吸収合併とは?手続きの流れやメリット・デメリットをわかりやすく解説!新設合併・子会社化との違いも

取締役副社長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

吸収合併はM&Aの手法の一つです。この記事では、吸収合併の定義や目的、子会社化との違いをわかりやすく解説します。メリット・デメリットから具体的な手続きの流れ、必要な期間まで網羅的に紹介します。

目次

  1. 吸収合併とは?目的や子会社化との違いを解説
  2. 吸収合併と新設合併の違いを比較
  3. 吸収合併のメリット【組織・財務面】
  4. 吸収合併のデメリット
  5. 吸収合併の主な手続きとスケジュール
  6. 吸収合併の手続きを行う流れ
  7. 吸収合併で必要な登記・契約書
  8. 吸収合併のスケジュール
  9. 吸収合併の事例5選【2025年最新】
  10. 吸収合併後の社員の処遇
  11. 吸収合併を経験した人の声
  12. 吸収合併に関してよくある質問
  13. 吸収合併のまとめ
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1. 吸収合併とは?目的や子会社化との違いを解説

合併

吸収合併はM&Aの手法の一つで、2つ以上の会社を1つの会社に統合する方法です。具体的には、1つの会社(存続会社)が他の会社(消滅会社)の権利義務のすべてを承継し、消滅会社は解散して法人格がなくなります。

吸収された会社の資産や負債、従業員との契約などは、すべて存続会社に引き継がれます。一般的には、規模の大きい会社が小さい会社を吸収する形で実施されることが多いです。

吸収合併を行う主な目的

吸収合併は、事業のみならず消滅会社の権利義務のすべてを存続会社が承継することになるため、消滅会社の事業・資産の包括的な承継が目的である場合に用いられるケースが多くなっています。

他にも事業を譲渡する方法には株式譲渡や事業譲渡などがあります。ただし、株式譲渡では経営権は移動しますが譲渡側の法人格が残り、事業体制を社内のみに一本化しにくいという懸念点があったり、事業譲渡では、事業に関わる設備や人材などの資産一つ一つに譲渡の手続きが必要となったりします。

事業体制を一本化しながらも権利義務や資産を包括的に承継したいと考える場合に、吸収合併が採用される傾向にあります。

また、吸収合併は、子会社を親会社と合併させたり子会社同士を合併させたり、グループ会社間の組織再編に用いられたりすることが多く、経営資源を集中させることによる経営の効率化や意思決定の迅速化、事業を一つの会社に統合することで得られるシナジー効果を期待して行われることが多いです。

子会社の吸収合併

親会社が子会社を吸収合併するケースもあります。子会社を吸収合併すれば、事業のシナジー効果やコスト削減が実現可能です。

合併により消滅する会社の権利義務を全て存続会社に承継させるため、負債を抱えた子会社を救済できるでしょう。そのほか、子会社同士が吸収合併を行う場合もあります。

吸収合併と「子会社化」の違い

吸収合併と子会社化の最も大きな違いは、「法人格が残るかどうか」です。

吸収合併では、消滅会社の法人格はなくなり、存続会社と完全に一つの組織になります。
一方、子会社化は、親会社が子会社の株式の過半数を取得して経営権を支配する状態を指します。この場合、子会社は独立した法人格を維持したまま親会社のグループ傘下に入ります。

つまり、吸収合併は「2社が1社になる」統合であるのに対し、子会社化は「親子関係を築く」ものであり、両者は根本的に異なる手法です。
 

【関連】企業の合併とはどのような手法?定義・吸収合併と新設合併・買収との違い・メリット・デメリットを徹底解説

2. 吸収合併と新設合併の違いを比較

会社合併のもう一つの方法である「新設合併」と、吸収合併の違いを解説します。両者の得られるメリットは共通していますが、株主への対応や許認可の移転などに相違点があります。

新設合併とは?

新設合併とは、新設会社を作り、複数の既存の会社を解散して新設会社に全ての資産を移す合併方法のことです。新設会社として新たにスタートするため、吸収合併に比べてデメリットが多く、新設合併の件数は非常に少ないでしょう。

吸収合併と新設合併の共通点

吸収合併と新設合併を行うと、いずれも合併後に商品・サービス・技術・人材を合わせて、よりよい商品やサービスが提供できる可能性を高められます。両社の顧客・取引先・店舗などの販売網を統合すれば、市場シェアを拡大できます。

存続会社や新設会社の資本力や成長性のアピールにもつながり、市場の期待と信用を得られる点も共通点です。

吸収合併と新設合併の違い

吸収合併と新設合併では、合併の対価として株主に交付できるものに違いがあります。

吸収合併の場合、消滅会社の株主は、対価として存続会社の株式や金銭などを受け取ります。
一方、新設合併の場合、消滅会社の株主が受け取れるのは新設会社の株式などに限定され、金銭を対価とすることはできません。

これは、新設合併で株主に金銭を交付してしまうと、新たに設立される会社の株主が存在しなくなるという事態を避けるためです。このように、合併対価の柔軟性において吸収合併の方が自由度が高いといえます。


新設合併の場合、新設会社に許認可や免許は引き継がれません。新設会社になってから、改めて許認可や免許の取得が必要です。消滅会社が上場企業だったとしても、その立場は引き継がれず、新たに上場申請する必要があります。
 

  共通点 違い
吸収合併 ・事業シナジー効果
・コスト削減
・市場の信用が得られる
・消滅会社の株主は存続会社から現金・株式・社債・新株予約権のいずれかを受け取る
・許認可や免許の申請は不要(一部業種では必要)
新設合併 ・事業シナジー効果
・コスト削減
・市場の信用が得られる
・消滅会社の株主は新設会社から株式・社債・新株予約権のいずれかを受け取る
・許認可や免許の申請が必要

なぜ新設合併より吸収合併が選ばれるのか

実際には、M&Aにおける合併のほとんどが吸収合併であり、新設合併が利用されるケースは極めて稀です。2024年時点のM&A市場の動向を見ても、新設合併の件数は合併全体の1%にも満たない状況が続いています。

新設合併がほとんど採用されない主な理由は、以下の通りです。

  • 手続きの煩雑さ:事業に必要な許認可をすべて新規で取得し直す必要があります。また、上場企業が関わる場合、上場を維持するためには改めて新規上場申請が必要となり、時間とコストが膨大にかかります。
  • コストの増加:新会社を設立するため、吸収合併に比べて登録免許税などの登記コストが高くなる傾向にあります。

これらの理由から、実務上は手続きが比較的簡便で許認可の承継も可能な吸収合併が圧倒的に多く選択されています。

3. 吸収合併のメリット【組織・財務面】

本章では、吸収合併のメリットを取り上げます。「組織の統合に関するメリット」と「金融・資金調達に関するメリット」の2つの側面で解説します。

組織の統合に関するメリット

吸収合併における組織統合に関する主なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 統合効果がスピーディーに得られる
  • 対等な立場でのM&Aをアピールできる
  • 事業に関する権利義務を包括的に承継できる

統合効果がスピーディーに得られる

別のM&Aスキームである株式譲渡などによって子会社化・グループ会社化した場合と比べて、吸収合併は一つの会社組織に全てが統合されるため、M&Aの狙い・目的の効果がより早く得られる点が特徴です。別組織・別会社のままでは、統合効果に一定時間を要します。

対等な立場でのM&Aをアピールできる

これも株式譲渡との比較です。株式譲渡では、グループ会社といっても一方は親会社、一方は子会社の関係になります。

これに対して、吸収合併の場合、存続会社と消滅会社という立場の違いは生じますが、合併比率1:1の対等合併であれば、親子会社にあるような従属関係は生じません。合併後の役員構成や経営など、全て対等な立場で運営されます。

事業に関する権利義務を包括的に承継できる

例えば、事業譲渡のM&Aスキームでは事業・関連資産を買収できます。それに関する権利義務は個別に取得しなければならないため、非常に煩雑な手間がかかります。

その一方、吸収合併では、消滅会社の事業を全て包括承継するため、そのような手間は生じません

金融・資金調達に関するメリット

吸収合併における金融・資金調達に関する主なメリットは、以下の2点です。

  • 買収に資金調達を必要としない
  • 消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性

買収に資金調達を必要としない

株式譲渡や事業譲渡では、原則として買収の対価は現金となり、買い手は多額の資金を準備する必要があります。一方、吸収合併では、対価として自社の株式(存続会社の株式)を交付することが可能です。この方法を用いれば、手元に多額の現金がなくてもM&Aを実行できるため、資金調達の負担を大幅に軽減できる点が大きなメリットです。

消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性

会社法で規定された要件を満たして吸収合併を行った場合、適格組織再編・適格合併が認められます。適格合併では、消滅会社の資産・負債を簿価で引き継げる点がメリットです。これは、実質的に税務上の優遇措置を得たのと同じ効果があります。

消滅会社に繰越欠損金がある場合、適格合併であればこれも引き継げるため、さらに税務上の節税効果が得られます。

4. 吸収合併のデメリット

続いて、吸収合併のデメリットを紹介します。

組織の統合に関するデメリット

組織を統合するうえで、以下のようなデメリットがある点を認識しておかなければなりません。

  • 膨大かつ複雑な手続きが求められる
  • 経営統合(PMI)に大きな負担がかかる
  • 当事会社間で顧客が被っていると取引縮小のおそれ

以下では、その詳細を記載します。

膨大かつ複雑な手続きが求められる

株式の売買で完結する株式譲渡と比べて、吸収合併は会社法に定められた厳格な手続きを踏む必要があり、非常に複雑で時間を要します。

会社が一つ消滅するという重大な組織再編行為であるため、株主や債権者など多くのステークホルダーの利益を保護するための手続きが求められます。具体的には、以下のような多岐にわたる手続きが必要です。

  • 吸収合併契約の締結と事前開示
  • 株主総会での特別決議
  • 債権者保護手続き(官報公告・個別催告など)
  • 反対株主からの株式買取請求への対応
  • 効力発生日後の登記申請(存続会社の変更登記・消滅会社の解散登記)

これらの手続きには専門的な知識が必要であり、事務的な負担も大きくなります。

経営統合(PMI)に大きな負担がかかる

M&A後の経営統合プロセスのことを、PMI(Post Merger lntegration)といいます。M&Aでもくろんだ統合成果を得るためには、PMIが有効に行われなければなりません。

ただし、複数の会社が突然、一つの会社になるわけですから、これをまとめ上げる労力は非常に大きいです。具体的には、以下のような事項を統合しなければなりません。

  • 社風・企業風土
  • 各業務システム
  • 組織再編・配置再編(重複組織や人員をどうするか)
  • 人事制度
  • 経理・総務などの管理システム
  • IT部門

当事会社間で顧客が被っていると取引縮小のおそれ

一般的に、それぞれの企業には固有の顧客が付いていますが、2つの企業が統合すれば同じ顧客を取り合う可能性があります。その場合、取引の規模が縮小する可能性があるため、事前にそれぞれの顧客情報を共有しておかなければなりません。

統合の当事会社間で顧客が重複していると、取引規模が縮小した結果として、統合のメリットであるシナジー効果を十分に得られない可能性がある点に注意が必要です。

金融・資金調達に関するデメリット

吸収合併に伴い、企業のファイナンス活動(金融・資金調達)に関するデメリットが生じる可能性がある点も忘れてはなりません。金融・資金調達に関して、代表的なデメリットとして以下の3つが挙げられます。

  • 株式の現金化が困難となる可能性
  • 買収側株主の持株比率が低下するおそれ
  • 簿外負債・偶発債務など不要な資産の承継リスク

以下では、その詳細を記述します。

株式の現金化が困難となる可能性

吸収合併における消滅会社株主の受け取る対価が株式である場合、仮に存続会社が非上場企業であれば、上場株式のように株式市場で取引できません。したがって、対価で得た株式を現金化したい事情ができた際に、その手段が限られてしまいます。

具体的には、存続会社およびその関係者に株を売るしか方法がありません。その場合、容易に希望額で売却できず、結果的に現金化に困る事態があり得ます。

買収側株主の持株比率が低下するおそれ

株式を対価として合併が行われると、現金の支出なしで吸収合併を行えます。これに伴い存続会社の株主の持分比率が低下します。したがって、割高な合併比率で吸収合併が行われると、株主はネガティブな経済的帰結を招く可能性があるため注意が必要です。

例えば、上場企業の場合、株価が下落するおそれがあるため、合併比率の算定は慎重に行わなければなりません。

簿外負債・偶発債務など不要な資産の承継リスク

消滅会社に簿外負債や不要な資産が存在する可能性があります。例えば、法的な訴訟を起こされる可能性の高い企業を吸収合併した場合、帳簿上負債は認識されていないものの、訴訟によって会社の資産が流出する可能性が高まります。

これは一般に偶発債務と呼ばれるものです。こうしたリスクの評価は極めて難しいため注意が必要となります。

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5. 吸収合併の主な手続きとスケジュール

吸収合併を成功させるためには、会社法に定められた手続きを正確に進めることが不可欠です。ここでは、吸収合併の一般的な流れと、手続きにかかる期間の目安を解説します。
 

吸収合併の大まかな流れ

吸収合併の手続きは、準備段階から完了まで多岐にわたります。主なステップは以下の通りです。

  1. 合併の基本合意と取締役会決議:当事会社間で合併の基本条件について合意し、それぞれの取締役会で合併契約の締結を承認します。
  2. 合併契約の締結:合併比率や効力発生日などを定めた正式な吸収合併契約を締結します。
  3. 事前開示書類の備置:効力発生日まで、合併契約の内容などを記載した書類を各社の本店に備え置きます。
  4. 株主総会の承認:効力発生日の前日までに、各社で株主総会を開催し、合併契約について特別決議による承認を得ます。
  5. 債権者保護手続き:官報への公告や、把握している債権者への個別催告を行い、合併に異議を述べる機会を与えます(原則1ヶ月以上)。
  6. 効力発生:合併契約で定めた効力発生日を迎えると、吸収合併の効力が生じます。
  7. 登記申請:効力発生日から2週間以内に、存続会社は変更登記、消滅会社は解散登記を法務局に申請します。
  8. 事後開示書類の備置:合併に関する事項を記載した書類を、効力発生日から6ヶ月間、本店に備え置きます。

手続きにかかる期間の目安

吸収合併の手続きには、最低でも2ヶ月程度の期間が必要です。特に、債権者保護手続きには1ヶ月以上の期間を確保することが法律で定められています。

株主総会の招集通知期間なども考慮すると、一般的には準備段階から登記完了まで3ヶ月〜6ヶ月程度を見込んでおくとよいでしょう。ただし、会社の規模や交渉の進捗状況によっては、さらに長い期間を要する場合もあります。
 

吸収合併における注意点

手続きを進める上で、特に注意すべき点がいくつかあります。まず、合併比率の算定です。これは株主の利益に直結するため、第三者機関による客観的な算定(デューデリジェンス)に基づいて、公正に決定する必要があります。

また、従業員の処遇や労働条件のすり合わせも重要です。合併後の混乱を避けるため、事前に丁寧な説明と調整が求められます。さらに、反対株主には株式買取請求権が認められているため、その対応も準備しておく必要があります。

6. 吸収合併の手続きを行う流れ

吸収合併の手続きは、一般的に以下のような流れで進めます。

  • 吸収合併契約を締結するための取締役会決議
  • 吸収合併契約の締結
  • 債権者に対する異議申述公告・個別催告
  • 事前開示書類据置
  • 株式買取請求に係る株主への通知または公告
  • 株主総会招集手続き
  • 株主総会決議
  • 合併の効力発生
  • 事後開示書類の据置
  • 吸収合併の変更登記

上記のプロセスのうち、特に以下の手続きの内容を説明します。
  1. 吸収合併契約の締結
  2. 債権者に対する異議申述公告・個別催告
  3. 書類の事前備置
  4. 株式買取請求に係る株主への通知または公告
  5. 株主総会招集手続
  6. 合併契約の承認
  7. 合併の効力発生
  8. 外部への通知
  9. 事後開示書類据置
  10. 登記申請

①吸収合併契約の締結

まずは、吸収合併する当事会社同士で合併契約を結びます。ここから、吸収合併の本格的な合併プロセスが始まります。契約が結ばれない限り、合併プロセスは開始されません。

合併契約では、効力発生日や存続会社が消滅会社の株主に対価として現金・株式・社債のどれを渡すのかなどを決定し記載します。

②債権者に対する異議申述公告・個別催告

債権者は、合併によって債権の回収可能性が変化します。したがって、合併当事者となる企業は、合併効力発生日の1カ月前までに、債権者に対して異議申述公告・個別催告を行わなければなりません。

③書類の事前備置

合併によってどれほど債権の回収可能性が変化するおそれがあるかを確認できるようにするために、企業は合併に際して、事前開示書類の据置が必要です。

事前開示書類は、合併の効力発生日からいつでも確認できるようにするため、6カ月を経過する日まで据置かなければなりません

④株式買取請求に係る株主への通知または公告

合併の効力発生の20日前までに、株式買取請求権に関する株主への通知・公告を行う必要があります。株式買取請求権とは、合併によって既存株主が不利益を被らないようにするための制度のことです。

会社法では、合併に反対する株主は自身が保有している株式を買い取るように会社に請求できます。

⑤株主総会招集手続

合併に際して、会社の最高意思決定機関である株主による意思決定が必要となるため、その招集手続きを行わねばなりません。これを株主総会招集手続きといいます。

株主総会の招集は、その開催日の1週間前までに行わねばなりません。

⑥合併契約の承認

吸収合併を行う場合、効力発生日までに株主から特別決議の承認を得なければなりません。株主に株主総会への招集通知を送り、株主総会決議で承認を得ます。ただし、簡易吸収合併に該当する場合は、株主総会での承認は必要ありません。

吸収合併する際は、官報公告に申し込んで債権者に告知する必要があります。その際に、債権者からの異議申し立てを受け付けることも告知します。債権者への個別告知は省略できますが、大企業の場合などは官報広告と債権者への個別告知を同時に行うケースが多いでしょう。

存続会社・消滅会社ともに、債権者保護のために合併に関する情報を記載した書類を会社に設置する手続きが必要です。書類の内容は会社法で定められています。

合併契約の内容や消滅会社株主への対価に関する書類などが両社に置かれ、一定期間にわたり閲覧可能にしなければなりません。

⑦合併の効力発生

合併契約書で事前に取り決めておいた合併効力日に、合併の効力が発生します。逆にいえば、契約書で取り決めた合併効力日にならないと合併の効力は生じません。

組織再編行為の中で、合併行為は権利・義務の発生と消滅を伴うものです。そのため、合併による発生と消滅が発生する日を明確に定めておく必要があります。

合併すれば、消滅会社の権利・義務が存続会社に承継されて、消滅会社の権利・義務は消滅します。

⑧外部への通知

吸収合併の効力発生日に併せて、対外的な通知も行わなければなりません。以下に、「一般的な通知文」と「子会社が親会社に吸収合併される場合」の通知文の文例を掲示します。

一般的な通知文

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 
平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
この度、株式会社〇〇と〇〇株式会社は株式会社〇〇を吸収存続会社、弊社を吸収消滅会社として、令和〇〇年〇月〇日付で合併いたします。

本合併により、経営基盤の強化並びに品質のさらなる向上を図ることにより強固な経営基盤を構築し、お客様をはじめ、全ての皆様にこれまで以上のサービスを提供して参る所存でございますのでお取引先各位におかれましては引き続き変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

まずは、略儀ながら書中をもってご通知かたがた合併のご挨拶を申し上げます。 敬具

子会社が親会社に吸収合併される場合

謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り心より御礼申し上げます。

弊社はこの度、令和〇〇年〇月〇日をもって親会社である株式会社〇〇〇〇に、全ての事業を引き継ぐことといたしましたので、お知らせいたします。
なお、本件合併は、株式会社〇〇〇〇を存続会社とする吸収合併であり、同日をもって、子会社である当社は解散いたします。

当社の事業は株式会社〇〇〇〇の一事業として継続し、より一層充実したサービスを提供してまいる所存でございます。本件合併により、経営の効率化、技術力の向上、営業力の強化を図り、高品質なサービスの運営をさらに推し進めてまいります。

皆さまには、今後も一層のご愛顧お引き立てを賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもって、ご通知かたがた合併のご挨拶申し上げます。


謹白 
〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇

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⑨事後開示書類据置

合併の効力が発生した後、会社は遅滞なく事後開示書類の据置を行わなければなりません。この事後開示書類も事前開示書類と同じように、合併効力発生日から6カ月にわたって据置しなければならないと会社法で規定されています。

⑩登記申請

吸収合併の効力が発生した後は、存続会社が登記申請を行います。消滅会社の解散登記も同時に行わなければなりません。

登記に必要な書類

登記の際に必要な書類の一覧です。状況に応じて必要な書類と必要ではない書類があります。法務省で案内している必要書類のテンプレートは、会社の実情によって変更が可能です。
 

書類名 内容
株式会社合併による変更登記申請書 登記申請の署名
合併契約書 合併契約の内容証明
合併に関する株主総会議事録 株主総会を行った証明
株主の氏名または名称、住所および議決権数などを証する書面(株主リスト) 株主の氏名・名称、住所、株式数
議決権数とその割合
取締役会議事録 簡易合併を行う場合に取締役会を行った証明
略式合併または簡易合併の要件を満たすことを証する書面 簡易合併の要件を満たす証明
簡易合併に反対の意思の通知をした株主がある場合における会社法第796条第3項の株主総会の承認を受けなければならない場合は該当しないことを証する書面 簡易合併に反対の意思を示した株主がいた場合に添付
公告および催告をしたことを証する書面 債権者への公告、個別催告の内容証明
異議を述べた債権者に対し弁済もしくは担保を供しもしくは信託したことまたは合併をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面 合併への異議申述書、弁済金受領証書
消滅会社の登記事項証明書 消滅会社に関する登記事項の証明
株券提供公告をしたことを証する書面 株券提供を求める公告をしたことの証明
新株予約権証券提供公告をしたことを証する書面 新株予約権証券の提供を求める公告をしたことの証
資本金の額の計上に関する証明書 資本金増加額が間違いないことの証明
登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書 資本金の額が増加する場合に添付
取締役および監査役の就任承諾書 株主総会で取締役や監査役に選ばれたことの承諾
印鑑証明書 印鑑証明
本人確認証明書 本人確認
認可書(または許可書、認証がある謄本) 許可証
委任状 原本還付の請求をする場合に記載
出典:法務局「株式会社合併による変更登記申請書」

登録免許税の支払い

吸収合併を行った際は、存続会社で登録免許税の支払いが発生します。支払額は資本金によって変わりますが、吸収合併しても資本金の額が増加しなかった場合は3万円の固定額です。

吸収合併によって資本金額が増加した場合は、増加した分の資本金に1,000分の1.5をかけた金額が登録免許税額になります。この際、算出した金額が3万円に満たない場合は、3万円が税額です。

増加した資本金の額が消滅会社の資本金額を超えた際は、超えた分の資本金に対して1,000分の7をかけます。つまり、存続会社の資本金分に対しては1,000分の1.5をかけ、消滅会社の資本金を超えた額に対して1,000分の7をかけた額を加算します。

以下の前提で計算例を解説します。

・存続会社の資本金:3,000万円
・消滅会社の資本金:2,000万円
・合併後の資本金:6,000万円
・増加資本金3,000万円のうち、消滅会社の資本金額超過分:1,000万円

登録免許税の計算例
2,000万円×1.5/1,000=3万円
1,000万円×7/1,000=7万円
3万円+7万円=10万円

この場合の存続会社が支払う登録免許税は、10万円です。

消滅会社の登録免許税は、廃止・解散登記なので、一律3万円です。下表に概要を掲示します。
 

項目 内容 課税標準 税率
合併、組織変更などの登記 合併または組織変更もしくは種類の変更による株式会社、合同会社の設立または合併による株式会社、合同会社の資本金の増加の登記 資本金の額、増加した資本金の額 1,000分の1.5
(合併により消滅した会社または組織変更もしくは種類の変更をした会社の当該合併または組織変更もしくは種類の変更の直前における資本金の額として一定のものを超える資本金の額に対応する部分は1,000分の7)
(3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円)
登記事項の変更、消滅もしくは廃止の登記   申請件数 1件につき3万円
出典:国税庁「登録免許税の税額表」

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7. 吸収合併で必要な登記・契約書

吸収合併では、合併により消滅する会社の全ての権利・義務を合併後に存続する会社(存続会社)に承継させます。合併によって一つの会社が消滅するため、存続会社では合併の対価を支払って、権利・義務を包括的に承継するリスクを負います。

吸収合併を行う際は、権利・義務が承継されると同時に、会社が消滅した証拠を残しておかなければ、合併後にトラブルが起きかねません。以下では、吸収合併で必要な登記・契約書を説明します。

吸収合併の登記申請手続き

吸収合併を行った場合、合併の効力が発生した日から数えて2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に行わなければなりません。2週間の期限が設けられている理由は、あまりに登記が遅いと消滅企業の利害関係者にネガティブな影響を与える可能性があるためです。

以下では、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を詳しく説明します。

存続会社の登記申請手続き

吸収会社は、法務局に「株式会社合併による変更登記申請書」を提出しなければなりません。この変更登記の申請書には、「合併したこと」「吸収合併による消滅会社の商号および本店」などを記載します。

吸収合併の際に対価として株式を交付している場合、発行済株式の総数並びに資本金の額を登記する必要があります。変更登記には、合併契約書や取締役会議事録・公告および催告したことを証する書面・消滅会社の登記事項証明書・委任状などを添付しなければなりません。

したがって、書類への記入だけではなく、添付書類の準備も必要です。

消滅会社の登記申請手続き

消滅会社は、吸収合併の効力発生日から2週間以内に本店所在地を管轄している法務局に消滅登記申請を行わなければなりません。この消滅登記申請は、株式会社合併による解散登記申請書に記載します。

解散登記申請書によって行われるのが、解散登記と呼ばれる行為です。解散登記申請書は、基本的に吸収合併存続会社の変更登記と同時に行われる必要があります。

消滅会社では解散登記代金として3万円の支払いが必要となりますが、関連書類の添付は必要ありません。

吸収合併の登記に係る登録免許税額

消滅会社の消滅登記には、登録のための手数料として登録免許税を支払う必要があります。その額は3万円です。

一方、存続会社では、吸収合併によって資本金が増えている場合(合併対価として株式を交付している場合)、その0.15%の登録免許税がかかります。ただし、この場合でも資本金の増加額が消滅会社の資本金を超えていれば、超えた部分に対応する登録免許税は0.7%です。

上記の計算結果として、存続会社が支払わなければならない登録免許税額が3万円を下回っても、登記に際しては登録免許税3万円を支払わなければなりません。つまり、存続会社は最低3万円を登録免許税として支払わなければならないのです。

資本金の増加額に応じて、それ以上に登録免許税を支払わなければならない場合もあります。

吸収合併の契約書における記載内容

吸収合併に際しては、当事者企業の間で、どのような取引が行われたのかに関する記録をきちんと残しておかなければなりません。その中でも重要なのが、吸収合併に係る契約書です。

この契約書の記載事項は法定記載事項と任意的記載事項に分かれており、法定記載事項は必ず記載しなければなりません。任意的記載事項は、記載しなければならないものではないものの、実務上、契約書に記載されることが多いです。

以下では、その詳細をわかりやすく解説します。

法律で規定されている記載内容

吸収合併を行う際の契約書に記載しなければならないのは、以下の事項です。各項目は会社法によってそれぞれ規定されているため、必ず契約書に記載しなければなりません

  • 合併当事者の商号、住所(会社法第749条第1項第1号)
  • 吸収合併消滅会社の株主に対して交付される吸収合併の対価と、株主への割当に関する内容(会社法第749条第1項第2号・第3号)
  • 吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して交付される吸収合併存続会社の新株予約権または金銭の内容と、新株予約権者への割当に関する事項(会社法第749条第1項第4号・第5号)
  • 吸収合併の効力発生日(会社法第749条第1項第6号)

なお、会社法第749条第1項第2号・第3号および第749条第1項第6号は、合併契約の中でも最も重要な事項です。契約書に必ず記載しなければなりません。

第749条第1項第2号・第3号と第749条第1項第4号・第5号は、該当するものがない場合もあります。その場合、記載する必要はありません。

任意で記載する内容

吸収合併契約を行う場合、上の事項は必ず契約書に記載しなければなりません。これは、会社法で記載が求められているためです。

しかし、法定記載事項以外を契約書に盛り込んではいけないルールはありません。したがって、法定記載事項以外にも、契約当事者間で重要であると考えた事項は記載できます。

その代表的な任意の記載事項は、以下のとおりです。

  • 変更する存続会社の定款変更に関する事項
  • 就任する存続会社の取締役その他の役員の選任に関する事項
  • 効力発生日までにおける剰余金の配当の制限に関する事項
  • 効力発生日までにおける、増資・減資、新株発行、組織再編その他株主に利害関係のある重要事項に関する事項
  • 退任する取締役その他の役員に対する退職慰労金の支給に関する事項

吸収合併契約と法定外契約の違い

吸収合併契約は吸収合併に関する契約となりますが、合併時にはそれ以外の契約を結ぶ場合もあります。この主な目的は、契約によって、合併や統合プロセスで行う内容を明確化することです。

この契約は、吸収合併に関する法律によって契約を結ぶことを求められていないので、法定外契約と呼ばれています。経営統合契約などが、その代表例です。

経営統合契約には、吸収合併に関する契約以外に、経営統合の準備体制に関する記述、合併契約後の経営体制・ガバナンスなどの事項が盛り込まれます。

8. 吸収合併のスケジュール

一般的な吸収合併のスケジュールを、以下の表にまとめました。4月上旬に吸収合併契約締結が承認され、手続きが順調に進んで6月に効力が発生した場合のスケジュールになっています。

4月上旬に吸収合併契約が承認されるスケジュールとすると、3月のスケジュールは債権者に向けた説明などの準備期間です。4月中旬には、合併契約の締結や官報公告に掲載申し込みをします。4月下旬のスケジュールは、債権者への催告、契約書などの準備です。

5月には、株主総会に関するスケジュールを組みます。5月上旬に株主総会への招集通知を送ると、5月下旬には株主総会を開催する流れです。順調に進めば、6月には登記申請まで完了します。

ただし、必ずしもスケジュールどおりに進むとは限らないため、変更になる場合の準備も必要です。
 

日程 存続会社 消滅会社
3月中旬 準備期間(債権者への説明) 準備期間(債権者への説明)
4月上旬 吸収合併契約締結の承認 吸収合併契約締結の承認
4月中旬 吸収合併契約の締結、
官報公告の掲載申し込み
吸収合併契約の締結、
官報公告の掲載申し込み
4月下旬 官報公告の掲載、債権者への個別催告、
契約書などの準備
官報公告の掲載、債権者への個別催告、
契約書などの準備
5月上旬 株主に株主総会への招集通知発送 株主に株主総会への招集通知発送
5月下旬 株主総会で吸収合併契約の承認決議 株主総会で吸収合併契約の承認決議
6月上旬 債権者異議申述期間満了、
吸収合併の効力発生
債権者異議申述期間満了、
吸収合併の効力発生
6月上旬
以降
合併の登記申請~合併完了 解散登記申請

9. 吸収合併の事例5選【2025年最新】

ここでは、2025年最新版として、吸収合併に関する5つの事例を取り上げます。

トライトによるメディクルの吸収合併

トライトは、2025年3月、子会社であるメディクルを吸収合併することを決めました。トライトは医療や介護、保育分野で人材サービスやデジタル関連の事業を展開しており、メディクルは看護師や介護スタッフ向けのシフト管理アプリを提供していました。

今回の合併により、メディクルは解散し、トライトに統合されます。これにより、グループ全体の組織運営をより効率的に進めることが狙いです。

参考:完全子会社の吸収合併(簡易合併)に関するお知らせ

メドレーによる子会社2社および孫会社2社の吸収合併

メドレーは、2025年2月、グループ会社4社をまとめて吸収合併することを発表しました。対象となるのは、東京都と高知県にある子会社・孫会社で、いずれも医療関連事業を展開しています。

メドレーは、オンラインの医療情報サービスや遠隔診療を手がけており、今回の合併を通じてグループ内の連携を強化し、事業の成長スピードを高めることを目指しています。

参考:子会社2社及び孫会社2社の吸収合併並びに特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上に関するお知らせ

アーバネットコーポレーションによるエムランドの吸収合併

アーバネットコーポレーションは、2025年2月、子会社であるエムランドを吸収合併することを決めました。アーバネットは不動産の開発・販売を行い、エムランドは賃貸や物件管理などを手がけてきました。

両社は、2022年にエムランドが保有する土地を活用し、都市型賃貸マンションの開発を進めてきましたが、建物は2025年4月に完成し、5月末に売却・引渡しが予定されています。これを機に、エムランドを合併し整理を進める方針です。

参考:完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

日本農業新聞によるJA新聞連の吸収合併

日本農業新聞とJA新聞連は、2025年4月1日付で合併することを発表しました。日本農業新聞が存続会社となり、JA新聞連は解散します。日本農業新聞は農業専門の日刊紙の発行を中心に、広報支援や農業関連の情報提供、セミナー開催など多岐にわたる事業を展開しています。

JA新聞連はJAの広報活動を支える事業を行ってきました。今回の合併により、重複業務の整理と運営の効率化を図り、財務基盤を強化することで、今後の事業発展を目指します。

参考:日本農業新聞とJA新聞連が合併 4月1日

JFLAホールディングスによるアスラポートの吸収合併

JFLAホールディングスは、2025年2月、子会社のアスラポートを吸収合併することを発表しました。JFLAホールディングスは食品や飲料の製造・販売、外食事業などを幅広く展開する持株会社です。

一方、アスラポートはかつて飲食事業を行っていましたが、現在は実質的に事業活動を行っていません。今回の合併は、グループ全体の経営資源を見直し、運営の効率化と合理化を進めることが目的とされています。

参考:連結子会社の吸収合併に関するお知らせ(簡易合併・略式合併)

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10. 吸収合併後の社員の処遇

吸収合併後は、存続会社の労働条件で働きます。子会社化の場合は労働条件の違いで不満が出ることもありますが、吸収合併では同じ労働条件になる点がメリットです。子会社ほどの不平等感はありません。

しかし、消滅会社から存続会社に移る際に労働条件は変わるため、労働条件の内容によっては条件が悪くなるデメリットもあります。合併後のPMI計画をしっかりと組み立て、統合後に不遇な社員や不満を持つ社員を極力出さないことが重要となるでしょう。

特に消滅会社における役員の待遇は、事前にしっかりと練っておかなくてはなりません。合併をきっかけに、モチベーションが下がる役員や、他社から引き抜きの話が持ちかけられる役員がいます。

吸収合併では、優秀な社員や役員などの人材によるシナジー効果のメリットも大きいため、専門家と協力して十分なPMI計画を練り、社員の処遇を丁寧に行う必要があります。

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11. 吸収合併を経験した人の声

実際に吸収合併を経験した人の体験談を集めました。消滅会社側の社員、存続会社側の社員、消滅会社元社長の事例を紹介します。

人事部女性(消滅会社側)

吸収合併で配置転換され、それまでほとんど経験のない業務を担当しました。配置転換された人たちの中には、会社を辞める人も出ています。表面上は同じ会社の社員ですが、内情は大きな距離感がありました。肩身の狭い思いをしていますが、何とか続けています。

契約社員女性(存続会社側)

吸収合併後も業務内容は変わらず、人間関係も比較的良好でした。ただし、合併をきっかけに業務システムや社内ルールが変わったので、慣れるのに時間がかかりました。

会社風土の違いもあってしばらくはゴタゴタしていましたが、どちらの社員も今は新しい環境に慣れて違和感なく仕事ができています。

元ベンチャー企業経営者(消滅会社側)

主に、インターネット広告の販売代理を行うベンチャー企業を経営していました。某大企業に吸収合併され、もともとの事業は大企業側の社員が担当し、私は新たに立ち上げる社内ベンチャーの代表を任されたのです。

社内から好きな人材を引き抜いてもよいといわれ、優秀な社員とともに仕事を開始しました。しかし、大企業側の社員は好奇の目や冷たい目で見る人も多く、しばらくは仕事がしづらい環境に置かれました。

何かと承認が必要だったり短期間での結果を求められたりするので、モチベーションが下がることが多かったです。マネタイズできるようになってからは何もいわれなくなりました。一時期は辞めることばかり考えていたのは事実です。

12. 吸収合併に関してよくある質問

吸収合併に関してよくある質問と回答をまとめました。

子会社の吸収合併で従業員の給与は上がる?

会社が吸収合併を行うと、消滅する側の社員は基本的に存続会社へと移籍することになります。その際の給与や手当などの待遇は、原則として存続会社のルールに従う形となります。ただし、具体的な条件は合併契約の内容によって異なるため、実際の取り扱いはケースごとに変わる可能性があります。

吸収合併の仕訳・会計処理の方法は?

吸収合併と一口に言っても、その形態はさまざまで、通常の取得型、逆取得型、グループ内で行われる内部取引のようなケースなどがあります。それぞれの形に応じて、会計上の仕訳処理にも異なるルールが適用されます。合併は、複数の企業のうち一社が他の企業を取り込む形になりますが、どちらか一方の会計数値だけを使うことはできず、両社の財務情報を適切に統合して扱う必要があります。

例えば、M&Aでよく使われる株式譲渡の場合は、譲渡を受ける会社が譲渡元の子会社になるという明確な関係がありますが、合併では親子関係ではなく、複数の会社が一体となって新たな組織を構成する点が異なります。

13. 吸収合併のまとめ

吸収合併とはどのような手法なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかなど、さまざまな面から解説しました。合併には吸収合併と新設合併がありますが、メリット・デメリットの比較から吸収合併が主流です。

吸収合併は、事業譲渡や株式譲渡とは違って一つの法人格になるので、より協力関係が築きやすいメリットがあります。事業シナジーやコスト削減ができる点もメリットです。

ただし、吸収合併の手続きは複雑で幅広いため、広い知識と豊富な実務経験が求められます。社員や株主の不満にも考慮して動かなければなりません。

したがって、優秀なM&Aコンサルタントに依頼できるかどうかが、吸収合併を成功させるうえで大きな分かれ目になるといえます。

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