2022年09月18日更新
株式保有特定会社とは?株価の評価方法、メリット・デメリット、株特外しも解説
事業承継は用いる手法により納税額が異なるため、節税に関しての知識や対策も必要です。株式保有特定会社や株特外しの知識を得ておけば、事業承継にも役立てられます。本記事では、株式保有特定会社や株特外しについて解説します。
1. 株式保有特定会社とは?
事業承継をいかにスムーズかつ効率的に行うかは、近年多くの経営者が直面する課題となっています。特に経営者の高齢化の進む中小企業は、社内に十分な専門知識を持ち合わせた人材が不足しているケースも多く、的確な手法を用いた事業承継を選択することがより困難になる傾向があります。
はじめに事業承継の手法を判断する際にも重要となる、株式保有特定会社を解説しましょう。
株式保有特定会社の特徴
株式保有特定会社とは、会社の総資産の50%以上が株式等で占められている会社をさします。つまり、総資産に占める株式保有割合が大きい傾向にある会社のことです。
会社の組織形態として、他の株式会社を支配下に入れるために持株会社を設立し、持株会社が株式会社の株式を所有することで、その株式会社を傘下に収めることがあります。
そのようなケースでは、持株会社の総資産に対する株式の割合が50%以上となることがあり、この場合は株式保有特定会社に該当することになるでしょう。
非上場で同族株主などの株式の主な評価方法には、純資産価額法と類似業種比準法があります。
類似業種批准法は、事業の分類が似ている上場企業の株価を使用して会社の評価額を計算する方法であり、一般的に、純資産価額法より類似業種比準法のほうが評価額を低くすることが可能です。
しかし、株式保有特定会社となるケースでは、原則では純資産価額法での評価が求められており、類似業種比準法を使用できないため、通常の非上場会社に比べて評価額が割高となります。
持株会社との違い
持株会社とは、他の株式会社を支配するのを目的に、株式を保有して傘下にする会社をいいます。グループ全体の管理・運営を統一することで、事業整理や意思統一の迅速化などのメリットが得られるでしょう。持株会社には、純粋持株会社と事業持株会社があります。
純粋持株会社は、事業は行わず管理・運営だけを目的とした会社で、子会社からの配当が売上げとなります。会社の資産の大部分が株式で占有されるため、株式保有特定会社の判定を受けやすいでしょう。
一方、事業を行う事業持株会社の場合は、事業用資産を持つ必要があります。子会社を支配しながら、自らも生産活動などの事業を営む会社です。株式保有割合が25%あるいは50%以上にならないように調整することで、株式保有特定会社の判定を受けないようにするのも可能です。
株式保有特定会社はなぜ作られる?
オーナー経営者は、事業承継における節税対策を目的として、持株会社を設立することがあります。企業オーナーの所有する株式評価を低くして節税をするため、多くの収益を上げている事業を持株会社の子会社として分離します。
ただし、持株会社の株式保有割合が総資産の50%以上となると、株式保有特的会社と判定されるでしょう。この場合、節税対策に有効な類似業種比準法は採用できません。株式保有特的会社では、一般的に割高な評価方法となる純資産価額法の使用が原則となるため留意が必要です。
非上場企業で複数の会社を所有している場合、各会社の株式の分散を防止し管理する目的で、持株会社を設立することもあります。非上場企業は、不特定多数の株主がいることを想定して作られておらず、どのような株主がいるか把握していないことはリスク要因になるからです。このようなケースでも、持株会社が株式保有特定会社に該当することがあります。
株式保有特定会社の判定基準
株式保有特定会社とは、財産評価基本通達の定めにより各資産を評価した価額の合計額のうち、占める株式等の価額合計額の割合が50%以上である会社をさします。つまり「株式等の価格の合計÷総資産価格=>50%」に該当する会社です。
株式等には、株式や出資、そして新株予約権付社債が該当します。株式には海外の企業などが発行するものも含まれ、ゴルフ会員権も株式等の区分に入るでしょう。
一方で、商法で定められている匿名組合契約に基づく出資、証券投資信託の受益証券は株式等の区分に該当しないと定められています。
株価評価とは
株価評価とは、非上場企業の株式を国税庁が作成している基準に従って評価されるものです。上場企業の株式は、証券取引所で取引されているため株価が存在します。しかし、非上場企業は株価が存在せず、非上場株式を会社の規模に応じ、一定の評価方法に従って株価を算出する必要があるでしょう。
株式保有特定会社の判定を受けた場合は、純資産価額方式によって評価することになっています。純資産価額方式では、評価会社が解散した場合に、その会社の株主に分配されるはずの財産価値で評価されるでしょう。
評価対象会社の課税時期における資産から、負債と法人税額等相当額を控除して評価額を算出します。
2. 株式保有特定会社の株価の評価方法
株式保有特定会社の株価を算定する際は、どのような方法が用いられるのでしょうか。この章では、主な評価方法を2つ紹介しますが、株価によって税負担が変わるため各計算方法を知っておくようにしましょう。
純資産価額法で評価を受ける
株式保有特定会社の株価を計算する際は、原則的に純資産価額法が用いられるでしょう。株価は、純資産を発行済株式総数で割ることにより計算されますが、この方法で使用される純資産の価格は相続税法の基準にしたがって計算された金額となります。
具体的には、会社の資産と負債を相続税法に従って評価し直し、そのうえで、再評価の影響による法人税を純資産から減らして再評価後の純資産額を算出します。
このことから分かるとおり、含み益のある資産を保有している会社では純資産価額が高くなるでしょう。結果として株価が高く算出される式となっています。帳簿価格を基に株価の計算をする類似業種比準法に比べて、株価が高くなる傾向にあるのがこの評価法の特徴です。
S1+S2方式による株価の評価
すでに説明したように、株式等保有特定会社は原則的に純資産価額によって評価されますが、会社の状態がより反映されるように「S1+S2方式」と呼ばれる方式を使用するのも可能です。
この方式では、会社の資産を2つの区分に分けてそれぞれ評価し、そのうえで2つの価格を合計することで新たな資産価格を算出します。
1つ目の区分には会社が保有している株式等、もう1つの区分には株式等以外のその他資産が該当します。株式等の区分の評価では、純資産価額法を使用します。その他資産の区分は、会社の規模に応じて、類似業種比準方式・純資産価額方式・2つの併用方式のいずれかを使うことになるでしょう。
このように資産と負債を再評価したうえで純資産価額を算出し、発行済株式総数で割ることで株価を算出します。株式等をどの程度保有しているかは会社により異なるため、この方式を使用することで会社の状態をより適切に反映した評価を行えるでしょう。
一般的に、S1+S2方式による評価額は、純資産価額法による評価額と比較して低くなる傾向にあるので、その結果として税負担額を抑えられるケースが多くなります。
2つの評価方法のうち、評価額が低くなる方法を選択することで節税につなげることが可能になるため、どちらの評価方法も理解しておくとよいでしょう。
3. 株式保有特定会社の株特外しとは
ここまで述べたように、株式保有特定会社に該当する場合は一般的に株価が高くなるので、それに伴い課税額も大きくなります。
そこで、株式保有特定会社に該当しないように「株特外し」を検討することがあります。ただし、課税要件をすり抜けることが主な目的の場合は税務署から認められず、株式保有特定会社として扱われる可能性があるので留意が必要です。
株式保有特定会社の株特外しについて
株特外しとは、会社の総資産に対する株式等の比率を50%未満にして、株式保有特定会社から外すことです。そうすることで、類似業種比準価額を使うことが可能となるので、株価を低く評価できます。
株特外しでは、株式等以外の資産を増やすなどの方法によって、資産構成をコントロールします。株特外しは節税対策として大切な要素となるため、概要を把握しておくことが非常に重要です。
株式保有特定会社の株特外しの方法
株式保有特定会社の株特外しの例として、以下のような方法があります。いずれも、株式等以外の資産を増やすことで、株式等の割合を相対的に下げる株特外しの手法です。
【株特外しの主な方法】
- 借入を行い、総資産内の株式の割合を下げる
- 株式ではない資産を購入する
- 土地保有特定会社にならないように不動産を購入する
借入を行い、総資産内の株式の割合を下げる
株特外しの方法として、借入を行うことが考えられます。持株会社で借入を行えば、会社の現金は当然増えることになり総資産が増加するので、総資産に占める株式等比率を減少できます。
例えば、借入前の会社の総資産が1,000万円、株式が550万円である場合、総資産に対する株式等の比率は55%です。このままでは、株式保有特定会社に該当するでしょう。
そこで、株式保有特定会社で150万円の借入を行うと、株式等の総資産に対する比率は約48%となり、このようなケースでは株式保有特定会社の定義から外れることになります。
株式ではない資産を購入する
借入以外にも、持株会社の株式等以外の資産を増やして株式等の総資産に占める割合を減少させ、株特外しを行えます。その株特外しの別の方法として、例えば、株式等に該当しない匿名組合契約に基づく出資や、証券投資信託の受益証券の購入が考えられます。
土地保有特定会社にならないように不動産を購入する
株特外しを行うために不動産を利用する方法も考えられます。具体的には、持株会社が不動産を購入し、相対的に持株会社での株式等の比率を減少させます。
ただし、この方法を用いる場合、持株会社が一定以上の不動産を保有すると土地保有特定会社に該当するので、純資産価額方式による評価が適用されるため留意が必要です。
土地保有特定会社に該当する保有割合は、大会社で70%以上、中会社で90%以上、小会社に区分される会社は70%以上または90%以上(総資産価額による)とされています。
株式保有特定会社の株特外しの注意点
株特外しは効果的な節税方法の1つですが、このために資産の構成を無理に変えてしまうことのないよう、注意を払う必要があります。
税務署から課税逃れのために株特外しを行ったと判断されて認められない可能性があるためであり、これは財産評価基本通達にも明示的に記されています。したがって、事業を行うために資産を増やす必要があったとの正当な理由が必要です。
株持外しのために本来必要のない資産まで購入し、節税効果以上の損失を出してしまわないよう、留意する必要があります。
4. 株式保有特定会社のメリット・デメリット
株式保有特定会社の判定を受けることによるメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、株式保有特定会社の具体的なメリット・デメリットを解説します。
株式保有特定会社のメリット
事業承継では、株式保有特定会社の判定を受けることによるメリットは特段ありません。しかし、株式保有特定会社の判定を受けやすい持株会社にはメリットもあります。
持株会社とは、他の株式会社を傘下に入れて株式を保有することを目的とした会社をさします。持株会社がグループ全体の意思決定権を所有するので、柔軟でスピーディーな意思決定をすることが可能です。
株式の散逸を防止できる点も持株会社のメリットとして挙げられます。持株会社で株式を管理できるため、自社株が意図しない者へ渡ることなく、経営権を後継者へ移すことが可能になります。
株式保有特定会社のデメリット
株式保有特定会社には、税制面におけるデメリットがあります。ここまでに述べたとおり、持株会社化を行って相続税対策を実行しようとした場合、持株会社が株式保有特定会社と判定されると、持株会社の評価方法は純資産価額法もしくはS1+S2方式となるでしょう。
純資産価額法やS1+S2方式による評価では、株式保有特定会社に該当しないケースの評価方法と比較して、持株会社の評価が高くなる傾向にあります。それに伴い、納めるべき税金も一般的に高く算出されることになります。
株式保有特定会社のM&Aに関する相談先
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5. 株式保有特定会社のまとめ
事業承継を行う際、株式保有会社に該当していると税制面でのデメリットがあります。その対策として株特外しが有効ですが、適切に行わなければ税務署から認められないため注意が必要です。
株式保有特定会社に限らず、事業承継や会社の評価には多角的な断が必要となるため、専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。
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