M&Aの資金調達の方法・スキームを解説!銀行融資のポイントや返済期間は?

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aでの資金調達の方法・スキームは、直接金融と間接金融の2種類に大別されます。M&Aで資金調達を行う理由まで明確にしておくのが大切です。一般的に間接金融として銀行融資を受ける場合が多いので、銀行融資のポイントや返済期間などを交えて解説します。

目次

  1. M&Aの資金調達とは
  2. M&Aの資金調達の方法・スキーム
  3. M&A手法としての第三者割当増資のメリット・デメリット
  4. M&Aの資金調達で銀行融資を受けるメリット・デメリット
  5. M&Aの資金調達で銀行から融資を受ける際のポイント
  6. M&Aの資金調達で銀行融資を受ける際の注意点
  7. 銀行から低金利の融資を受けて買収したソフトバンクの事例
  8. M&Aの際に受けた銀行融資の理想の返済期間
  9. M&Aの資金調達としてのLBO・MBOとは
  10. M&Aの資金調達の方法・スキームまとめ
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1. M&Aの資金調達とは

M&Aの資金調達とは

M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称です。一般的には、買収と合併のみならず、事業譲渡や会社分割、増資、株式譲渡など種類に応じ、さまざまな方法によって行われます。そして、これらの方法に欠かせないのが「資金調達」です。

M&Aの際に資金調達が必要な理由

M&Aの際の資金調達は、買収や株式取得などに必要な場合に限らず、さまざまな理由で必要です。

M&Aの際に資金調達が必要な理由としては、主に以下の4つが挙げられます。

  • 買収資金を調達
  • 諸経費のための資金調達
  • 税金のための資金調達
  • M&Aの専門家への費用のための資金調達

買収資金を調達

会社を買収する理由には、主に事業拡大による企業価値の向上と、投資リスクの軽減の2つがあります。

事業拡大の場合には、会社の経営戦略やニーズに基づいた企業の買収によって、事業の弱体部門の強化や多角化を有利に行えます。

2つ目の投資リスクの軽減とは、新規事業への投資するよりも既存事業を買収した方がも売上や利益などの動向がわかりやすく、投資リスクが少ない場合です。

事業拡大と投資リスクの2つを目的としたM&Aの資金調達では、現金で支払いを行うケースが多いです。

しかし、買収に必要な金額は、数百万円~数億円までに上るケースも珍しくないため、M&Aの買収の場合は他機関から資金調達を行う必要があります。

諸経費のための資金調達

M&Aを実行する際に必要となるのが、従業員の人件費やM&Aの実行にかかる交通費、宿泊費などの細かい経費です。株主総会の開催のためには、会議室の配備費や株主の交通費なども必要です。

M&Aは中長期に渡って取り組む取引なので、諸経費の合計額が高ければ、大企業で資金を潤沢に持っていたとしても、資金調達をしなければなりません。

税金のための資金調達

M&Aによって会社を買収した場合は、相続税を会社の引継ぎ時に支払う必要があります。

一般的に、相続税額は会社の価値に応じて金額が上がるので、規模の大きい会社を買収するほど、相続税は高額です。

もし、多額の支払いを行った後に相続税を支払えない場合、今後の経営に支障が出たり、M&Aの実行自体が白紙になったりする恐れがあります。

高額になる税金の支払いのためにも、M&A前後の資金調達は必要不可欠です。

M&Aの専門家への費用のための資金調達

M&Aは、一般的にM&Aの専門家(仲介会社)を通して行われます。事前調査や買収候補の選定には専門家の知識が必須なので、M&Aプロセスの中で専門家への依頼料が高額になるケースは多いです。

さらに、M&A候補先の紹介に伴った手数料、M&Aが成立した場合の成功報酬も考慮する必要があります。

たとえ規模が小さいM&Aを行うとしても、一般的に50万~300万円程度の資金調達が必要です。

M&A仲介会社の中にはリーズナブルな価格であっても、仕事の質が高い会社もあるので、資金調達と含めて視野に入れていくとよいでしょう。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aの際に資金調達を検討されている方は、お気軽にM&A総合研究所の無料相談をご利用ください。

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2. M&Aの資金調達の方法・スキーム

M&Aの資金調達の方法・スキーム

M&Aの資金調達は大別して「直接金融」と「間接金融」の2種類があります。2種類の資金調達の方法・スキームが主流ですが、その他の種類も視野に入れてくといいでしょう。

この章では、M&Aの資金調達の方法とスキームを解説します。

直接金融

直接金融とは新株式を株主へ割当を行い、増資を目的とした資金調達スキームです。そのため、「既存株主」「少数の第三者株主」「不特定多数」へ割当てるのかで資金調達の名称が異なります。

株主割当増資

会社が新株発行によって、資金調達を行うスキームとして「株主割当」があります。株主割当は増資を目的に新株式の割当を受ける権利を既存株主に与えることによって行え、定期的な返済期間を必要としません。

株主割当は、株主の持ち株数に応じて新株式が割当てられます。しかし、株主割当を行った会社が株主に対して申し込みや払い込みの義務はなく、申し込みがない場合は権利が失権し資金調達が失敗に終わることに注意して下さい

第三者割当増資

会社が特定の第三者に対する資金調達を行うスキームの2つ目は、「第三者割当」です。第三者割当も株主割当と同様のスキームですが、業務提携先や取引先・自社の役員・取引金融機関など、発行会社の縁故者に新株式を割当てます。

敵対的M&Aに対する防衛策の一環として行われる場合や、取引先や提携先との財務健全化、関係強化などの方法としても有効です。

公募増資

既存株主や少数の第三者に対してではなく、不特定かつ多数の投資家から投資を受けることを「公募増資」と言います

上場企業が行うことが一般的で、法律上は非上場企業でもできますが、事務処理作業が膨大になるため割に会いません。なお、公募増資時の株価は、その際の市場株価や投資家の需要を参考にして決定されます。

間接金融

間接金融とは、銀行融資など金融機関からの借入を行った資金調達スキームです。金融機関などからの借入では、返済期間や金利に注意しておく必要があります。

金融機関などからの借入

上述の直接金融とは異なる種類に「間接金融」がありますが、自社や縁故者からの借入と比較すると、金融機関によっては返済期間が短い、高い金利で設定されている所が多いです。

したがって、間接金融によるスキームは大半の場合、銀行からの銀行融資を受ける方法を活用しています。

その他

資金調達の方法は、直接金融と間接金融の2種類に限ったものではありません。その他の種類は、ソフトバンクが実施した方法でもあり、活用次第で大きな業績向上を図れる可能性があります。

LBOによる資金調達

M&Aの資金調達スキームには、M&Aの手法の種類に「LBO(Leveraged Buy-out:レバレッジド・バイアウト)」を活用した方法もあります。LBOは、資金調達に際して、買収先の企業の将来的な利益を担保として銀行融資を受ける方法です。

M&Aの買収先の利益を担保とするので、事業規模が小さく資金量が少ない会社でもM&Aの買い手になれます。LBOは、直接金融や間接金融のどちらにも分類されない、M&Aの際にのみ有効な資金調達方法です。

しかし、以下のようなケースでは有効な方法ではないことに注意しておく必要があります。

  • 継続的に経営が遂行されない場合
  • M&Aの実施後に利益見込みが低い場合

預金を活用

大企業や中小事業者であっても、内部留保が潤沢な会社では、内部留保の吐き出し先としてM&Aを活用するケースが多いです。

預金を内部留保しておいても事業価値を生まないので、積極的な収益を生み出すための投資スキームとして有効です。

預金によるM&Aは、借入を避けながら自社事業を補完するために、事業規模の小さな会社を買収する際に多く見られる方法です。

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3. M&A手法としての第三者割当増資のメリット・デメリット

M&A手法としての第三者割当増資のメリット・デメリット

直接投資である第三者割当は、M&Aの手法としても活用されています。第三者割当によるM&Aは、事業提携や資本業務提携などに多く採用される手法です。ここでは、第三者割当のメリット・デメリットを紹介します。

第三者割当増資のメリット

第三者割当は、取引先や従業員など関係のある第三者を指定ができるため、手続きも簡単で増資の手法として検討しやすいのが特徴です

自社の貸借対照表上では、現預金の相手科目として会社の自己資本に充当でき、借入と異なり返済の必要がないため、財務を健全に保てます。

他にも、M&Aの際に第三者割当増資を選択するメリットには「シナジー効果」「会計の効果」があります。

資本業務提携によるシナジー効果の発揮

株式を取得して株主になってもらうと同時に、相手会社と業務提携を行うことを「資本業務提携」と言います。

資本関係がある分、単体の業務提携よりも深いコミットメントが期待され、その結果として業績上昇する可能性が高まります。この効果がシナジー効果です。

株主となった会社は、出資先の業績が上昇するとメリットを受けられるため、出資先に対して営業ノウハウの共有、営業先の紹介などを行うことがあります。

会計上ののれん代を抑えられる

資金の出し手の企業(買い手企業)にとって、「株式譲渡」と比較して、会計上ののれん代を抑える効果があります。

「株式譲渡」では、発行済みの株式を既存株主から譲受するため、買収資金が既存株主に入ってしまいます。

しかし、「第三者割当増資」は、買収資金が売り手会社に入るため会計上の「のれん」が発生しない上、買収資金を事業に回せる、まさに一石二鳥の方法です

第三者割当増資のデメリット

第三者割当は、既存の株主が不利益となる可能性があります。なぜなら、新規発行株を発行して株式数が増加し、1株あたりの価値が下がり、既存株主の議決権割合が低下するためです

そのため、条件によっては既存の株主が不公平感などをもつ場合があるので、事前に通知をしたうえで、新株発行の差止請求まで考慮に入れておくと良いでしょう。

「株式数が増加する」性質から、「必要資金の増加」「完全子会社化ができない」というデメリットが生じます。以下にて解説します。

株式譲渡よりも多くの資金が求められる可能性

第三者割当でお金を出す側(買い手企業)は、目標の株式比率を得るために、より多くの資金が必要です

例えば、発行済み株式が100株で、時価総額1億円(1株=100万円)の会社の50%の株が欲しい場合です。

「株式譲渡」を選んだ場合、50株を持つ株主から「5千万円」で株を購入すれば足りますが、「第三者割当増資」を選んだ場合、新株を100株発行させそれを「1億円」で買い取る必要があります

この時、第三者割当増資で払い込まれた1億円は会社に入るので、売り手企業の時価総額はプレ1億円、ポスト2億円と呼ばれます。

完全子会社化を実現できない

既存株主が保有している株式を買い取らない限り、完全子会社化はできないでしょう。

第三者割当増資では、新株発行をするだけで既存株主の株式が異動しないので、どれほど多額の出資をしても完全子会社化は実現できません

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4. M&Aの資金調達で銀行融資を受けるメリット・デメリット

M&Aの資金調達で銀行融資を受けるメリット・デメリット

直接金融ではなく間接金融により資金調達を行うのであれば、代表的な方法は「金融機関から借入」です

金融機関にも、メガバンク、地方銀行、政府系金融機関、信用金庫など多種が存在しています。それぞれ得意分野や付帯条件が異なりますので、良く比較検討すると良いでしょう。

以下では、銀行融資による資金調達のメリット・デメリットを解説します。

銀行融資を受けるメリット

銀行融資は古くからある代表的な資金調達方法です。設備投資、事業投資、運転資金などの目的で活用されますが、M&Aの原資を用意するため借入を行うケースは多いです。

銀行融資には、直接金融による資金調達と比較して、「希薄化がない」「手元資金が必要ない」「コストを抑えられる」というメリットがあります

以下では、3つのメリットの詳細を解説します。

持株比率を希薄化させずに済む

公募増資や第三者割当増資を行った場合は、新株の発行が必要なので、既存株主の持株比率が減少します。

経営者が株主の場合は持株比率が減ることで経営権が低下するし、外部投資家がいる場合には増資に反対され機動的な資金調達ができない可能性があります。

銀行融資による資金調達では、株式比率の希薄化がなく資金を調達可能です。借入は、貸借対照表上では負債の部に計上されます。

手元に資金が必要ない

手元に資金がなくても、一時的に現預金残高を増やし、M&Aや新規事業への投資ができます。「金で時間を買う」という格言の通り、十分な投資を行うことで将来それ以上のリターンが期待できます。

経営権と信用力の違いはあるものの、増資と借入は自社の無形力を金銭に替えている点では同様です。逆に、自社の無形力に見合うリターンが期待できないなら、投資はしない方が賢明とも言えるでしょう。

コストを抑えた借入を行える可能性

一般的に、間接金融(銀行融資など)での調達で支払う金利は、直接金融(増資など)での調達に必要な資本コストよりも低いでしょう

具体的には、借入時の金利は高くても5%以内には入りますが、投資家の期待収益率は上場企業でも10%弱です。借入金利は、会社の社歴、規模、技術力、ブランド、財務状況などの総合的判断で決められる信用力が高いほど低くなります。

メインバンクとして日頃から取引のある銀行は、日頃からの信頼関係があるので、さらに低い金利で借りることが可能です。

銀行融資を受けるデメリット

「銀行融資」と「増資」の最大の違いは、「返済義務」があるかどうかです。

「増資」で資金調達すれば、自社の事業を成長させて投資家にリターンを提供できますが、「銀行融資」ではそうはいきません。

そこで、銀行融資を受ける際には、「返済義務」「追加融資の難しさ」「保証人」の問題が生じます

返済義務を背負う

融資を受ける際には、「返済方法」「返済期日」「金利」などが設定され、それに則って金を返済しなければなりません。

当初のM&Aに対する資金計画通りに事業が進めば問題ありませんが、想定通り利益が出なかったり想定外の損失を出したりすると、途端に返済計画がとん挫しかねません。

事前の計画とその実行が何よりも大切だと言えるでしょう。

信用力次第で追加融資を受けられなくなるおそれ

返済義務があるがゆえに、「追加融資」にも大きな制約があります。

その会社の実力の下で借入が可能な金額は大体決まっており、既に借りている資金を返済しない限り追加融資が受けられないことは多いです。

頻繁にM&Aは行わないにしても、運転資金の借入枠だけは確保しておくなど、余裕を持った事業運営をするべきでしょう

連帯保証に入っていると会社倒産時に借金を返済する必要

オーナー経営者の中小企業では、借入にあたって、銀行から経営者を連帯保証人に設定するように求められる可能性があります。

M&Aおよび事業がうまくいって返済できれば良いですが、最悪の場合には会社が倒産し経営者に債務のみが残る場合もあります。

このような事態を回避できるよう、自身のリスクは適切に管理する必要があるでしょう。

5. M&Aの資金調達で銀行から融資を受ける際のポイント

M&Aの資金調達で銀行から融資を受ける際のポイント

M&Aの資金調達として銀行融資を受ける場合は、銀行が会社状況のどこを重視しているのかを把握することが大切です。

信用を獲得するうえで有効な方法をベースに、スキーム構成を見直すといいでしょう。

キャッシュフロー状況

銀行融資を受ける際の1つ目のポイントは、キャッシュフロー状況です。

銀行がM&Aにおいて最も重視するポイントで、融資を受ける会社のキャッシュフローはもちろん、買収先のキャッシュフローも精査されます。

特に、経営者や経理担当者の計数管理能力や会社の財務能力が慎重に見極められますので、留意する必要があります。

損益状況

M&Aの実施後は、財務内容のコントロールは当然複雑化するため、銀行は会社の損益状況を確認します。

金融機関のあっせんするM&Aの場合は、買収のあっせんを行うころには、信用保証協会の与信枠まで調査している場合もあるので、融資の取り付けと信用の積み重ねが大切です。

有形固定資産

M&Aに対しての銀行融資は、買収対象の会社に価値があるのが大前提です。

銀行が事業価値を図る判断材料には「有形固定資産」が該当するため、現在価値も明確で有形固定資産の流動性が高い場合は銀行融資の可能性も高くなるといえるでしょう。

一方で、権利や特許などの「無形固定資産」の場合は評価が付けにくく、判断材料の対象外となる可能性も考慮しておく必要があります。

のれんの有無

M&Aに際する銀行融資では、「のれんの有無」が注意深く確認されます。

一般的にのれん代が発生するのは、販路や技術に特別な価値がある場合や、キャッシュフローを生み出し純資産以上の収益を上げられる会社
などです。

したがって、のれんがある場合は、銀行融資を行う銀行にとってバランスシートで確認できない「何か」を対象に評価をし、価値のあるものと認識します。

しかし、客観的な裏付けを行うのには困難なことから、具体的で説得力のある説明が必要です。

事業計画書

事業計画書とは、将来を見越してどのような経営を行っていくのか、どのように利益を上げていくのかを示した書類です。

そこで、銀行融資を受ける際に事業計画書を提出するのですが、その場合に銀行は会社の成長性を考慮して融資を行う必要があると認識しておきましょう。

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6. M&Aの資金調達で銀行融資を受ける際の注意点

M&Aの資金調達で銀行融資を受ける際の注意点

実際に銀行融資を受ける場合、考慮しておくべき以下の要素を把握しておくのが大切です。

  1. 取引履歴の積み重ね
  2. 会社の信用力向上
  3. 事業計画など必要資料の用意
  4. 融資額の限度
  5. 低金利融資のポイント

①取引履歴の積み重ね

銀行借入を良い条件で受けるためには、通常の企業間取引で履歴を積み重ねることが重要です。

なぜなら、多額の手数料を支払っていて銀行にとって優良顧客であることに加え、日々のキャッシュフローがわかるので信用力が増すからです。

そのため、メインバンクからの借入は比較的しやすいと言われています。

②会社の信用力向上

信用力とは、「会社がどの程度の資金を借りて返せるか」の水準です。これが高いほど多くの資金を借入できます。

そのため、日頃から自社の財務状況を管理し、必要な時により多くの資金が借りられるよう準備しておくことが欠かせません

創業直後は信用力がないので多額の借入は難しいですが、そういった場合は、日本政策金融公庫などの「創業融資」が利用できます。

③事業計画など必要資料の用意

借入時は、資金をどのように使うかの「事業計画」も大事です。M&A、新規事業、設備投資、運転資金など、資金の使途は多岐にわたります。

借りた資金を何に使って、どの程度のキャッシュを稼ぐのか、合理的に説明する必要があります。

アドバイザーやコンサルタントなどの専門家も使って、要点を抑えた資料を作成しましょう。

④融資額の限度

銀行融資の際は、融資額の限度を考慮する必要があります。しかし、銀行は1つの会社に対して、一定額以上の融資は行わないようにしています。

したがって、会社が融資額の限度を増やしていくには限界があることから、複数の銀行から融資を受けられるように会社状況を見直しておくようにしましょう。

⑤低金利融資のポイント

銀行融資の際は、一定額以上の融資を行わないとお伝えしました。そこで、複数の銀行からの融資では「低金利融資」のポイントをおさえて融資を受けることをおすすめします。

信用保証協会付き融資を活用

低金利融資のポイントに「信用保証協会付き融資」の活用があります。信用保証協会とは、通称マル保とも呼ばれ、公的組織として保証人になってくれるものです。

この制度を活用すると、中小企業であっても銀行からの融資を受けやすくなります。

相見積もりを実行

相見積もりとは、同じ案や企画などを複数の会社に見積もりを出してもらい、比較することをさします。

相見積もりを実行するメリットは、返済条件や金利を有利に進められる点にあり、銀行から有利な条件を提示されても気付けるため、対等な立場で取引を行えます。

業績の向上

銀行は、全ての会社の格付けを行っていて、格付けが上位であるほど融資は有利です。格付けは「決算書を用いた評価」でほぼ決まります。

そして、決算書を用いた場合は、収益性・安全性・成長性・債務償還能力の4つの視点から評価されます。

これら4つの視点は業績の向上と密接に結びついているので、売上の大きさから生じる利益はもちろんのこと、負債と自己資本比率まで考慮して向上を図るのが大切です。

スプレッド融資の活用

スプレッド融資とは、市場金利連動貸出のことを示します。その基準となる金利がTIBORとなり、TIBORに上乗せした金利で融資を受けられるため、低金利で融資を受けられるのです。

スプレッド融資は優良中小企業も活用しており、その中には1億円以上の融資に対して金利1%未満の融資までみられます。

なお、TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)とは、東京の銀行間取引ことを示しています。そこで、スプレッド融資の基準となる金利は、複数のリファレンス・バンクから全国銀行協会へと報告し、報告されたレートを全国銀行協会が集計したものです。

変動性金利の活用

融資の金利には、固定金利と変動金利の2種類があります。固定金利は、融資決定後も返済期間内は一定の金利です。

しかし、銀行は景気の影響によって将来は低金利になる可能性があるので、損失を回避するためにあらかじめ固定金利の金利を高めに設定します。

したがって、将来的なリスクを負うデメリットはあるものの、変動金利であれば固定金利よりも金利が低い状態で借り入れられます。

7. 銀行から低金利の融資を受けて買収したソフトバンクの事例

銀行から低金利の融資を受けて買収したソフトバンクの事例

ソフトバンクは、全額出資で設立する子会社を通じて、ボーダフォンの発行済株式総数の97.7%を取得し、さらにボーダフォンの2,000億円以下の有利子負債まで引き継いで買収しました。

M&Aの買収に必要な資金は、LBOの方法で1.1兆~1.2兆円を借入ています。アドバイザーとして、みずほ銀行、ゴールドマン・サックス証券、ドイツ銀行などが参加し、国際的にみても異例のLBOとなりました。

ソフトバンクが受けた融資は「ノンリコースローン(非遡及型融資)」が特徴で、融資対象の収益や資産売却額のみを買い入れの返済資金として充当し、それ以上の返済義務を負うことなく融資を受けています。

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8. M&Aの際に受けた銀行融資の理想の返済期間

M&Aの際に受けた銀行融資の理想の返済期間

銀行融資を受ける際は、銀行との交渉により返済期間を決定します。返済期間は、自社の経営状況のさまざまな視点を考慮して決定する必要があります。特に大切な視点は、「資金繰り」です。

返済期間

会社設立の際に調達する資金は「設備資金」「運転資金」の2つに分類され返済期間の基準を設けます。しかし、返済期間は短期、長期で大きく異なるので、一般的な返済期間を基準に判断しましょう。

設備資金

設備資金は設備に対する投資に用いることから、運転資金よりも融資額が高額になるのが一般的です。

そのため、返済期間は比較的長めに設定されているケースが多く、一般的には10~15年程度で返済期間を設定しています。

運転資金

運転資金は会社の運営を行っていくうえで必要な資金であり、会社経営で生じる、仕入れ・在庫・買掛金や諸経費支払い・売掛金の入金などに活用します。

そのため、運転資金を数カ月単位で運用していく必要があり、長期間の返済期間を設定できません。一般的には、5~7年程度が限度と言われています。

理想の返済期間

理想の返済期間は「設備資金」と「運転資金」での一般的な返済期間から、事業計画上どの程度の利益見込みがあるのかを想定し見定めるのが大切です。

そこで、以下2つを判断材料にするといいでしょう。
 

  • 利益が生まれるポイントを考える
  • 軌道に乗る期間を考える

利益が生まれるポイントを考える

理想の返済期間の設定には「利益が生まれるポイント」を考えておくのが大切です。例えば、設立当初の会社である場合に、安定した売り上げを最初の3カ月で得られず、半年かけて収益が見込めると考えたのであれば、返済期間は半年と設定するべきでしょう。

軌道に乗る期間を考える

次に理想の返済期間を設定するポイントして「軌道に乗る期間」を考えることです。会社がいつから安定してくるのかを考慮、加えて売上の入金が遅い会社であれば資金繰りが悪化しない状況を想定して返済期間を半年程度に設定しておくのが好ましいです。

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9. M&Aの資金調達としてのLBO・MBOとは

M&Aの資金調達としてのLBO・MBOとは

増資や通常の融資以外の資金調達スキームに、LBO(Leveredged Buy Out)・MBO(Management Buy Out)があります。

いずれも、銀行から借入する点は同じですが、相違点は自社ではなく被買収会社の資産や将来キャッシュフローを担保にする点です

以下では、LBO、MBOのメリットとデメリットを解説します。

LBOとは

LBOは投資ファンドに多く用いられる手法で、リスクは高いものの利益効率は良い投資スキームです。その性質上、敵対的買収を仕掛ける際に多く用いられています。

複雑なスキームであるため、金融のプロが行うことが多いですが、そのメリットは非常に大きいと言えます。

スキームの構造

LBOは、「売り手企業の」資産や将来キャッシュフローを担保に、「買い手会社が」融資を受けるスキームです。

通常の融資では、買い手会社の資産や信用力によって融資を受けますが、LBOでは売り手会社が担保になりますので、極論買い手会社が誰でも融資を受けられる仕組みです

メリット

買い手会社はM&Aを行う際に、自社の資金を拠出する必要がありません。その上、自社の信用力がなくても、資金を調達可能です。

LBOを行う際にはSPC(特定目的会社)を使うことが多く、通常の借入と比較して利益効率が高まるレバレッジ効果が期待できます

デメリット

自社の信用力を使わない分、銀行が負うリスクが高いため、金利などの諸条件が悪いことが多いです

実際、当初の売り手企業の事業計画が達成できなかった場合に、金利支払いや返済が非常に難しくなります。

代表的な事例

2003年に米国の投資ファンド「リップルウッド」が日本テレコムを買収した事例では、LBOの手法で米系銀行・日系銀行から2,090億円を集めたといわれています

1年後の2004年には、ソフトバンクグループが日本テレコムを買収し、リップルウッドの投資利益は約800億円でした。

リップルウッドは、自己資金の数百億円から、1年間で800億円稼いだ計算になります。

MBOとは

MBOはLBOとよく似ていますが、実施主体が会社経営陣である点が大きく異なります

投資目的ではなく、投資家と経営陣の事業方針が対立した場合や上場のメリットがなくなった場合など、「所有と経営の一致」を目的に行われる手法です。

スキームの構造

MBOは、「売り手企業の」資産や将来キャッシュフローを担保に、「売り手企業の経営陣が」融資を受けるスキームです。

通常の融資では、買い手会社の資産や信用力によって融資を受けますが、MBOではLBOと同様に売り手会社が担保なので、経営陣に金銭面での信用力が少ない場合でも融資を受けられます

メリット

MBOは、株主と経営者を一致させるために行われます。これにより、経営の機動力の確保や大胆な事業投資が可能です。

MBOを行えば、上場会社でも非上場会社になるため、上場維持コストを減らす効果も期待できます。

デメリット

事業計画通りに業績を伸ばせなかった場合に問題となります。通常、MBOの後には再上場を行うなどのゴールが設定されていますが、それができなくなるためです

株式を保有している経営陣にとっては、株式の引き取り先がいなくなるので、その会社の経営に関与し続けなければならないこととなります。

代表的な事例

2006年、「すかいらーく」がMBOにより上場廃止になりました。当時のすかいらーく代表取締役だった谷真氏がMBOの旗振り役となり、みずほ銀行などから2,200億円の融資を受けることで買収資金を用意しています

8年後の2014年に再上場を達成しましたが、期待通りの企業価値向上は達成できず、投資利益もほとんど得られなかったようです。

10. M&Aの資金調達の方法・スキームまとめ

M&Aの資金調達の方法・スキームまとめ

以上で、M&Aの資金調達の方法・スキームの概要を紹介しました。本記事のまとめは以下の通りです。

【M&Aの投資理由は主に4つ】

  1. 買収資金を調達するため
  2. 諸経費のための資金調達
  3. 税金支払いのための資金調達
  4. M&Aの専門家への費用のための資金調達

【資金調達の方法】

  • M&Aの資金調達の方法は「直接金融」「間接金融」の2種類に大別
  • 銀行融資を受ける際のポイントは「企業価値」と「信用」をベースに評価される
  • 銀行融資は「低金利融資」が有効活用できる
  • 返済期間の設定は一般的な返済期間をベースに会社状況と比較する

M&Aの資金調達は、合併や買収に必要な資金だけではなく、「諸経費、税金、専門家への相談料」までを考慮しておくのが大切です。しかし、資金調達に成功したとしても、買収のスキームを誤ってしまうと大きな損失を生み出してしまいます。

M&Aの資金調達を成功させるためには、自社の財務状況やキャッシュフローなどさまざまな視点を考慮する必要があるので、M&A仲介会社など、専門家に相談しながら進めてください。

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