2022年06月07日更新
再生型M&Aとは!手法や成功例は?基本的な進め方から解説
再生型M&Aとは、企業再生を目的として行うM&Aのことです。経営権を維持したまま再生を図る手法や、採算事業のみを切り離して債務者企業を廃業する手法などがあります。今回は、再生型M&Aの手法や成功例、基本的な進め方を解説します。
1. 再生型M&Aとは
近年の不景気の影響で経営が悪化し、倒産状態に陥っている企業も少なくありません。単純な事業展開では改善が難しいケースも多いので、状況が悪化しすぎる前に企業再生を図ることが大切です。
再生型M&Aとは、企業再生のために法的整理手続のなかで実施されるM&Aのことです。経営不振に陥っている企業が、債務整理や事業整理にM&A手法を活用することで企業再生を図ることができます。
再生型M&Aの実施は決して容易ではありませんが、計画的に取り組めば成功率も高まって企業再生の効果の最大化も期待できます。
2. 再生型M&Aのメリット
再生型M&Aを行うことは決して容易ではありませんが、どのようなメリットが得られる手段なのでしょうか。再生型M&Aの主なメリットには、以下の3つがあります。
【再生型M&Aのメリット】
- スポンサーの支援を受けられる
- 廃業を回避できる
- 複数の手法を検討できる
再生型M&Aのメリットは、スポンサーの支援を受けられることです。企業再生は債務弁済や事業の切り離しなどで資金が必要になる場面が多いので、スポンサーからの資金提供は大きなポイントになります。
再生型M&Aが成功した場合は、廃業を回避して会社や事業を存続させることができます。廃業すると経営者が債務を抱える可能性があるほか、技術・ノウハウや従業員の雇用も喪失するため、廃業より前に再生型M&Aを検討したいところです。
また、再生型M&Aには複数の手法を検討できるメリットもあります。用いるM&A手法によって得られる効果が違うので、会社が置かれている状況に合わせた手法選択で計画的に企業再生を図ることが可能です。
3. 再生型M&Aの手法と特徴
企業再生方式
企業再生方式は、スポンサーからの資金提供を受けて、会社の法人格を維持しながら採算事業を中心に企業再生を目指す手法です。スポンサー企業の子会社として再生を目指します。
再生型M&Aは法的再生手続きのなかで行うM&Aですが、企業再生方式は法人格を維持するので、この手法のみ私的再生手続きで行うことができます。
企業再生方式の特徴
企業再生方式の特徴は、スポンサー企業の経営資源を共有できることです。スポンサーも債権回収するために債務者企業の再生と成長を促進させたいので、資金等の経営資源を活用できるケースが多いです。
しかし、企業再生を図る会社と取引してくれる会社は少ないため、中小企業のように事業の取引規模が小さい場合は取引停止となる可能性が高いです。
また、債務免除益に応じて課される税金負担は繰越欠損金と相殺できますが、中小企業の場合は規模が小さいために見合うだけの繰越欠損金がないことも多く、利益と損失の相殺というメリットを活かしづらい問題があります。
このような特徴から、中小企業の再生型M&Aに企業再生方式が採用されるケースはほとんどありません。
事業譲渡方式
事業譲渡方式は、採算事業をスポンサー企業の一事業として再建する手法です。事業を切り離した債務者企業は清算することになりますが、採算事業やそれに属する従業員の雇用を維持することができます。
破産手続きになった場合でも利用できる手法なので、中小企業の再生型M&Aで利用されるケースが多いです。
事業譲渡方式の特徴
事業譲渡方式の特徴は、採算事業と不採算事業を切り離せることです。収益性の高い採算事業があっても、不採算事業が足を引っ張って赤字経営という企業は少なくないため、不採算事業を清算することで企業再生が実現するというケースも多いです。
事業譲渡の対価は債務者企業に支払われるので、取得した代金を債務の弁済に回すことができます。不採算事業が残された債務者企業を清算するための平等な弁済で債権者から納得を得やすい手法です。
会社分割方式
会社分割方式は、採算事業のみを別会社へ移転させて、残された不採算事業は債権者の協力を得ながら再建を目指す手法です。
不採算事業の再建を目指すとしていますが、現実的には負債を抱えた不採算事業を立て直すことは容易ではないため、多くのケースで再建ではなく清算することになります。
会社分割方式の特徴
会社分割方式の特徴は、早期切り離しにより事業の劣化を抑えやすいことです。維持・再建したい事業を倒産処理手続きから切り離すことで、早期の企業再生が実現可能です。
採算事業の引継ぎ先が新設会社である場合、債務を抱えていない優良企業となるため、スポンサー企業からの融資で資金を潤沢に確保しやすくなります。事業の安定・成長に必要な資金が確保できるので、早期の企業再生を図れます。
また、会社分割は権利義務を包括的に承継するM&A手法なので、複雑になりがちな再生型M&Aの手続きを簡便化することができます。
業種次第では許認可の再取得の必要もなくなるので、会社分割直後から事業を手掛けることが可能です。
第二会社方式
第二会社方式は、親族や社員などの身内が新設した会社に事業譲渡や会社分割などで採算事業を引き継ぐ手法です。不採算事業が残された債務者企業は、自社株式や遊休資産の売却で清算することになります。
なお、スポンサー企業が新会社を設立して採算事業を引き継ぎ方式もあります。事業の承継先が身内にいない場合でも利用できる手法です。
第二会社方式の特徴
第二会社方式の特徴は、債権回収率が高まるため債権者やスポンサーからの協力を得られやすいことです。
切り離された採算事業に経営資源を集中させて効果的な成長・再建を図れるので、債権者視点で投資資本を回収できる見込みが高くなります。
新設会社は債務を抱えていないのでキャッシュ・フローが安定しており、好条件で新規の借入を受けることも可能です。さらに資金を調達することで事業の成長を促進させることができます。
4. 再生型M&Aの成功例
過去には一度は経営破綻に陥ったもののスポンサーによる支援で企業再生を実現した事例があります。
この章では、有名な日本航空の事例と、第二会社方式を用いた企業再生事例をピックアップして紹介します。
【再生型M&Aの成功例】
- 日本航空の企業再生事例
- 第二会社方式による企業再生事例
- 第二会社方式による再生支援事例
1.日本航空の企業再生事例
2010年1月、日本航空は会社更生法の適用を申請して経営破綻しました。当事の負債総額は約2兆3200億円であり、事業会社としては過去最大級の規模となっていました。
直接的な要因は2008年のリーマン・ショックです。長期にわたって形成された脆弱な企業体質で不安定だったところにリーマン・ショックの影響を受けたため、経営破綻を余儀なくされました。
企業再生は企業再生支援機構の下で行われ、5215億円の債権放棄と3500億円の公的資金の注入により、債務整理と資金調達が行われました。
過剰に保有していた大型機の処分や大型リストラなど、経費削減目的の改革の促進により企業全体の健全化が図られて再建を実現しました。
2.第二会社方式による企業再生事例
こちらは、20店舗以上を展開する飲食店運営業の第二会社方式による企業再生事例です。約800名の従業員の雇用を維持し地域貢献していましたが、事業の多角化を進めるうえで過剰債務に陥ったため企業再生を決意します。
公的再生支援機関を交えた相談の結果、自助努力による再建は難しいという判断から、第二会社方式が最善という結論に至ります。
過剰債務による資金繰り破綻が予断を許さないなか、迅速な事業の切り離しを行うことで該当事業の破綻を回避することに成功しました。
3.第二会社方式による再生支援事例
こちらは、食品製造業の第二会社方式による企業再生事例です。地域内における知名度が高かったため順調に業績拡大していましたが、市場環境の悪化が続いたため収支が低迷したことがきっかけで企業再生を決意します。
第二会社方式による過剰債務の切り離しにはスポンサーの協力が必要不可欠なので、外部のM&Aの専門家に協力を仰ぐことで迅速なスポンサー選定を行います。
債権者や専門家との親密な連携の結果、好条件のスポンサーをみつけることに成功し、第二会社方式による企業再生を実施します。
債務整理を行うことができて、地域活性化に貢献している食品製造業は存続させることに成功しました。
5. 再生型M&Aの基本的な進め方
再生型M&Aは、企業再生の計画策定からM&A手法の手続きまで行う必要があるので、複雑化する傾向にあります。再生型M&Aの基本的な進め方は以下の通りです。
【再生型M&Aの基本的な進め方】
- M&Aの専門家に相談
- 企業再生の計画策定
- 金融機関との再生計画の調整
- スポンサーの選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
1.M&Aの専門家に相談
再生型M&Aは、M&A手法を用いた企業再生なので、M&Aの専門家のサポートを受けながら進めるのが一般的です。
再生型M&Aで特におすすめの相談先はM&A仲介会社です。M&A仲介に特化した専門家はさまざまなM&A手法を熟知しているので、会社が置かれている状況に合わせた手法を選択することができます。
2.企業再生の計画策定
M&Aの専門家とのアドバイザリー契約が済んだら、企業再生の計画策定を進めていきます。採算事業と不採算事業の割り出しや、再生型M&Aに用いる手法の確定などを行って実現可能な計画を策定します。
ここで策定した計画書は、スポンサーや債権者である金融機関にも提出します。協力を取り付けるためにも具体性のある計画書を作成することが大切です。
3.金融機関との再生計画の調整
計画書が完成したら、金融機関に資料を提出して確認してもらいます。借入金の返済計画に無理がないか、金融機関側の意向を確認しつつ再生計画の微調整を行います。
用いるM&A手法次第では、債権者はすべての債権を回収できないことを前提に進めなければならない場合もあります。債権者との交渉でいかに合意を得るかがポイントになるでしょう。
4.スポンサーの選定
再生型M&Aを進める際に資金が必要になることが多いので、実行に移す前にスポンサーをみつけておく必要があります。
透明性・公平性の高いスポンサーを選定できれば、債権者からの同意も得られやすくなります。
とはいえ、好条件のスポンサーをみつけ出すことは困難なので、M&Aの専門家のサポートが必要不可欠といえるでしょう。
5.基本合意書の締結
スポンサーの選定が終わったら基本合意書の締結へ移ります。契約書ですが法的拘束力は持っておらず、M&Aの交渉内容の整理や今後のスケジュール確認が主な内容になっています。
この時点でスポンサーとの独占交渉権が有効になります。スポンサーとの交渉が破談にならない限り、他者との交渉は行うことができなくなります。
6.デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスは、M&A対象の価値・リスクを調査する活動のことです。提出されている企業再生の計画が実現可能かどうか、実態を確認するために実地調査が行われます。
デューデリジェンスの主な焦点は簿外債務の有無の調査です。企業再生の実行後に簿外債務が発覚すると計画に支障をきたす恐れがあるので、抱えている債務は事前に全て洗い出しておきます。
7.最終契約書の締結
デューデリジェンスで深刻な問題が見つからなかった場合は最終契約書の締結へと移ります。全ての条項において法的な拘束力があるので、本契約書の締結をもって再生型M&Aが成約します。
なお、最終契約書は仮の名称であり、実際に取り交わす契約書は事業譲渡契約書や会社分割契約書などの名称になります。
8.クロージング
各種手続きや必要書類を整えたら、M&A対象の引き渡しと取得対価の支払いを行うクロージングを実施します。クロージングをもって再生型M&Aも完了します。
6. 再生型M&Aを成功させるポイント
再生型M&Aを成功させるためには、計画的に準備を進めることが大切です。早期にM&Aの専門家に相談しておくとあらゆるM&A手法を比較検討できるので、万全の体制で再生型M&Aに臨むことができます。
M&A総合研究所は、中堅・中小規模の案件を得意とするM&A仲介会社です。特に中小企業のM&A仲介における豊富な経験と実績があります。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、再生型M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
7. まとめ
経営状態が悪化した企業が企業再生を図るため、再生型M&Aを実施するケースが増えています。再生型M&Aは債務が解消できるだけでなく、飛躍的な成長を目指すことも不可能ではないので、頭に入れておきたい戦略の一つです。
具体的に検討に入る際は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。M&A仲介会社であれば実務的なサポートが充実しているので、成功率が高まる効果も期待できます。
【再生型M&Aのメリット】
- スポンサーの支援を受けられる
- 廃業を回避できる
- 複数の手法を検討できる
【再生型M&Aの基本的な進め方】
- M&Aの専門家に相談
- 企業再生の計画策定
- 金融機関との再生計画の調整
- スポンサーの選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
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