株式譲渡の税金とは?種類、計算方法、特例制度を徹底解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

株式譲渡は事業譲渡などのM&A手法において、中小企業で最も多く用いられます。しかし、譲渡価額によっては、税金が多くかかる場合があるでしょう。本記事では、事業譲渡との違いや株式譲渡で発生する税金の種類、譲渡所得税を解説します。

目次

  1. 株式譲渡は「譲渡所得」に税金がかかる
  2. 株式譲渡における譲渡所得税の計算方法
  3. 相続した株式の取得費を算出する方法
  4. 株式譲渡の税金と確定申告の必要条件
  5. 株式譲渡にかかる税金の種類と納付時期
  6. 株式譲渡の税金に関する注意点
  7. 株式譲渡の税金に関する特例制度
  8. 株式譲渡の税金に関する相談は専門家へ
  9. 株式譲渡の税金まとめ
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1. 株式譲渡は「譲渡所得」に税金がかかる

株式譲渡にかかる税金とは、どのようなものなのか確認しましょう。

株式譲渡を行って利益を得たときにかかる税金について、知らない人は少なくありません。株式を売却して譲渡所得が出たときは、その譲渡所得に対する税金である譲渡所得税がかかります。

以下で、譲渡所得税を詳しく解説します。

M&Aで株式譲渡を行った利益は譲渡所得税に分類

個人株主が株式を譲渡すると、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得は資産の種類に応じて、総合課税と分離課税に分けられます。以下で譲渡所得税、総合課税、分離課税について見ていきましょう。

譲渡所得税とは

個人が株式を譲渡した場合、譲渡益には譲渡所得税が課税されます。譲渡益は、株式の譲渡価額から、株式の取得価額や取得にかかった費用、株式譲渡にかかった費用を引いて算出します。

譲渡所得税は、15%の所得税と0.315%の復興特別所得税、そして5%の住民税を足した20.315%が税金として課税されます。そして株式譲渡における譲渡所得税は、他の税金と通算しない分離課税の対象です。

総合課税と分離課税について

所得税への課税方法は、所得の種類によって総合課税と分離課税に分けられます。総合課税は、事業所得、給与所得、配当所得、不動産所得など、総合課税の対象となる所得をまとめて税金をかける方法です。

一方、分離課税は、対象となる所得に対して別々に税金をかける方法です。譲渡所得税は、資産の種類によって総合課税の対象になる場合と分離課税の対象になる場合があります。

分離課税に該当する譲渡所得は、山林所得、退職所得、土地建物などの譲渡による譲渡所得などが挙げられます。株式譲渡の場合は株式の売買なので、総合課税ではなく分離課税です。

2. 株式譲渡における譲渡所得税の計算方法

株式譲渡によって発生する譲渡所得税の計算方法と計算例を、上場株式と非上場株式の違いを説明した後にそれぞれご紹介します。

上場企業と非上場企業の主な違い

まず上場株式とは、証券取引所をとおして誰もが売買できる株式です。一方、非上場株式は限られた人しか取引できず、証券取引所に上場していない株式です。

証券取引所で売買する上場株式は別名「公開株式」、取引を公開していない非上場株式は別名「非公開株式」とも呼ばれます。多くの中小企業は非公開株式であり、経営者やその親族が非公開株式を保有します。

上場株式などの計算方法

上場株式の譲渡益は、譲渡価額−必要経費(取得費用+委託手数料など)で算出します。

取得費用とは、株式を取得した際にかかった費用です。委託手数料とは、株式譲渡の際に仲介会社などに支払った手数料です。譲渡益に20.315%を乗じて譲渡所得税を算出します。

上場株式会社の譲渡所得計算例

譲渡価額が1,000万円、必要経費が300万円とすると、譲渡益は1,000万円−300万円=700万円、譲渡所得税は700万円×0.20315=142万2,050円で、142万2,050円の税金支払いが生じます。

非上場株式などの計算方法

非上場株式の場合も、上場株式と計算方法は同じです。

非上場株式の譲渡益は、譲渡価額−必要経費(取得費用+委託手数料など)で算出します。

株式の取得費用がわからないケースもありますが、その場合は譲渡価額の5%を取得費用として計算します。

非上場株式会社の譲渡所得計算例

譲渡価額が1,000万円、必要経費が200万円とすると、譲渡益は1,000万円−200万円=800万円、譲渡所得税は800万円×0.20315=162万5,200円で、162万5,200円の税金支払いが生じます。

3. 相続した株式の取得費を算出する方法

相続を行った場合の株式の取得費はどのように計算したら良いのでしょうか。ここでは、相続を行った際に必ず発生する、株式の取得費を計算する方法を説明します。

取得費は被相続人の取得価額

株式の取得費用は、株式を保有していた被相続人から購入した取得価額です。相続により取得した株式等を相続開始の日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合には、納付した相続税の一部を取得費に加算するのも可能です、これは取得費加算の特例と呼びます。

一般に、株式の取得費は、株式等を取得したときに支払った払込代金や購入代金です。たとえば、100万円で購入していると100万円が株式の取得費となります。しかし、株式を譲渡によって取得したのではなく、相続により取得した場合、被相続人がその株式を取得したときの取得費を引き継ぐでしょう。

売却した株式を取得した時期が古いなどの事情により、取得費がわからないケースもよくあります。そうしたケースは、取得費の額を売却金額の5%相当額(100万円×5%=5万円)とできると規定されています。この100分の5相当の金額は「概算取得費」と呼ばれます。実際の取得費が売却金額の5%相当額を下回る場合も同様の取扱いです。

取得費を算出する方法

株式の取得費は取得原価+購入時の手数料等で計算します。

株式の取得費は、株式を取得した際に支払った購入の対価と購入代金で計算するのが原則です。購入時の手数料には、購入時の名義書換料といったその株式等を取得するのに必要となった費用に加えて、消費税も含まれます。

なお、被相続人の取得原価がわからず、取得費がわからなくなっているケースでは、取得費を売却代金の5%とするのも特例として認められます。 

取得費を調査する手段

譲渡した株式の取得費がわからないケースでは、通常、譲渡所得を計算できません。こうしたケースでは以下のような手順で、取得費の根拠となる書類を探します。

  1. 「取引報告書」で確認してみる
  2. 証券会社の「顧客勘定元帳」で取得費を調査してもらう(過去10年以内に購入したものであれば、お取引した証券会社などで確認できます)
  3. 相続人の日記、手帳、預金通帳、などから取得価額を探す(取得時期がわかればOK)
  4. 株式の名義書換日を調査し取得の時期を確認し、その時期の相場に基づいて取得費を算定する

不明な場合の取得費は譲渡対価✕5%

上で説明したような手順で調査しても、株式の取得費が判明しないケースも少なくありません。こうした場合には「譲渡対価×5%」を取得費とします。

これは、実際の取得費が判明しているにもかかわらず、その取得費が「譲渡対価×5%」を下回るケースでも適用可能です。

4. 株式譲渡の税金と確定申告の必要条件

株式譲渡の際に譲渡所得があるケースでは、1カ所だけから給与を受給し、年間収入額が2,000万円以下のケースにおいて確定申告をする必要はありません。

しかし、給与以外の所得が20万円を超えているケースでは、確定申告を行わなければなりません。

株式譲渡の際、自身の所得が20万円を超えないケースはまれなので、株式譲渡を行ったときは、ほとんどの人が確定申告をする必要があると言えるでしょう。

譲渡損であれば確定申告に節税効果あり

上場株式の売却したケースで、譲渡損が発生していれば、分離課税制度をうまく利用して確定申告すると、所得額を減らせるので、節税効果があります。

具体的には、特定口座で発生した譲渡損を、他の特定口座で得た配当益や譲渡益と一緒に申告して、損失と利益を相殺でき、所得額を下げられるでしょう。

この場合でも、損失が残ってしまうケースでは、繰越欠損制度を利用できます。

この制度を活用すれば、欠損金を翌年以降3年間引き継げるので、確定申告をすれば損失を繰り越せます。つまり、繰り越した損失を将来の譲渡益や配当益と相殺できるでしょう。

【関連】会社売却、M&Aの税金まとめ!節税対策はできる?

5. 株式譲渡にかかる税金の種類と納付時期

個人の株主が株式を譲渡すると、譲渡益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税における税金の内訳は、所得税、住民税、復興特別所得税です。

これらの税金を合わせて譲渡所得税を支払います。以下で所得税、住民税、復興特別所得税について解説します。

所得税

所得には10種類あり、それぞれの所得で税金の計算方法が違います。株式譲渡で得た所得は譲渡所得税とみなされます。

譲渡所得税は総合課税になる場合と分離課税になる場合がありますが、株式は分離課税となります。これは、株式の場合は短期的に大きな利益が出る可能性があるので、総合課税で税金の負担が過剰に大きくなるのを防ぐためです。

株式譲渡で譲渡益が出ると、国税として15%の所得税が課税されます。総合課税の場合、所得税は5%から45%の累進課税です。総合課税であると、株式譲渡の譲渡益が大きいほど課税額も大きくなります。

一方、法人が株主の場合は、譲渡益に対して法人税が課税されます。法人株主は約30%から40%の税金を支払います。

所得税と復興特別所得税は、翌年の3月15日までに確定申告を行って納税します。たとえば、2019年分の所得税と復興特別所得税の納税をする場合は、2020年の3月15日までに確定申告を行います。

住民税

株式譲渡では、所得税の他にも地方税として住民税が課税されます。総合課税の場合住民税は10%ですが、株式譲渡では分離課税のため5%で、住民税に関しては総合課税よりも分離課税が優遇されます。

所得税の15%と住民税の5%を合わせると20%です。総合課税の場合、課税される所得税が695万円以下であると税率が20%なので、695万円を超えると総合課税よりも分離課税がメリットはあります。

確定申告の際に所得税は納税しますが、住民税は後から納付します。確定申告を行った年の4月〜5月頃に住民税の納付書が送られてくるので、一括または4分割で納税します。住民税は納付期限を過ぎると延滞税が追徴課税されるので注意が必要です。

株式譲渡を時価で行う場合、買い手が個人でも法人でも、買い手には税金が課せられません。株式譲渡が外部者の場合は、基本的に時価での取引となるので問題ありません。

しかし、中小企業の同族会社では、親族間で株式を時価よりも安く譲渡したり、無償で譲渡したりするケースがあります。その場合、同族会社の親族に贈与税が課税されたり、譲渡所得ではなく給与所得や一時所得とみなされたりする場合があります。

親族が経営する会社間で株式譲渡を行った際に、同族会社間での税負担が大きくなる場合もあります。

復興特別所得税について

2013年から2037年までの間、東日本大震災の復興財源に充てる目的で、所得税と住民税の他に復興特別所得税が課税されます。

復興特別所得税は、所得税に対して2.1%の復興特別所得税が課税されます。所得税が15%なので、実質税率0.315%が譲渡所得税に加わりました。

所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、合計20.315%の譲渡所得税が課税されます。

6. 株式譲渡の税金に関する注意点

株式譲渡では、上場企業か非上場の中小企業かによって税務に違いがあります。第三者との株式譲渡か、親族間での株式譲渡かによって税金が変わります。株式譲渡によって発生する税金の注意点を見ていきましょう。

株式譲渡の際は過去の申告の適正性に注意

買い手は株式譲渡で株式を取得した際に、売り手側が過去に過少申告や過大申告をしていないか注意する必要があります。

申告ミスなどによる過少申告を放置すると、申告漏れが発覚して追徴課税を支払わなければならないかもしれません。修正申告は買い手側が行う必要があるため注意が必要です。

繰越欠損金に注意

繰越欠損金を目的に赤字会社を株式譲渡などのM&Aによって買収する場合は、注意してください。M&Aで会社の50%を超える株式を取得した後、一定の条件に該当すると、繰越欠損金の通算ができません。

条件はいくつかありますが、M&Aによって取得した目的が明らかに繰越欠損金である場合は、繰越欠損金の通算は認められません。

損益通算ができない点に注意

株式譲渡の損失は、2016年以降上場株式と非上場株式間で損益通算できなくなりました。非上場株式同士の損益通算は、単年であれば可能です。上場株式であれば、3年間の株式譲渡における損失繰り越しが可能ですが、非上場株式は損失の繰り越しができません。

同族会社の中小企業は株式譲渡価額に注意

株式譲渡を行う株式が上場株式であれば、株価は市場で公開されている価額を用いれます。中小企業の非上場株式を株式譲渡する場合でも、売買当事者が第三者である場合は、最終的に合意に至った譲渡価額が時価とみなされるケースがほとんどなので問題ありません。

しかし、株式譲渡を同族会社の親族間で行う場合は、本記事で紹介したように、株価譲渡価額と時価の差額によって時価における株式譲渡の場合とは違う税金が発生する場合があります。

同族会社で親族間の株式譲渡を行う場合は、交渉や契約手続きがしっかりと行われないまま進むケースも少なくありません。

後々親族や同族会社に想定外の税金が発生したり、同族会社内でトラブルが起きたりしないためにも、専門家に依頼してトラブルを防ぎましょう。

相続税とみなされる場合に注意

株式譲渡では、譲渡所得に税金が生じるので、基本的には売り手に税金が生じます。

しかし、親族へ株式譲渡する際は、相続税とみなされるかどうかについて気をつけなければなりません。上記でも述べたように、相続税とみなされると、買い手も取得額の10%から55%が税金として課税されるからです。

株式を時価1/2未満の額で譲渡する際は、買い手に時価との差額に対する贈与税が生じ、無償で譲渡するケースでも同じです。買い手にも税金が生じるのかどうか前もって専門家に確認するのをおすすめします。

【関連】無償の株式譲渡の税金や手続き・契約書の書き方を解説!

7. 株式譲渡の税金に関する特例制度

相続株式を譲渡するケースでは、取得費加算の特例を利用できます。ここからは、この特例制度について説明します。

取得費加算の特例

相続株式を譲渡するケースでは、取得費加算の特例、を利用できます。取得費加算の特例は、上場株式・非上場株式のどちらでも利用可能です。

取得費加算の特例とは、譲渡した株式に対応している相続税額を取得費に加算できる制度で、取得費が増加すると譲渡所得は減少します。ただし、相続税の申告期限の翌日から3年以内に株式を譲渡する必要がありますし確定申告も必要です。

事業承継税制

事業承継税制とは、中小企業の株式を後継者が相続や生前贈与などで承継した場合に、本来支払わなければならない多額の相続税や贈与税を納めるのを猶予する制度です。そして、猶予された税金は、将来的には、免除されるのが想定されています。

8. 株式譲渡の税金に関する相談は専門家へ

株式譲渡は事業譲渡合併などのM&A手法に比べて手続きが簡便なため、中小企業で最も多く用いられるM&A手法です。しかし、非上場の中小企業が、事業承継のために親族間で株式譲渡する場合などは、税務面が複雑になる場合があります。

親族間の株式譲渡では契約書をきちんと作成しなかったり、交渉をしっかりと行わなかったりするケースもあり、後々のトラブルにつながる場合もあります。

そのようなトラブルを防ぐためにも、M&AアドバイザーなどのM&A専門家に相談しましょう。M&Aアドバイザーは幅広い知識を持ち、株式譲渡の業務を一貫して行います。

M&A総合研究所には、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かして案件をフルサポートいたします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

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9. 株式譲渡の税金まとめ

株式譲渡とは、株式を譲渡して経営権を引き継ぐM&A手法です。株式譲渡は事業譲渡などのM&A手法に比べて手続きが簡便なので、中小企業のM&Aでよく用いられます。

個人の株主が株式譲渡で譲渡益を得ると、譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は分離課税なので、他の所得税と損益通算ができません。譲渡所得税の内訳は、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%で、合計20.315%です。

株式譲渡では、売り手側と買い手側が個人か法人か、時価に対して譲渡価額が低いか高いかによって税金が変わります。

上場株式の株式譲渡や第三者との株式譲渡であれば、あまり問題になりません。しかし、同族会社内など親族間での株式譲渡の場合、低廉譲渡や無償譲渡で税金が複雑になる場合があります。

親族間での事業承継目的で株式譲渡を行う場合、契約書などの手続きをしっかりと行わなければ、後々トラブルになるケースもあります。株式譲渡のトラブルを防ぎ極力節税するためにも、事前にM&Aアドバイザーに相談しましょう。

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