2023年12月04日更新
LBOファイナンスとは?メリット・デメリットやスキームについて徹底解説
LBO(レバレッジド・バイアウト)は、資金調達に成功するかが重要であるため、LBOファイナンスの内容をよく理解することが重要です。この記事では、LBOファイナンスのメリットやデメリット、スキームの内容などについて解説するので参考にしてください。
目次
1. LBOファイナンスとは?
LBOは「レバレッジド・バイアウト」の略で、レバレッジを効かせて借り入れを行い、自己資金だけでは実行できない大規模な買収を行うM&A手法です。LBOを活用していかに買収資金を調達するかという、その手法がLBOファイナンスになります。
LBOは大企業の買収で使われるので、中小企業経営者が直接かかわるケースは少ないです。とはいえ、業界に影響を及ぼす大規模M&Aがどのように行われるか知ることは有益です。本章ではまず、LBOとは何かといった基本事項などを解説します。
LBOとは
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収される側の企業(買収先企業)が生み出す売上・利益を担保にして買収資金を調達するM&A手法です。
通常、買収資金の調達は買収する側の企業(買収元企業)が行いますが、LBOでは買収先企業が負債を背負って返済していきます。
LBOファイナンスの特徴
LBOファイナンスは、大規模なM&Aを行いたいものの自己資金を十分に用意できない(または用意したくない)ときに有効なスキームです。
例えば、ソフトバンクがイギリスの携帯電話会社ボーダフォンを子会社化したケースでは、自己資金は7,500億円のみで、残りの1兆円をLBOファイナンスで調達したとされています。
買収された側の企業が借りた資金を返していくのも、LBOファイナンスがほかのスキームとは異なる点です。LBOファイナンス以外の一般的なM&Aスキームでは、買収元企業が資金を調達し、借り入れをした場合はそれを返していきます。
LBOファイナンスでは自身は資金調達をしていない買収先企業が返済していくので、買収元企業は失敗しても自己資金を失うだけで済みます。買収される側に多くの現預金や有価証券などの換金できる資産があるほうが、LBOを行いやすいでしょう。
LBOファイナンスの仕組み
LBOファイナンスは、買収元企業がSPC(特別目的会社)といった資金調達のための会社を設立し、SPCが資金調達する仕組みです。
SPCが調達した資金で買収先企業の株式を買い取って買収し、その後SPCと買収先企業が合併してLBOが完了します。LBOファイナンスで借り入れた資金は、買収先企業が事業で得た利益から返します。
LBOで提供されるファイナンスは、シニアローン・メザニンローン・劣後社債・優先株式および、これらを組み合わせたものなど、案件によりさまざまです。複数のプレイヤーがそれぞれの目的で案件にかかわるので、関係者の利害関係はかなり複雑になります。
LBOファイナンスとLBOの違い
ここで、あらためてLBOファイナンスとLBOの違いを詳しく取り上げます。
LBOとは、M&Aの形態の一つで、借入金を活用した企業・事業買収のことです。一定のキャッシュフローを生み出す事業を借入金を活用して買収する手法で、買い手は少ない資金で企業・事業を買収できます。
一般的には多額の借入金を伴うため、対象となる事業には安定的なキャッシュフローを生み出すことが求められます。バイアウト・ファンドはリターンを最大化する目的で借入金を積極的に活用することから、LBOによるM&Aの中心的なプレーヤーです。
LBOファイナンスは、LBOの譲渡企業の社会的信用を活用する特徴だけでなく、負債増加・純資産の割合減少やノンリコースなどの特徴を強めたものとして位置付けられます。
LBOファイナンスは、資金を貸し出す金融機関のリスクがさらに高まっているため、融資を受けるためには譲渡企業に返済能力があることを示せるよう、M&A買収の時点で具体性のある事業計画を提示しなければなりません。
LBOファイナンスの内訳
通常のM&Aでは、買収資金の内訳は買収元企業の自己資金あるいは借入金です。LBOの場合は、買収先企業が将来生み出すと予想される利益とキャッシュフローを担保にした借り入れと、買収元企業の自己資金が内訳になります。
LBOファイナンスの業務に必要なスキル
銀行・投資銀行・信託銀行・投資ファンド・リース会社・財務アドバイザリー・戦略コンサルティングファーム・弁護士事務所など、LBOファイナンスの業務は幅広いです。
M&A業務の経験者・金融関連の審業務査経験者だけでなく、MBA保有者・弁護士・公認会計士・税理士資格を持つ人材が求められます。LBOファイナンスの業務を行うためのスキルとして、ビジネスレベルの英語力も必要です
2. LBOファイナンスを利用する理由
LBOファイナンスはM&A手法のなかでやや特殊なので、利用する理由を明確にしたうえで実行する必要があります。LBOファイナンスを利用する主な理由は、以下の3つです。
- 資金調達
- ノンリコース
- レバレッジ効果
資金調達
LBOファイナンスは担保とする資産がほかの手法とは違い、ほかの手法では得られない大規模な資金調達ができる点が特徴です。特に買収先企業が将来大きなキャッシュフローが得られる見込みがあれば、LBOファイナンスは非常に有力な資金調達手段となります。
ノンリコース
ノンリコースローンとは、責任範囲が限定されたローンのことです。返済に充てる資産(返済原資)が買収先企業の資産とキャッシュフローに限定されるので、返済不能に陥っても買収元企業は投資した自己資金を失うだけで済みます。
ノンリコースローンは、借り手にとって責任範囲が限定されるメリットがありますが、貸し手は貸付金を回収できないリスクがあります。貸し手はノンリコースローンに対して慎重になり、金利も高く設定される傾向が見られるでしょう。
レバレッジ効果
レバレッジ効果とは、自己資金だけでなく借入金も使って投資をし、自己資金だけでは得られないリターンを得ることです。不動産投資でよく使われる手法ですが、LBOファイナンスもレバレッジ効果を利用した投資スキームの一つになります。
3. LBOファイナンスを活用するメリット・デメリット
LBOファイナンスはスキームが特徴的でリスクが大きい手法なので、メリットとデメリットを正しく理解したうえで実行する必要があります。
この章では、LBOファイナンスのメリット・デメリットについて、買収元企業・買収先企業・買収先企業の株主・金融機関それぞれの立場から見ていきましょう。
LBOファイナンスを活用するメリット
LBOファイナンスは、買収元企業・買収先企業の株主・融資する金融機関のそれぞれにメリットがあります。
- 少ない投資で大規模な買収ができる
- 株式を高値で売却できる
- 高い金利で貸付できる
少ない投資で大規模な買収ができる
買収元企業がLBOファイナンスを活用するメリットは、少ない投資で大規模な買収ができることです。LBOファイナンスで大規模な借り入れを行えば、自己資金だけでは実現できない買収が実現します。
買収先企業の事業が予定どおりにいかず倒産してしまった場合でも、買収元企業は負債を返済する義務がないため自己資金を失うだけで済みます。
つまり、LBOファイナンスに失敗しても買収元企業が経営難に陥ったり、ほかの事業に支障がでたりしません。
株式を高値で売却できる
LBOファイナンスで買収元企業が買収先企業の株式を買い取る際、TOB(株式公開買付)の手法が用いられます。TOBは市場株価より高い価格で買い取るのが一般的なので、株主はLBOファイナンスによって売却益を得られるでしょう。
高い金利で貸付できる
LBOファイナンスはリスクが高いため、貸付の金利が高く設定されます。これは買収先企業にとってデメリットですが、融資する金融機関にはメリットです。
LBOファイナンスは返済期間を短く設定することが多く、これも金融機関に有利です。
LBOファイナンスを活用するデメリット
LBOファイナンスを活用する際は、買収元企業・買収先企業・金融機関それぞれのデメリットを考慮する必要があります。
- 評判が悪くなるリスクがある
- 経営戦略が制限される
- 回収不能のリスク
評判が悪くなるリスクがある
LBOファイナンスは少ない資金で多額の借金をして、そのリスクは買収先企業に負わせるので、自分勝手で強引な買収とみなされることがあります。
これが原因となり、買収元企業は評判を落としてしまい、経営に悪影響がでる可能性もあるでしょう。買収先企業から会社を乗っ取られたと思われ、反感を買う可能性も考慮しなければなりません。
経営戦略が制限される
LBOファイナンスで買収された買収先企業は、SPCが借り入れした資金を事業の利益から返済します。短期的な利益を重視した経営を強いられるので、経営の自由度が狭まるデメリットがあります。
始めから大きな負債を背負った状態で事業が始まるので、追加の借り入れや大規模な設備投資を行いにくいのもデメリットです。
回収不能のリスク
LBOファイナンスは、買収先企業のキャッシュフローなどを担保に融資するので、買収先企業の事業がうまくいかなかった場合、融資した資金が回収できなくなるリスクがあります。
LBOファイナンスでは、金融機関が融資するべきかどうか、的確に判断する高い専門性が要求されます。
4. LBOファイナンスのスキーム
LBOファイナンスという言葉を初めて見聞きした場合、どのようなスキームかわかりにくいのが難点です。
LBOファイナンスは、SPC(特別目的会社)といった資金調達のための会社を利用することが特徴なので、これを理解すればスキームがわかりやすくなります。
LBOファイナンスで買収資金を借り入れる手続きは以下のとおりです。SPCが何を行うかに注目することが、LBOファイナンスを把握するためのポイントです。
- SPC(特別目的会社)を設立する
- SPCが資金を調達する
- SPCが買収先企業を買収する
- SPCと買収先企業を合併する
①SPC(特別目的会社)を設立する
LBOファイナンスでは買収先企業が借り入れたお金を返していきますが、買収先企業が直接借り入れをするのではなく、SPC(特別目的会社)が買収先企業の代わりに資金を調達します。
SPCとは、営利活動は行わず、資金調達など特別な目的だけのために存在する会社のことです。LBOファイナンスでは、まず買収元企業がSPCを設立し、資金調達の受け皿を作ります。
②SPCが資金を調達する
買収元企業がSPCを設立したら、次はSPCが金融機関などから借り入れを行い、買収先企業の株式を取得するための資金を調達します。LBOファイナンスは融資する金融機関にとってリスクのある取引なので、貸付には慎重です。ここでうまく資金調達を成功させることがポイントになります。
資金調達を成功させるためには、買収先企業における事業の将来性が高く、十分なキャッシュフローを生み出せるかが大切です。
③SPCが買収先企業を買収する
資金調達に成功したら、次はその資金でSPCが買収先企業を買収します。株式の取得は、主にTOB(株式公開買い付け)を用いて行われます。
一般的にTOBはプレミアムを付けて割高で買い取るので、LBOファイナンスは株主にもメリットが生じるでしょう。
④SPCと買収先企業を合併する
SPCが買収先企業の株式を取得すると親会社になりますが、SPCはLBOファイナンスを実施するためだけに存在しているので、その後親会社として事業にかかわりません。
株式を取得した後は、SPCと買収先企業が合併してSPCが消滅し、株式取得のために負った借入金は買収先企業が返済していきます。
5. LBOファイナンスを活用する際の注意点
LBOファイナンスは、成功すればレバレッジを生かした高い収益を得られますが、その分失敗するリスクも高くなります。LBOファイナンスを活用する際は、注意点を押さえることが大切です。
- 返済不能になることを避ける
- コストの見通しを立てておく
返済不能になることを避ける
LBOファイナンスは買収先企業が返済義務を負うので、返済不能になるとせっかくLBOで手に入れた事業が頓挫します。LBOファイナンスでは、返済不能にならないよう慎重に手続きを進めることが重要です。重要なのは、買収先企業が事業で生み出すキャッシュフローです。
将来のキャッシュフローを正確に見積もるのは不可能なので、できるだけ慎重に事業内容を検討し、返済不能に陥るリスクを見極めたうえでLBOファイナンスを実行しましょう。
コストの見通しを立てておく
LBOファイナンスではTOBで株式を取得するので、株式取得のコストは比較的見通しが立てやすいです。
買収先企業の合意を得ない敵対的TOBの場合は、買収先企業が防衛策を実施した結果、コストが予想外に跳ね上がる危険性もあります。LBOファイナンスを行う際は、株式の取得にどれくらいのコストがかかるか見通しを立てることが重要です。
6. LBOファイナンス関連業務に必要なスキル
LBOファイナンスに関わる主要なプレーヤーには、投資銀行、信託銀行、投資ファンド、リース会社、財務アドバイザリーなどが含まれます。この分野では、M&Aや事業承継業務の経験者、金融監査業務の経験者などが重宝されます。
また、MBAの保持者、弁護士、公認会計士、税理士などの専門資格を持つ人材も求められることが多いです。さらに、ビジネスレベルの英語力も多くの場合で必要とされます。
7. LBOファイナンスやM&Aの相談におすすめの仲介会社
LBOファイナンスなどを活用したM&Aは高度な専門性と経験を必要とするので、M&A仲介会社など専門家のサポートを得ることがおすすめです。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業のM&Aを手掛けるM&A仲介会社です。M&A総合研究所では、知識や経験の豊富なM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。
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8. LBOファイナンスのまとめ
LBOファイナンスはやや特殊なM&A手法ですが、買収元企業がリスクを限定して大規模な買収を行うことが可能です。メリットとデメリットを理解したうえで、メリットが大きい場面で活用すれば、事業拡大が目指せます。
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