2023年04月29日更新
会社を廃業した時の借金はどうなる?残る借金の取り扱いや対応方法について
会社を経営していくうえで借金を有効に活用することは必要です。しかし、会社の業績が悪化し、廃業してしまった後も会社の借金は残るのでしょうか。今回は、会社の廃業後も会社の借金や連帯保証した人の個人の借金は残るのか、会社に残る借金の対応方法などを解説します。
目次
1. 会社の借金は廃業しても残る?
日本人の考え方の中で「借金することは悪いである」といった概念を持つ人もいます。しかし、会社のマネジメントでは借金することは決して悪いことではなく、会社のキャッシュポジションを安定させるために重要な戦略でもあります。
会社の借金は、経営が順調なときは問題ありません。しかし、経営状況が苦境に陥り、廃業する場合は処理が必要です。本記事では、会社が経営破綻に陥った場合に借金をどのように処理するべきか詳しく解説します。
会社の廃業とは
廃業とは単に事業をやめることを意味し、個人でも会社でも事業をやめるときに使うことがあります。会社を廃業するとは、会社のオーナーである株主がさまざまな理由で自ら事業をやめることです。例えば、株式会社が廃業する場合、株主総会で解散決議をして清算および清算結了など一連の手続きを経て法人格を消滅させます。
廃業する際の負債
会社の廃業時点で、まず現存するすべての資産と負債を洗い出す必要があります。その後、資産をすべて換金して負債の返済に充当します。
ここでいう負債には、下記のようなものが含まれます。
- 営業上の責務
- 金融機関からの借入れ
- 買掛金
- リース
- 税金や社会保険料の未納
- 事務所や店舗の賃料および原状回復費用
- 解散手続きで官報公告や個別催告により新たに申し出のあった負債
会社が把握している負債のほか、事務所や店舗の賃料および原状回復費用、解散手続きで新たに申し出のあった負債なども発生する恐れがあることに注意が必要です。
廃業時の負債には、株主や会社の経営者などが連帯保証している個人の連帯保証債務も加わります。
廃業と倒産、清算の違い
「廃業」と混同しやすい言葉に「倒産」や「清算」がありますが、それぞれが意味するものが異なります。以下では、倒産と生産の意味を簡単に解説します。
倒産とは
倒産とは、会社や個人事業主などの事業主体の財政状態が厳しくなり経営を継続できなくなることです。経営破綻とも呼ばれます。倒産は周囲への影響も大きく、関連会社や取引先の連鎖倒産を引き起こす事例もあるでしょう。
倒産状態になった事業主体の債権者への弁済手続きを倒産処理、または倒産手続きといい、私的・法的、清算型・再建型などの区別があります。
清算とは
清算とは、会社が解散した後に現存する債権および債務を整理する一連の手続きです。清算の分類には法律で定められた法定清算と任意で定めた任意清算があり、法定清算はさらに債務超過状態の有無により通常清算と特別清算に分類されます。
債務超過がない場合は、通常清算として会社に現存する資産を換金して債務弁済に充当します。このときに残余財産があれば株主などに分配し、清算手続きを完了させることで(清算結了)法人格が消滅する決まりです。
特別清算は法的倒産処理手続きの1つであり、債務超過状態の疑いがある場合に裁判所の監督下で行われます。債務超過が明白な場合は、破産手続きに移行することもあります。
会社を廃業して借金が残る場合
会社の廃業時は、現存する資産と負債を洗い出します。これは清算手続きで資産を換金して負債を返済しなければならないためです。その際、資産が多いのか負債が多いのかによって会社に借金が残るかどうかが決定します。
会社の廃業時に資産よりも負債が多い債務超過のときには、資産のすべてを換金しても借金を解消できないため、借金が残ってしまいます。借金が残るときは、会社が廃業時に資産超過であるか債務超過であるか、個人の担保や連帯保証があるかなどにより、その後すべき対応が異なります。
担保
会社の廃業時、社長などの個人が所有する資産を会社の負債担保として差し入れている場合は、どのようになるのでしょうか。このようなケースでは、会社が資産超過の場合には会社の資産を換金して債務の弁済に充当できます。しかし、債務超過の場合には会社の資産を換金してもすべての債務を弁済できません。
担保付き債務の弁済が不可能な場合、担保付き債務の債権者は担保を換価して、他の債権者よりも優先して弁済を受けることが可能です。会社が債務超過の場合は、担保が換価されて担保権者に優先的に弁済されるため、結果として担保を差し出した個人の財産が減ります。
連帯保証
会社の廃業時に社長が会社の負債に関して個人で連帯保証をしていた場合は、どのようになるのでしょうか。このようなケースでは、会社の負債が資産よりも多い債務超過の場合、資産をすべて換価しても会社の負債のすべてを返済できず、会社が廃業しても個人の連帯保証債務は残存することになります。
会社を廃業して借金が残らない場合
会社に借金が残らないのは負債より資産が多い資産超過の場合で、資産を換金して借金をすべて返済できます。資産よりも負債が多い債務超過であっても、担保も連帯保証もなく債務免除などにより会社の債権者に債権の回収を諦めてもらえなければ借金は残りません。
2. 会社の廃業時に残った負債の対応
会社を廃業する際に残った負債をどのように弁済するかは、債務者である会社にとっても各債権者にとっても気になるところです。廃業時に負債より資産が多い資産超過状態の場合、資産の換価によりすべての負債が弁済されるので特に問題はありません。
しかし、資産よりも負債が多い債務超過状態の場合は各債権者間の優先順位があり、支払うべき優先順位の高い債務から順番に返済します。破産などの法的倒産処理手続きになった場合に優先順位を間違えて弁済してしまうと、トラブルへと発展しかねないためです。支払うべき優先順位は、高い順に、担保付き債権・財団債権・財団債権に含まれない一般債権・通常の一般債権です。
担保の扱い
会社を廃業する際、返済しなければならない優先順位が最も高いのは、抵当権や質権などの担保が設定されている債務です。
担保には優先弁済的効力が法定されており、破産になっても破産手続きによらずに担保物を換価して他債権者に優先して弁済されることから別除権と呼ばれています。例えば、会社の借入金の担保として会社や経営者個人所有の不動産に抵当権が設定されている場合、債権者(抵当権者)である銀行などへは他債務よりも優先して返済しなければなりません。
財団債権の扱い
財団債権とは、破産手続きになった場合でも破産手続きには組み込まれず、破産財団から優先的に弁済を受けられる債権です。担保付債権に次いで返済の優先順位が高いのが財団債権であり、破産法で規定されている以下のような債権が該当します。
- 破産手続きに関する費用
- 破産管財人の報酬
- 納期限未到来または手続き開始前1年以内の租税債権
- 手続き開始前3カ月分の従業員の給与や退職金
一般債権の扱い
担保付き債権や財団債権以外の一般債権でも、弁済の優先順位があります。主な一般債権の優先順位は以下のとおりで、上から順に優先順位が高くなります。
- 財団債権に含まれない租税債権や従業員の給与など
- 営業上の取引などで発生した買掛金などの一般債権
- 破産手続き開始後の利息や損害金、延滞税・加算税など
- 債権者と破産時には配当優先順位が劣後すると約定していた劣後的破産債権
3. 会社の廃業時に連帯保証で残る借金の対応
廃業した場合に残るのは会社の借金だけはなく、連帯保証をしている個人の借金も残ります。この章では、連帯保証により残る借金の対応はどのようにしたらよいか、任意整理・個人再生・自己破産の場合に分けて解説します。
任意整理
会社が廃業する際、会社経営者が会社の借金に連帯保証しているケースでは、会社の資産よりも債務が多い実質的な債務超過の場合はすべて弁済できません。個人の借金として、連帯保証債務が残るでしょう。
個人の連帯保証債務に関して、各債権者と交渉して返済方法や返済期限を決める方法を任意整理といいます。個人に毎月一定額の収入があれば、その中から返済に充当できる金額や返済期限などを各債権者と交渉し、分割払いなどの新たな条件を決定します。
個人再生
個人の連帯保証債務を返済金額が多いなどの理由により任意整理で返済できない場合、法的手続きである個人再生手続きや破産手続きを選択します。個人再生手続きは債務者である個人に一定の収入がある場合に選択でき、保有している資産を手放さずに経済的再生を図ることが可能です。
裁判所の監督下で借金の大幅な減額も期待でき、返済期間も一般的に3〜5年の期間で設定されます。ただし、借金総額や保有資産によって減額幅や返済期間は変わります。
自己破産
連帯保証債務について個人で任意整理も個人再生手続きも選択できない場合、自己破産手続きを選択せざるを得ないケースもあります。自己破産手続きは支払い不能状態であれば誰でも裁判所に申し立てが可能であり、自己破産手続きが認められれば租税債権などの例外を除いて借金はゼロになります。
厳密にいえば借金自体がなくなるわけではなく、生活に必要な最低限の家財道具を除いた保有資産をすべて処分され、債権者への弁済に充てられる仕組みです。そのうえで返済しきれなかった分は別途免責手続きを行い、借金の支払い義務を免除してよいかどうかが判断されます。自己破産の手続きをすると、完了するまでは宅建士・保険外交員・証券外務員・警備員などの一定の職種に就けません。
4. 会社の廃業で残る借金の対応方法
会社を廃業しても借金が残る場合、廃業以外の対応方法の検討も必要です。この章では、廃業以外の3つの選択肢を解説します。
- 会社も個人も破産や民事再生など法的倒産手続きを選択する
- 事業計画の見直しを行い自主再建を図る
- 会社の売却を検討する
事業計画の見直しを行い再建を図る
自主再建を図る場合、銀行などの債権者に対してリスケジュール(リスケ)と呼ばれる返済計画の見直しを交渉する方法があります。この場合、債権者に返済期間や返済金額を緩和してもらうために経営改善計画と呼ばれる見直しした事業計画を提出しなければなりません。
返済を猶予してもらっている期間に経営改善計画に基づき経営の立て直しを図り、事業再建することで得られたキャッシュフローで再び返済を正常に戻すことを目指します。
会社の売却を検討する
廃業しても借金が残ってしまうようであれば、会社の売却を検討することも選択肢の1つです。会社の売却をすることで、会社の資産や負債は原則として買手会社へ引き継がれます。従業員もそのまま引き継いでもらえるため、雇用を守ることが可能です。
赤字の会社でもM&Aは可能?
廃業ではなくM&Aによる会社売却を検討する場合、借金があり債務超過状態(赤字)の会社では、会社売却を行えないのではと不安視する経営者の方もいます。結論からいえば、赤字会社であっても事業の将来性などに魅力・強みがあれば、M&Aによる会社売却は可能です。
ただし、債務超過状態の会社では、事業の将来性や保有資産の価値などを前面に出して買手と交渉していく必要があります。戦略を立てて会社売却に臨まなければ、相手先を見つけるのは難しいので、早い段階からM&A仲介会社などの専門家へ相談しましょう。
5. 会社の廃業を開始するためのM&Aに関する相談先
会社を廃業して借金が残ってしまう場合、まずはM&Aの可能性を検討してみることをおすすめします。赤字会社のM&Aによる会社売却を実現させるためには、M&A仲介会社など専門家からサポートを得ることがおすすめです。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模のM&A・事業承継を扱う仲介会社です。さまざまな業種でM&A仲介実績があり、経験豊富なM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っています。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。ご相談も無料で受け付けていますので、M&Aをご検討の際はぜひお気軽にご相談ください。
6. 廃業時の借金についてよくある質問
会社の借金は誰が払うの?個人の借金になり得る?
会社の破産した場合は、連帯保証人へ返済義務が生じます。そのため連帯保証人である人物について、個人の借金となり得るでしょう。
連帯保証人には全額の返済義務が生じますが、返済が困難を極める場合には債務整理を行うのが一般的です。
そもそも会社はいくらまで借金できる?
会社が借金できる限度額は、その会社の信用力や返済能力などによって異なるものです。
一般的に、会社が借入れることができる最大額は、その会社の純資産や収益性などに基づいて決定されますが、目安としては資本金の約2倍と言われています。
個人事業主の廃業で借金が返せない場合はどうなる?
廃業の有無に関わらず、個人事業主が借金を返せない場合は、基本的に債務整理を行うことになります。
借金が少額である場合は任意整理、多額である場合には個人再生や自己破産で法的整理を行うことが一般的です。
7. 会社の廃業で残る借金まとめ
会社を廃業しても借金が残るような場合、状況に応じた対応方法を検討する必要があり、M&Aによる会社売却も選択肢の1つです。赤字会社であっても、M&Aによる会社売却は不可能ではありません。しかし、その際は専門家のサポート下で戦略的に進めていくことが大切です。
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