M&Aを社員に公表するタイミングは?退職やトラブルを防ぐ方法を解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aを社員に公表するタイミングは、M&A成功を左右する重要な要素でもあります。会社の貴重な財産である社員をM&Aで離職させないためには、社員の求める情報を適切な公表タイミングで伝えることが大切です。本記事では、適切な公表タイミングなどについて解説します。

目次

  1. M&Aを社員に公表するタイミングは?
  2. M&Aにより社員の退職やトラブルを防ぐ方法
  3. M&Aの際に社員に情報を開示する手順
  4. M&Aについて社員に伝えるべき情報
  5. M&Aの際に社員以外に公表するタイミング
  6. M&A全般の相談は仲介会社がおすすめ
  7. まとめ
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1. M&Aを社員に公表するタイミングは?

M&Aの詳細や状況を社員に公表するタイミングは、M&A成功を左右する重要な要素のひとつです。公表タイミングを間違えれば、M&Aによるシナジー効果を得られなかったり、M&A自体が破談になる可能性もあります。

本章では、社員の理解を得るための適切な公表タイミングや、公表タイミングを間違った際に発生するリスクについて解説します。

【関連】M&Aのシナジー効果とは?シナジー効果の事例5選!

M&Aの公表するタイミングを間違うと起こること

社員へのM&A公表タイミングが悪かったり公表内容に問題がある場合、特に売却側の企業においては、社員が会社に対して不信感を抱くことにもなり得ます。

自分が働く会社が売却されて待遇などが変われば、社員の生活に大きな影響を与えることになるためです。

そのまま同じ場所で同じ待遇で働けるのか、給料は下がらないか、仕事内容や上司が変わって残業が増えたりしないかなどなど、さまざまな不安があり大きなストレスともなります。

その結果、社員の士気が下がったり、高い技術力やノウハウを持つ貴重な社員が会社を離れるケースもあります。

人材は会社にとって大きな資産であるため、社員の離職によって企業価値が低下し、M&A後のシナジー効果が薄れたり、M&A自体が破談になる可能性もあります。

M&Aにより社員の離職が起こる理由

M&Aによる売却企業の社員の離職は、以下のような理由で起こるケースが多くなっています。

【M&Aにより社員の離職が起こる理由】

  • 会社の将来が不安
  • 給与や職場、仕事内容などが変わるかもしれないため
  • 慣れ親しんだ企業文化や企業風土の変化を懸念したため
  • M&A後の待遇や立場が悪くなる可能性があるため

これらの離職理由は、社員とのコミュニケーションが不足しているために発生しているケースもあります。

M&A後の給与や仕事内容などを明確に説明し、待遇についてしっかりと理解を得ることで社員の離職を防ぐことが可能となります。

また、公表タイミングも重要であり、適切な段階で公表することで社員が十分にM&A後の将来を考える時間を持つことができます。

例え離職することになった場合でも、M&Aについて考えて納得したうえでの離職となる可能性も高く、技術やノウハウの引継ぎを行う時間も取ることが可能になります。

M&Aを社員に公表する適切なタイミング

一般的に、社員への公表タイミングは、株式譲渡契約や事業譲渡契約のようなM&A契約締結直後が最適とされています。

M&A契約締結後のできるだけ早いタイミングに公表することで、社員がM&Aに向けて準備を整えていく期間を長くもつことができるためです。

ただし、M&A契約締結からクロージングまでの間に社員の離職やM&Aの妨害が入る可能性があるようであれば、クロージングまで公表しないケースもあります。

一方で、M&A契約締結前の交渉中には社員にも取引先にも口外しないことが望ましいとされています。

なぜならば、M&A契約前に社員や取引先に公表することにより、M&Aの情報が競合に漏れて妨害されたり、労働組合からM&Aを潰される可能性もあるためです。

2. M&Aにより社員の退職やトラブルを防ぐ方法

M&A成功のためには、会社の貴重な財産である社員の退職や社員とのトラブルは避けなければなりません。

M&Aによる社員の退職やトラブルを防ぐポイントを押さえることが、M&A成功の近道となります。

【M&Aにより社員の退職やトラブルを防ぐ方法】

  • M&Aの際に社員の待遇に関して条件交渉しておく
  • M&Aについて情報開示する際に、社員に誤解を与えない
  • 社員の気持ちに寄り添う

M&Aの際に社員の待遇に関して条件交渉しておく

M&A後の社員の待遇は、売却側企業の社員が最も気にかけるポイントのひとつです。社員はM&Aによって給与の減額や転勤を伴う異動、役職や仕事内容の変化などが発生することを懸念します。

その懸念が退職やトラブルの原因となる可能性は十分にあるため、経営者は交渉の段階でM&A後の社員の待遇に関して相手企業と細かく決めておくことが重要です。

ただし、中小企業のM&Aでは自社よりも規模が大きい企業に売却するケースがほとんどであり、社員の給与や福利厚生などの待遇面では改善されることが多いです。

また、高度な技術を持つ従業員は高く評価され、よりよい待遇を受けられることもあります。その一方で、M&Aにより吸収されるような形になれば、企業文化などは失われていく可能性もあります。

社員にとって悪いことばかりではないこともしっかりと伝えていくことで、不安を取り除いてくことができます。

M&Aについて情報開示する際に、社員に誤解を与えない

M&Aの公表タイミングや正しい情報開示も、社員の退職やトラブルを防ぐうえでは非常に重要なポイントです。

情報開示の際は、社員に誤解を与えないように、曖昧な情報ではなく正確で詳細な内容を伝える必要があります。

また、役員・部長クラスへの公表と、全社員への公表タイミングをずらすことも大切です。というのは、M&Aに不安を感じた社員が疑問や懸念を直接経営者に聞くことは稀であり、直属の上司や先輩に聞くことが多いためです。

例えば、部長クラスの社員には全社員への公表の数日前にM&Aのことを伝え、彼らの不安を経営者が自ら解決して理解を得ます。

そうすることで、数日後の全社員への公表時には部長クラスが社員の不安を拭うこととなり、退職やトラブルを防ぐことが可能になります。

社員の気持ちに寄り添う

経営者とは違い、社員はM&Aや会社売却に関して常に受け身であり、思ったような情報をなかなか手に入れることができないため、会社や自身の将来について非常に不安に感じています

当然、経営者も会社売却しなければいけない状況はつらく、将来の不安もあるはずですが、社員の気持ちに寄り添うことが退職やトラブルを防ぐためには大切です。

経営者から少しでも社員よりもつらいという感情がでてしまえば、社員は経営者に軽んじられていると将来に不安を感じることになり、退職へとつながる可能性があるためです。

また、将来が不安な社員を早く安心させたいからといって、不確実な情報を与えることも大きな問題です。できるだけ早く情報を与えることが社員のためになるとは限りません。余計な不安をあおり、トラブルに発展することもあります。

正確な情報を適切なタイミングで公表することで、結果的に社員の気持ちに寄り添うことができ、退職やトラブルを防ぐことが可能になります。

3. M&Aの際に社員に情報を開示する手順

適切な情報開示の手順や公表タイミングは、会社の規模や社員の状況、会社を取巻く環境などによって異なるため、それぞれのM&Aに合わせた手順を踏むことになります。

例えば、大企業が中小企業を買収する際のM&A公表タイミングは、一般的にクロージング後となります。社員への影響は小さいため、クロージング後でも大きな問題はありません。

一方で、売却側となる中小企業の場合、社員の離職を防ぐために公表タイミングを工夫する必要があり、代表的な手順は以下のようになります。

【M&Aを社員に公表するタイミング】

  1. M&A契約前:共同経営者や一部の役員への公表
  2. M&A契約後:部長クラスへの公表
  3. クロージング前後:一般社員への公表

社員への公表が早すぎるとM&Aの妨害や失敗となる可能性があり、逆に遅すぎると社員からの理解が得られず離職の可能性があるため、M&Aの公表タイミングや手順は非常に重要です。

【関連】M&Aのフローをフローチャートで解説〜基本的な流れ〜

4. M&Aについて社員に伝えるべき情報

M&Aが決定してM&A情報を開示する際は、社員にどのような情報を伝えるべきなのでしょうか。基本的には、社員が気にかけているポイントについて重点的に説明することで、トラブルを回避することができます。

【M&Aについて社員に伝えるべき情報】

  • 仕事内容の変化
  • 給与や地位への影響
  • 転勤の有無

経営者の立場からは、経営権の移動やM&A後の経営方針、M&Aの目的などを伝えたいと思いがちですが、社員が実際に知りたいことはもっと生活に直結した部分であることが多いです。

例えば、M&A後の給与や仕事内容などは全ての社員にとって非常に重要な情報です。転勤によって引越しが必要となったり、通勤時間が増加する場合も生活に影響を与えるため、転勤の有無も伝えることが望ましいでしょう。

5. M&Aの際に社員以外に公表するタイミング

M&Aの際、社員以外の役員や親族・取引先・顧客・金融機関への公表するのは、どのようなタイミングが適しているのでしょうか。

本章では、役員や親族・取引先や顧客・金融機関の3つに分け、それぞれの相手へのM&Aの公表タイミングについて解説します。

役員や親族に伝えるタイミング

まずは、役員や親族への公表タイミングについてです。会社の経営に大きくかかわっている役員は、共にM&A交渉をしていくことが多いため、早い段階での情報共有が行われます。

それ以外の役員については、これまで会社の発展に尽力してきた役員であれば、M&A契約前後でほかの社員に公表する前に伝えるようにします。

ほかの社員と同じ公表タイミングでも問題はないかもしれませんが、経営者との軋轢を生まないためにも役員の立場や地位を尊重して早めの公表が望ましいでしょう。

また、親族が役員をしている場合も同様に、M&A契約前後の社員への公表前が適切な公表タイミングといえます。

取引先や顧客に伝えるタイミング

次に取引先や顧客への公表タイミングについてですが、共にM&A契約締結後やクロージング時で大きな問題はありません。

逆に、M&A契約締結前などに公表すれば、情報が競合や社員に漏れて、M&Aを妨害される可能性もあるので、早い段階での公表は好ましくありません

ただし、取引先に関しては、契約にチェンジオブコントロール条項が盛り込まれている場合、M&A契約締結前に情報を開示し、承認を得なければいけないケースもあるので注意が必要です。

チェンジオブコントロール条項は、取引先の技術の流出防止や敵対的買収からの防衛を目的として取引契約書に記載されています。

金融機関に伝えるタイミング

売却企業においては、金融機関への適切な公表タイミングは決算後です。たとえ金融機関から借入があったとしても、負債は基本的に買収企業に引継がれるので、早期に公表する必要はありません。

逆に、M&A契約締結前の金融機関への公表は避けたほうが無難です。万が一、M&Aが白紙になった場合でも、会社売却を検討していたことから経営が傾いているとみなされ、将来的な融資に影響がでる可能性もあるためです。

ただし、事業譲渡の場合は会社自体は存続して金融機関との取引も継続されるので、M&A契約締結後に公表するのが適切なタイミングといえます。

6. M&A全般の相談は仲介会社がおすすめ

M&Aの成功には社員への公表タイミングや公表内容が非常に重要です。しかしながら、M&A経験がない場合などにおいては、適切な公表タイミングや手順を見極めることは簡単ではありません。

公表タイミングのミスは社員の不信感や不安を誘発し、士気の低下や離職につながる可能性があります。また、M&Aでは相手の選定やデューデリジェンスなど、M&A経験や専門的な知識が必要なプロセスも多いので、成功させるためには専門家に相談するのがおすすめです。

M&A総合研究所は、さまざまな業界での豊富な実績と経験をもつM&A仲介会社です。専門的な知識を持つM&Aアドバイザーがクロージングまで一貫してサポートしています。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。

無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はM&A総合研究所にお気軽にご連絡ください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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7. まとめ

本記事では、M&A公表の適切なタイミングや社員が離職する理由、社員の退職やトラブルを防ぐ方法などについて解説しました。

M&Aの社員への公表タイミングは、M&Aの成功を左右することになるため、M&Aプロセスのなかでも重要なもののひとつです。

適切な公表タイミングを逃せば社員の離職やM&A失敗につながる可能性もあるため、どのような関係者へいつ公表するかを事前に検討しておくことが大切です。

【M&Aを社員に公表するタイミング】

  1. M&A契約前:共同経営者や一部の役員への公表
  2. M&A契約後:部長クラスへの公表
  3. クロージング前後:一般社員への公表

【M&Aにより社員の離職が起こる理由】
  • 会社の将来が不安
  • 給与や職場、仕事内容などが変わるかもしれないため
  • 慣れ親しんだ企業文化や企業風土の変化を懸念して
  • M&A後の待遇や立場が悪くなる可能性があるため

【M&Aにより社員の退職やトラブルを防ぐ方法】
  • M&Aの際に社員の待遇に関して条件交渉しておく
  • M&Aについて情報開示する際に、社員に誤解を与えない
  • 社員の気持ちに寄り添う

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