類や資料も大きなウェイトを占めます。

本気で売りたい候補先が現れたら、少しでも資料による透明性も示した方が、高く売ることができる可能性が高まります。

8. 会社を売りたい!売却の際の必要書類

会社を売りたい!売却の際の必要書類

会社売却の際に手続き上必要とされる書類は以下になります。

このほかに、M&Aを進める過程で必要な書類が、必要に応じて多岐にわたります。

法務局で取得する書類

会社売却の際に一般的に必要とされる書類で、法務局で取得するものは以下になります。
 

  • 会社商業登記簿謄本
  • 土地・建物の登記簿謄本
  • 印鑑証明書(法人・代表者各人各1通)

税務署で取得する書類

会社売却の際に一般的に必要とされる書類で、税務署で取得するものは以下になります。
 

  • 納税証明書(法人税・住民税・事業税・消費税)
  • 土地・建物の固定資産税評価証明書

身元確認書類

会社売却の際に必要とされる、株式を所有している経営者の身元確認書類は以下の通りです。
 

  • 経営者個人の印鑑証明書
  • 経営者個人の住民票
  • 経営者個人の顔写真つき身分証明書の写し(運転免許証等)

 

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9. 会社を売りたい!M&A攻略まとめ

会社を売りたい!M&A攻略まとめ

中小企業が会社を売りたい理由として挙げられるのが、後継者不足による事業承継の問題です。経営者の子息が会社を継ぐ意思のない場合に、社内や外部の人間に会社の所有まで求めるのは、資金面や連帯保証の点からも難しいです。

しかしながら、外部の企業に会社ごと売却して、経営を引き継いでもらう形であれば、この事業承継の問題は解決できます。

会社を売る手順としては、M&A仲介会社などに相談に行き、サポートしてもらう形であれば候補先探しからクロージングまで、スムーズに進められることが期待できます。

また、中小企業の場合、M&Aのスキームとしては株式譲渡か事業譲渡がほとんどになります。株式譲渡も事業譲渡も、中小企業にとっては簡便な会社売却の方法だからです。

売却価額の算出方法としては「簡易の算出方法」「DCF法」「修正簿価純資産法」「類似会社比較法」があります。

しかしながら、M&Aで会社売却ができるのは、全体の5%ほどで、簡単ではありません。また、少しでも高く売りたい場合には、普段から本業の収益力を強化しておくことと、書類や資料等の管理体制までしっかり整えていく必要があります。

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