2020年10月07日更新
株式譲渡の贈与税の計算方法を解説!贈与と譲渡の税金どちらが得?

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
事業承継などで株式移転を行う際、株式譲渡・贈与ではどちらが得なのでしょうか?本記事では、株式譲渡における贈与税の計算方法を解説しています。株式譲渡・贈与時にかかる贈与税以外に課税される税金についての計算方法も紹介しています。
目次
1. 株式譲渡とは
株式譲渡とは簡単にいうと「株式を譲り渡すこと」をさします。株式譲渡では、売却側企業が保有している株式を、買収企業あるいは個人に譲渡して自社の経営権を移転させます。
株式譲渡の手続きは、株式譲渡契約書を締結したのち株式対価を支払い、株主名義の書き換えを行えば完了するため迅速な取引が可能になります。シンプルな手続きでかつ迅速な取引が行えるため、数あるM&A手法の中でも活用される機会が最も多く、中小規模の企業では一般的に用いられています。
原則として株式は自由な譲渡が可能ですが、株式の種類によっては譲渡先を制限できます。譲渡の制限が設けられた譲渡制限株式の場合は、取締役会や株主総会での承認がなくては、譲渡を行えません。
譲渡制限株式には不都合な第三者への譲渡を防止できるメリットがあるため、中小規模の企業では多く用いられています。株式譲渡はM&Aのみならず事業承継時にも活用される手法ですが、後継者が承継する企業の支配権を得るためには、最低でも議決権の過半数を占める株式移転が必要となります。
保有株式の51%以上を譲渡すれば経営権を移転させたといえますが、株主総会での特別決議案などを考慮して、保有株式の2/3以上を譲渡することが一般的です。
企業間で行う株式譲渡では、株式取得に必要な資金を用意することはさほど難しくありませんが、個人への株式譲渡の場合は資金調達が難しいケースも考えられます。 このような理由から事業承継での株式譲渡の活用は、後継者の資金力によっては厳しい手法であるともいえます。
2. 株式譲渡における株式会社と有限会社の違い
2006年の会社法施行により、現在は有限会社を新設することはできません。つまり現在存続している有限会社は、2006年以前に設立された会社になります。
既存の有限会社は手続きにより株式会社に変更することが可能ですが、手続きを行わず有限会社のまま運営している会社も少なくありません。そのような会社を特例有限会社といい、実質上株式会社と同様に扱われます。
では、株式譲渡において株式会社と特例有限会社では、どのような違いがあるのでしょうか? 株式譲渡の税金に関する解説をする前に、まずは特例有限会社の株式譲渡についてご説明します。
特例有限会社は譲渡制限株式会社である
前章「株式譲渡とは」でご説明したとおり、株式にはいつかの種類があり、譲渡制限株式もそのひとつです。特例有限会社は定款に株式譲渡に関する規定がなくても、会社法により譲渡制限株式の規定があるものとして扱われます。
さらに特例有限会社では譲渡制限株式の廃止は不可能であり、仮に株主全員が廃止に同意したとしても認められることはありません。
つまり、特定有限会社では株式譲渡の承認に関する変更は行えないため、「特例有限会社が譲渡制限株式会社である」ということになります。
有限会社の株式譲渡
株式会社の場合、株式譲渡の承認は取締役会で行われます。取締役会が設置されていない株式会社の場合は、株主総会より承認を得ます。
しかし、特例有限会社では会社法により取締役会の設置はできないため、株式譲渡の承認は株主総会で決議されます。
特例有限会社では株式譲渡の承認に関する変更を行うことはできませんが、「誰(どこ)が承認を行うか」について会社法上の規制はないため、定款に規定があれば株主総会以外を承認機関とすることもできます。
特例有限会社の株式譲渡は株主総会普通決議要件となり、出席した議決権を持つ株主の賛成が過半数以上であれば承認されます。
3. 株式譲渡と贈与の共通点と違い
前章では株式譲渡の概要についてご説明しましたが、よく似た言葉に「株式贈与」があります。「株式譲渡」と「株式贈与」にはどのような違いがあるのでしょうか?株式譲渡と株式贈与はどちらも後継者の株式取得を目的として事業承継で活用されることの多い手法です。
譲渡あるいは贈与による株式移転は、相続税対策を目的として行う場合が多いことや、取引が時価によって計算されることも共通点といえます。株式譲渡と株式贈与の大きな違いは「株式譲渡=売買」「株式贈与=無償で与える」という点です。
株式譲渡を活用した場合、売り手側は売買によりまとまった資金を得られますが、後継者の資金力が十分でないケースでは厳しい手法であるといわざるを得ません。
一方の株式贈与では、後継者の資金力を考慮せずに株式を移転させられますが、贈与税の発生が問題となることも考えられます。
では、どちらの手法が有利なのかと考える経営者の方もいることでしょう。結論からいえば、一概に有利不利を判断することはできません。
というのも、時価の計算方法による差異以外に、株式取得の資金調達・贈与税額・取得税額(譲渡の場合)などを、総合的に判断しなければならないためです。
そのほか株式の移転計画も考慮する必要があるので、専門家にサポートしてもらいながら判断するといいでしょう。
4. 譲渡税と贈与税の税金はどちらが得なのか?
譲渡税と贈与税の課税額を比較する前に、株式移転による事業承継では手法により課税される税金が異なる点を確認しておきましょう。株式移転の手法による税金と課税対象者は以下のようになります。
- 株式贈与の場合→後継者に贈与税が課税される
- 株式譲渡の場合→譲渡側の経営者に所得税が課税される
前章でご説明したように、株式譲渡・株式贈与のどちらが有利なのかを考える場合、メリット・デメリットを総合的に判断しなくてはなりません。
同様に、譲渡税・贈与税を比較する場合もそれぞれのメリット・デメリットを理解しておく必要があります。
株式譲渡のメリット
株式譲渡のメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 譲渡益が入る
- 分離課税制度により税率に変動はない
- 譲渡益と譲渡損失による相殺が可能
- 公的機関への手続き不要
株式譲渡を行うときは、どのようなメリットが期待できるのかを、事前に把握しておくようにしましょう。
①譲渡益が入る
株式譲渡では売り手側は株式の譲渡代金を受け取りますが、そのときに発生する利益を「株式譲渡益」といいます。株式譲渡の活用することにより、売り手は譲渡益を得られます。
譲渡益を得ることにより、引退後の生活不安が取り除けたり新たな事業へチャレンジしたりできるのは、株式譲渡を活用するメリットのひとつといえます。
株式譲渡益は「売却額-(取得額+手数料)=譲渡益」により計算でき、この取得費とは最初に当該株式を取得した際にかかった費用を意味し、創業者の場合は会社設立時の資本金をさします。
もし取得費が不明な場合は、概算取得費による算出方法により売却額の5%を取得費として計算します。また手数料は、株式譲渡を行う際にM&Aコンサルタント会社などに支払ったものが当てはまります。
②分離課税制度により税率に変動はない
株式譲渡を行い売却により得た譲渡益は「譲渡所得」に区分され課税対象となります。譲渡所得はさらに「上場株式などに係る譲渡所得など」と「一般株式などに係る譲渡所得など」の2つに分類されます。
株式譲渡により得た譲渡利益は所得税の対象になりますが、申告分離課税制度が適用されるため、総合課税対象となる所得とは別に計算されます。
総合課税と分離課税の違いを簡単にいうと以下のようになります。
- 総合課税→さまざまな所得を合計して課税額を計算する
- 分離課税→ほかの所得と合算せず個々に課税額を計算する
株式譲渡にかかる税金は、上場株式・一般株式ともに同じ税率で計算され「株式譲渡による譲渡所得の20%(所得税15%+住民税5%)」が課税額になります。これに加え2037年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%を、併せて申告・納付しなければなりません。
③譲渡益と譲渡損失による相殺が可能
2016年以後の株式は「上場株式など」と「一般株式」の2つに分類されています。
上場株式などとは、上場株式・公募株式投資信託・国債などの特定公社債をさします。一方の一般株式とは、非上場株式・私募株式投資信託受益権などをさし、前述した特定有限会社の株式は一般株式に含まれます。
2015年以前は、上場株式などと一般株式の損益を通算できましたが、法改正により通算ができなくなったため、別々に申告しなくてはなりません。
例えば、株式の売買を行い上場株式での譲渡利益が100万円、一般株式での譲渡損失が20万円だったとします。
2015年以前では2つの株式は通算できたため「100万円-20万円=80万円となり譲渡益80万円」の申告になりますが、改正後は通算ができないため「譲渡益100万円、譲渡損益マイナス20万円」をそれぞれ申告しなくてはなりません。
ただし、本年中に株式譲渡の損失が生じた場合、翌年以降3年間繰り越せることが認められています。この繰越制度により、仮に翌年以降に株式譲渡を行い譲渡益が生じたとしても、繰り越した譲渡損失と相殺できます。
注意しておかなければいけないのは、繰越制度を活用して相殺申告をするためには、該当する株式譲渡について毎年申告をしなければならないという点です。
もし株式譲渡を行わなかった年であっても、繰越期間に該当しているのであれば繰越損失を申告する必要があり、申告を怠ってしまうと繰越した譲渡益と譲渡損失を相殺することは、原則として認められません。
④公的機関への手続き不要
株式譲渡を行うメリットのひとつには、公的機関への手続きが不要だという点が挙げられます。株式譲渡では、株主が交代するだけで企業名・資産・債権や債務・契約関係や許認可などは、そのまま引き継がれるので対外的な変化はほとんどありません。
株式の数や機関構成も変わらないため、公的機関への手続きは基本的に不要です(ただし、新株を発行する場合や、株式の発行可能数を増やす場合は増資手続きが必要)。
株式譲渡はシンプルな手続きで行えますが、会社法に定められた手続きを厳格に行わなければなりません。また、会社法に準拠した手続きを経ずして行った場合、株式譲渡は無効となるため注意が必要です。
株式譲渡のデメリット
株式譲渡のデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 譲渡益への税金がかかる
- 資金力が必要
- 手続きが簡単なので不備の不安
株式譲渡を行うときは、デメリットとなる点についても、事前に把握しておくことが重要です。
①譲渡益への税金がかかる
株式譲渡を行って生じた譲渡益は「株式譲渡所得」に分類され、所得税の課税対象になります。株式譲渡所得に対する課税には「申告分離課税」が適用され、「譲渡益と譲渡損失による相殺が可能」も項で触れたように、上場株式などと一般株式などを別々に計算されます。
所得税のかけられ方は所得区分により異なっており、総合課税と分離課税のどちらかが適用されます。原則的に所得税は総合課税になり、簡単にいうと「各種所得を合計して税額を計算する」という方法になります。
一方の分離課税は「他の所得との通算はせずに、個々に税額を計算する」方法になり、総合課税と比較すると適用税率が低くなるケースもあります。
株式譲渡に関する税金と計算方法については、事項以降でも詳しくご説明しますので、そちらも併せて確認してください。
②資金力が必要
株式譲渡を行う場合、買い手(譲受)側は株式取得に係る資金の用意が必要になります。通常では株式譲渡の対価は現金になるため、買い手側の資金が足りない場合は、銀行などの第三者から資金を調達しなければなりません。
しかしながら、銀行などの第三者が融資をしてくれるか否かは不確実なため、買い手側の資金力によっては株式譲渡自体が成立しないことも考えられます。
このように、株式譲渡を行う場合は買い手側にある程度の資金力があることが前提条件となるため、ケースによっては資金不足がデメリットになる可能性もあります。
③手続きが簡単なので不備の不安
株式譲渡は公的機関への手続きが不要な点がメリットのひとつに挙げられますが、反面「手続きに不備があった場合も、気づかないまま進めてしまう可能性がある」というリスクを抱えています。
とりわけ親族経営の中小企業などでは、株主の大半が親族であるケースが多いため、株式譲渡の手続きをぞんざいに行ってしまう可能性も少なくありません。株式は相続対象となる財産にあたるため、トラブルの原因となったり譲渡手続きを蒸し返されたりすることも考えられます。
それだけでなく株式譲渡の手続きに不備があった場合は、譲渡自体が無効となるケースもあるため注意が必要です。
株式譲渡を行うには会社法に準拠した手続きを厳格に進めなくてはならないため、少しでも不安のある方はM&Aコンサルタントや会計士などの専門家にサポートをしてもらいながら進めるのがいいでしょう。
株式贈与のメリット
株式贈与も自社株式を後継者へ移転させる手法として、株式譲渡と同様に広く活用される手法です。株式贈与のメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 税金面の負担を減らせる
- 暦年課税による基礎控除などの特例がある
- 後継者への引き継ぎに有利
株式贈与を活用するときは、どのようなメリットが期待できるのか、事前に把握しておくようにしましょう。
①税金面の負担を減らせる
株式贈与を行う最大のメリットは節税です。株式に限らず、現金や預貯金・不動産など何らかの財産を贈与すれば贈与税の課税対象となりますが、この場合に贈与税の支払い義務が発生するのは受贈者(贈与された者)になります。
贈与税の課税率は贈与金額により異なりますが、最大では55%の税率で計算されるため、金額によっては受贈者にとって大きな負担ともなりかねません。ただし、贈与税には基礎控除が認められており、「贈与額が年間110万円以下の場合は非課税」となります。
基礎控除の110万円は受贈者ごとに計算されるため、例えばAさんがBさんとCさんの2人から100万円ずつ贈与された場合は、合計200万円の贈与を受けたことになり「200万円-110万円(基礎控除分)=90万円」となり、90万円は贈与税の課税対象となる点には注意しましょう。
また、株式評価額が低いタイミングを見計らって贈与を進めることも可能であり、贈与を行うことにより現経営者の相続財産を減らせるため、相続税対策としても有効な手段といえます。
ただし、相続発生時に過去年以内に贈与を行っていた場合、贈与分は相続財産に持ち戻しとなり相続税の課税対象になります。
②暦年課税による基礎控除などの特例がある
暦年課税とは、贈与税に関する課税方法のひとつで「年間110万円までの贈与は非課税である」というものであり、毎年この非課税枠を利用して贈与を行うことを「還暦贈与」といいます。
贈与税は相続税に比べ、自社株式などの移転財産評価額に対する税率が高いため、まとまった額を贈与すると税負担が重くなってしまいます。還暦課税を利用した贈与方法であれば「何年かに分けて何度も贈与を行える」ため、数年かけて贈与を行えば十分な節税効果を得られます。
ただし、100万円ずつ贈与することが受贈者と約束されているような場合は、年ごとに発生した個別の贈与とは認められず、「約束した期間にわたり年間100万円ずつ給付する権利」を贈与したものとして、贈与税の課税対象になるため申告を行わなければなりません。
③後継者への引き継ぎに有利
①②のほか「相続時精算累進制度」を活用した贈与方法もあります。相続時精算課税制度では、基礎控除がある暦年課税とは違い、贈与者が亡くなるまでの間に累計2,500万円までの財産贈与を非課税で行えます。
相続時精算課税制度を活用して株式贈与を行う場合、評価額は贈与時のものを用いるため、後継者が引き継ぎ将来的に株価が上がったとしても相続税への影響はありません。
つまり、将来的に株価の値上がりが見込まれる場合などは、相続財産の評価を下げられるため、相続税の節税対策として有効な手段ともなります。相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母・祖父母から、推定相続人である20歳以上の子・孫に贈与する場合に利用できます。
時精算課税制度を利用した場合、2,500万円を超えた分については一律20%の税率で課税されます。また、贈与した人が亡くなり相続が生じた場合、相続時精算課税制度により贈与された財産は、相続税の課税対象額に含めて相続税を計算します。
相続税計算時、すでに支払った贈与税がある場合は相続税額より差引かれ、引ききれない分は還付を受けられます。ただし、相続時精算課税制度は一度選択した贈与者・受贈者間の贈与については、暦年課税贈与に変更することはできなくなる点には注意が必要です。
株式贈与のデメリット
株式贈与のデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 贈与税の負担がある
- 相続クーデターの危険性がある
- 場合によっては高額な税金負担の可能性がある
株式贈与を行うときは、デメリットとなる点についても、事前に把握しておくことが重要です。
①贈与税の負担がある
前述のとおり、株式に限らず現金や預貯金・不動産など何らかの財産を贈与すれば、贈与税の課税対象となります。
贈与税では年間110万円までの贈与は、基礎控除となり非課税になりますが、それ以上の贈与があった場合は基礎控除額を差引いた額に対して贈与税が課税されます。
贈与税は課税価額ごとに税率・控除額が設定されていますが、一度に多額の贈与を行えば課税される贈与税額も大きくなり、税負担がデメリット要因になる場合もあります。
贈与税の計算方法については、後述の「株式贈与にかかる贈与税の計算方法」で詳しく説明していますので、そちらもお読みください。
②相続クーデターの危険性がある
株式贈与を事業承継に活用する場合は「相続クーデター」の危険性があることに注意しておかなければなりません。一般的に事業承継では、経営者が後継者へ株式の大半を承継させ経営権を移転させますが、税金対策を考慮して還暦贈与を活用するケースもあるでしょう。
還暦贈与は経営者が死亡する前に非課税枠を利用して行いますが、想定したより早く経営者が死亡してしまうケースも考えられます。そうなれば移転しきれなかった株式は、贈与ではなく相続という形で後継者へ移転します。
ここで障害となり得るのが譲渡制限株式の売渡請求権の存在で、中小企業のほとんどは譲渡制限株式であり、定款により株式の売渡請求権が認められているためです。
譲渡制限株式の売渡請求権は、望ましくない第三者への株式取得を防止するには有効ですが、売渡請求権の行使は後継者であっても行えるため、もし後継者以外の株主が結託して売渡請求を行えば、議決権のない後継者は相続した株式をすべて失うことになります。
③場合によっては高額な税金負担の可能性がある
贈与する株式が多い場合、課税枠を活用した贈与を数年に分けて行うより、年間110万円を超える額を贈与した方が、結果的に支払う税金が済むケースもあります。
ここまで解説した方法と矛盾しているように感じる方もいるかもしれませんので、具体例を見ていきましょう。例えば、贈与する株式価格が3億円の場合、非課税枠を活用して子・孫四人に5年間にわたり贈与すれば相続税は5,600万円になります。
それに対して年間贈与額を310万円に増額し、同様の贈与を行った場合の相続税は3,500万円になります。年間110万円を超える贈与では受贈者に対して贈与税がかかるため、この場合は子・孫に対して600万円の贈与税が課せられます。
支払う必要がある税金の合計額を計算すると「相続税3550万円+贈与税600万円=4150万」となります。注意する必要があるのは、高額の贈与を行うケースでは贈与税の税率が相続税より高くなる場合もあるという点です。
贈与時の相続税が安くなったとしても、それ以上の贈与税を支払うとすれば相続対策とはいえないでしょう。効率よく贈与を行うためには、財産状況をよく理解し総合的に判断することが必要になるため、会計士など専門家のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。
5. 譲渡した株式にかかる税金
ここまでご説明したとおり、株式譲渡を行った場合、売買によって生じた譲渡益は株式譲渡所得に分類され、課税対象になります。
株式譲渡に伴う税金を計算する場合、税務上の株式譲渡価格は原則として「適正時価」を用います。上場企業株式であれば取引所相場によって時価は明確ですが、非上場企業株式の場合は評価を行わなければなりません。
税務上の取り扱いは、上場企業の株式なのか非上場企業の株式なのか、譲渡側(売り手)は法人なのか個人なのか、さらに時価算出方法によっても異なります。
この章では、株式譲渡を行った際にかかる税金について、法人・個人それぞれのケース別に解説します。
個人が譲渡した場合
個人が保有する株式の譲渡を行った場合、売買によって生じた譲渡益は譲渡所得に分類され、課税対象になります。
譲渡益は「売却で得た金額-株式取得や手続きに要した費用」で算出されます。譲渡所得税は申告分離課税の対象であるため、ほかの税金と通算することはできないことから、上場企業株式と非上場企業株式の損益通算をすることはできません。
譲渡所得税は「所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%」で計算し課税されます。
注意しなくてはならないのは、取引した株式譲渡価額が時価より著しく高い、あるいは低い金額だった場合や、譲受側(買い手)が法人なのか個人なのかによって、ほかの税金も課せられる可能性がある点です。
個人が売り手となり株式譲渡を行った際に、課せられる税金と適用条件(時価と譲渡価額の差額)は以下のとおりです。
①個人への譲渡 | ②法人への譲渡 | |
時価 | 売り手→譲渡所得税 買い手→課税なし |
売り手→譲渡所得税 買い手→課税なし |
時価-譲渡価額=時価1/2未満 |
売り手→譲渡所得税 買い手→贈与税 |
売り手→譲渡所得税 買い手→法人税 |
時価<譲渡価額 | 売り手→譲渡所得税、贈与税 買い手→課税なし |
売り手→譲渡所得税 買い手→寄付金とみなされ 寄付金課税が適用 |
①個人への譲渡
個人から個人への株式譲渡を行った場合、譲渡価額と時価との関係により、かかる税金が変わります。
時価で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して譲渡所得税が課せられますが、買い手への課税はありません。
時価より低い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して譲渡所得税が課せされ、買い手はみなし贈与として、時価と譲渡価額の差額に対し贈与税がかかります。
また、時価より高い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対する譲渡所得税に加え、「買い手より差額分の贈与を受けた」と扱われるため、贈与税が課税されます。なおこの場合は、買い手への課税はありません。
②法人への譲渡
個人から法人への株式譲渡を行った場合も、①と同じように譲渡価額と時価との関係によりかかる税金が変わります。
時価で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して譲渡所得税が課せられますが、買い手への課税はありません。
時価より低い価額(譲渡価額が時価の1/2未満である時)で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して譲渡所得税が課せられます。
この時、譲渡価額が時価の1/2以上でも、一族会社・同族会社への株式譲渡では、みなし譲渡所得として譲渡益に対して譲渡所得税が課せられる場合もあります。
また買い手は「時価と譲渡額の差額分を売り手から贈与された」と扱われ、差額に対して法人税が課せられます。
時価より高い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対する譲渡所得税が課せられます。買い手は「時価と譲渡価額の差額分を寄付された」と扱われるため、寄付金課税が適用されます。
この時、売り手が買い手である法人の役員である場合は、差額分は役員賞与になり、損金不算入の適用になります。
法人が譲渡した場合
法人が保有する株式の譲渡を行った場合、売買によって生じた譲渡益には法人税が課せられます。
法人が株式譲渡を行った場合にかかる税金は、買い手が個人なのか法人なのかによって変わるほか、売り手側の法人と買い手側の個人とが雇用関係にあるか否かなど、条件によっても課税される税金は変わってきます。
例えば、法人が個人に対し株式譲渡を行った場合は、原則として買い手である個人への課税はないですが、同族会社などで法人から役員へ無償譲渡あるいは低廉譲渡を行った場合は、買い手にも税金がかかります。
法人が売り手となり株式譲渡を行った際に、課せられる税金と適用条件(時価と譲渡価額の差額)は以下のとおりです。
①個人への譲渡 | ②法人への譲渡 | |
時価 | 売り手→法人税 買い手→課税なし |
売り手→法人税 買い手→課税なし |
時価-譲渡価額=時価1/2未満 | 売り手→法人税、差額は 寄付金とみなされる 買い手→贈与税 |
売り手→法人税、差額は 寄付金とみなされる 買い手→法人税 |
時価<譲渡価額 | 売り手→法人税 買い手→課税なし |
売り手→法人税 買い手→寄付金とみなされ 寄付金課税が適用される |
①個人への譲渡
法人から個人への株式譲渡を行った場合、譲渡価額と時価との関係や、買い手が法人の役員(または従業員)であるか否かなどの条件によって、課せられる税金が変わります。
時価で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して法人税がかかりますが、買い手への課税は発生しません。
時価より低い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手には譲渡益に対して法人税が課せされ、時価と譲渡価額の差額は寄付金として扱われます。また、買い手には所得税が課せられます。
ただし、買い手の個人が法人の役員である場合は、差額は役員賞与として扱われ損金不算入になります。また、買い手の個人が従業員である場合は、差額は賞与として扱われます。
時価より高い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手には法人税がかかりますが、買い手への課税は発生しません。
②法人への譲渡
法人から法人への株式譲渡の場合も、譲渡価額と時価との関係により、課税される税金が変わります。
非上場株式の譲渡では、「上場有価証券など以外の株式の価額の特例(法人税法9-1-14)」などに準じて、時価を算出します。
時価で株式譲渡を行った場合は、売り手は譲渡益に対して法人税が課せられますが、買い手への課税は発生しません。
時価より低い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手は譲渡益に対して法人税が課せされるほか、時価と譲渡価額の差額は寄付金として扱われます。また、買い手は差額分の贈与を受けたと扱われ、受贈益に対して法人税が課せられます。
時価より高い価額で株式譲渡を行った場合は、売り手は譲渡益に法人税がかかり、買い手は差額分の寄付を受けたものとみなされるため、寄付金課税が適用されます。
株式価格の評価方法
株式譲渡を行う際、売買価額には時価を用い、ここでいう時価とは「取引市場におけるその日の当該株式価格」をさします。上場企業の株式であれば株式市場で日々取引されているため、時価は簡単に知れます。
しかし、非上場企業の場合は明確な時価がないため、必要な要素から算出しなければなりません。非上場株式の時価を算出する方法には、以下の方法があります。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 配当還元方式
①類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、非上場企業の株式を同業他社の株式と比較して、株式価格を算出する方法です。
主に大手非上場企業の株式を評価するときに用いる方法で、上場企業の株式価格をもとに算出した場合は市場価格が反映されるため信憑性が高い、という特徴があります。
しかし一方で、比較対象とする企業は非上場だった場合は、信憑性はさほど高くないとみなされます。
②純資産価額方式
非上場企業の純資産を基準として株価を算出する方法で、主に小規模の非上場企業での株式価格算出に用いられます。
算出時は貸借対照表の金額を基に行うため、客観性があり信憑性も高くなります。また含み損益も考慮されるため、実際の財務状況を反映できます。
しかし、将来的な見込み収益は株価に考慮されない点はデメリットといえるでしょう。
純資産価額方式には「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2種類があり、それぞれの計算方法および特徴は次のとおりです。
- 簿価純資産法=「簿価純資産額÷株式の総数=株価」含み損益を純資産に含める場合は、評価時の実質的な価値が反映される
- 時価純資産法=「時価純資産額÷株式の総数=株価」全資産を時価評価するのは事実上困難なため、株式譲渡時などは交渉が難航する可能性もある
③配当還元方式
非上場企業の年間株式配当金を、一定利率で還元して株価を算出する方法です。一般的に、同族以外の株主が取得した非上場企業の株式は、株式発行元の企業規模にかかわらず、この算出方法を用います。
しかし、配当還元方式では企業の全体的な価値するのは困難なため、株式譲渡時には不向きな方法といえるでしょう。
株式譲渡にかかる税金の計算方法
前述のとおり、株式譲渡により生じた譲渡益は譲渡所得税の対象になります。
譲渡所得は「上場株式などに係る譲渡所得など」と「一般株式などによる譲渡所得など」の2つに分けられます。譲渡所得は給与などほかの所得とは分けて税金を計算する申告分離課税になります。
譲渡所得は上場株式・一般株式とも「譲渡価額-取得にかかった費用(取得費+手数料)」で計算され、個人の場合は20%(所得税15%+住民税5%)、法人の場合は、法人の規模により異なる税率が課税されます。
株式譲渡にかかる個人の税金を、以下の取引例で計算してみましょう。(※復興特別所得税は考慮しない)
A社は保有する全株式を5,000万円でB社へ譲渡し、A社の資本金は1,000万円で、この株式譲渡にかかった費用合計は300万円です。
譲渡益=譲渡価額-取得にかかった費用⇒8,000万円−(1,000万円+300万円)=6,700万円
所得税額=6,700万円×15%=1,005万円
住民税額=6,700万円×5%=335万円
以上のように計算されるため、この株式譲渡によりA社が支払う税金は1,005万円と335万円の合計額である1,340万円になります。
6. 贈与した株式にかかる贈与税
前章では株式譲渡にかかる税金についてご説明しましたが、後継者の株式取得を目的とした事業承継では、株式譲渡以外に株式贈与の手法が用いられることも多いでしょう。
贈与と聞くと個人が行うイメージが強いでしょうが、民法で定める贈与とは個人間に限定されているわけではないため、個人と法人や法人と法人といった関係間で贈与が行われることもあります。
株式贈与にかかる税金は、贈与側は法人なのか個人なのか、といった条件によっても異なります。
この章では、株式贈与を行った際にかかる税金について、法人・個人それぞれのケース別に解説します。
個人が贈与した場合
個人が保有する株式の贈与行った場合、贈与を受けた側(受贈者)の財産が増加するため、課税要因が発生します。
株式贈与にかかる税金は、原則的に贈与した側(贈与者)への課税はありませんが、受贈者との関係によっては税金が課せられる場合もあります。
贈与者と受贈者への課税についての取り扱いは、贈与した相手が個人なのか法人なのかによって変わります。
個人が贈与者となり株式贈与を行った際に、課せられる税金と課税関係は以下のとおりです。
①個人への贈与 | ②法人への贈与 |
贈与者→課税なし 受贈者→贈与税 |
贈与者→みなし譲渡所得税 受贈者→法人税 |
①個人への贈与
個人から個人へ株式贈与を行った場合、受贈者(受け取った側)へは贈与税が課せられ、贈与者への課税はありません。
また贈与者には贈与税がすでに課せられているため、所得税が重ねて課せられることはありません(所得税法9-1-16)。
②法人への贈与
個人から法人(一般的な法人)へ株式贈与を行った場合、受贈者へは法人税が課せられます。これは財産(株式)を時価で貰ったという扱いになり、受増益が生じるためです。
贈与者にあたる個人も財産を時価であげたという扱いになるので、みなし譲渡所得税が課せられます。「みなし譲渡所得税」とは譲渡所得があるものとみなして課税するものであり、この場合は株式取得費などの費用を差し引いた所得に対して課税されます。
したがって、含み益のある株式を贈与すれば、贈与側へも課税が生じることになりますが、仮に現金で贈与する場合は、含み益がないためみなし譲渡所得税の課税はありません。
以上は一般的な法人への株式贈与にかかる税金ですが、公益法人や同族会社への株式贈与ではかかる税金が異なります。公益法人への株式贈与では寄付として扱われるため、贈与者へみなし譲渡所得税が課せられることはありません。
同族会社へ株式贈与を行った場合は、株式価額があがれば「増加分=株主に贈与されたもの」として扱われます。したがって、贈与者・受贈者への課税だけでなく、当該同族会社の株主へも贈与税が課せられます。
7. 法人から個人への贈与
前章では、贈与者が個人の場合の株式贈与についてご説明しましたが、株式贈与は個人間のみで行わるわけではなく、法人から個人へ行われるケースもあります。
法人には自然死がないため、法人が財産を無償で譲渡するためには、贈与で行われます。会社などの法人には遺言を残すという法律行為も当てはまらないため、法人の財産である株式を贈与した場合は、贈与税が適用されることはありません。
また法人から個人への株式贈与は、受贈者である個人の所得が低い場合は、節税対策としても有効な手段になり得ますが、利益が発生すれば法人税が適用されるため、総合な判断が必須となります。
この章では、法人が贈与者となった場合の、株式贈与にかかる税金についてご説明します。
法人が贈与した場合
株式贈与は個人間のみで行わるわけではなく、法人から個人へ行われるケースもあります。
法人には人間と同じ自然死という概念はないので、法人が所有する財産を無償で譲り渡すときは、贈与という形式で行われます。
贈与者と受贈者への課税についての取り扱いは、贈与した相手が個人なのか法人なのかによっても変わり、贈与側へも課税が生じます。
法人が贈与者となり株式贈与を行った際に、課せられる税金と課税関係は以下のとおりです。
①個人への贈与 | ②法人への贈与 |
贈与者→法人税 受贈者→所得税 |
贈与者→法人税 受贈者→法人税 |
①個人への贈与
法人から個人へ株式贈与を行った場合、贈与者にあたる法人は「財産を時価で譲り渡した」と扱われ、法人税が課せられます。
注意しなければならないのは、贈与した個人が法人の役員または従業員であるか否かによって、税務上の扱いが異なるという点です。
受贈者の個人が法人の役員または従業員の場合は「役員賞与・賞与」として扱われ、役員賞与の場合も損金にはなりません。受贈者の個人と法人の間に雇用関係がない場合は、寄付金として扱われます。
対して、受贈者にあたる個人には所得税が課せられますが、個人が法人の従業員である場合は、給与所得として扱われます。
②法人への贈与
法人から法人への株式贈与では、贈与者にあたる法人は①と同様「財産を時価で渡した」として扱われ、法人税が課せられます。
一方受贈者にあたる法人も、やはり時価で財産を譲り受けたとされ、受増益に対して法人税が課せられます。
株式価格の評価方法
株式贈与を行う場合、株式価格の評価方法は株式譲渡のケースと同様に算出します。贈与を行う株式が非上場企業のものであり、株式保有特定会社・土地保有特定会社に該当する場合は、企業規模に関係なく配当還元方式を用いて評価します。
株式贈与は事業承継でも多く活用される手法ですが、その際は贈与税や相続税についても考えなくてはなりません。贈与税や相続税を計算するときは、先述のとおり株式評価額を調べる必要がでてきます。
これらの指針について定めているのが、国税庁の「財産評価基本通達」です。財産評価基本通達では、株式などの財産・土地や家屋の権利についての計算方法が細かく規定されています。
非上場株式の評価方法も規定されており、同族企業グループ内での株式移転やグループ再編時にも使用されます。このような規定があっても、個人で株式価格の評価を行う場合は、評価方法や方式についての専門的な知識が必要になります。
なかでも非上場株式の評価額を算出するのは、複雑で困難なため会計士・税理士など専門家に依頼するのがいいでしょう。
M&A総合研究所には、株式譲渡や株式贈与の経験豊富なアドバイザーが多数在籍しております。株式譲渡や株式贈与をお考えの方は、ぜひ一度M&A総合研究所へご相談ください。ご相談は無料です。
また、M&A総合研究所では、着手金などもかかりません。事業承継やM&Aを検討中の方はぜひお問い合わせください。
株式贈与における贈与税率および控除額
株式贈与にかかる贈与税の計算では、1年間に譲りうけた(もらった)株式合計額から、基礎控除となる110万円を差引きます(この金額をAとします)。次にAの金額に贈与税率をかけ、それぞれ定められた控除額を引いたものが、支払う必要がある贈与税額になります。
2015年に実施された贈与税率改正により、親・祖父母から20歳以上の子・孫への贈与と一般の贈与では、税率および年間贈与額に対しての控除額が異なるのが特徴です。
株式贈与における贈与税率および控除額は、以下のとおりです。
<親または祖父母から20才以上の子・孫への贈与>
年間贈与額-110万円 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超え | 55% | 640万円 |
<一般的な贈与>
年間贈与額-110万円 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | なし |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円以下 | 55% | 400万円 |
例えば、A氏がB氏へ株式価額で300万円を贈与した場合、B氏が支払う贈与税額は、
(贈与額300万円-110万円)×税率15%-10万円=18万5千円
と計算できます。
8. 自社株信託における株式譲渡
生前に基礎控除を活用して少しずつ贈与しても、途中で死亡により相続が生じれば結果的に多額の相続税が課せられることも考えられます。
このような自社株式の移転には「自社株信託」の活用が有効です。自社株信託とは、民事信託を用いて自社株を譲渡する方法で、メリットとしては以下の点が挙げられます。
- 生前に自社株を渡せて贈与税がかからない
- 後継者の資金力を必要とせず、経営者への税負担もない
- 遺言がなくても後継者への贈与が可能
- 後継者が経営者として不適任な場合、株式の返還を求められる
一方、自社株信託を活用するデメリットとしては、議決権が後継者へ渡るためワンマン経営になる可能性があるという点です。
このような事態を避けるには、自社にとっての重要な判断を行う場合は、現経営者に拒否権を残すことを信託契約に盛り込んでおくことが大切です。
自社株信託は事業承継に有効な手段であり、2005年の改正信託法施行で民事信託の活用が容易になったため、さらに事業承継での活用範囲が拡大しています。
自社株信託を活用するには専門知識が不可欠なため、会計士・弁護士などの専門家へ依頼するのがおすすめです。
9. 株式譲渡・贈与のご相談は専門家へ
株式譲渡と株式贈与は、事業承継において活用されることが多い手法です。
自社にとってどちらの手法が有利かを検討するには、時価の計算方法による差異以外に、株式取得の資金調達・贈与税額・取得税額(譲渡の場合)などを、総合的に判断しなければなりません。
そのほか株式の移転計画も考慮する必要がある点ですが、いずれにせよ高い専門知識が必要となるので、専門家にサポートしてもらいながら進めていくのがいいでしょう。
M&A総合研究所には、経験や知識の豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、案件をフルサポートいたします。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
10. まとめ
事業承継時において、株式譲渡と株式贈与のどちらが有効な手段になるのかを検討する場合は、まずそれぞれのメリット・デメリットを理解しておかなければなりません。
そのうえで、資金調達や税金対策などの要素を考慮し、総合的に判断する必要があります。
株式譲渡のメリット
- 譲渡益が入る
- 分離課税制度により税率に変動はない
- 譲渡益と譲渡損失による相殺が可能
- 公的機関への手続き不要
株式譲渡のデメリット
- 譲渡益への税金がかかる
- 資金力が必要
- 手続きが簡単なので不備の不安
株式贈与のメリット
- 税金面の負担を減らせる
- 暦年課税による基礎控除などの特例がある
- 後継者への引き継ぎに有利
株式贈与のデメリット
- 贈与税の負担がある
- 相続クーデターの危険性がある
- 場合によっては高額な税金負担の可能性がある
どちらの手法を用いても少なからずリスクは存在するため、どのようにリスクを最小限に抑えるかという点も重要な判断材料になります。
しかし、総合的な判断には税金や制度などの専門知識が必要不可欠であるため、専門家にサポートをしてもらいながら進めていくのがいいでしょう。
M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーがご相談から一括サポートをいたします。無料相談も行っていますので、株式譲渡・株式贈与をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 業界最安値水準!完全成果報酬!
- 経験豊富なM&Aアドバイザーがフルサポート
- 圧倒的なスピード対応
- 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
M&A総合研究所は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。
