2021年03月10日更新
会社を売りたい人必見!【M&A攻略マニュアル】

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
最近では、後継者不足による事業承継の問題から、会社を売りたいと考える経営者が増えてきました。ただし、メリットおよびデメリット、どこに相談する必要があるかなど、いくつも検討する必要があります。会社を売りたい場合に押さえておく必要があるポイントを確認しましょう。
目次
1. 会社を売りたい理由とは?
「会社を売りたい!」と考えている経営者は少なくありません。
経営者が会社を売りたい理由は無数にありますが、主だった動機で多いのは以下のとおりです。
- 後継者不足解消のため
- 事業からの解放のため
- 資金獲得のため
- 選択と集中のため
- 事業存続のため
- シナジー効果を得るため
- 従業員の雇用を守るため
最近は特に、後継者不足を理由とした事業承継問題解決のために会社を売りたい中小企業経営者が増えてきています。それぞれの会社を売りたい理由について、詳しく見ていきましょう。
①後継者不足解消のため
会社を売りたい理由の1つとして、後継者不足の解消が挙げられます。
現在、日本は少子化によって子供の数が減っているので、後継者候補に考えられる全体の人数が少なくなっています。また、もしも自分に子供や孫がいるケースでも、子供や孫が会社を継ぎたいとは思っていない場合も珍しくありません。
経営者側も子供など親族に無理やり会社を引き継いでもらおうと考えなくなってきています。しかし、会社を売ることは後継者の不在問題を解決するための有効な手段です。
モチベーションの高い後継者候補を見つければ、今まで以上に会社を発展させてもらえるかもしれません。
②事業からの解放のため
会社を売りたい理由には、事業からの解放があります。中小企業の経営者は70歳前後で引退するケースが多いでしょう。しかし、オーナーの状態を続けていると議決権が残ってしまうので、会社が今後うまくいかなくなったときのリスクを背負い続けることになります。
経営への意欲が薄れ気味のときや、高齢になって次の世代に会社を引き継ぎたいとき、ずっとリスクを背負っているのはつらいでしょう。
会社を売ることによって、事業との関わりを断てます。事業との関わりがなくなったとしても、会社自体は残りますので安心して見守ることが可能です。
③資金獲得のため
資金獲得のために会社を売りたいと考える経営者も珍しくはありません。
生きていくうえではもちろん、経営していくうえでもお金は必要です。
- 経営者である自分がリタイアしてからの老後の生活資金のため
- もっと力を入れて取り組みたい事業があるから資金を作るため
経営者の老後の生活資金のため
「経営者である自分がリタイアしてからの老後の生活資金のために会社を売りたい」状況の場合、売りたいと思っているのはオーナー経営者でしょう。
M&Aを行って外部の会社に自社を売れば、株式の売却益が手に入ります。株式の売却益を生活資金にすれば、リタイアしてからの生活も安心です。
お金が用意できないままリタイアするのは精神的にも大変なので、よくある理由となっています。
社内のある事業に資金を投入したい
「もっと力を入れて取り組みたい事業があるから資金を作るために一度会社を売りたい」と若手の経営者も含めて、多くの経営者が思うことです。
また、会社内の別の事業にたくさん資金投入をしたいがために、会社内の事業の一部を売りたいと考えるケースもあります。
具体的には、会社内の不採算事業を売ってしまって、売れたお金で本腰を入れたい事業を発展させる戦略が人気です。
④選択と集中のため
選択と集中のために会社を売りたいと考えることもあります。選択と集中は、経営戦略の1つです。会社を経営していると、さまざまな事業に手を広げていくことも珍しくありません。
いわゆる多角化経営をしている会社や、多くの製品を売っている会社の経営者は、選択と集中を行います。これからの自社に必要な事業をうまく選んで、経営資源を集めることで会社の発展を目指すというものです。
選択と集中の場合は、会社を売るよりも、会社の中の一部の事業を売ることになります。どの事業を残すと選択するのかが、選択と集中を理想どおりに成功させられるかの鍵となるでしょう。
⑤事業存続のため
意外かもしれませんが、事業存続のために会社を売りたいケースもあります。会社を経営していると、例えば後継者が見つからないことによる事業承継の問題が出てくることもあるでしょう。
他にも、経営不振によって事業を続けていくことが難しくなることもあります。経営不振で赤字経営だったとしても、事業の内容や保有している資産などが売却候補先に高く評価されれば、会社を売れる可能性は十分にあります。
事業を残したい思いがあるなら、会社を売ることも検討してみましょう。会社を残せば、従業員や取引先も不安定な状況になりにくくなるはずです。
⑥シナジー効果を得るため
シナジー効果を得るために、会社を売りたいと考える経営者もいます。会社がM&Aや経営の多角化などの経営戦略を実行するときには、シナジー効果を意識するのがポイントです。
経営資源を有効活用するために異なる事業をうまく組み合わせれば、単なる利益の合計だけではない大きな付加価値を生み出せます。シナジー効果を得るために、M&Aによる売却や買収の方法がよく行われています。
⑦従業員の雇用を守るため
従業員の雇用を守るために会社を売りたいと考えるケースもあります。会社経営をして従業員を雇ったなら、会社を続けて従業員の雇用を守ることが必要です。
しかし、すべての会社が後継者を見つけて事業承継できているわけではありません。後継者不足などの問題で事業承継をせずに廃業を選んだ場合、従業員は職を失ってしまい求職活動を行わなければなりません。
今まで一緒に頑張ってくれた従業員の将来を守るために、会社を売ることにより存続させることも少なくないのです。
先ほどお伝えしたシナジー効果が得られるような売却先候補を見つけられれば、従業員の待遇も良くなるかもしれません。ただ今抱えている課題を解決するだけではなく、多くのメリットが得ることもできます。
2. 会社を売りたい!売るメリット6つ
一部は「会社を売りたい理由」で記載したことと被っていますが、M&Aで会社を売ることによるメリットは以下のとおりです。
- 資金獲得
- 事業承継問題の解決
- 連帯保証からの解放
- 業務からの解放
- 事業存続
- シナジー効果
会社を売りたいときには、できるだけ多くのメリットを得られるようにしておくのが良いでしょう。それぞれのメリットについて、順番に確認していきます。
①資金獲得
資金獲得は会社を売る大きなメリットです。経営者がオーナーである中小企業の場合、後継者不足などで事業継続に難があっても、廃業を選択しますと会社に残っていた債務の返済を強いられます。
これに対し、会社を丸ごと売却した場合は、負債や借入金も譲受企業に引継いでもらえるでしょう。
さらにメリットとなるのが、所有している株式を売って得た金額は、そのまま自身のものになることです(課税はあります)。M&Aで外部に会社を売却し、外部から資金が得られるのは、廃業に比べればメリットしかありません。
また、企業が事業の一部を売却した場合に、得た資金を他の事業などに投下できるのは、「会社を売りたい理由」で述べたとおりです。
②事業承継問題の解決
後継者不足でお悩みなら、会社を売ることで事業承継問題が解決できることもメリットです。経営者がオーナーの中小企業にとって後継者がいない場合には、社内や外部の人間、他の会社に経営を引き継いで事業承継をするしか会社を存続させる方法はありません。
しかしながら、社内や外部の人間に、会社の所有まで求めるのは、資金面や連帯保証の点からも難しいのが実情です。
一方で、外部の企業に会社ごと売却して、経営を引き継いでもらう形であれば、後継者不足による事業承継の問題は解決できます。
経済産業省が2018年度税制改正に向けた要望書には、企業のM&Aに税優遇を設ける内容が盛り込まれました。
これは、M&A・会社売却を税制面から後押しをして、後継者難に苦しむ中小企業に会社を売りたい決断を促す狙いもあると考えられます。
③連帯保証からの解放
連帯保証から解放されるのもメリットです。オーナーでかつ経営者の場合、経営を辞めてもオーナーである状態が続いていると、会社の債務の個人保証や担保を別の人物なり会社に移すのには難があるのは、「会社を売りたい理由」で述べたとおりです。
しかし、会社をM&Aで他の企業に売却すれば、それらも通常は譲受企業に全部引き継いでもらえます。
会社を外部に売却して会社の所有も手放し、連帯保証や債務も含めて全部、本当の意味で事業から解放されることが可能です。
④業務からの解放
業務から解放されて自由になれるのも、会社を売るメリットです。「会社を売りたい理由」でも述べましたが、経営の第一線を退くだけでしたら、役職と権限を手放してしまえば済んでしまいます。
しかしそれでも、オーナーであることが続いていると、議決権や借入などの、会社の存続の大事な部分は引き続き手中にあるでしょう。
新しい経営者も株主を無視した経営はできませんから、何かしらの業務には、必ず関わることになります。そこで、会社を売却してオーナーであることも辞めれば、完全に業務から解放されることが可能です。
⑤事業存続
事業を存続できるのも、会社を売るメリットです。会社が赤字や何かしらの問題を抱えており、経営に行き詰まっていたとしても、会社を売りたい希望を実現するのは不可能ではありません。
またそれができれば、まずは形式的に別の会社として事業は存続させられます。加えて、買った企業との相性が良ければ、後に述べるシナジー効果でさらなる発展が期待できるでしょう。
⑥シナジー効果
シナジー効果を得られるのは、会社を売る際の大きなメリットです。赤字続きなど経営に問題を抱えたまま会社を売却した場合でも、その後に売却先の事業とのシナジー効果を発揮できれば、問題を抱えていた事業の復活も大いにあり得ます。
このシナジー効果は、M&Aを行う際に最も大事にしたい点といえるでしょう。もちろんシナジー効果は、問題のある事業に対してだけでなく、これから伸びていく予定の事業がさらに伸びていくことも期待できるのです。
ここまで会社を売りたいと思ったときに意識する必要があるメリットをご紹介しました。しかし、会社を売りたいと思ったときに知っておく必要がある注意点もあるので見ておきましょう。
M&A取引は交渉から成立まで半年から1年程度かかりますが、M&A総合研究所は機動力に強みがあり、最短3カ月で成約した実績もございます。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にM&A総合研究所へご連絡ください。
3. 会社を売りたいならデメリットにも注意しよう!
会社を売る側にとっては、デメリットもあります。
法律によって禁止されている事柄もあるので、注意する必要があるのです。
- 競争避止義務による事業制限
- ロックアップ
- 会社イメージの低下
- 利益が得られない可能性
- 優秀な人材の流出
- 知的財産の流出
- 訴訟や損害賠償のリスク
それぞれのデメリットについて、順番に確認していきましょう。
①競争避止義務による事業制限
競争避止義務は、事業譲渡の際に問題になるもので、会社法上に定められた「当事者の別段の意思表示がない限り、譲渡会社は、同一市町村および隣接市町村の区域内において、事業譲渡の日から20年間、同一の事業を行えない」ことです。
わかりやすくいえば、売りたい側は売却した事業と同じ事業を20年間は行えません。
通常は売りたい事業と同じ事業を、直ちに一から始めるのはほぼあり得ませんが、20年間も禁止されていることには注意しなければなりません。
競争避止義務を回避するためには、M&A契約において、明確に、競業避止義務を負わないことを定めておかなければなりません。
会社を売りたいと考えたら、この点は注意が必要です。
②ロックアップ
M&Aによるロックアップは通常、キーマン条項と呼ばれ、契約で売却企業のキーマン(基本的には経営者)が2〜3年間、企業に残ることを定めたものです。キーマンが抜けることで、買収後の事業が回らなくなるのを防ぐために定められます。
このロックアップの期間は、売りたい側のキーマンが次のキーマンへ引き継ぐための期間ですので、つまりは買収側のために設けられる条項です。
売りたい側の経営者、つまりロックアップをかけられる側からすれば、ロックアップ期間は会社をやめられないため、非常に不自由な状態に置かれることになります。
会社を売りたいと考えたら、経営者自身は身の振り方のこともよく考えなければなりません。
③会社イメージの低下
最近でこそ、会社を売りたいと考えることはそれほど珍しいことではなくなり、世の中の理解も深まってきましたが、今でも会社売却は「身売り」や「敗北」といった昔ながらのイメージで捉えている人がいるのも事実です。
売却が決まっても、取引先や地域の中でのそのような人たちへの説明不足によって、不必要にイメージの低下を招き、けげんな目で見られることがあります。
また、従業員が自社に持つイメージも大事です。従業員が会社への信頼をなくすような事態になると、人材の流出やモチベーションの低下につながります。
会社を売りたいと考えたときから、関係者には最大限の理解を得られるようどのように手を打っていくかを考えていく必要があります。
④利益が得られない可能性
会社を売却するにあたり、売却時の支払額や会社を早く手放したいと目先のことしか考えておらず、納得できないまま売買契約を実行してしまうと、思ったような利益を得られない場合があります。
例えばM&Aの実行後に、M&A仲介会社に支払う報酬や後々にかかる税金などがあり、それらを想定して計算していないと利益が目減りする可能性があります。
⑤優秀な人材の流出
会社の売却は、優秀な人材が離れるきっかけになりやすいでしょう。新会社に統合後、従業員の待遇や職場環境の変化、派閥争いなど、新会社の社風やシステムになじめず、既存の企業にいた優秀な人材まで退職してしまう可能性があります。
戦略なく成約のスピードや取引額にばかり気を取られていると、優秀な人材流出にもつながるため慎重に話を進めておくなどの対策が必要です。また売り手側の会社から売却前に大量の離職が起こらないよう、双方の経営者同士で内密に進めましょう。
⑥知的財産の流出
例えば、製造業であれば技術やシステムを有しているのであれば特許があります。サービス業であればオリジナルのデザインやマークがあれは商標などがあります。
知的財産は、M&Aにもブランド、営業秘密、ノウハウなどが挙げられ、M&Aを行うことによって自社がもっている知的財産が流出してしまいます。また会社売却に関する情報は株価に影響を与えますので、交渉を進めるにあたり徹底した管理が必要です。
⑦訴訟や損害賠償のリスク
簿外債務などを隠したままM&Aで会社を売却してしまい、後になって発覚した場合には、訴訟や損害賠償請求に発展してしまう可能性が大きいでしょう。
契約前に買い手側はデューデリジェンスを行います。売却価格のマイナス要因を避けるために簿外債務などを隠す行為は、信頼が損なわれ訴訟されるリスクが高くなります。売り手側はすべて正直に開示しましょう。
4. 会社を売りたい!売却の流れ
会社を売りたいと考えた後に頭に入れておく必要がある大きな手続きについて、簡単にまとめると以下のとおりです。
- M&A仲介会社への相談
- M&A仲介会社との契約締結
- 売却先の選択
- 売却先との交渉
- 売却契約の締結
それぞれの手続きを理解し、会社を売りたいときにスムーズに行えるようにしておきましょう。
①M&A仲介会社への相談
会社を売りたいと思ったときは、M&A仲介会社への相談が重要です。
もっといえば、自分の会社と相性の良いM&A仲介会社を見つけるために複数のところに相談に行って検討するのがベストといえます。
特に最近は、事業承継問題の解決に力を入れているM&A仲介会社も多いので気楽に相談に行ってみましょう。いくつか相談先の候補を紹介しておきますので、選ぶときの参考にしてみてください。
M&A仲介会社
そもそもM&A仲介会社とは、売りたい側と買いたい側の間に入り、中立的な立場で売却側・買収側双方の条件を詰めていき成約に導くところです。
会社を売りたいなどのM&Aについて、誰に相談すれば良いのか悩んでいる経営者の方は、まずはM&A総合研究所にご相談ください。当社は完全成功報酬(※譲渡企業のみ)を採用していますので、M&Aをご検討される際には気軽にご相談ください。
M&Aアドバイザリー(FA)
M&Aアドバイザリー(FA)のは、M&Aにおける計画立案の段階からクロージングの段階、そして統合プロセスに至るまでのひととおりのサポートをしてくれる存在です。
会社を売りたい側と会社を買いたい側どちらか一方の契約先の利益を最大化するために動きます。アドバイザリー契約を結んで依頼する流れです。
金融機関(銀行・証券会社)
金融機関(銀行・証券会社)にも会社を売りたいなどの相談ができます。
ただし、中小規模の会社の相談はしにくい金融機関もあるので気をつけなければなりません。
銀行や証券会社といった金融機関では、主に上場大手企業のM&Aアドバイザリーサポートに重きを置いている場合がありフィーも高いケースが多いので注意してください。
各種専門家(税務・会計・法律事務所)
各種専門家(税務・会計・法律事務所)に会社を売りたいとの相談ができます。
特に、自分の会社のアドバイザーに最初の相談をするケースは多いでしょう。ただし、M&Aに詳しい専門家は現状では限られてしまいます。したがいまして、会社の顧問が一般的に備えている知識だけではカバーしきれないことも少なくないでしょう。
法律やファイナンスなどの知識がある専門家とのつながりがなければ、一部分のアドバイスしか受けられないかもしれないことに気をつけましょう。
マッチングサイト
最近では、M&Aのマッチングサイトも発展しています。
インターネット上でM&Aの会社を売りたい側と買いたい側をお互いに探せるサービスです。スモールM&Aとする小規模な売買を対象としているのが主流です。
M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー(FA)に相談しなくても気軽に売買候補先を探せるので、希望が固まっているなら利用するのも良いでしょう。
②M&A仲介会社との契約締結
M&A仲介会社を選んだら、契約を締結します。
アドバイザリー契約といって、不動産媒介契約でいう専任媒介契約のようなものです。アドバイザリー契約を締結してからは、仲介会社からは自分の会社のさまざまな資料についての提出を依頼されるでしょう。
ノンネームシートと呼ばれる資料を作成してもらうことです。
ノンネームシートとは、匿名性のある内容を載せた資料のことです。まだ売却先が確定していない段階ですべての情報を売却候補先に提示してしまうと、大きなトラブルになりかねません。
載せる情報を取捨選択したノンネームシートで、売却候補先に提案を進めていきます。
③売却先の選択
いくつかある売却候補先から、売却先を選ぶことも必要です。
リストアップされているのは、多い場合は30社程度になるでしょう。リストアップされている会社は、業種や企業規模、地域、事業内容、資力などの条件に合う企業のはずです。
売却側は、それぞれの会社について確認をしたうえで売却候補先への持ち込みについての可否や、持ち込みの順位付けを行っていきます。
とにかく早く会社を売りたいときでも冷静に順位付けを行うのが重要です。さまざまな会社を見比べることで、今までは考えてこなかった条件も見えてくるかもしれません。会社の今後を考え、最適な売却先を選定してください。
④売却先との交渉
売却先を選定し終えたら、具体的に交渉を進めていくことになります。
交渉を行う前には、秘密保持契約を結びましょう。秘密保持契約は、M&Aにおいて知った情報を他の目的で利用しないことを定める契約です。秘密保持契約を結ばずに自分の会社の情報を持ち込んでしまうと、会社を売りたいと思っていることを外部に漏らされるなどのトラブルが起きてしまうかもしれません。
売却候補先に自社の情報を持ち込んで売却候補先に関心を持たれれば、仲介会社に連絡がいくはずです。お互いに関心があることがわかれば、経営者同士でトップ面談を行います。
トップ面談では気になることを積極的に話しつつ、相手の要望もヒアリングがポイントです。
⑤売買契約の締結
トップ面談でM&Aを進めていく合意をお互いに得られたら、基本合意書によって契約を締結します。
基本合意書は、現段階での条件などの合意内容をお互いに確認するものです。会社を売るための最終契約とは別なので気をつけましょう。基本合意契約を結んでから、デューデリジェンスと呼ばれる売却側の会社を調査する手続きを行います。
調査で特に問題がなければ、最終売買契約を行うのです。
もしもデューデリジェンスで問題が見つかったら、基本合意契約の段階での売買条件から変更があるかもしれません。仲介会社とともに最終売買契約に向けて冷静に対応してください。
ここまで主な流れについてお話をしてきました。この流れはスキーム(手法)によっても異なりますので、どのようなものがあるのかについても知っておきましょう。
5. 会社を売りたい!売却のスキーム
株式譲渡
会社を売りたいときによく使われる売却スキームとして、会社譲渡が挙げられます。
会社譲渡は、会社のオーナーが保有している株主を買い手側に譲り渡すことによって、会社の経営を引き継ぐ方法です。会社譲渡は一般的に、他のM&Aスキームと比べると簡単であるといわれています。
一部分の事業だけを売りたいわけではなく、会社すべてを売りたい場合に便利な方法です。特によく利用されるのが事業承継目的の場合で、中小企業は株式譲渡を選択するのがほとんどです。
株式譲渡のメリット・デメリット
株式譲渡のメリットは、簡便で対外的な影響が小さいことです。以下4つを挙げます。
- 会社は存続し、事業はそのまま残る
- 契約や許認可、取引先なども引き継げる
- 基本的に会社内で完結できる
- 短期間で事業拡大と安定化を図れる
株式譲渡のデメリットは、以下のとおりです。
- 従業員の労働条件などに変更が出てくる可能性がある
- 買収すると負債まで引き継ぐことになる
- 会社をまるごと売却なので、事業のみは売却できない
株式譲渡での「売買」「贈与」「相続」
以下の話は、M&Aや会社売却とは少し離れますが、参考にしてください。
よくある中小企業の会社売却における株式譲渡のスキームは、株の「売買」によるものです。売却主は株を売却して資金を得ます。
しかし後継者がいる場合には、後継者に株式を渡す形での株式譲渡および事業承継もあり得ます。この、後継者に株を渡す方法には会社売却の場合と同じ「売買」の他に、「贈与」「相続」による方法もあり、それぞれ以下のメリット・デメリットの種類があります。
【売買】
- メリット:トラブルが少なく地位が安定しやすい
- デメリット:後継者は資金を用意が必要となる
【贈与】
- メリット:後継者が資金を用意しなくても良い
- デメリット:贈与税などの税金の支払いが必要となる
【相続】
- メリット:資金の用意が必要ない、また基礎控除額が大きめである
- デメリット:トラブルが起きやすく地位が不安定になりやすい
事業譲渡
事業譲渡は、会社を売りたいと考える経営者が検討する方法の一つです。
会社が取り組んでいるすべての事業を譲り渡すことも、一部の種類の事業だけを譲り渡すことも可能な方法です。事業譲渡を選ぶ場合には、一部だけ事業を譲渡するケースが多いとされています。
ただし、事業譲渡を行った会社は、競業避止義務によってノウハウを使って同事業を営むことはできないことは覚えておいてください。
したがいまして、将来のことも冷静に考えたうえで、社内のどの事業を売るのかを検討するのが良いでしょう。
事業譲渡のメリット・デメリット
事業譲渡のメリットをまとめると、以下になります。
- 一部事業のみの売却ができる
- 譲渡範囲を決められることで負債の引き継ぎを検討できる
- 会社経営用の資金を得られる
一方のデメリットをまとめると、以下のとおりです。
- 株主総会で承認が必要となる
- 手続きが複雑で取引先にも影響がやや懸念される
- 許認可の引き継ぎが原則できない
- 買収側は対価を現金で用意しなければならないことがある
- 債権を引き継ぐなら債権者の同意が必要となる
会社分割
会社を売りたいと経営者が思ったとき、ケースによっては会社分割のスキームが選ばれることもあります。
会社分割は、会社を複数の法人格に分割して、それぞれの法人格に組織や事業、資産を移す方法です。分けた事業を新しく設立した会社に移す新設分割方法と、既存会社に移す吸収分割方法があります。
成長している部門を子会社として独立化させる場合や、不採算部門を切り離してしまう場合、関連企業内で重複する事業を集約したい場合など、グループを再編成して経営効率を高めるために有効なスキームです。
会社分割のメリット・デメリット
メリットをまとめると以下のとおりです。
- 債権者の同意が必要ない
- 原則として資金負担が必要なくなる
- 条件を満たせば取引先との契約更新は必要ない
一方のデメリットは、以下のとおりです。
- 上場企業は時間と費用が必要となる
- 負債の引き継ぎが必要となる
- 許認可の引き継ぎができる、できないにわかれる
スキームを選べれば、自社の価値を知っていく必要があります。
なぜなら、価値を知らなければ適正な価格での売買が成立しないからです。早速見ていきましょう。
6. 会社を売りたい!価額算出方法
会社を売るにあたっての、価額算出方法の代表的なものを以下に挙げます。複雑なので、会社を売りたいときには専門家に価格を計算してもらうのが大切です。
専門家とうまく相談するために、主な算出方法を見ておきましょう。
簡易の算出方法
最も簡易な算出方法は、「純資産額+純利益×年数(3~5年)」で価額を算出する方法です。
ただし、この方法は見たとおりの大変簡単な算出方法ですので、用いられるのは同族経営の、規模が比較的小さい中小企業同士のM&Aに限られます。
なぜなら、同族経営の中小企業の場合は株主が経営者自身ですので、M&Aをするにあたっての説明責任が、大企業同士のM&Aに比べれば小さいからです(もちろん取引先や銀行への説明責任はあります)。もっと極端にいえば、買収価額は経営者同士が合意すれば、それで大丈夫といえます。
そこで、これまで経営してきたストックとしての純資産に加え、今後3年から5年くらいは今の利益水準の維持はできるはず、とする観点から「純資産額+純利益×年数(3~5年)」の評価が妥当なものとして採用されるでしょう。
DCF法
DCF法とは、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法と呼び、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算定する方法です。算出に当たっては、将来にM&Aの対象となる企業・事業が生み出すキャッシュフローを前提とするため、事業計画書が重要となります。
DCF法のメリットは、企業が生み出す価値の将来の期待を反映できることです。これにより、修正純資産法では困難であるのれんなどの無形資産の評価も行えます。
デメリットは、算定の基礎を事業計画書に置くため、事業計画の精度や客観性によって、企業価値の信頼性が変動するリスクがあることです。
修正簿価純資産法
簿価純資産法は、貸借対照表に計上されている資産などに必要な修正をして、負債を控除した額を価値として導き出します。
そこから、損益を入れ込むことで価値をさらに出すのが修正簿価純資産法です。
メリットとして、すぐに算出できる点が挙げられます。また、デューデリジェンスによって変更する必要がある項目が出たときにも素早い対応で導き出せるのも便利なところです。
さらに、従来の簿価純資産法では反映できなかった『時価』まで取り込めるようになります。
ただし、無形資産(従業員やブランド力)は反映できないので注意してみてください。
類似会社比較法
類似会社比較法は、会社売却・M&Aの対象となる企業と事業内容などが類似する上場企業の株価を参考にして買収の企業価値を算定する方法です。
このメリットは、実際の株価や決算情報などの誰でも見ることのできる数字を基礎として計算するため、計算された会社売却・M&Aの相場価格の客観性が高いことでしょう。
デメリットは、事業が特殊で比較する対象が少ない場合、会社売却の妥当な相場が計算しにくいことが挙げられます。
7. 会社を売りたい!高く売却する方法
会社を高く売りたいと考えた場合に、やっておく必要があることを整理します。
- 売れないことも多いと知る
- 主観を排除する
- 優先順位を明確化する
- 株式の収集をする
- 属人性を排除する
- 本業の収益力強化を意識する
- 信用力アップを行う
- 資産や資料の洗い出しをする
それぞれについて、順番に確認していきましょう。
①売れないことも多いと知る
結論をいってしまえば、会社はいくら売りたいと考えても売れないことも多いでしょう。
まず、以下に買収されやすい会社に共通する特徴を見ておきましょう。
- 相応の売上規模がある
- 利益が出ている
- 無借金、または適切な借入水準である
- 取引先が分散されている
- 経営者への依存度が低い
- ビジネスの仕組み化、組織化ができている
つまり、買いたい側にとってはこれらをすべて満たしているのが、理想の買収先です。
しかしながら、中小企業でこれだけの条件をすべて満たしているのはほとんどないでしょう。
つまり、買いたい側にしてみれば、非常に妥協して会社を買うケースがほとんどです。またこれとイコールで、売りたい側の自社が本当に買い手側の理想とする会社であるのは、ほとんどないでしょう。
逆にいえば、買いたい側にとって理想の買収先は少ないともいえます。細かい特徴は要望を満たしていなくても、買いたい側にとって自社が本当に望む買収先であった場合には、それだけで高く評価してもらえることもあり得るでしょう。
②主観を排除する
売りたい側としては、なるだけ高く売りたいのは当然ですし、それは交渉相手もわかっています。
しかし、自身の会社を過大評価しすぎてはいけません。正しい価値があるからこそ、お互いの企業で良い点を合わせればどのようなメリットがあるのかについても気付けるのです。
そこで、主観的にならずにできるだけ客観的に評価します。
例えば、以下のような、財務などの客観的な数値に現れない部分は、何らかの客観的な根拠を示せるように心がけておく必要があるでしょう。
- アピールポイント
- 自社の強み・弱み
- 希望条件
会社を売りたいと思ったときは、まずはこれら3つのポイントを考えてみてください。
③優先順位を明確化する
M&Aは売りたい側も買いたい側も一大イベントです。最終的に納得できる条件に落ち着き、成功すればよいでしょうが、それでも相手を探してから交渉して合意するまでには、少なくとも数カ月で1年以上は当たり前と考えておく必要があります。
もちろん、交渉の過程で想定しないなかった条件が提示されることはありますが、M&Aにおいて当然検討しておく事柄については、それら条件の優先順位も決めておく必要があります。
譲れない条件を譲る必要はもちろんないでしょうが、不必要に検討に時間がかかってしまうと相手の熱意も冷めてきますし、相手にとって別の良い候補先が現れる可能性もあります。高く売るためには、タイミングとスピード感も大事となってきます。
以下のような条件については、優先順位を付けておきましょう。
- 売却額に関する条件
- 社長ほか、役員の処遇に関する条件
- 従業員の処遇に関する条件
④株式の収集をする
2006年5月1日以降、株式会社は原則として株券を発行しないこととなっています。それ以前は逆で、株券を発行するのが原則でしたので注意が必要です。
株式譲渡のスキームで全部を売却する場合にはなりますが、株券発行会社は株式譲渡の際に、株券を交付しなければ、その効力が生じません。一定数の株券を持たなければ第三者に対抗要件を満たせないのです。
したがって、株券発行会社を売りたいのであれば、M&Aの実行までに発行している株券をすべて集めておく必要があります。
もし、株券を出していないのであれば、株式を渡すだけですから株券については気にせず進められるでしょう。
⑤属人性を排除する
誰か一人がこれまでの事業の推進を負っていた場合は、やや注意が必要です。
会社売却後は組織が大きくなりますので、その属人的な事業も大きな輪の中に入ることになります。買収側の意向で人の異動や人材の投入が行われることも珍しいことではありません。
このため、事業評価を客観的に見て高くするためには、属人的ではなくシステム的に事業が動いていることを証明できた方が良いでしょう。
また事業が属人的であると、売却時にその人物が辞めることもなきにしもあらず。その場合は一気に事業の価値が落ちてしまうことにもなりかねません。
⑥本業の収益力強化を意識する
本業の収益力強化もポイントとなります。客観的で、揺るぎないものとして最も強く訴えられるのは、過去の実績です。
このため高く会社を売りたい場合に、本業の収益力は最も重要な要素といっても過言ではありません。
もちろん、一朝一夕で強化できるものではないでしょうが、5年、10年先に会社を売りたいと考えるのであれば、むやみやたらに事業を拡大するよりも、最優先する必要があるのは本業の収益力です。
⑦信用力アップを行う
会社を高く売りたい場合には、信用を少しでも高くしていくことが大事です。
特に中小企業の場合は、書類や資料がしっかり管理されていないこともよくあります。何か質問や要求があった場合に、うまく答えられず長い時間がかかっているようでは、不必要に交渉相手からの信用を失いかねません。
したがって、M&Aの検討を始めた段階で資料はできるだけ揃えておき、資料がなくてもできるだけ、専門家の力を借りるなどして精査しておくとよいでしょう。
⑧資産や資料の洗い出しをする
会社を高く売りたいなら、資産や資料の洗い出しをしましょう。
「信用力アップ」と重複する部分ですが、根拠に乏しい不透明なものを相手は買いたいとはいえません。会社における根拠や実態を示すものには、働いている人物のほかに書類や資料も大きなウェイトを占めます。
本気で売りたい候補先が現れたら、少しでも資料による透明性も示した方が、高く売れる可能性が高まります。
8. 会社を売りたい!売却の際の必要書類
会社を売りたいときに手続き上必要とされる書類がいくつかあります。
このほかに、M&Aを進める過程で必要な書類はケースによって多岐にわたるので、専門家に確認する必要があります。
主な書類を順番に見ていきましょう。
法務局で取得する書類
会社売却の際に一般的に必要とされる書類で、法務局で取得するものは以下になります。
- 会社商業登記簿謄本
- 土地・建物の登記簿謄本
- 印鑑証明書(法人・代表者各人各1通)
税務署で取得する書類
会社売却の際に一般的に必要とされる書類で、税務署で取得するものは以下になります。
- 納税証明書(法人税・住民税・事業税・消費税)
- 土地・建物の固定資産税評価証明書
身元確認書類
会社売却の際に必要とされる、株式を所有している経営者の身元確認書類は以下のとおりです。
- 経営者個人の印鑑証明書
- 経営者個人の住民票
- 経営者個人の顔写真つき身分証明書の写し(運転免許証など)
9. まとめ
会社を売りたいと考えている経営者は多いとされています。中小企業経営者が会社を売りたい理由として挙げられるのが、後継者不足による事業承継の問題です。経営者の子息が会社を継ぐ意思のない場合に、社内や外部の人間に会社の所有まで求めるのは、資金面や連帯保証の点からも難しいでしょう。
しかしながら、外部の企業に会社ごと売却して、経営を引き継いでもらう形であれば、この事業承継の問題は解決できます。
また、中小企業の場合、M&Aのスキームとしては株式譲渡か事業譲渡がほとんどになります。株式譲渡も事業譲渡も、中小企業にとっては簡便な会社売却の方法です。そして売却価額の算出方法としては「簡易の算出方法」「DCF法」「修正簿価純資産法」「類似会社比較法」があります。
しかしながら、M&Aで会社売却ができるのは、簡単ではありません。また、少しでも高く売りたい場合には、普段から本業の収益力を強化しておくことと、書類や資料などの管理体制までしっかり整えていく必要があります。
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