2021年09月20日更新
個人事業主の事業承継のやり方と注意点まとめ!固定資産税や借入金はどうなる?
個人事業主の方は後継者問題に悩まされることも多く、現在では個人事業主の方の事業承継もかなり多くなっています。また固定資産税や借入金の引継ぎなど不安がある方も少なくありません。今回は、そのような個人事業主の事業承継に関する注意点などをまとめていきます。
目次
1. 個人事業主の事業承継の簡単まとめ
個人事業主の事業承継では、以下のような手続きが必要です。
- 事業承継方法の決定(売買or贈与or相続)
- 後継者への引継ぎ
- 廃業・開業・税務の手続き
- 取引先や従業員への連絡
これらの事業承継手続きについて、この記事では解説しています。自身で事業承継を進めることは不可能ではありません。
しかし、手続きが複雑で、さらに失敗すると余計に面倒になるケースがほとんどです。できる限り税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
また、事業承継方法の決定は自分だけではなく従業員や後継者の未来を背負った大切な決定です。事業の未来をじっくりと考えて意思決定をしてください。
では、まず事業承継のやり方から見ていくことにしましょう。
2. 個人事業主の事業承継のやり方
個人事業主として行う業種は、商店・青果店・洋服店・クリーニング店・料理店などさまざまな業種があります。
この個人事業主が事業承継を行う方法は、贈与、売買、相続などがあるのです。また、他人への引継ぎ・個人事業主の家族への引継ぎなのか、この手法の違いで借入金や固定資産の引継ぎなどが異なる場合があります。
さらに、代表交代により営業権譲渡なども複雑になることも少なくありません。
ここでは、個人事業主の事業承継の方法を手法別にまとめていきますので参考にしてみてください。
個人事業主が事業承継をしようと考えた場合、以下の方法が考えられます。
- 売買(M&A)
- 贈与
- 相続
個人事業主の事業承継の3つの方法について、詳しく確認していきましょう。
方法①:売買(M&A)
個人事業主が事業承継するときの売買(M&A)によるものは、事業譲渡をする対価として、金銭を受け取る方法で、家族ではなく主に第三者へ事業承継する方法です。
経営者は事業の売買によって対価を得られますが、事業規模が小さい場合は売却する相手先を見つけるのが難しいでしょう。
この売買(M&A)による事業譲渡は、マッチングサイトの活用や事業承継センターへ相談するなどして事業譲渡先企業を見つけられます。
方法②:贈与
個人事業主の事業承継では、贈与を活用した事業譲渡が選ばれるケースもあります。
この贈与による事業譲渡は、生前贈与が主流で、「親族内事業承継」と「親族外事業承継」があり、個人事業主が家族など親族内や他人へ事業を贈与するものです。
この贈与による事業譲渡は一番安心感のあるものとされています。
親族内事業承継
親族内事業承継とは、実の子供などの親族に事業承継をする方法をさします。
【親族内事業承継のメリット】
- 関係者から受け入れてもらいやすい環境である
- 後継者を早く決定できる
- 早くから教育や準備に時間を割ける
- 財産や株式を同時に移転できる
【親族内事業承継のデメリット】
- 親族内で承継を希望する者が見つかるとは限らない
- 相続人が複数の場合は、後継者の決定や経営権集中が難しい
親族外事業承継
親族外事業承継とは、自社の従業員や役員など、親族以外の人物に事業承継する方法です。
【親族外事業承継のメリット】
- 自社だけでなく幅広く候補者の選択が可能
- 長期間勤務した従業員を選択する場合は、経営体制を維持しやすい
【親族外事業承継のデメリット】
- 適任者がいない可能性がある
- 後継候補者に資金力がない場合は、株式取得などが困難になる
- 個人債務保証の引継ぎなど負担が大きいプロセスがある
方法③:相続
相続による事業承継とは、経営者が亡くなり相続が発生したときに持っている自社株を財産・資産の一部として後継者が引き継ぐことです。
基本的には遺言として残しておくことで、何をどの程度相続するのかを決定できます。しかし、遺言がないケースでは遺産分割協議などの話し合いで決めます。
このことから、相続では自身が「誰に、何を、どのように」相続してもらいたいのかなど、意思をはっきりと遺言に残しておくとよいでしょう。
ここまで3つの方法について説明してきました。
基本的にはこれらの中から、自身に合った方法を選択します。後継者を誰にするのかでも違ってきますので、意識して選択するようにしましょう。
では、どのような流れで進んでいくのかについて説明していきます。
3. 個人事業主の事業承継の流れ
個人事業主が事業承継をするとき、必要な手順や流れを解説していきます。
ここから解説していくのは基本的な流れとなっているので、事業譲渡の手法や、引継ぎ方の違いで、手順が異なる場合や、省略して事業譲渡を行う場合があります。
個人事業主が事業承継を行う際の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 後継者選び
- 後継者への引継ぎ・教育
- 廃業手続き
- 開業手続き
- 屋号引継ぎの処理
- 取引先などへの連絡
個人事業主の事業承継では、屋号引継ぎの処理が重要です。しっかりと、確認していきましょう。
流れ①:後継者選び
個人事業主が事業承継をするときは、はじめに後継者選びから始めます。
これは他人でも親族内に事業譲渡するときも同じで、一般的には子供などに引き継ぐケースが多いでしょう。
しかし、必ずしも子供に引き継ぐ必要はなく、他人に引き継ぐ方法もあります。
流れ②:後継者への引継ぎ・教育
後継者が決まれば、個人事業主の事業を引き継ぎます。
しかし、いきなり一人で全てを任せようとしてもできるはずがないので、教育をして事業が成り立つようにしていきましょう。
また取引先へのあいさつや、紹介なども一緒に行うようにすると今後の経営を任せやすくなります。
個人事業主は個人での事業なので信頼や人間関係は大切です。そのため、ここはしっかりと丁寧に行ってあげましょう。
また事業用の固定資産や顧客情報なども一緒に引き継ぐため、情報管理や引継ぎに必要な書類や手続きも怠らぬようにしてみてください。
流れ③:廃業手続き
個人事業主の事業承継では法人の事業譲渡とは違うので手続きは比較的簡単です。
現事業主の人は廃業の届出を提出するだけで、この手続きは終了し、個人事業主として仕事を終えたことになります。
流れ④:開業手続き
経営者が廃業の手続きを終えた後は、代表交代した後継者が開業手続きを進めていくことになります。
これで個人事業主として後継者が認められるので、事業譲渡は完了です。
流れ⑤:屋号引継ぎの処理
もともと個人事業主が使っていた屋号を引き継ぐ処理も必要不可欠です。引き継ぎしておけばそのまま使えるので開業届に記載しておきましょう。
商号登記をしている場合は会社法に決められている競業避止義務によって使用できないケースがあります。基本的には制限を受けませんが確認しておくとよいでしょう。
流れ⑥:取引先などへの連絡
代表交代のときには取引先などへの連絡も欠かせません。
今まで付き合いがあったから代表交代しても問題がないとはいい切れないからです。
あいさつは基本ですから、顔を覚えてもらうためにもしておく必要があるでしょう。場合によっては、代表交代によって取引を中止するといった最悪のケースも考えられます。
あまり話をする機会がない場合では特に多いので、連絡やあいさつなどに向かうようにしてみてください。
以上が、個人事業主の事業承継の流れでした。ここからは、紹介したさまざまな手続きに必要な書類の記載方法について解説していきます。
4. 個人事業主が事業承継で行う各種書類の概要・記載方法
個人事業主の事業承継では、手続きは簡単に行えます。
しかし、その手続きに必要な書類の記載方法などもあるため、個人で事業譲渡を行うときにはこの記載方法を理解しておかなければなりません。
ここでは、個人事業主の事業承継に関する書類の概要と記載方法について、以下の10個を紹介していきます。
- 廃業届出書
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 事業廃止届出書
- 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請
- 開業届
- 所得税の青色申告承認申請書
- 青色事業専従者給与に関する届出書
- 雇用に関する書類
- 消費税課税事業者選択不適用届出書
- 消費税簡易課税制度選択不適用届出書
少し多いですが、それぞれがそこまで難しいものではないので確認してみてください。
書類①:廃業届出書
法人での手続きとは違い、個人事業主の開業届を提出し、事業を始めていらっしゃるでしょう。
この場合、代表交代をするために廃業届出書を提出する必要があるのです。廃業した日から1カ月以内に必要書類を所轄税務署長に提出しなければなりません。
廃業してしまったら引き継ぎできないのではと心配になる人も多いかもしれませんが、先ほど説明した流れでもあるとおり「引き継ぐものが開業届を提出して事業を始める」ので、問題はありません。
廃業届出書はインターネットからダウンロードするのも可能です。また、事前に用意して提出する方法でも可能ですので、忘れずに提出するようにしましょう。
事業開始または廃止の申告書
税務署へ提出する廃業届の他に、都道府県税事務所へ事業開始または廃止の申告書の提出が必要です。書類のフォーマットや提出期限は各都道府県により違ってきますので注意しましょう。
許認可事業は別途廃業届
薬局、飲食業、旅館業、販売業、建設業、美容・理容業など特定事業を営んでいる場合は、警察署、保健所、都道府県などの行政機関から「許認可」を受けなければなりません。
しかし個人事業主の場合、生前贈与による事業承継では、後継者へ許認可を引き継げません。そのため、許可を受けている所轄行政庁に対して別途廃業届の提出が必要です。
書類②:所得税の青色申告の取りやめ届出書
個人事業主の場合、確定申告を自身でされているケースがほとんどです。このときに青色申告を行っていた場合は、廃業届と同様に一度やめる必要があるのです。青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までに提出するようにしましょう。
ただし、今後も青色申告を使い続けるような事業を行っている場合には、取りやめをする必要はありません。
状況に応じて提出するようにしてみてください。
書類③:事業廃止届出書
これは、消費税の課税事業者のみが必要な書類になります。
一見すると廃業届と同じのように見えますが、厳密には内容が違うことから提出が必要です。
ただし、以下のような書類を提出している場合には必要ありませんので確認してみてください。
- 消費税課税事業者選択不適用届出書
- 消費税課税期間 特例選択不適用届出書
- 消費税簡易課税制度選択不適用届出書
- 任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書
消費税の減税にもつながりますので、上記の書類を提出していない場合は忘れずに提出しておきましょう。具体的に提出期限は定められていませんが、速やかに提出するように定められています。
書類④:所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請
個人事業主が後継者となり得る子供に事業譲渡で引き継ぐケースでは、所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請をしておきましょう。
この申請をしておくことで、予定納税額を減額するのが可能です。
引継ぎによって、親よりも所得が少なくなる子供に合わせた税金だけで済みます。廃業以外にも失業、業績不振などで所得が低くなることが予想されるケースでも適用されるので覚えておきましょう。
第1期分・第2期分の減額申請をする場合にはその年の7月1日〜15日までに提出する必要があり、第2期分のみの申請の場合はその年の11月1日〜15日までに提出します。
書類⑤:開業届
個人事業主の開業届は、廃業届と書式は同じですが内容は異なります。
事業譲渡では一度廃業をして開業するため、開業届の提出が必要となるのです。提出期限は、現経営者が廃業届を出す前でも後でも問題はなく、事業を開始してから1カ月以内に提出します。
開業にチェックを入れて提出するようにしてみてください。
書類⑥:所得税の青色申告承認申請書
青色申告が必要と判断した場合には、青色申告承認申請書の提出が必要です。
引継ぎ前に青色申告を取りやめしていたときにも、この書類を提出する必要があるので覚えておきましょう。
開業をしてから2カ月以内に提出しなければならないことから、開業届と同時に手続きをしてしまうほうがよいでしょう。
書類⑦:青色事業専従者給与に関する届出書
子供や他人に事業承継をしたケースでは、給与を経費として扱えない可能性があります。
例えば、引継ぎ後に配偶者が事業を手伝うことにより得た対価などがこれに当たるでしょう。このようなケースでは経費として計上できない対価が残ってしまいます。
このとき、青色事業専従者給与に関する届出書を提出し、給与を経費として扱うのが可能です。
条件を満たすだけで支払った給与を経費として計上できますので、必要に応じて提出するよう心がけてみてください。
書類⑧:雇用に関する書類
親族などではなくアルバイトや従業員として誰かを採用するケースでは、雇用に関する書類も必要です。
これは、働いてもらうためにも雇用契約を結ぶ必要があるからです。詳細な労働条件の書類から保険関係、契約書など幅広い書類を用意しなくてはならないため、早めに用意するように心がけておきましょう。
書類⑨:消費税課税事業者選択不適用届出書
消費税課税事業者選択不適用届出書は、課税事業者が免税事業者に戻るために必要な書類となります。
免税事業者とは、年間の売上高が1,000万円以下の事業をしている人のことです。
免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日までに提出しなければなりません。
課税事業者を選択した効力はこの届出を提出するまで、続くので事業承継をして、年間売上高が1,000万円以下の場合は提出しておくとよいでしょう。
書類⑩:消費税簡易課税制度選択不適用届出書
消費税簡易課税制度選択不適用届出書とは、粗利が大きいほど消費税の納税額を少なくする制度のことです。
年間総売り上げが5,000万円より高い場合は使えません。
また、簡易課税制度で消費税を納税するよりも、原則課税制度で納税したほうが消費税を抑えられます。
ですから、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を忘れずに提出しておきましょう。
5. 事業承継後の経費や債務について
事業承継をしたとき、事業に必要な経費や、引継ぎ前の債務はどうなるのか気になるでしょう。
また不動産などの固定資産や借入金の行方も気になるところではないでしょうか。
ここでは、このような事業承継後の経費や債務、使用貸借についてまとめていきます。
固定資産税は経費にできる
事業承継を他人や家族に贈与で行う場合、贈与額が高額になる理由として、不動産などの固定資産が関わっている場合があります。
この部分を贈与ではなく、「使用貸借」の形にすれば固定資産の贈与ではなく、他人や家族に貸していることになるので贈与税が少なくなるのです。
この使用貸借では、賃貸などと違い、権利金などがかからず実質無料で土地を借りるのが可能です。ですから、使用貸借により、不動産などの固定資産を事業譲渡した相手に貸している扱いにできるのです。
さらに使用貸借にしていれば不動産から生じる減価償却費、固定資産税、修繕費など土地を借りている後継者が計上できる仕組みです。
借入金も承継される
事業承継では、事業を行うための資産が引継ぎされますが、その資産とは固定資産や経営資産があり、この中に借入金も含む資金も入っています。
事業譲渡にて代表交代をしても、その事業そのものの借入金はなくならないので注意が必要です。
したがって、債務としてある借入金をどのように対処していくかも、事業承継にて代表交代をするときに考えておかなければなりません。
分社による事業承継スキーム
新設分割で分社化し事業承継をすると、借入金などの負債と固定資産などの事業のための資産を分けて事業承継できます。
他人であっても子供であっても、借入金が大きな事業は引継ぎたくないのが正直なところです。
したがって、分社化して、事業承継を行うことで引き継ぎしやすくすれば事業譲渡はうまくいきます。
6. 個人事業主の事業承継にかかる税金
個人事業主の事業承継にかかわらず、事業承継にて代表交代などを行うときはさまざまな税金がかかります。
消費税や贈与税、相続税などの中から知っておきたい税金が以下のとおりです。
- 贈与税
- 所得税
- 消費税
- 相続税
それぞれの税金がどのような場合にどれくらい発生するのか、確認していきましょう。
税金①:贈与税
個人事業主の事業承継でよくあるのが、親から子への事業承継です。
基本的には、事業を買い取る形ではなく譲り受けることになります。これは、子供が買い取るほどの資産を有していないケースが多いためです。
そうすると、贈与の形式に該当して贈与税が必要となります。
計算方法なども参考として説明するので参考にしてみてください。
計算方法
贈与税の計算方法について見てみましょう。贈与税の計算式は以下のとおりです。
- 資産(固定資産や預貯金、商品など)−債務(未払金や借入金、買掛金など)
上記の計算式で算出し、110万円以下となった場合では、贈与税を支払う必要がありません。超えていた場合は、超えた部分にのみ税率をかけて課税されるので、事前に計算しておきましょう。
税率
税率は以下の表のとおりです。
贈与税 | ||||
---|---|---|---|---|
課税価格 | 一般税率 | 控除額 | 特例税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - | 10% | - |
200~300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300~400万円以下 | 20% | 25万円 | 15% | 10万円 |
400~600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
600~1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,000~1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
1,500~3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
3,000~4,500万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 400万円 | 55% | 640万円 |
参照:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
このように、課税価格が増えるごとに税率が高くなる累進課税となります。控除額や特例税率も異なるため、しっかりと確認しておきましょう。
また、以下の注意点も確認しておくと便利です。
- 一般税率(一般贈与財産用)は、特例税率に該当しない場合に、一般税率で計算されます。
- 特例税率(特別贈与財産用)は、祖父母や父母から20歳以上の子供や孫へ贈与する場合は、この特例税率で計算されます。
このように税率は場合によって異なるため、専門家に相談しながら税額を計算してみてください。
使用貸借による減額
使用貸借とは、当事者の一方が無償で使用や収益をしたあとに返還をするのを約束して相手から目的物を受け取る内容の契約のことです。
この使用貸借は、消費賃貸や賃貸借と同じ「貸借型契約」に分類されています。
贈与税額を高くしているのは不動産などの固定資産でこの部分を贈与ではなく使用貸借として、扱うことで贈与税額はかなり少なくなるでしょう。
ただしこの使用貸借では、無料で貸すことになり、地代も無料にしなければなりませんので、借主が持ち主に地代などを払うことは禁止されています。
こちらの契約を利用した場合は、親側の固定資産税として扱われるため子供に支払い義務はありません。
暦年贈与
事業承継による贈与税は通常であれば暦年贈与により課税されます。
つまり、その年の1月1日から12月31日までの期間で課税額が決まるわけです。
先ほど説明しましたが、この課税対象は110万円を超えた額にですから、超えていないケースでは特に気にする必要はないでしょう。
税金②:所得税
所得税は個人が1月1日から12月31日まで(1年間)に得た「所得金額(収入ー経費)」から「所得控除額」を差し引いた額を所得額として計算します。
所得税は10種類あり、事業承継を売買(M&A)によって行う場合は、「譲渡所得」に当たるものです。
また子供などに無性で事業承継した場合には事業承継後に後継者が得た収入が「事業所得」として課税されます。
税金③:消費税
消費税の仕組みですが、事業承継を生前贈与にて行うのか、相続として行うのかにより異なります。
事業をしているうえでかかる消費税は年間売上高が1,000万円以上あるかどうかにより課税か非課税かに別れ、これは2年前の売上高を見て納税義務があるかないか判断されるのです。
生前承継
事業承継を生前承継にてした場合、代表交代をするのに、前の経営者は「閉業」を後継者は「開業」をする形になります。
後継者が他に事業をしていない場合は、開業して1年目になるため、この年に1,000万円以上の売り上げがある場合は2年後に消費税の納税義務が課せられるのです。
つまり、原則として開業から2年以内では納税義務がありません。また、2年以降も1,000万円以上の売上を出していないケースであれば必要ないでしょう。
遺産相続
事業承継を相続で行うケースでも、売上高が1,000万円以上でなければ納税義務は課せられません。
ただし、相続は引き継ぎする形となるため納税義務もそのまま引き継がれますから、売上高が超えている場合には課税対象ですので注意してみてください。
例にすると、2年前まで事業を行っていた親が年間1,000万円以上の売上高をあげていた事業を子供が2年後に相続にて代表交代して引き継いだ場合はこの年から消費税の納税義務が発生してしまうのです。
また、課税期間の途中で経営者が亡くなり後継者に代表交代した場合も同じで、代表交代前が500万円の売上高で代表交代後が600万円の売上高とすると、年間1,100万円の売上高になるので消費税は課税されます。
税金④:相続税
相続での事業承継は、相続が発生した時点を基準にして評価額が査定され課税されます。
事業承継では、固定資産だけに限らず多くの不確定な要素が承継内容に含まれているのです。場合によっては後継者の相続に負担がかかるケースがあるので注意してみてください。
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例とは、相続する人が済んでいた土地などが一定条件を満たした場合に税金を減額してもらえる制度のことです。
この特例では、最大80%の評価額を減税できます。
例えば、相続税の評価額が1,000万円だったとすると、200万円の評価額までは減額できるので大きな負担軽減につながるでしょう。
しかし、大きな金額の減額が期待できる反面、要件がやや厳しいので注意が必要です。また、他人に相続するケースでも適用ができないなどもあるため、必ず要件を確認してから進めるようにしてみてください。
7. 個人事業主の事業承継の注意点
個人事業主の事業承継は、手続き自体は簡単に行えますが、注意が必要な点も何点かあります。
特に個人間で行う場合には、失敗しやすいですからしっかりと理解して行うのが大切です。
個人事業主の事業承継の注意点は、以下のとおりです。
- 早期対応が必要
- 税金対策
順番に確認していきましょう。
注意点①:早期対応が必要
個人事業主が事業承継をする場合、相続や贈与で行うのが大半ですが、各種手続きは迅速に対応するのが大事です。
また売買(M&A)による事業譲渡の場合も同じで、対応が遅れると、売買交渉が取り消しになってしまうこともあるので気をつけましょう。
後継者問題の解消
後継者問題の解決のために事業承継などを考える個人事業主の方は多く、個人事業主の方は自分自身が資本であるため、無理して事業を継続している方などもいます。
自身の身体と相談しながら早い段階で後継者を見つけ出すようにし、教育などが難しい場合は事業が売れる状態のときにM&Aを決断するのも重要です。
手続きが煩雑
仮に事業承継をする後継者が決まっていて、手続きをするときも開業と廃業届けを出すだけではなく、他にも書類の作成などがあるので早めの対応をしましょう。
特に消費税課税事業者選択不適用届出書などは提出期限が決まっているため、早めに決めておき、開業と同時に行えるようにしてみてください。
注意点②:税金対策
上記でも解説しましたが、事業承継にはさまざまな税金がかかります。
先ほど記述した使用貸借もそうですが、固定資産税や消費税など、相続税・贈与税も少額ではありませんのでしっかりと対策するのが大切です。
また借入金などの債務についても対策しておくと節税になるので理解しておいたほうがよいでしょう。
8. 個人事業主の事業承継はM&A総合研究所にお任せください
個人事業主の事業承継について手続きや税務に不安がある場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
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9. まとめ
個人事業主が事業承継では、多くの労力と時間を必要としますから、難しいことも多いです。
しかし、メリットが多いM&Aを選ぶことで、解決できる問題もあるでしょう。そのようなときには、法務・税務の手続きから書類作成、その他の処理まで考えて専門家に依頼してみてください。
事業承継をスピーディーに進めるためにも、ぜひ検討してみましょう。
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