相対取引とは?M&A業界における意味からメリットとデメリットまで解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、M&A業界における相対取引の意味・使い方を紹介しながら、相対取引のメリット・デメリット、相対取引を行う際の注意点などを解説します。相対取引とは、取引所を通さずに1対1で直接取引を行う方法のことです。M&Aを検討している方は必見です。

目次

  1. 相対取引とは
  2. M&A業界における相対取引のメリットとデメリット
  3. 相対取引とオークション方式の比較
  4. M&A業界における相対取引の方法
  5. 相対取引を行う際の注意点
  6. 相対取引の相談はM&A仲介会社がおすすめ
  7. 相対取引のまとめ
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1. 相対取引とは

相対取引(あいたいとりひき)とは、取引所を通さずに、取引者同士が1対1で直接取引することをさします。相対取引は、別名OTC(Over The Counter)取引とも呼ばれており、意味は店頭取引です。相対取引は、さまざまな金融商品の取引で行われています。

一般的な相対取引の使い方

相対取引は、株式・FX・不動産・仮想通貨など、さまざまな場面で用いられている取引方法です。相対取引は、取引者同士が直接取引する方法ですが、実際には仲介会社を通して取引するケースがほとんどを占めています。

仲介会社に手数料を支払い、相対取引を行うことで、多数の相手と安全に取引することが可能です。

M&A業界における相対取引の意味

M&Aの際も相対取引が用いられる場面があります。M&Aによる売買方法には、大きく分けて市場取引と市場外取引があり、相対取引に該当するのは市場外取引です。

相対取引と市場取引との違い

相対取引は1対1で取引するのに対し、市場取引は不特定多数との取引です。M&A業界における相対取引は、非上場企業など株式譲渡制限を設けている企業の株式を売買する場合や、上場企業など有価証券報告書を提出している企業の株式を市場外で売買する際に用いられます。

市場取引とは

市場取引とは、上場企業など有価証券報告書を提出している企業の株式を、公開取引市場を通して売買する取引方法です。市場取引は不特定多数の人と取引ができるので、相対取引よりも取引の流動性が高く、一定の相場が生まれる点がメリットになります。

2. M&A業界における相対取引のメリットとデメリット

相対取引にはメリットとデメリットがあります。M&Aの際に相対取引を行うメリット・デメリットを確認しましょう。

相対取引の3つのメリット

相対取引の主なメリットは下記のとおりです。

  • 市場の相場に左右されず、売買価格を決定できる
  • いくつかの決済方法から選択できる
  • 株式市場に影響が及ばない

市場の相場に左右されず、売買価格を決定できる

相対取引では、取引の当事者間である程度、自由に価格を決定可能です。市場取引の場合は市場で形成された相場があるので、売買価格が相場からかけ離れていると売買が成立しにくくなります。しかし、相対取引の場合は相場に左右されないため、当事者間の交渉が重要です。

いくつかの決済方法から選択できる

相対取引では、M&A成立後の決済方法も、交渉次第である程度選べます。M&Aでは、効力発生と同時に、買い手側が売り手側の口座に相対取引の対価を振り込むのが一般的です。

しかし場合によっては、交渉の際に決めた条件を満たしてから相対取引の対価を振り込む形式や、効力発生日以降の業績の変動などに応じて相対取引の対価を振り込む形式があります。

ただし、相対取引対価の支払いが遅くなるほどトラブルの元にもなるので、これらの方法が用いられる場面は限定的です。

株式市場に影響が及ばない

相対取引には、株式市場に影響を与えないメリットもあります。相対取引は、大口投資家が株式市場を動揺させないために行うこともあるでしょう。相対取引は、取引所を通さずに取引者間でじかに取引をするため、株式市場に影響を与えずに株式売買が実施できます。

相対取引の3つのデメリット

相対取引の主なデメリットは下記のとおりです。

  • 詐欺被害のリスク
  • 時間がかかるリスク
  • 不公正な取引となるリスク

詐欺被害のリスク

相対取引では、取引相手の信用がほとんど担保されていないので、詐欺に遭うリスクが高くなります。市場取引の場合は、厳正な審査を受けた企業の株式に対し、証券会社を通して売買するので高い信頼性と安全性が守られるものです。

相対取引のリスクを減らすためにも、M&A仲介会社などの専門家にサポートしてもらうなどの対策が必要になります。

時間がかかるリスク

市場取引の場合は直接交渉する必要がないので、短期間での売買成立が可能になります。しかし相対取引の場合は、交渉や売買手続きなどに時間が必要です。取引に時間がかかるほど、資金面や精神面の負担は大きくなり、取引が不成立となる可能性も高まります。

不公正な取引となるリスク

相対取引は当事者の合意価格によって売買されるので、売り手と買い手の間に情報の非対称性があると、不当に高かったり安かったりする価格で取引成立となるリスクがあります。市場取引は、需要供給の均衡に基づいた合理的な価格での取引が可能です。

3. 相対取引とオークション方式の比較

M&Aの取引プロセスでは、オークション方式が用いられるケースもあります。ここでは、オークション方式の概要と、相対取引との比較を確認しましょう。

オークション方式とは

M&Aでは、売り手の希少性が高く複数の買い手候補が見込まれる場合、交渉相手を絞り込むために全ての買い手候補から入札を受け、最も良い条件を出した企業が交渉権を得る方法を行うことがあります。これが、オークション方式です。

オークションと比較した場合のメリットとデメリット

売り手企業の人気が高い場合、1社ずつ相対取引で交渉して買収条件を検討するよりも、オークション方式で買い手候補を競わせた方が、高額での買収成立の可能性が高まるでしょう。

買収条件には金額だけでなくM&A後の経営方針やM&Aスキームなど金額以外の諸条件も提示されるため、金額が同額程度だったとしても他の部分を比較して相手を決めやすいメリットもあります。

ただし、オークション方式は、複数の有力な買い手候補がいてこそ取れる手段であり、そうでない場合は実施したくてもできません。

仮に複数の買い手候補がいたとしても、意中の候補が定まっていながら下手にオークション方式を導入すると、その企業がオーディションに参加せず、交渉のテーブルから降りてしまう可能性があります。意中の買い手がいる場合は、相対取引での交渉が適切です。

4. M&A業界における相対取引の方法

M&A業界における相対取引には、証券会社を通さない相対取引と証券会社を通して行う相対取引があります。

証券会社を介さない相対取引の場合

M&Aでの証券会社を通さない相対取引の場合、売り手側は以下の手順で相対取引の手続きを進めましょう。

  • 特定の企業もしくは複数の買い手企業に打診
  • 意向表明書を提出してもらう
  • 条件の良い企業と交渉を始める

特定の企業もしくは複数の買い手企業に打診

相対取引による買い手が決まっていない場合、まずは相対取引の相手を探すことが必要です。相対取引候補を探すには、M&A仲介会社やマッチングサイト、公的機関などに依頼または登録する方法などがあります。

意向表明書を提出してもらう

相対取引候補が決まったら、相対取引相手から意向表明書を提出してもらいます。意向表明書の記載内容は、相対取引相手の買収希望株式数や購入希望価額、想定するM&Aのスケジュールなどです。

意向表明書はあくまでも相対取引相手の意思表明であるため、法的拘束力はありません。相対取引相手によっては、意向表明書を提出しないケースもあります。

条件の良い企業と交渉を始める

相対取引の相手が決まったら、具体的に相対取引を進めていきます。相対取引の交渉内容は、株式譲渡の場合であれば売買株式数や売買価額、相対取引のスケジュールなどです。

交渉は相対取引の当事者同士が直接行えますが、M&A仲介会社などの専門家に業務依頼をしている場合は、専門家が代行で交渉します。

証券会社を介した相対取引(OTC取引)の場合

上場企業の株式を大口注文する際など、自身で市場取引を行うことが難しいケースがあります。その場合は、証券会社に手数料を支払うことで代わりに相対取引を行ってもらいましょう。

市場取引の場合は、売り手と買い手自身が公開取引所に希望の売買価額を指値注文、あるいは成行注文で決済します。対して、相対取引(OTC取引)の場合は、相対取引を委託された証券会社が店頭で売却価額を提示する形で売買を進めるのが一般的です。

5. 相対取引を行う際の注意点

相対取引の際は、売買価格の決め方や税金に注意が必要です。この章では、具体的な売買価格の決め方や注意すべき点を解説します。

相対取引における価格の決め方

市場取引の場合は、公開市場の相場を参考に売買価格を決められますが、非上場の中小企業対象の相対取引では、参考となる相場がありません。企業価値算定を用いて、価格決定の基準となる相場を算定する必要があります。

企業価値を評価する方法

数多くある企業価値の算定方法は、大きく分けて以下3つの体系があります。

  • インカムアプローチ
  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ

インカムアプローチは、売り手企業の将来性から企業価値を算定し、コストアプローチは売り手企業の純資産額から企業価値を算定します。マーケットアプローチは、売り手企業と似ている業種・規模の企業を参考にして、企業価値を算定する方法です。

これらの算定方法には、それぞれメリット・デメリットがあるので、状況に合わせて組み合わせながら算出します。

相対取引は課税対象

相対取引は、第三者と行われた適正な価格の売買であった場合、売り手の売却益に税金が課されます。税金が課される売却益の計算方法は、以下のとおりです。

相対取引の税金の計算式

相対取引の際、税金が課せられる売却金額は、以下の計算式で求められます。

  • 売却利益=総収入金額(譲渡価額)−必要経費(取得費+委託手数料など)

取得費とは株式を取得したときの金額で、委託手数料とは仲介会社などに依頼した際の手数料です。上記の計算式で算出された売却益に対して、個人の場合は譲渡所得税、法人の場合は法人税が課せられます。

会社譲渡の税金については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】会社譲渡の税金まとめ!株式譲渡と事業譲渡どちらが節税対策になる?| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

6. 相対取引の相談はM&A仲介会社がおすすめ

相対取引の際は、複雑な交渉や手続き、専門的な企業価値算定などを行わなければなりません。これらをトラブルなくスムーズに行うには、M&A仲介会社など専門家によるサポートが必要です。適する専門家をお探しでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。

M&A総合研究所では、M&Aに精通したM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。複雑な交渉や手続きにおいて円滑にM&Aを進められます。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けていますので、M&Aをご検討の際には、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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7. 相対取引のまとめ

相対取引(あいたいとりひき)とは、取引所を通さずに、取引者同士が1対1で直接取引することです。本記事の概要は以下のようになります。

・証券会社を通さない相対取引の売り手の手順
→特定の企業もしくは複数の買い手企業に打診
→意向表明書を提出してもらう
→条件の良い企業と交渉を始める

・M&A業界における相対取引のメリット
→市場の相場に左右されず売買価格を決定できる
→いくつかの決済方法から選択できる
→株式市場に影響が及ばない

・M&A業界における相対取引のデメリット
→詐欺被害のリスク
→時間がかかるリスク
→不公正な取引となるリスク

・相対取引の売買価格を決める算定方法の体系
→インカムアプローチ
→コストアプローチ
→マーケットアプローチ

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