2023年09月21日更新
ノンコア事業とは?売却、切り離しを注意点、事例付きで解説!
ノンコア事業とは、コア事業を支援するための事業のことです。経営や事業の多角化を図る企業も多いですが、近年は選択と集中でノンコア事業を売却する事例も見受けられます。本記事では、ノンコア事業の売却、切り離しの注意点や事例を紹介します。
1. ノンコア事業とは?
事業の多角化は、企業の成長戦略として重要視されています。というのは、企業・社会環境の変化によるリスク分散や重複部門の排除によるコスト削減など、さまざまなメリットがあるためです。
実際に多くの企業が事業の多角化を図って複数のノンコア事業を手掛けていますが、近年は激化する競争環境やコロナの感染拡大の影響もあり、ノンコア事業を切り離す方向にシフトしつつあります。
では、売却や切り離しが進められているノンコア事業とは、一体どのような事業を指すのでしょうか。この章では、ノンコア事業とコア事業について解説します。
ノンコア事業について
ノンコア事業とは、企業のコア事業以外の事業です。非中核事業とも呼ばれており、コア事業よりも収益性が低く割かれるリソースも少ないなどの特徴があります。
収益性が高いコア事業に全リソースを集中するよりも、複数のノンコア事業にバランスよく振り分けるほうがリスク分散ができて経営基盤が安定しやすくなります。
多角化戦略に重要とされるノンコア事業ですが、規模縮小や撤退、M&A・売却の対象になることも多いです。これは、縮小・廃止してもコア事業にもあまり影響を及ぼさないと考えられるためです。
コア事業とは
コア事業とは、企業が手掛ける複数の事業のうち特に中心に位置する事業です。中核事業とも呼ばれており、ノンコア事業(非中核事業)とは対照的な関係にあります。
企業の収益を支える重要な事業なので、最もリソースが集中しやすい特徴があります。また、ノンコア事業の売却や切り離しで確保されたリソースの投下先になることも多いです。
なお、現在の収益性が悪くても、今後の成長過程を考慮してコア事業と位置付けることもあります。M&A・売却のシーンでは残す事業をコア事業、切り離す事業をノンコア事業と分類することも多いです。
2. ノンコア事業の売却が増えている理由
多角化戦略で複数のノンコア事業を手掛ける企業は多いですが、最近は不要と判断されたノンコア事業の売却、切り離しが増えています。
ノンコア事業の運営には人件費・管理費等のコストが発生します。コストがかかる割に収益性が悪い場合は、売却を検討されるのも必然といえるでしょう。
近年は、少子高齢化の影響で労働力不足も深刻化しています。ノンコア事業はおろか、企業の中核であるコア事業の人材不足が問題になることも少なくありません。
このような問題は以前から抱えていましたが、ここ数年は競争環境の変化やコロナの感染拡大の影響によって、企業を取り巻く環境は大きく変わっています。
企業が生き残るためにはコア事業に集中するべきという考え方が浸透しつつあり、収益性が悪くコストもかかるノンコア事業を売却する動きが加速しています。
3. ノンコア事業をM&A・売却するメリット
売却側にとって不要と判断されたノンコア事業でも買収側にとっては有益であることも多いです。この章では、ノンコア事業をM&A・売却するメリットを売却側と買収側のそれぞれの視点から解説します。
売却側のメリット
まずはノンコア事業の売却側のメリットからみていきます。売却側が得られるメリットで影響が大きいものは以下の3点です。
【売却側のメリット】
- 経営の効率化
- 人材の集中
- 社員のモチベーション維持
1.経営の効率化
ノンコア事業は役割を果たしているときは重要性の高い事業ですが、社内外の環境変化によって不要と判断されることも少なくありません。
不要な事業を売却して空いたリソースをコア事業に集中すれば経営の効率化ひいては会社の利益向上を期待できます。
ノンコア事業の売却が合理的な判断である場合、投資家や株主からの反応が良くなることも期待できます。資産効率性が向上していると判断されて結果的に企業価値が上がるという仕組みです。
2.人材の集中
経営の効率化は人材面でも大きな影響を及ぼします。ノンコア事業に人材を割いているために、コア事業の人材が不足しているというケースも珍しくありません。
ノンコア事業を売却して手の空いた人材をコア事業に集中させることで、人材不足の解消に繋げることができます。
今後は、少子高齢化による労働力不足がさらに加速していくと予測されているため、企業の課題として人材の有効活用が重要になってくるでしょう。
3.社員のモチベーション維持
ノンコア事業は配属されている社員は、ノンコア事業の業務に対してモチベーションが維持できないことも多いです。
中核であるコア事業に転属になれば、自身が携わっている業務が会社に収益に貢献しているという自覚を持ちやすくモチベーションも維持しやすくなります。
ノンコア事業の売却の際、買収企業へ転籍する場合も強く求めてくれる企業に配属されることで、モチベーションが高まることが期待されます。
買収側のメリット
続いて、ノンコア事業の買収側のメリットをみていきます。買収側がノンコア事業を買収する目的は主に以下の2点です。
【買収側のメリット】
- スピーディーな新規事業参入
- 資産形成・規模拡大
1.スピーディーな新規事業参入
事業の多角化を図るとしても、新しく事業を開始するには多大な時間と費用が必要です。人材の確保やノウハウの構築、市場のマーケティング等をゼロから行わなければならないためです。
その点、他社のノンコア事業を買収すれば事業に必要なものを一度に確保することができます。
必要なタイミングでスピーディーに新規事業に参入できるので、ビジネスチャンスを掴みやすいメリットがあります。
2.資産形成・規模拡大
買収したノンコア事業の収益性を維持できるようになれば、企業価値が向上して資産形成することもできます。
事業規模が拡大すると企業全体の購買力が向上し、取引先との値引き率などにも影響してきます。結果的に原価率を抑えることになり、収益向上に繋がることも期待されます。
4. ノンコア事業の売却、切り離しの注意点
ノンコア事業の売却、切り離しは事業譲渡を利用する方法が一般的です。この章では、事業譲渡の際に特に注意したい2つのポイントを紹介します。
【ノンコア事業の売却、切り離しの注意点】
- 社員・取引先の引継ぎ
- 競業避止義務
1.社員・取引先の引継ぎ
社員の転籍が伴う事業譲渡の場合、該当の社員から個別に同意を得る必要があります。少数ならば対応もしやすいですが、数百人、数千人規模になるとどのように実現するかが問題になります。
ノンコア事業は売却するため、転籍に応じない社員は配属部署変更あるいは退職手続きなどの対応が必要です。
取引先に関しても個別に同意を得る必要があります。経営者との関係性で取引を行っていることも多いので、事前に確認しておくことが大切です。
2.競業避止義務
競業避止義務とは、売却側は譲渡事業と同一あるいは類似する事業を行ってはならないという義務です。買収側の競業になることを防ぐために設けられている制度です。
競業避止義務は最終契約書に盛り込まれ、法的拘束力があるため、売却側が違反した場合は罰則や罰金が科せられます。
類似する事業を再び手掛ける予定がある場合は、競業避止義務の期間の確認が必須です。原則20年とされていますが、売却側と買収側の交渉次第で短縮・延長することができます。
ノンコア事業の売却、切り離しのご相談はM&A総合研究所へ
ノンコア事業の売却、切り離しは会社分割を利用する方法もあります。会社分割は包括承継が可能(労働者保護手続きは必要)なので、事業譲渡よりも手続きが簡便です。
会社や事業の規模によって適切なM&A手法は変わってくるので、できるだけ多くの選択肢を検討することが重要になります。
M&A総合研究所はM&A・事業承継サポートを手掛けるM&A仲介会社です。さまざまな業種・規模のM&A案件に携わっており、豊富な経験とノウハウを蓄積しています。
当社の料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、ノンコア事業の売却、切り離しのお悩みの際はお気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。
5. ノンコア事業の売却、切り離しの事例
ノンコア事業の売却、切り離しは時間や費用がかかるものですが、例え手間がかかったとしてもノンコア事業を清算しようとする動きが強まっています。
この章では、ノンコア事業の売却に積極的に取り組んでいる武田薬品工業や日立製作所の売却事例を紹介します。
【ノンコア事業の売却、切り離しの事例】
- 武田薬品工業によるシードラの売却事例
- 日立製作所によるクラリオンの売却事例
- 日立製作所によるアラクサラネットワークスの売却事例
- 日立製作所による日立国際電気の売却事例
- 日立製作所による日立工機の売却事例
1.武田薬品工業によるシードラの売却事例
2019年5月、武田薬品工業は眼科用治療薬事業「シードラ」をノバルティス(スイス)に売却することを公表しました。公表当時の想定価額は最大53億ドル(約5800億円)です。
シードラは、武田薬品工業が買収したアイルランド製薬大手のシャイアーが保有するドライアイ治療薬です。2018年に世界売上3億8800万ドルを記録しています。
武田薬品工業はがんや希少疾患を中核事業にするとし、眼科用治療薬であるシードラを売却してシャイアー買収で膨らんだ有利子負債の返済に充てるとしています。
2.日立製作所によるクラリオンの売却事例
2018年10月、日立製作所は連結子会社クラリオンをフォルシア(フランス)に売却することを公表しました。公表当時の見込みではTOBによる売却で総額899億円となっています。
クラリオンは、日立製作所の子会社としてカーナビゲーションシステムなどを手掛けていた会社です。高い電子技術力を有しており音響や電子・画像技術に強い反面、カーナビの需要に伸び悩んでいました。
今回の売却は、自動車業界のグローバル間の競争が激化するなか、クラリオンの成長と企業価値向上のためにはフォルシアの経営資源の活用が不可欠という判断によるものです。
日立製作所は、クラリオン株式の売却で確保した資金を自動運転などを含む社会イノベーション事業に充てるとしています。
3.日立製作所によるアラクサラネットワークスの売却事例
2018年1月、日立製作所は子会社アラクサラネットワークスの全持株を日本産業パートナーズに売却することを公表しました。
アラクサラネットワークスは日立製作所とNECのネットワーク機器部門を統合して誕生した会社です。株式の保有状況は日立製作所6割・NEC4割です。
日立製作所は今回の売却に関して、アラクサラネットワークスのネットワーク分野の強化には投資ファンドである日本産業パートナーズによる機動的な投資が必要と判断したとしています。
日立製作所はグループ内の通信機器の事業領域を絞りこみ、法人向けのネットワークを構築・運用するソリューション領域へ集中するとしています。
4.日立製作所による日立国際電気の売却事例
2017年4月、日立製作所は子会社の日立国際電気の株式をコールバーグ・クラビス・ロバーツ(アメリカ)と日本産業パートナーズに売却することを公表しました。
日立国際電気はIoT高信頼無線などを始めとする映像・通信ソリューション事業を中核事業とする会社です。2000年に国際電気・日立電子・八木アンテナの合併で誕生して以来、日立グループの映像・通信事業を担っていました。
日立製作所は選択と集中を加速させ、確保したリソースをインフラ分野に集中させて同分野で先行する欧米大手を追い上げるとしています。
5.日立製作所による日立工機の売却事例
2017年1月、日立製作所は子会社の日立工機の全持株をコールバーグ・クラビス・ロバーツ(アメリカ、KKR)に売却することを公表しました。TOBによる買い付けで1株1450円で同年1月30日~3月22日にかけて実施されました。
日立工機は日本の電動工具メーカーです。2016年の電動工具市場では国内2位、世界4位前後のシェアを獲得しています。
KKRは、自社グループが持つ海外のネットワークを活用して、日立工機のさらなる海外展開を図る見通しです。日立製作所は、インフラや情報技術などの中核事業に集中するとしています。
6. まとめ
人材不足など企業のリソースが限られるなか、選択と集中の重要性は増していくと考えられるため、今後もノンコア事業の売却、切り離しは増加していくと予測されています。
自社にとって不要になったノンコア事業でも、他社に譲ることで日本経済の発展に繋げることができます。
必要としてくれる買収企業を探す際は、M&Aの専門家に相談するとよい結果が得られやすくなります。
【ノンコア事業のまとめ】
- ノンコア事業とはコア事業より収益性が低く割かれるリソースも少ない非中核事業
- 選択と集中によってノンコア事業の売却が増えている
【売却側のメリット】
- 経営の効率化
- 人材の集中
- 社員のモチベーション維持
【買収側のメリット】
- スピーディーな新規事業参入
- 資産形成・規模拡大
【ノンコア事業の売却、切り離しの注意点】
- 社員・取引先の引継ぎ
- 競業避止義務
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。