株式交換による買収・M&Aのやり方、メリットを解説【事例あり】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

買収・M&Aのスキームである株式交換は、実施事例も多く買収・M&Aの手法として定着しています。当記事では、株式交換による買収・M&Aのやり方、メリット・デメリット、具体的な手続きについて、事例を交えてわかりやすく解説しています。

目次

  1. 株式交換とは
  2. 株式交換による買収・M&Aのやり方
  3. 株式交換と株式移転の手法・スキームとしての違い
  4. 株式交換のメリット・デメリット
  5. 株式交換による買収・M&Aの手続き
  6. 株式交換による買収・M&Aの事例
  7. 株式交換による買収・M&Aの懸念点
  8. 株式交換による買収・M&Aの相談先
  9. まとめ
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1. 株式交換とは

株式交換

株式交換による買収・M&Aは買収する会社が買収される会社の株主に対し、その対価を現金ではなく自社株で支払うことを認めたものです。

買収する会社は買収される会社の株主に対し自社の株式を交付し、買収される会社の株主はその株式を買収する会社に引き渡すので株式交換と呼ばれています。

買収・M&Aの実施事例も多く、買収・M&Aの手法・スキームとして広く一般に定着している制度で、1999年の旧商法改正時に導入されました。

株式交換の名称は導入された際に買収の対価として自社株を交付することを認めたことによりますが、現在は自社株式以外の対価として社債・新株予約権・現金の交付も認められているので、名称は必ずしも実情を反映しているとはいえません。

株式交換の特徴は買収・M&Aされる会社の株式を強制的に買い取ることができることです。買収・M&Aされる会社を100%子会社(完全子会社)にできるスキームとして会社法にその手順が定められています。

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2. 株式交換による買収・M&Aのやり方

株式交換で買収される会社を完全子会社にする場合、会社法の組織再編行為に当たるので買収する会社、買収される会社の双方で株主総会の特別決議が必要になるとともに、双方の株主に株式の買取請求が認められています。

一方で、買収の対価として自社株式を買収される会社の株主に交付する場合は、買収する会社、買収される会社の双方で財務内容に大きな変化はなく、主に株主構成が変わるだけなので、債権者保護手続は不要です。

しかし、買収の対価として自社株式以外の新株予約権付社債や自社以外の株式を交付する場合、債権者構成や資産内容に大きな変化が生じるので、債権者保護手続が必要になるケースがあります。

買収する会社、買収される会社のどちらに債権者保護手続が必要になるかはケースにより異なります。そのため、自社株式以外の対価で買収・M&Aを進める場合には手順が複雑になる可能性が高いです。

買収する会社、買収される会社の双方で株主総会の特別決議が必要なため、当事会社双方とその株主にメリットがある友好的買収・M&Aの場合に採用される手法・スキームで、敵対的買収・M&Aの手段としては使いにくい手法です。

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3. 株式交換と株式移転の手法・スキームとしての違い

株式交換も株式移転も会社法上の組織再編行為ですが、株式交換は「株式会社が発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させる」(会社法2条31号)組織再編行為です。

一方で、株式移転は「一または二以上の株式会社が発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させる」(会社法2条32号)組織再編行為です。

株式交換は完全親会社が既存の会社であるのに対し、株式移転は完全親会社が新たに設立される会社である点が違いになります。

株式交換は経営統合・企業買収・M&Aやすでに子会社である会社を完全子会社化するなどグループ再編目的で用いられることが多いです。

一方で、株式移転は複数の会社が持株会社を設立して経営統合を行う場合やホールディングカンパニー体制に移行するために用いられることが多いです。

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4. 株式交換のメリット・デメリット

株式交換を行った場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この章では、株式交換時におけるメリット・デメリットについて解説します。

メリット

株式交換のメリットには、以下の4点があります。

  1. 買収・M&Aの準備資金が不要
  2. 買収・M&A先を別法人にできる
  3. スクイーズ・アウトの使用で100%子会社化を実現
  4. 買収・M&A先の子会社も親会社の経営に参画可能

①買収・M&Aの準備資金が不要

中小企業で最も多く用いられる買収・M&Aの手法である株式譲渡では、買収される企業の株式の株主から買収する企業に現金を対価に譲渡するため、買収・M&Aの準備資金が必要となります。

一方、株式交換では買収する企業の自社株式・社債・自社株の新株予約権などを買収の対価とすれば、買収・M&Aの準備資金が必要ありません

②買収・M&A先を別法人にできる

会社法上の組織再編スキームとして、その代表格の合併会社分割の手法がありますが、これらの手法・スキームでは買収・M&A先の会社を存続会社や継承する会社が吸収することになり、買収・M&A先を別法人にできません。

一方、同じ組織再編スキームでも株式交換や株式移転の場合は株式の移転のみのため、買収・M&A先を別法人にできます。

③スクイーズ・アウトの使用で100%子会社化を実現

子会社を完全子会社化する方法として、他の株主から株式を買い取る方法では実現が難しい場合、少数株主の個別の承諾を得ることなくその保有株式を強制的に取得することをスクイーズ・アウト(キャッシュ・アウト)と呼びます。

このスクイーズ・アウトの手法として、「特別支配株主の株式等売渡請求」および「株式併合」が利用されてきましたが、現金を対価とする株式交換の手法・スキームで100%子会社(完全子会社化)を実現できます。

④買収・M&A先の子会社も親会社の経営に参画可能

株式譲渡では現金を対価に買収される企業の株主から買収する企業に株式を譲渡するため、買収・M&A先の子会社の株主は親会社の経営に参画できません。

一方、自社株式や自社株の新株予約権などを買収の対価とする株式交換では、買収・M&A先の子会社の株主が親会社の株主となるため買収・M&A先の子会社も親会社の経営に参画可能となります。

デメリット

株式交換のデメリットには、以下の4点があります。

  1. 手続きが他のM&A手法と比べ複雑
  2. 不要な資産・債務などの引き継ぎ
  3. 親会社の株価が下落する可能性
  4. 買収・M&A先の子会社も親会社の株主となる

①手続きが他のM&A手法と比べ複雑

株式譲渡では買収される企業の株式の対価が現金であり、会社法上の組織再編スキームではないため、会社法上の法定手続きは原則不要です。

一方、株式交換による買収・M&Aでは、株主総会特別決議などの一連の法定手続きが必要となり、手続きが他のM&A手法と比べ複雑となります。

②不要な資産・債務などの引き継ぎ

事業譲渡は企業の事業の全部または一部を売買する手法で、個々の資産の移し替えや契約の再契約などが必要で手続きが煩雑ですが、必要な事業だけを譲り受けられるので譲渡される資産・負債が明確となり、不要な資産や簿外負債などの引き受けリスクを回避できます。

一方、株式交換による買収・M&Aでは不要な資産や簿外負債などの引き受けリスクを回避できません。

③親会社の株価が下落する可能性

株式交換による買収・M&Aでは買収する企業の自社株式・自社株の新株予約権などを買収の対価とすれば、準備資金が不要ですが、新株の発行により結果的に発行済株式総数が増加します。

これにより、1株当たりの利益が小さく(希薄化)なり、親会社の株価が下落する可能性があります。

④買収・M&A先の子会社も親会社の株主となる

メリットで挙げた「買収・M&A先の子会社も親会社の経営に参画可能」の裏返しで生じるデメリットです。

株式交換による買収・M&Aでは、買収される子会社の株主が買収する親会社の株主となることにより、子会社が親会社の経営に参画できることに注意が必要になります。

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5. 株式交換による買収・M&Aの手続き

株式交換による買収・M&Aを行う際は、事前に必要な手続きと流れを把握しておくとよいでしょう。

ここでは、株式交換による買収・M&Aの手続きと流れを、以下の3つに分けて解説していきます。
 

  1. 取締役会決議~株主総会の招集通知発送まで
  2. 株主総会~株式交換の効力発生まで
  3. 登記申請~株式交換の完全終了まで

①取締役会決議~株主総会の招集通知発送まで

取締役会決議から株主総会の招集通知発送までには、以下の手続きを行います。

  • 株式交換契約の締結
  • 事前開示書類の備置

株式交換契約の締結

まずは、株式交換を行う会社間で株式交換契約の締結を行います。取締役会設置会社では、取締役会の承認を得て、株式交換契約を締結します。

また株式交換契約には、会社法768条1項により以下の項目を記載しなくてはなりません。
 

  • 当事会社の商号・住所
  • 株式交換対価の交付に関する事項
  • 対価の割当に関する事項
  • 新株予約権の交付に関する事項
  • 効力発生日 など

事前開示書類の備置

株式交換を行う会社は、株式交換契約と法務省令で定める事項を記載した書面もしくは記録した電磁的記録を、備置開始日から株式交換の効力発生日の6ヶ月後まで本店に備置くことが、会社法により定められています。

なお、法務省令で定める事項は、以下のとおりです。
 

  • 株式交換対価の相当性に関する事項
  • 株式交換対価について参考となるべき事項
  • 新株予約権の定めの相当性に関する事項
  • 計算書類・財産状況に関する事項
  • 債務の履行の見込みに関する事項 など

②株主総会~株式交換の効力発生まで

株主総会から株式交換の効力発生までには、以下の手続きを行います。
 

  • 株式交換契約の承認(簡易株式交換、略式株式交換)
  • 債権者保護の手続き・株券などの提供公告
  • 反対株主からの株式買取請求
  • 金融商品取引法上の手続き
  • 株券・新株予約権の証券提出手続き

株式交換契約の承認

株式交換を行う会社は、株式交換の効力発生日の前日までに、双方の株主総会で特別決議による承認を受けなければなりません

簡易株式交換または略式株式交換の条件に当てはまる場合には、株主総会の決議は不要です。

簡易株式交換

簡易株式交換は、簡易組織再編の一種であり、簡易組織再編とは組織再編によって承継される純資産額が、軽微である小規模な組織再編の株主総会決議の省略を認める手続きです。

株式交換の完全親会社は、対価として交付する財産が、完全親会社の純資産額の原則1/5を超えなければ、株主総会決議を省略できます

ここでいう対価として交付する財産とは、以下の合計額です。
 

  • 完全子会社の株主に交付する完全親会社の株式の数に、一株当たり純資産額を乗じて得た額の合計額
  • 完全子会社の株主に対して交付する、完全親会社の社債・新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
  • 完全子会社の株主に対して交付する、完全親会社の株式など以外の財産帳簿価額の合計額

なお、簡易株式交換で株主総会決議を省略できるのは完全親会社のみで、完全子会社は株主総会の承認決議が必要です。

略式株式交換

略式株式交換は略式組織再編の一種です。略式組織再編とは総株主の議決権の大多数を持ち、その会社を支配する会社(特別支配会社)が、その支配を受ける会社(被支配会社)との間で組織再編行為を行う場合、被支配会社の株主総会決議の省略が認められています。

株式交換を行う会社の一方が、他方の総株主の議決権の原則90%以上を保持している・被支配会社が完全子会社になる場合または被支配会社が完全親会社になる場合、被支配会社の株主総会決議を省略できます。

ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は、略式株式交換はできません。

  • 被支配会社が完全子会社になる場合で、この会社が公開会社でかつ種類株式発行会社ではなく、その株主に対して譲渡制限株式が交付されるとき
  • 被支配会社が完全親会社になる場合で、この会社が公開会社ではなく、完全子会社の株主に対して完全親会社の譲渡制限株式が交付されるとき

債権者保護の手続き・株券などの提供公告

株式交換による買収・M&Aにおいて、官報公告などによる債権者保護手続き(1ヶ月)が必要となるのは、以下の条件に該当する場合のみとなるため、債権者保護手続きが不要となることが多いです。
 

  • 完全子会社の株主に対する株式交換の対価が新株予約権などの株式以外の場合
  • 完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継した場合

また、完全子会社が株券発行会社であるときは、株券等提供公告(1ヶ月)も必要となります。ただし、対象となる株主が少数であれば、株主全員に株券不所持の申出をしてもらうことで、公告(および通知)は不要です。

反対株主からの株式買取請求

株式交換を承認する株主総会の前に、会社に対し書面で株式交換に反対する意思を通知し、株主総会で反対した株主は、公正な価格で買取りを請求できます

なお、請求できる期間は、効力発生日の20日前から前日までです。(簡易株式交換を除く)

金融商品取引法上の手続き

上場会社や継続開示会社が株式交換による買収・M&Aなどの組織再編スキームを実施する場合には、一定の軽微基準に該当しない限り、臨時報告書を提出する必要があります。

なお上場会社とは、株式などが金融商品取引所に上場されている会社をさし、継続開示会社とは、金融商品取引法上の有価証券報告書などを継続して開示している会社をさします。

株券・新株予約権の証券提出手続き

株式交換による買収・M&Aにおいて、完全子会社となる会社が株券発行会社でかつ株券を発行している場合または新株予約権証券を発行している場合は、以下の手続きが必要です。

  • 株式交換の効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を広告
  • 株主および登録株式質権者または新株予約権者および登録新株予約権質権者に通知

株式交換の効力発生日までに、株券または新株予約権証券を提出しない株主または新株予約権者に、株券または新株予約権証券の提出までの間は、株式交換によって受け取れる対価の交付を拒否できます。 

ただし、上記の手続きによる株券・新株予約権証券の提出が困難な株主または新株予約権者は、他の手続きにより対価の交付を受けられます。

③登記申請~株式交換の完全終了まで

登記申請から株式交換の完全終了までの間には以下の手続きがあります。

  • 新株発行・設立・変更の登記申請
  • 公正取引委員会への手続き
  • 事後開示書類の備置・開示
  • 株式交換無効訴え

新株発行・設立・変更の登記申請

株式交換に伴い新株を発行し、資本金もしくは発行可能株式総数を変更する場合は、2週間以内に登記を行います。

この場合、完全親会社の変更登記と完全子会社の変更登記を同時に行わなければならず、具体的には、親会社の管轄法務局に、双方の会社の登記申請書に連番を記載して申請します。

なお、株式交換の対価が全て自己株式であり、発行済株式も資本金も変わらないケースでは、登記申請をする必要はありません。

公正取引委員会への手続き

独占禁止法では、株式交換などで株式を取得して国内で事業支配力が過度に集中してはならないとしており、抵触する場合には毎事業年度の終了日から3ヶ月以内に、公正取引委員会に事業に関する報告書を報告する必要があります。

具体的には、会社および子会社の総資産の合計額が、以下の基準を超える場合です。
 

  • 持株会社(完全子会社の株式の合計額の総資産に対する割合が50%を超える会社):6,000億円
  • 持株会社を除く銀行業、保険業または第一種金融商品取引業の会社:8兆円
  • 上記以外の会社:2兆円

また独占禁止法では、株式交換で株式を取得することで、一定の取引分野の競争を実質的に制限することを規制しています。

そのため、以下の条件に該当する完全親会社の完全子会社に対する議決権が一定の割合(10%・25%・50%)を超える場合は、完全親会社は株式交換の日から30日以内に公正取引委員会に対して、株式所有報告書を提出しなければなりません。
 

  • 完全親会社:総資産が20億円を超え、その完全親会社・子会社(完全親会社が議決権の50%超を保有する会社)
  • 親会社(完全親会社の議決権の50%超を保有する会社)の総資産の合計額が100億円を超える場合
  • 完全子会社:総資産が10億円を超える場合(完全子会社が外国会社の場合は国内の営業所および子会社の売上高の合計額が10億円を超える場合)

事後開示書類の備置・開示

株式交換を行う会社は、法務省令で定める事項を記載した書面を株式交換の効力発生日の6ヶ月後まで、本店に備置く必要があります。

なお、法務省令で定める事項とは、以下のとおりです。
 

  • 株式交換が効力を生じた日
  • 完全子会社における株式買取請求手続・債権者異議手続・新株予約権買取請求手続の経過
  • 完全親会社における株式買取請求手続・債権者異議手続の経過
  • 株式交換により完全親会社に移転した完全子会社の株式の数(完全子会社が種類株式発行会社の場合、株式の種類と種類毎の数) など

株式交換無効訴え

株式交換の効力発生日から6ヶ月以内に、株式交換の無効を訴えることができます。

この訴えを提起できるのは、会社の株主・取締役・株式交換を承認しなかった債権者などです。また訴えの相手方となるのは、株式交換の双方の会社です。 

株式交換の無効を主張するためには、以下に示す無効事由が必要です。 

  • 株式交換契約が違法である場合
  • 株主総会決議に瑕疵がある場合
  • 債権者保護手続が実施されていない場合 など

株式交換の無効判決の効力は、第三者(対世効)にもおよびまた将来に向かって(将来効)生じます

つまり、無効判決前に行われた株式交換に関する行為は有効ですが、無効判決後には将来に向かって効力を失います。

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6. 株式交換による買収・M&Aの事例

株式交換による買収・M&Aの事例を紹介します。ここで紹介する事例は以下です。

  1. パナソニックと三洋電機
  2. セブン&アイHDとヨークベニマル
  3. 三菱ケミカルHDと日本化成
  4. ユニーとファミリーマート
  5. 出光興産と昭和シェル石油
  6. メルカリとマイケル
  7. トヨタ自動車とダイハツ工業
  8. パナソニックとパナホーム
  9. KADOKAWAとドワンゴ
  10. 博報堂DYホールディングスとGROWWW Media Co., Ltd.

①パナソニックと三洋電機

パナソニックは、株式の公開買付け(TOB)と株式交換により、三洋電機を完全子会社化しています。このM&Aの目的は、グローバルに厳しい競争環境を乗り越え、共に企業価値の最大化を目指すというものでした。

パナソニックは、2010年に三洋電機株式のTOBを実施し80.77%を取得し、その後、株式交換契約を締結しています。この株式交換比率は、パナソニック株式1対三洋電機株式0.115です。

②セブン&アイHDとヨークベニマル

セブン&アイHDは、株式交換により子会社のイトーヨーカ堂と、業務提携関係にあったヨークベニマルを、完全子会社化しています。

このM&Aの目的は、ヨークベニマルをスーパーマーケット部門の中核と位置付け、経営の一元化・迅速化を図ることでした。

また、セブン&アイHDとヨークベニマルは、2016年に株式交換契約を締結しています。株式交換比率は、セブン&アイHD株式1対ヨークベニマル株式0.88です。

③三菱ケミカルHDと日本化成

三菱ケミカルHDの子会社である三菱化学は、株式交換により子会社の日本化成を、完全子会社化しています。このM&Aの目的は、グループ内のインテグレーションを一層進めていくことでした。

また、三菱化学と日本化成は、2016年に三菱ケミカルHD株式と日本化成株式を交換する三角株式交換による株式交換契約を締結しています。株式交換比率は、三菱ケミカルHD株式1対日本化成株式0.21です。

④ユニーとファミリーマート

ファミリーマートは、サークルKサンクスを傘下に持つユニーグループHDを、吸収合併と吸収分割により経営統合しています。このM&Aの目的は、競争を勝ち抜くために、両社の経営資源を集約することでした。

また、ファミリーマートとユニーグループHD、サークルKサンクスは、2016年に吸収合併契約と吸収分割契約を締結しました。吸収合併に係る割当比率は、ファミリーマート株式1対ユニーグループHD株式0.138です。

⑤出光興産と昭和シェル石油

出光興産は、株式交換により昭和シェル石油を、完全子会社化する予定としています。このM&Aの目的は、短期的には、シナジー創出を最大化し屈指の競争力を持つことです。

出光興産と昭和シェル石油は、2018年に株式交換契約を締結しており、株式交換比率は、出光興産株式1対昭和シェル石油株式0.41です。

⑥メルカリとマイケル

メルカリは、株式交換によりマイケルを完全子会社化しています。このM&Aの目的は、パーツ領域の充実に伴う自動車カテゴリーの更なる強化でした。

メルカリとマイケルは、2018年株式交換契約を締結しています。株式交換比率は、メルカリ株式1対マイケル株式194.83です。

⑦トヨタ自動車とダイハツ工業

トヨタ自動車は、株式交換によりダイハツ工業を、完全子会社化しています。このM&Aの目的は、同一の戦略のもとで小型車事業において、より選択と集中を進めることでした。

トヨタ自動車とダイハツ工業は、2016年株式交換契約を締結しています。株式交換比率は、トヨタ自動車株式1対ダイハツ工業株式0.26です。

⑧パナソニックとパナホーム

パナソニックは、株式の公開買付け(TOB)と株式併合により、パナホームを完全子会社化しています。このM&Aの目的は、住宅事業の競争優位性を高め成長させていくためでした。

パナソニックは2017年、パナホーム株式のTOBを実施して80.12%を取得し、その後パナホームはパナソニックのみを株主とするため、株式併合(33,589,784株を1株に併合)を決議しています。

⑨KADOKAWAとドワンゴ

KADOKAWAは、株式移転によりドワンゴと経営統合しています。このM&Aの目的は、KADOKAWAのエンタテイメント・コンテンツと、ドワンゴのサービスおよびネットワーク技術の連携でした。

KADOKAWAとドワンゴは、2014年株式移転契約を締結しており、株式移転比率は、KADOKAWA株式1.168対ドワンゴ株式1です。

⑩博報堂DYホールディングスとGROWWW Media Co., Ltd.

2020年に、博報堂DYホールディングスは、博報堂の100%子会社であるHakuhodo Taipei Investment Co., Ltd.をとおして、台湾で広告事業を行っているGROWWW Media Co., Ltd.の発行済株式総数の50.00%に対する公開買付けを行うことを決めました。

博報堂DYホールディングスは、Hakuhodo Active Inc.、Hakuhodo Zeta Inc.、Hakuhodo Taipei Investment Inc.を増資して、特定子会社とします。公開買い付け価格は、GROWWW Mediaの普通株式1株当たり69台湾ドル、合計取得価額は1,853百万台湾ドルとなる予定です。

博報堂DYホールディングスは今回のM&Aで、台湾における事業拡充を目的としています。

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7. 株式交換による買収・M&Aの懸念点

株式交換による買収・M&Aを行う際、懸念点にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、株式交換による買収・M&Aでの懸念点のうち、主に持ち株に関する以下の点を解説していきます。

  1. 持ち株が希薄化する心配
  2. 持ち株が単元未満化する心配

①持ち株が希薄化する心配

デメリットでも述べましたが、株式交換の完全親会社となる企業の新株を買収の対価とすると、結果的に発行済株式総数が増加します。

これにより、1株当たりの利益が小さく(希薄化)なり、完全子会社の株主が交換によって得た完全親会社の株価が下落する可能性があります。

②持ち株が単元未満化する心配

また、株式交換の完全親会社となる企業の株式を買収の対価とすると、交換比率によっては、完全子会社の株主は交換によって得た完全親会社の株式が、単元未満株化する可能性があります。

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8. 株式交換による買収・M&Aの相談先

株式交換を検討する際は、メリットだけでなくデメリットを把握しておくことも大切です。

買収後に、不要な資産や簿外債務が残るなどのリスクを回避するためにも、株式交換を実施するときは、M&A仲介会社などの専門家に相談しながら進めていくことをおすすめします。

M&A総合研究所では、株式交換における豊富な経験や知識があるM&Aアドバイザーが、案件をフルサポートいたします。相談は無料となっておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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9. まとめ

株式交換は、M&Aや経営統合で対象会社を完全子会社化する際に有効なスキームですが、当然デメリットも存在します。

株式交換を行う際は、メリットだけでなくデメリットも把握し、対策を講じておくことも重要です。

【株式交換のメリット】

  1. 買収・M&Aの準備資金が不要
  2. 買収・M&A先を別法人にできる
  3. スクイーズ・アウトの使用で100%子会社化を実現
  4. 買収・M&A先の子会社も親会社の経営に参画可能

【株式交換のデメリット】
  1. 手続きが他のM&A手法と比べ複雑
  2. 不要な資産・債務などの引き継ぎ
  3. 親会社の株価が下落する可能性
  4. 買収・M&A先の子会社も親会社の株主となる

実際の株式交換は、以下のような流れで必要な手続きを行わなければなりません。手続きが煩雑であるため、事前に全体の流れを把握しておきましょう。

【取締役会決議~株主総会の招集通知発送まで】
  1. 株式交換契約の締結
  2. 事前開示書類の備置

【株主総会~株式交換の効力発生まで】
  1. 株式交換契約の承認(簡易株式交換、略式株式交換)
  2. 債権者保護の手続き・株券などの提供公告
  3. 反対株主からの株式買取請求
  4. 金融商品取引法上の手続き
  5. 株券・新株予約権の証券提出手続き

【登記申請~株式交換の完全終了まで】
  1. 新株発行・設立・変更の登記申請
  2. 公正取引委員会への手続き
  3. 事後開示書類の備置・開示
  4. 株式交換無効訴え

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