2023年09月21日更新
合併比率とは?決め方や算定方法、注意点、小数点以下の取り扱いも解説
合併比率とは、合併される会社の株主が合併する会社の株式を受け取る際の比率のことです。合併比率を決める際は、いくつかの注意点に気を付けなければなりません。本記事では、合併比率の決め方や算定方法、注意点などについて解説します。
1. 合併比率とは
合併比率とは、合併される会社の株主が合併する会社の株式を受け取る際の比率をいいます。
そもそも合併には吸収合併と新設合併があり、吸収合併とは、合併する会社に合併される会社が吸収され、消滅する合併方法です。
また、新設合併とは、新たに設立した会社に既存の会社を吸収させ、既存の会社はすべて消滅する合併方法です。
合併に際し、合併される側の株主は合併する側の株式を対価として受け取ります。合併比率は、1 : 1の左側が合併される会社の比率、右側が合併する会社の比率を表しています。
例えば、合併比率が1 : 1で合併される会社の株主Aさんが2,000株持っている場合、合併によってAさんは合併する会社の株式2,000株を受け取ります。
また、合併比率が1: 0.75で、合併される会社の株主Aさんが2,000株持っていたとすれば、合併によってAさんは合併する会社の株式を1,500株受け取ることになります。
2. 合併比率の決め方
【合併比率の決め方】
- 合併する企業各社の価値を算定
- 株主構成を確認する
- 合併比率と株主構成を決める
1.合併する企業各社の価値を算定
合併比率を決めるには、まず合併する各企業の価値を算定しなければなりません。
価値評価の方法には、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチといったものがあり、各アプローチ方法のなかにもいくつかの算定方法があります。
どの方法を採用するかは、その企業の現状や算定する専門家の判断にもよるので、一概にどの方法が最適とはいえません。
また、各方法には長所と短所があるので、それぞれの短所を補完し合うために複数の方法を組み合わせることもあります。
2.株主構成を確認する
合併比率を決める際は、株主構成の変化にも気を配らなければなりません。合併される会社の株主に合併する会社の株式を渡すということは、合併後株主の株式保有割合が変わることになります。
株式保有割合が3分の1を超えると、その株主は株主総会の特別決議を阻止することが可能になり、株式保有割合が2分の1を超えると、株主総会の普通決議を通すことができます。さらに、株式保有割合が3分の2を超えると、株主総会の特別決議を通すことが可能です。
合併比率によって保有割合が変わり、上記の権利を手に入れたり失ったりすることになることは株主にとって大きなメリット・デメリットを伴います。したがって、合併比率によって株主構成がどう変わるかをよく確認する必要があります。
3.合併比率と株主構成を決める
価値算定と株主構成の確認を踏まえ、合併比率と株主構成を決めていきます。合併比率を決める際は、合併後に株主ごとの財産価値が変わらないようにすることが基本です。
また、株主構成の変化によって株主としての権利が変わることに関して、株主の承認を得ながら影響を慎重に見極める必要があります。
合併比率の算定方法や株主構成の変化による影響については、後の章でくわしく解説します。
3. 合併比率の算定方法
合併比率を算出するには、前述した企業価値算定から導き出した1株あたりの評価額を用いて、合併される会社の1株あたり評価額を合併する会社の1株あたり評価額で割り算することで算出できます。
例えば、合併される会社の1株あたり評価額が500円で、合併する会社の1株あたり評価額が1,000円の場合は500÷1000=0.5となり、合併比率は1:0.5になります。
前述のように、価値評価の方法にはコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチといったものがあります。
コストアプローチは会社の純資産から企業価値を求める方法で、インカムアプローチとは今後のリスクを割引いたキャッシュフローを導き出す方法です。また、マーケットアプローチとは、似たような規模・事業内容の会社と比較する方法です。
4. 合併比率の注意点
【合併比率の注意点】
- 基本的に株主が保有する財産が変動することはない
- 株主が保有する財産が変動した場合は贈与税がかかる
- 債務超過の企業が合併する際は、合併比率の算定方法が変わる
基本的に株主が保有する財産が変動することはない
合併比率を決める際に注意すべきなのは、株主の持っている財産が合併前と合併後で変動しないようにすることです。
例えば、会社評価が1億円の企業同士が合併する場合、割合が1:1であれば株主が保有する財産が変動することはありません。
ところが、企業価値が1億円の企業同士が1:0.5で合併した場合、合併される企業の株主は100株保有していたとしたら50株割り当てられることとなり、保有株式の価値は半分になってしまいます。
これでは合併される企業の株主が損をすることになり不満が噴出するでしょう。合併比率を決める際は、基本的に株主の保有財産が変動しないように進めていくことが大切です。
株主が保有する財産が変動した場合は贈与税がかかる
前述のように、合併比率を決める際は株主が持っている資産に変化がないようにすることが原則です。しかし、合併比率によっては株主が贈与税を支払わなければならない場合がでることがあります。
例えば、30億円の会社評価である合併する側の企業と、同じく30億円の会社評価を持った合併される企業が1:0.5の合併比率で決定したとします。
すると、合併する方の株主は40億円を保有し、合併される方の株主は20億円を保有することになり、合併する方の株主は10億円のプラス、合併される側の株主は10億円のマイナスとなります。
これでは、前述した株主の保有財産が変動しないという原則に反することとなります。そして、10億円分プラスになった合併する側の株主は合併される側の株主から贈与があったとみなされるため、贈与税が発生します。
債務超過の企業が合併する際は、合併比率の算定方法が変わる
債務超過の企業は株式の価値が実質ない状態であるため、合併比率を算出することは無理ではないかとも思われがちですが、実際は債務超過の企業でも合併を行うことが可能です。
ただし、合併比率が1 : 0のようになってしまうと無対価合併となり、税制で有利になる適格合併が利用できません。
そこで、1000 : 1といった極端に小さい割合の合併比率にすることで、適格合併を適用させるとともに、株主への影響を最小限にすることが可能です。
このような合併比率の注意点を踏まえて合併を進めるためには、専門家によるサポートがおすすめです。
M&A総合研究所では、M&Aに精通したアドバイザーが合併をはじめとしたM&Aの注意点をしっかりと押さえ、丁寧にフルサポートいたします。
無料相談は随時受け付けておりますので、M&Aをご検討の際はM&A総合研究所までお気軽にご連絡ください。
5. 合併比率の小数点以下の取り扱い
合成比率を計算する際、場合によっては小数点以下の数字がでて、株主の保有株式数にも端数が生じることがあります。そのような場合はどのように調整を行うのか、ここでは合併比率の小数点以下の取り扱いについて解説します。
比率の調整を行う
合併比率を決めるためには前提として的確な企業価値の算定が必要ですが、企業価値の算定結果が変わると合併比率も変わることとなり、株主の損得に影響が出てきます。
そうならないように、企業価値算定の段階から入念な調整が必要です。適切な企業価値算定には会計士や税理士による専門的な算定が必要になるため、算定時は専門家へ依頼するのがおすすめです。
株式数の調整を行う
合併比率を決める際は、なるべく小数点以下の中途半端な端数が発生しないように決めていきたいところですが、実務上どうしても端数が発生する場合があります。
その場合は株式分割や株式併合が有効であり、例えば割り当てられた株式に端数があったとしても、株式分割によって1株を10分の1にしたり、株式併合によって10株を1株にしたりすることによって、株式数の調整を行い端数をなくすることが可能です。
6. 合併比率の事例
【合併比率の事例】
- 山之内製薬と藤沢薬品の合併比率事例
- ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの合併比率
事例 - マルハニチロホールディングスとマルハニチロ水産の合併比率事例
- 日本製紙グループ本社と日本製紙の合併比率事例
- ソフトバンクによる子会社4社の合併比率事例
1.山之内製薬と藤沢薬品の合併比率事例
合併比率の事例1件目は、山之内製薬と藤沢薬品の合併比率事例です。山之内製薬と藤沢薬品は2005年4月に合併を完了させ、アステラス製薬として生まれ変わりました。
合併比率は、藤沢薬品の普通株式1株に対して山之内製薬の普通株式0.71株を割り当てています。
山之内製薬と藤沢薬品は合併によって医療用医薬品事業の強化と新薬の開発能力の強化を図り、グローバル競争に勝ち抜くために合併を決定しています。
この合併により、当時売上高が国内3位と5位だった山之内製薬と藤沢薬品は、合併によって国内売上高2位に浮上しました。
また、グローバル市場でも、山之内製薬が22位、藤沢薬品が27位であったものが、合併後17位まで浮上しています。
2.ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの合併比率事例
合併比率の事例2件目は、ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの合併比率事例です。ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスは2006年2月、吸収合併契約の締結を発表しました。
合併比率は、ファミリーマートの普通株式1株に対して、ユニーグループ・ホールディングスの普通株式0.71株を割り当てています。
また、ファミリーマートとサークルKサンクスの九州分割も同時に発表しています。ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスは合併したことにより、ユニー・ファミリーマートホールディングスと商号を変えました。
また、ユニー・ファミリーマートホールディングスは、2019年に完全子会社であるファミリーマートを吸収合併し、商号をファミリーマートに変更しています。
3.マルハニチロホールディングスとマルハニチロ水産の合併比率事例
合併比率の事例3件目は、マルハニチロホールディングスとマルハニチロ水産の合併比率事例です。
マルハニチロホールディングスとマルハニチロ水産は、2014年、マルハニチロ水産を存続会社として吸収合併を行うことを発表しました。
株式の割当ての例としては、1,000株(単元株)所有している株主にはマルハニチロ株式100株を割当て。5,500株所有している場合は550株を割当て(50株は単元未満株)、3,856株所有している場合は385株を割当てという形になっています。
なお、1株に満たない端数が株式がでた場合は、すべてマルハニチロが買い取っています。
4.日本製紙グループ本社と日本製紙の合併比率事例
合併比率の事例4件目は、日本製紙グループ本社と日本製紙の合併比率事例です。日本製紙グループ本社は2012年、完全子会社の日本製紙を存続会社として合併することを発表しました。
合併比率は、日本製紙グループ本社の普通株式1株に対して日本製紙の普通株式1株を割り当てています。
日本製紙グループ本社は純粋持株会社として設立されましたが、事業環境が急速に変化したことにより、これまでの持株会社体制では環境の変化に対応できなくなってきました。
そのため、合併により迅速な経営が行えるようにし、企業価値の向上を図るために合併に至っています。
5.ソフトバンクによる子会社4社の合併比率事例
合併比率の事例5件目は、ソフトバンクによる子会社4社の合併比率事例です。
ソフトバンクは2015年、子会社のソフトバンクモバイルとソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社を、ソフトバンクモバイルを存続会社として合併することを発表しました。
合併比率は、ソフトバンクモバイルの普通株式1株に対してソフトバンクBBが0.0468、ソフトバンクテレコムが0.2761、ワイモバイルが0.7600となっています。
ソフトバンクは、本合併によって経営資源を集約し競争力を強化することで、企業価値のさらなる向上を図りました。
7. まとめ
合併比率を求める際は企業価値算定が必要になるため、適切な算出を行うためにも専門家へ依頼することをおすすめします。
【合併比率の決め方】
- 合併する企業各社の価値を算定
- 株主構成を確認する
- 合併比率と株主構成を決める
- 基本的に株主が保有する財産が変動することはない
- 株主が保有する財産が変動した場合は贈与税がかかる
- 債務超過の企業が合併する際は、合併比率の算定方法が変わる
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