2022年06月06日更新
上場企業の買収方法を解説!非上場企業の買収との違いは?【事例あり】
上場企業に対する買収方法には、どのようなスキームがあるのでしょうか。この記事では、上場企業の買収方法、比較される非上場企業の買収について解説しています。そのほかにも、買収事例や買収手続きの進め方、上場・非上場企業の買収価格についての相場などを取り上げています。
目次
1. 上場企業とは
上場企業とは、証券取引所において、自社の株式が売買の対象となっている会社のことです。株式公開を行うことで、自社の株式について投資家たちへ流通を促し、資金・創業者利益の獲得、知名度の向上などを図っています。
上場する会社は、定められた基準に従い、4つの市場(市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ)に分けられています。
各市場に上場するためには、定められた形式要件(株主数・流通株式・時価総額など)を満たすほか、実質基準(継続性・収益性・経営の健全性・管理体制の有効性・開示内容の適正性など)の審査に通らなければなりません。
そのため、基準を満たした上場企業には一定の信頼性があると見なされ、投資の対象とされるのが認められています。
2. 非上場企業とは
非上場企業とは、自社の株式を公開せず、証券取引所への上場を果たしていない企業のことです。非上場企業である理由には、上場に必要な基準を満たしていなかったり上場による不利益回避するなどが考えられます。
上場企業には、上場維持のための費用や情報の開示などの義務があります。また、株主の意向を経営に反映する必要があるため、時には経営方針の転換も必要になるかもしれません。
そのため、大手企業であっても株式を公開せずに、非上場企業として経営を続けている会社も存在しています。
3. 企業買収の主要方法
企業が他社を買収する場合、どのような手法を用いているのでしょうか。企業買収では、主に3つの手法が用いられています。
- 株式取得
- 事業譲渡
- 合併
①株式取得
1つ目に挙げる企業買収の手法は、株式取得です。株式取得とは、対象会社の株主から株式を取得する手法をさします。
株式を取得する場合は、市場の内外で株主と取引を行います。市場を通じた取引なら、投資家たちと同じように、出回っている対象会社の株式を購入します。
市場での取得には、市場に出回っている株式数に限りがある・価格が変動するなどの不確定な要素が含まれています。また、複数回に分けて株式を購入すれば、価格の上昇に見舞われることも少なくありません。
その点、市場外の取引であれば価格の影響を受けにくいといえるでしょう。株主から直接株式を譲り受けたり、不特定多数の株主を対象とした株式公開買付けを行ったりすると、株式の数や市場の価格変動に左右されずに、対象会社の株式を取得できるといえます。
②事業譲渡
2つ目に挙げる企業買収の手法は、事業譲渡です。事業譲渡とは、事業の一部やすべてを他社に譲り渡す手法をさします。
承継する事業を選択できるため、必要な事業部門のみを買収できたり、簿外債務の引き継ぎを回避できたりと、不要な資産・負債を承継せずに済む点が特徴です。
事業譲渡は大型のM&Aではあまり使用されず、中小企業に対するM&Aでよく利用されています。
③合併
3つ目に挙げる企業買収の手法は、合併です。合併とは、複数の会社が、1つの会社に統合するのをさします。
企業買収に用いられる合併の種類は、吸収合併と新設合併の2種類です。吸収合併では、買い手が売り手の権利義務をすべて承継し、自社に吸収します。一方の新設合併とは、新設した会社に当事会社の権利義務をすべて承継させる手法です。
企業買収の合併では主に、吸収合併が用いられています。新設合併はグループ内の事業を1つにまとめるために利用される場合が多く、他社を買収する意味では、吸収合併の方が企業買収に適した方法といえるでしょう。
4. 上場企業の主な買収方法
上場企業を買収する場合、どのような手法を用いればよいのでしょうか。上場企業の買収では、以下のような手法があり、それぞれに特徴があります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- TOB
- MBO
- その他
買収方法①株式譲渡
1つ目の上場企業の買収方法は、株式譲渡です。株主への直接交渉や市場を通じた株式の取得により、上場企業を買収します。
株主との直接交渉では、大株主との交渉を成立させられれば、議決権の過半数を獲得する可能性を高められます。
市場で株式を取得する場合には、限られた数しか売買されていない・株式の取得を続けることによる価格の値上がりなどの問題が生じるため、経営権の獲得は難しいといえるでしょう。
買収方法②事業譲渡
2つ目の上場企業の買収方法は、事業譲渡です。承継する事業・対象企業を選定し交渉を進め、対象企業から選択した資産・負債・営業権などを引き継ぎます。
上場企業は子会社を抱えているケースが多く、資本の選択と集中のために、不採算事業や赤字会社を他社へ譲り渡すケースも少なくありません。
また、経営方針の転換により、抱えている子会社・事業を譲渡する場合もあります。そのため、上場企業から事業を承継するのも可能であるといえるでしょう。
買収方法③TOB
3つ目の上場企業の買収方法はTOBです。TOBは株式公開買付けをさし、市場外で取得する価格・株式数・期間を伝えて、必要な株式を一度に買い付けます。
市場で株式を取得すると価格が上場し、想定した買収額を上回る事態が想定されますが、TOBを選択すれば、自社の希望額の範囲で必要な株式を定めた期間までに取得するのが可能になります。
ただし、株式の譲渡に応じてもらうために、買収価格にプレミアムが付けられることも多いです。これは、対象企業に今後の成長が見込める場合、将来に得られる利益分を上乗せする必要があるためです。
そのため、TOBを用いる場合は、市場での取得よりも買収額が嵩んでしまうことがほとんどです。また、TOBは対象会社から取る了承の有無によって、2つのスキームに分類され、ひとつは友好的TOB、もうひとつが敵対的TOBと呼ばれています。
友好的TOB
友好的TOBとは、対象会社の了承を得て、株式の取得を行うTOBのことです。あらかじめTOBの実施を通知し、対象会社から了承を得た後で、市場外での株式取得を実施します。
ちなみに、日本で実施されるTOBのほとんどは、友好的TOBとされています。
敵対的TOB
敵対的TOBとは、対象会社の了承を得ずに、株式の取得を行うTOBのことです。TOBが実施されれば、株式が大量に取得され経営権に影響が及びます。自社が第三者の手に渡りかねないため、通知・了承を得ないTOBは敵対的TOBと見なされます。
敵対的TOBを行うと、対象企業は乗っ取りを回避するために防衛策を講じます。そうなれば、議決権の獲得に見合う株式を確保できなかったり対象会社が他社のTOBに応じてしまったりと、TOBを完了できない事態が想定されるでしょう。
仮に敵対的TOBを完了できても、前経営陣や役員を残す場合は良好な関係を築きにくいといえます。ただし、経営陣を一新し、経営方針を大きく転換させる場合には利用価値のある手法といえるでしょう。
買収方法④MBO
4つ目の上場企業の買収方法はMBOです。経営陣や役員・従業員が株主から自社の株式を取得し、独立する手法です。
上場企業ではグループ化を進めている企業も多く、子会社を経営陣などに任せることで、意思伝達の速度を上げたり経営陣のモチベーションを高めたりします。
株式の買収に必要な資金は、投資ファンドから融資してもらうため、買い手となる経営陣などが現金を持たなくても、買収は可能といえるでしょう。
買収方法⑤その他
5つ目のその他の買収方法には、対象企業による第三者割当増資に応じて対価となる株式を取得する、吸収合併の提案に応じて対象企業の事業部門や会社そのものを自社に取り込む、といった方法があります。
さらに、売り手側の株式を既存の会社や新会社が取得する、株式交換・株式移転の手法も存在します。ただし、株式交換は多くの場合、対象会社の完全子会社化を目的に行われるため、事前に一定数の株式を取得しておくのが一般的です。
株式移転についても、持株会社への移行に用いられているため、上場企業の買収では、利用しにくい方法といえるでしょう。
5. 非上場企業の主な買収方法
非上場企業に対する買収には、どのような方法が用いられているのでしょうか。非上場企業の買収には、以下のような手法が用いられています。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- その他
買収方法①株式譲渡
1つ目の非上場企業の買収方法は株式譲渡で、非上場企業の株主と交渉して株式を譲り受けます。上場企業の買収とほとんど変わりがないと、捉えればよいでしょう。
上場企業の買収と異なる点を挙げれば、譲渡制限株式の譲渡とTOBによる株式取得の強制です。非上場企業は、一部の株式に譲渡制限を付けています。
そのため、株式を譲り受けるには、非上場企業の承認が必要です。また、非上場企業にはTOBによる株式取得は強制されないとしています。
上場企業の買収では、株式の取得により、株式の保有割合が5%または、1/3以上に達する場合には、TOBのスキームを用いるとされているため、非上場企業は上場企業よりも、スキーム選択の自由度が高いといえるでしょう。
このほかにも、非上場企業の買収では、買収価格の算定が難しいことや、財務諸表の監査証明が付いていないなど、非上場企業特有の問題に対処する必要があるといえるでしょう。
非上場企業を株式譲渡によって買収する場合には、これらの特徴を理解したうえで、買収を実行に移すのが求められるといえます。
買収方法②事業譲渡
2つ目の非上場企業の買収方法は、事業譲渡です。事業の一部やすべてを譲り渡す事業譲渡も、上場企業に対する買収と変わりはありません。すべての事業を譲り受ける場合には、自社の株主総会で特別決議を経るとしています。
ただし、上場企業の買収と比べて、買収価格の算定が難しかったり、情報管理の不徹底によって買収情報が漏れやすかったりと、非上場企業の買収で生じやすい問題に対処する必要があるでしょう。
買収方法③その他
その他の非上場企業の買収方法には、株式交換・株式移転といったスキームがあります。
株式交換では上場企業に対する買収と同じように、株主総会の特別決議を経る・反対株主の買取請求に応じるなどの義務を果たさなければいけません。株式譲渡と比べると、手続きに手間がかかるといえるでしょう。
株式移転についても、上場企業に対する買収と同様に、他社を買収する手法に用いられることは少ないとされています。
6. 上場企業買収と非上場企業買収の違い
上場企業と非上場企業の買収では、譲渡の対象となる株式の種類によって、株式を取得する方法に違いが見られます。
譲渡制限株式について
譲渡制限株式とは、譲渡に対して制限を設けた株式のことです。非上場企業は、自社の経営権が好ましくない者に渡らないように、自社の株式に譲渡制限を設けています。
一方で上場企業は、自社の株式に譲渡制限を設けることはできません。株式の流通を妨げるため、上場の審査基準には、株式譲渡の制限を設けていないと定められています。
上場企業の株式を取得する場合、株主総会などの承認を得る必要はありませんが、譲渡制限株式を非上場企業から取得するとなれば、譲渡人と共同して、株式の買取請求を行い、譲渡側の承認機関に認めてもらう必要があります。
そのため、上場企業・非上場企業の買収では、発行する株式の種類によって、株式の買い取り方に違いが見られるといえるでしょう。
7. 上場企業の買収手続き
上場企業を買収する際に、買い手はどのような手続きを踏む必要があるでしょうか。よく用いられる株式譲渡・事業譲渡について、以下6つの買収手続きを解説します。
- 企業買収に向けての相談
- 企業買収に向けての本格的な戦略策定
- 各種契約書の締結・事前確認・デューデリジェンスの実施
- 株主総会・取締役会の開催と承認
- 最終契約書の締結・企業買収の手続き
- クロージング
①企業買収に向けての相談
1番目に行う上場企業の買収手続きは、企業買収に向けた相談です。M&Aの専門家に相談を持ち掛けて、企業買収のスキームや、買収額、用いる対価などを大まかに取り決めます。
②企業買収に向けての本格的な戦略策定
2番目に行う上場企業の買収手続きは、企業買収に向けての本格的な戦略策定です。企業買収の目的を明確にして、企業買収のスキーム、買収額や用いる対価などを決定します。
その後、自社で探した売り手候補やM&Aの専門家が紹介する企業から、交渉を進める相手を選びます。さらに候補とされる企業から詳しい情報を集め、トップ同士の面談を行い買収に見合う企業を絞り込みます。
③各種契約書の締結・事前確認・デューデリジェンスの実施
3番目に行う上場企業の買収手続きは、各種契約書の締結・事前確認・デューデリジェンスの実施です。面談を通じて絞り込んだ企業に意向表明書を提出し、交渉を進める意志を伝えます。
こちらの条件に相手が合意の意思を示したら、次は基本合意書の締結をします。契約書を取り交わし、契約内容に概ね合意したことを示します。
契約書の締結を終えたら、買収についての事前確認に移ります。株式譲渡や事業譲渡などの場合、自社の売上高や、対象企業・対象事業の売上高が定められた基準に達していると、公正取引委員会への届出が必要です。条件に該当するかどうかを、必ず事前に確認しておきましょう。
契約書の締結・事前確認を済ませたら、買い手側は売り手側に対してデューデリジェンスを実施し、企業・事業の価値や、リスクの有無などを調べます。提出された情報に違いがないこと、隠された簿外債務がないことなどを確認しましょう。
④株主総会・取締役会の開催と承認
4番目に行う上場企業の買収手続きは、株主総会・取締役会の開催と承認です。上場企業の株式を取得する場合、買い手側は株主総会か、取締役会(取締役会設置会社)を開き、株式の買取・事業の承継について、承認を得る必要がありません。
事業譲渡により上場企業を買収する場合、以下の条件に該当すると、効力の発生日までに、株主総会の特別決議で、承認を得る必要があります。
- 他社の事業をすべて譲り受ける
- 会社が成立してから2年以内に、成立前から存在する財産について事業を行うために継続し使用するために取得する
なお、②のケースでは「対価として交付する財産の帳簿価額の合計」に対する「当該株式会社の純資産額」の割合が1/5を超えない場合を除くとしています。
⑤最終契約書の締結・企業買収の手続き
5番目に行う上場企業の買収手続きは、最終契約書の締結です。デューデリジェンスでの調査を受けて、条件の調整を行い、最終契約書を締結します。
このほか事業譲渡のケースでは、反対株主からの株式買取請求に対応する必要があります。事業を譲り受ける会社は、効力発生日の20日前までに株主へ事業譲渡を行う旨を通知しなければいけません。
ただし、事業を譲り受ける会社が、公開会社か株主総会の決議で契約承認を受けた場合には、通知に代えて公告で済ませられるとされています。
また、効力発生日から30日以内に株式の買取価格について協議がまとまると、効力発生日から60日以内に買い取った株式の対価を支払わなくてはなりません。
⑥クロージング
6番目に行う上場企業の買収手続きは、クロージングです。最終契約の内容に応じて、株式・事業の承継が行われ、買い手が対価を支払うことで、譲渡契約が完了します。
さらに、有価証券報告書の提出義務がある会社は、臨時報告書を提出し、株式・事業譲渡の取引が定められた条件に該当する場合には、公正取引委員会への届出を行ってください。
このほかにも、株式譲渡では譲渡人と共同して、株主名簿の書き換えを請求し株式名簿記載事項証明書の交付も請求します。
事業譲渡では、屋号を引き継ぐ・不動産を移転させる場合には登記を行い、引き継げない許認可について申請を行う必要があります。
上場企業を買収する場合は多くの手続きを経なければならず、なかには専門知識が必要になるものもありまあす。スムーズにM&Aを進めるためには、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けるとよいでしょう。
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。知識・実績豊富なM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っており、スピーディーなサポートを実践することで最短3ヶ月で成約した実績もございます。
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8. 上場企業と非上場企業の買収価格相場
上場企業と非上場企業の買収では、どのようにして買収価格の相場を算出しているのでしょうか。
この章では、上場企業と非上場企業それぞれについて、買収価格相場の算出方法を解説します。
上場企業の買収価格
上場企業の買収では、株価や将来のキャッシュ・フロー、純資産額を基準にして、以下のような算出方法を用いられています。
- マーケットアプローチ(市場株価法)
- インカムアプローチ
- コストアプローチ
マーケットアプローチ(市場株価法)
マーケットアプローチとは、株式市場の価格を基に、企業の価値を算出する方法です。マーケットアプローチのうち、上場企業の株価を用いて価格を算出する方法が、市場株価法と呼ばれています。
取締役会などで譲渡が決定した日を基準とし、一時的な株価の変動に備えて、1・3・6カ月単位で株価の平均額を算出し、企業価値の評価に用いています。
しかし、上場企業の買収ではプレミアムを考慮しなければなりません。スムーズな買収・支配権の獲得などのために、30〜40%ほどのプレミアムを加えて、上場企業の買収が行われていると捉えておきましょう。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、将来に得られる収入(キャッシュ・フロー、利益、配当)を現在の価値に換算して、企業価値を算出する方法です。
中でもよく利用されているのは、DCF法です。将来に得られるキャッシュ・フローを、現在の価値に割り引くことで、成長による収益の拡大を買収価格に反映できるといえるでしょう。
コストアプローチ
コストアプローチとは、純資産を基にして企業価値を算出する方法です。資産そのものに価値を見出す業種に適した算出方法といえるでしょう。
コストアプローチの種類は、2つの手法に分けられています。ひとつは時価純資産法で、もうひとつが簿価純資産法です。
一般的に用いられているのは時価純資産法で、ある一時期について、資産の時価から負債を引いた額を企業価値と定めます。
非上場企業の買収価格
非上場企業の買収価格は、どのように算出されるのでしょうか。非上場企業は株式を公開していないため、株価がわかりません。
株式譲渡など、株式の価格が必要な場合には、以下のような算出方法を用いられています。
マーケットアプローチ(類似会社比較法)
類似会社比較法は、マーケットアプローチのひとつで、非上場企業と類似する上場企業を探し、上場企業の時価総額を基にして、非上場企業の買収価格を決める方法です。
非上場企業は、株式公開をしていないため、市場での価格が公表されていません。そこで、業種や事業規模などが似ている上場企業を選び、比較の対象とします。
この方法であれば、非上場企業でも市場の影響を反映させた買収価格の算出が可能といえるでしょう。
インカムアプローチ(DCF法)
まずは、DCF法によって、将来に得られるキャッシュ・フローの合計額を算出します。次に、得られた合計額を発行する株式の数で割ると、1株あたりの価格が求められます。
- 株価=将来得られるキャッシュ・フローの合計額÷発行する株式数
コストアプローチ(時価純資産法)
時価純資産法で、時価に換算した純資産を算出し発行する株式数で割れば、1株あたりの価格を求められます。
- 株価=時価に換算した純資産÷発行する株式数
9. 上場企業による買収事例
上場企業は、どのような目的を掲げて、対象企業の買収に踏み切ったのでしょうか。この章では、上場企業が行った買収について、対象となる企業を上場企業と非上場企業に分けて、10の事例を紹介します。
- 上場企業の買収事例
- 非上場企業の買収事例
上場企業の買収事例
上場企業を対象とした買収には、どのような特徴が見られるのでしょうか。以下5つの買収事例から、上場企業に対する買収方法と買収する目的をみていきましょう。
- アークランドサカモトによるLIXILビバの買収
- 前田建設工業による前田道路の買収
- ヒビノによる日本板硝子の子会社・日本板硝子環境アメニテイの買収
- ロコンドによる千趣会傘下のモバコレの買収
- フリークアウトHDによるドリコム保有のSpice Lab Pte.Ltd.の買収
①アークランドサカモトによるLIXILビバの買収
1つ目に紹介する上場企業の買収は、アークランドサカモトとLIXILビバの事例です。
アークランドサカモトは2020年の7月に、東京証券取引所市場第一部に上場するLIXILビバの株式を、公開買付けによって取得しています。
上場企業の買収事例 | |
①アークランドサカモトによるLIXILビバの買収 | |
買収方法 | 株式公開買付け(TOB) |
買収の目的 | 首都圏での事業を拡大する目的 |
既存の経営資源を活用した継続的な成長 | |
企業価値の向上を今後も実現する |
②前田建設工業による前田道路の買収
2つ目に紹介する上場企業の買収は、前田建設による前田道路の事例です。
前田建設工業は2020年の3月に、東京証券取引所市場第一部に上場する前田道路の株式を、公開買付けによって取得しています。
上場企業の買収事例 | |
②前田建設工業による前田道路の買収 | |
買収方法 | 株式公開買付け(TOB) |
買収の目的 | 両社の建設機械共有 |
共同で舗装の長寿命化に向けた研究開発 | |
協業運営による製造・販売部門の効率化 |
③ヒビノによる日本板硝子の子会社・日本板硝子環境アメニテイの買収
3つ目に紹介する上場企業の買収は、ヒビノと日本板硝子の子会社・日本板硝子環境アメニテイの事例です。
音響・映像サービスの提供と機器の販売などを手掛けるヒビノは、2019年の4月に、東京証券取引所市場第一部に上場する日本板硝子の子会社・日本板硝子環境アメニテイを買収しています。
買収方法には株式譲渡が用いられており、日本板硝子環境アメニテイの株式をすべて取得し、完全子会社化を実施したとしています。
上場企業の買収事例 | |
③ヒビノによる日本板硝子の子会社の日本板硝子環境アメニテイの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 防音・防振音響技術と優秀な人材の獲得によるサービスの強化 |
異なる技術を合わせることで、新製品の開発や労働生産性の向上を図る |
④ロコンドによる千趣会傘下のモバコレの買収
4つ目に紹介する上場企業の買収は、ロコンドと千趣会傘下・モバコレの事例です。靴の試着を売りにしたECサイトを手掛けるロコンドは、2019年の3月に、20代向けのファンションサイトを手掛けるモバコレを買収しています。
モバコレは東京証券取引所市場第一部に上場する千趣会の子会社でしたが、今回の買収により、ロコンドの完全子会社となっています。ロコンドは、株式譲渡を行った後、吸収合併の手続きを踏むとのことです。
上場企業の買収事例 | |
④ロコンドによる千趣会傘下のモバコレの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | ユーザーの幅を広げる(20代のユーザーを確保) |
自社のプラットフォームを共有させ、対象企業の価値を向上させる |
⑤フリークアウトHDによるドリコム保有のSpice Lab Pte.Ltd.の買収
5つ目に紹介する上場企業の買収は、フリークアウトHDとドリコム保有のSpice Lab Pte.Ltd.の事例です。
広告事業会社を束ねるフリークアウトHDは、2019年の1月に、タイ・ベトナムで女性メディア事業を手掛けるSpice Lab Pte.Ltd.のすべての株式を、東証マザーズに上場しているドリコムから譲り受けて、対象会社を買収すると発表しています。
上場企業の買収事例 | |
⑤フリークアウトHDによるドリコム保有のSpice Lab Pte.Ltd.の買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 関係強化を図り、東南アジアでのサービス拡大を目指す |
非上場企業の買収事例
非上場企業を対象にした買収は、どのように行われているのでしょうか。非上場企業に対する買収について、5つの事例を紹介します。
買収方法・買収の目的を確認して、上場企業の買収との違いにはどのような点があるのかをみていきましょう。
- 日本コンピュータ・ダイナミクスによる矢野産業の買収
- 成学社によるナスピアの買収
- パートナーエージェントによるメイションの買収
- 幸和製作所によるシクロケアの買収
- SFPホールディングスによるジョー・スマイルの買収
①日本コンピュータ・ダイナミクスによる矢野産業の買収
1つ目に紹介する非上場企業の買収は、日本コンピュータ・ダイナミクスと矢野産業の事例です。
ITや駐輪場事業などを営む日本コンピュータ・ダイナミクスは、2019年の4月に、駐輪場の管理・施工などを行う矢野産業を買収しています。
買収方法には、株式譲渡を選択したとのことです。日本コンピュータ・ダイナミクスは、矢野産業の全株式を取得し、完全子会社としています。
非上場企業の買収事例 | |
日本コンピュータ・ダイナミクスによる矢野産業の買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 九州地区における駐輪場事業の拡大 |
事業基盤の強化 |
②成学社によるナスピアの買収
2つ目に紹介する非上場企業の買収は、成学社とナスピアの事例です。学習塾や保育園など運営する成学社は、2019年の4月に、デジタルコンテンツ向けのeラーニング教材などの企画・開発を行うナスピアを買収しています。
買収では、株式譲渡を選択したとのことです。成学社は、ナスピアが発行する株式(自己株式を除く)を取得し、ナスピアを子会社としています。
非上場企業の買収事例 | |
成学社によるナスピアの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | eラーニングのデジタルコンテンツとビッグデータの解析技術を活用し、学習事業を拡大させる |
SPI対策のeラーニングソフトを、非常勤講師の就職支援・有料職業紹介事業に活用する |
③パートナーエージェントによるメイションの買収
3つ目に紹介する非上場企業の買収は、パートナーエージェントとメイションの事例です。婚活・ブライダル事業を営むパートナーエージェントは、2019年の4月に、スマ婚などの独自のブライダルサービスを提供するメイションを買収しています。
パートナーエージェントは、株式譲渡を選択し、メイションの株式をすべて取得したとのことです。
非上場企業の買収事例 | |
パートナーエージェントによるメイションの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 婚活から結婚までをサポートし、得られる利益を高める |
両社の強みを掛け合わせ、ナシ婚市場における新たなサービスを創造する | |
対象企業のサービスから得られる情報をマーケティングに活かす |
④幸和製作所によるシクロケアの買収
4つ目に紹介する非上場企業の買収は、幸和製作所とシクロケアの事例です。介護・福祉用品の製造と販売を手掛ける幸和製作所は、2019年の3月に、特定福祉用具などの製造・販売を行うシクロケアを買収しています。
買収方法には、株式譲渡を選択したとのことです。幸和製作所は、シクロケアのすべての株式を取得し、完全子会社としています。
非上場企業の買収事例 | |
幸和製作所によるシクロケアの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 取り扱う介護製品の拡充 |
自社の販路を活かしてシナジーを獲得する |
⑤SFPホールディングスによるジョー・スマイルの買収
5つ目に紹介する非上場企業の買収は、SFPホールディングスとジョー・スマイルの事例です。飲食店事業を手掛けるSFPホールディングスは、2019年の3月に、熊本で居酒屋などの飲食店事業を展開するジョー・スマイルを買収しています。
買収方法には、株式譲渡を採用したとのことです。SFPホールディングスは、ジョー・スマイルのすべての株式を取得し、完全子会社としています。
非上場企業の買収事例 | |
SFPホールディングスによるジョー・スマイルの買収 | |
買収方法 | 株式譲渡 |
買収の目的 | 自社が展開する飲食店の運営を任せる |
対象企業の飲食店をサポートし、自社の企業価値を高める |
10. 上場企業・非上場企業の買収におすすめのM&A仲介会社
上場企業・非上場企業の買収を検討されている方は、ぜひお気軽にM&A総合研究所へご相談ください。
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11. まとめ
上場企業の買収について、非上場企業と比較しながら、買収方法・買収の手続き・買収価格などを紹介しました。
【上場企業の主な買収方法】
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- TOB
- MBO
- その他
また、非上場企業との比較では、譲渡制限株式の有無によって、買収の手続き仕方が異なっているとされています。
上場企業の買収では、買収候補の紹介やスキームの選定、適正な買収価格の把握など、専門的な知識と経験を必要とする場面が非常に多いです。
買収を成功させるためには、自社のみで取り組まずにM&A仲介会社などの専門家に相談して、上場企業を買収するアドバイス・サポートを受けるようにするのをおすすめします。
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