田舎での事業承継!過去事例と今後の展開などを予想してみた

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

田舎の人口減少が問題なっている反面、地方創生の考えも徐々に強くなっています。田舎に移住して事業を起こそうとする人もおり、その際の手段に事業承継が利用されることが多いです。本記事では、田舎の事業承継のメリット・デメリットや、今後の展開予想を行います。

目次

  1. 田舎での事業承継とは
  2. 田舎での事業承継のメリット・デメリット
  3. 田舎での事業承継の過去事例
  4. 田舎での事業承継の今後の展開予想
  5. まとめ
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1. 田舎での事業承継とは

少子高齢化や人口の都市部集中の影響により、田舎の人口減少が深刻化しています。田舎の事業者は、後継者不足で事業承継が進められないという問題を抱えており、毎年多くの会社・事業が廃業に追い込まれています。

この東京一極集中を是正するため、2014年9月、第2次安倍内閣より「地方創生」が発表されました。以降は、企業誘致などで田舎の事業者を直接支援するものや、都市圏から田舎へのアクセス手段の充実などの支援制度が充実してきています。

こうした影響を受けて、田舎での事業承継に注目が集まってきており、都市部で働いてきた人がのんびり働ける環境を構築するために田舎で事業承継をする動きもみられます。

田舎での事業承継が増えている理由

田舎での事業承継が増えている理由の1つは、田舎の環境が良い方向に変化していることです。地方の人口減少に歯止めをかけるためにさまざまな政策が施されており、改善が進んで事業者の環境も変わってきています。

都会暮らしに疲れて田舎でゆっくりすごしたいと考える人も増えており、田舎の事業を引き継ぐケースが増えています。

また、2020年の新型コロナウイルス感染拡大で、地方創生の考えがさらに強くなったことも影響しています。人口が多くて感染リスクが高い都市部よりも、人口が少ない田舎で暮らしたいと考える人が急増しています。

田舎に移住しても都市部に通勤するのでは意味が薄くなってしまうため、田舎で事業承継して田舎だけで生活できるように環境を整えようというものです。

田舎での事業承継は難しい?

田舎では後継者不足が目立ち、事業承継問題を抱えている事業者が増えています。そのため、会社・事業を存続させるために後継者を求めている事業者と巡り合うことができれば、田舎での事業承継の可能性が高まります。

しかし、何の繋がりもない場合はお互いの存在を知ることも難しく、外部からは事業の詳細も分かりづらいという問題もあります。

事業承継を行う際は、M&A・事業承継の専門家に相談することをおすすめします。田舎に注力している専門家であれば田舎の事業承継案件を多数抱えているので、後継者を探している事業者を効率的に探せるでしょう。

M&A総合研究所はM&A・事業承継のサポートを手掛けているM&A仲介会社です。幅広い規模・業種での成約実績を有しており、全国の案件に対応しております。

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2. 田舎での事業承継のメリット・デメリット

田舎での事業承継は複数のメリット・デメリットがあるので、メリットばかりではなくデメリットについても把握しておくことが大切です。この章では、田舎での事業承継のメリット・デメリットを解説します。

田舎での事業承継のメリット

まずは、田舎での事業承継のメリットからみていきます。特に影響の大きいメリットは以下の2点です。

【田舎での事業承継のメリット】

  1. 収益性・将来性のある事業を獲得できる
  2. 田舎での繋がりを持てる

1.収益性・将来性のある事業を獲得できる

自分で引き継ぐ事業を選択できるので、収益性・将来性のある事業を厳選することができます。

安定した事業利益を生み出せる事業であれば、運転資金を確保できずに事業継続が困難になるという状況にもなりづらくなります。

田舎に移住して一から事業を起こす場合は、事業のノウハウが必要になります。しかし、有益な事業を承継すればノウハウも同時に獲得できるので、短期間での事業の安定化を目指すこともできます。

2.田舎での繋がりを持てる

田舎で事業承継すると、周辺地域との繋がりを持つことができます。地域に根付いた事業を展開する会社・事業は、地域からの信頼が厚く顧客・取引先を獲得するのに有効活用することができます。

そのため、事業の取得というよりネットワーク取得目的で、田舎での事業承継を行うケースもみられます。事業承継で引き継ぎだ繋がりを、本来自分が立ち上げたかった事業に活用することができます。

田舎での事業承継のデメリット

続いて、田舎での事業承継のデメリットを解説します。事業承継を検討する際に特に注意したいポイントは以下の2点です。

【田舎での事業承継のデメリット】

  1. 希望通りの事業を引き継げるとは限らない
  2. 顧客・取引先が離れるリスクがある

1.希望通りの事業を引き継げるとは限らない

田舎で事業承継する際は、事業について明確なビジョンを持つことも大切ですが、必ずしも希望する事業がみつかるとは限らないので、事業承継後に自分で展開・成長させなくてはなりません。

また、他人が育ててきた事業を引き継いで、最終的にやりがいが感じられない可能性もあります。事業を引き継ぐ際は慎重に選ばなければ、事業にやりがいを感じられずに失敗してしまうこともあります。

2.顧客・取引先が離れるリスクがある

田舎では、経営者同士の信頼関係により顧客・取引先を維持する傾向が強いため、事業承継で経営者が交代すると信頼関係を維持できなくなって顧客・取引先が離れるリスクがあります。

事業承継で交代する前は、前経営者の立ち合いのもとで顧客・取引先と顔通しを行っておくと、信頼関係を維持しやすくなります。

【関連】地方のM&A動向や後継者難の理由を解説【成功/失敗事例あり】

3. 田舎での事業承継の過去事例

田舎での事業承継は少しずつですが増加傾向にあります。この章では、田舎での事業承継の過去事例を2件ピックアップしてご紹介します。

【田舎での事業承継の過去事例】

  1. 個人商店の事業承継事例
  2. 電気事業の事業承継事例

1.個人商店の事業承継事例

こちらは個人商店を第三者に引き継いだ事業承継事例です。当初、商店オーナーは閉店を前提に考えていましたが、引継ぎの希望者が商店オーナーに強く訴えかけることで、事業承継の話し合いを進めることになりました。

後継者が引継ぎを希望した理由は、地域内の飲食店・食料品店がこの店以外になかったためです。田舎の過疎化が進むなか、地域住民が気軽に集まれる場所を存続させることに強い意義を見出して、事業承継を名乗りでます。

異業種からの参入でノウハウが少なかったこともあり、事業承継直後は「商品のバリエーションが少なくなった」「総菜の味が落ちた」などと言われることも多かったそうですが、徐々に地域住民からの信頼を獲得して事業の安定まで至りました。

2.電気事業の事業承継事例

こちらは電気事業を第三者に引き継いだ事業承継事例です。有能な技術者が多数在籍していて有益な経営資源を豊富に持っていましたが、後継者不足により事業承継を決意します。

引継ぎ希望者は同じく電気事業者であり、事業規模の拡大を目的としています。技術者などの人材や地域の繋がりによる顧客・取引先を引き継ぐことで、該当地域への進出を図りました。

事業承継後は、これまで取引してこなかった自動車部品メーカーとも新しく契約を結んで、順調に事業の多角化が進んでいます。今後はIoT分野への注力も検討しており、事業拡大の足掛かりとして進める計画です。

4. 田舎での事業承継の今後の展開予想

田舎での事業に注目が集まりつつありますが、依然として田舎の事業承継問題は深刻な状態です。圧倒的な後継者不足により、田舎の将来性のある事業が次々と廃業している現実があります。

こうしたなか、政府は事業承継問題に取り組むべく公的機関の事業承継相談窓口や、事業承継補助金を設置するなど、さまざまな政策を実施しています。

事業承継補助金は、事業を引き継いで新たな試みをする事業者に対して補助金を出す制度です。複数の要件を満たすことで認定を受けられて事業資金として活用できるようになります。

後継者不足の深刻化と田舎の事業承継を支援強化の動きから、今後は田舎の事業承継が活性化すると予想されています。

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5. まとめ

田舎での事業承継は、後継者を探す事業者がいる一方で、田舎での事業起こしを目指す起業家もいるので、ニーズが一致すれば事業承継を成立させる可能性が高まります。

田舎での事業承継で相手をみつける際は、M&A・事業承継の専門家に相談することをおすすめします。独自のネットワークや専門的知見を活用したアドバイスや事業承継の進行サポートを受けることができます。

【田舎での事業承継まとめ】

  1. 田舎での事業承継の増加理由は田舎へ移住を考える人が増えているため
  2. 専門家のサポートを受けると事業承継を円滑に進めやすくなる

【田舎での事業承継のメリット】
  1. 収益性・将来性のある事業を獲得できる
  2. 田舎での繋がりを持てる

【田舎での事業承継のデメリット】
  1. 希望通りの事業を引き継げるとは限らない
  2. 顧客・取引先が離れるリスクがある

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