アドバイザリー契約とは?M&Aコンサル契約との違いや契約書の内容、報酬を解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aを実行する際に、手続きや調査をお願いする仲介会社などと締結するのがアドバイザリー契約です。コンサルティング契約との違いや、締結に当たり気を付ける点として、どのようなことがあるのでしょうか。アドバイザリー契約のひな形も含めて紹介します。

目次

  1. アドバイザリー契約とは?
  2. アドバイザリー契約書の内容
  3. アドバイザリー契約の締結までの流れ
  4. アドバイザリー契約の注意点
  5. アドバイザリー契約のまとめ
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1. アドバイザリー契約とは?

アドバイザリー契約とは、M&Aを実行する前に、売り手企業や買い手企業がパートナー候補となる企業を探索する際に、仲介会社からアドバイスや実際の手続きの補助を得ることを目的として締結する契約のことです。
 
一般的には、業務範囲、秘密保持、報酬、免責などに関連する事項が契約書に記載され、それを取り交わすことで締結されます。

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M&Aコンサルティング契約との違い

M&Aや買収を実行する際に締結する契約にはM&Aコンサルティング契約もありますが、両者はアプローチの仕方や要求される専門知識、提供する考え方、期待される効果の期間などに明確な違いがあります。
 
それぞれの項目がどのように違うのか、詳細を説明します。

アプローチの仕方

まずはアプローチの仕方です。コンサルティング契約では、組織の課題に対するソリューションを提供する一方、アドバイザリー契約では会社などの組織そのものに対してアドバイスを行います。

つまり、コンサルティング契約は一部に対してアプローチをするのに対し、アドバイザリー契約では全体に対してアプローチを行う点で異なります。
 
アドバイザリー契約ではコンサルティング契約よりも非常に幅広い範囲に対してアドバイスをする一方、組織の中に入り込んで活動を行うことがないため、広く浅くアプローチするでしょう。

専門知識

次に、専門知識が必要か否かです。コンサルティング契約を担当するコンサルタントは、例えばIT技術に精通するなどの経営上の専門知識を持った個人であることが多く、狭い範囲に深くアプローチをします。

アドバイザリー契約では全体に対して戦略的にアプローチするため、特定の分野への専門知識を必ずしも必要としません。

提供する考え方

契約に基づき提供する考え方もやや異なります。コンサルティング契約では、コンサルティング会社が保有する自社のソリューションを売ることを目的としており、プレゼンなどを行うでしょう。
 
アドバイザリー契約では、このような自社の商品などがないため、相手の課題に合わせたアドバイスを行うことを軸としています

期待する効果期間

効果が期待できる期間もやや異なります。狭く深くアプローチするコンサルティング契約では、特定の問題を直接解決する一方、契約の範囲外にはアプローチしないため、短期的な効果にとどまるでしょう。
 
一方、広く浅くアプローチするアドバイザリー契約では、会社組織そのものに対してアプローチを行うため、長期的に効果が見込まれます。

2. アドバイザリー契約書の内容

具体的にアドバイザリー契約の契約書では、どのような内容を含むのでしょうか。大きく13項目ありますが、それぞれどのようなことを記載するのか、概要を説明します。

①契約締結の対象企業について

まず、誰と誰を結ぶ契約なのかを明示するため、契約締結の対象企業を明確にする必要があります。

②業務の委託について

続いて、業務の委託の定義です。株式の取得やM&A対象会社の探索など、会社のどのような問題に対してアドバイザリーを行うのか、取り組むべき仕事を特定します。

③契約の業務範囲について

続いて契約の業務範囲を規定します。②の課題に対して、情報収集や資料作成、実務手続きの助言、契約書の作成など、アドバイザリーが行う業務を定義します。

④着手金について

これらの業務に対し、アドバイザリーを受ける企業がどれだけの金額を着手金として支払うのか、いつまでに支払うのかを規定します。

⑤コンサルティング料について

着手金とは別に、業務にかかわっている間に支払うコンサルティング料を規定します。定額の場合や時給制をとる場合もあるでしょう。いつまでに支払うのかもここで規定します。

⑥業務の費用負担について

コンサルティング料とは別に、業務のために支出、もしくは負担した費用をどちらが負担するかを規定します。通常はアドバイザリーを受ける企業が支払うでしょう。

⑦相手方の契約について

当該アドバイザリー契約を実行するために必要な第三者との間にアドバイザリー契約を別に結ぶことが要求される場合には、それが本契約上の義務の範囲内で行われることを確認します。

⑧資料などの提供などについて

アドバイザリーを受ける企業が、アドバイザリーに対して適切な情報共有を行う一方、アドバイザリーは提供された情報を本件業務以外には使用しないこと、および管理義務があることを確認します。

⑨業務の再委託の禁止について

アドバイザリー契約により定義された業務を第三者に委託できないよう、この項で禁止しましょう。承諾があればしてもよい場合には、その但し書きも含めます。

⑩業務の秘密保持について

アドバイザリー契約で行われる業務は企業にとって重要な情報であるため、第三者に開示・漏えいされないよう、秘密保持を規定します。例外がある場合にはそれも記載をします。

⑪契約の有効期間について

契約の有効期間を記載します。どちらからも解約の申し出がない場合は同じ期間延長するなど、契約の延長に関する情報も記載をしましょう。

⑫アドバイザリー契約の解除について

どのような場合にアドバイザリー契約を解除するかを規定します。例えば、相手方に対する金銭の支払いを怠った場合などが代表的な項目として挙げられるでしょう。

⑬協議に関する契約について

ここまで業務の範囲から業務の終了までを記載していますが、契約書に記載のない事項やはっきりしないことは協議をもって決定する旨を記載するのが大切です。

⑭アドバイザリー契約書のひな形

実際にアドバイザリー契約を締結する際の契約書のひな形は、インターネット上で閲覧するのが可能です。上記までで紹介した13項目が基本的に入っていればよいですが、形式は別途ご確認ください。
 
M&Aではアドバイザリー契約のほか、基本合意契約書や最終契約書など、さまざまな契約書が必要となります。基本的な契約書の種類や意味などは、下記リンクも参考ください。

【関連】M&Aの契約書(基本合意契約書、最終契約書)について

3. アドバイザリー契約の締結までの流れ

実際にアドバイザリー契約を締結し、その契約が終了するまでの流れとして、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。M&Aを行う場合を例にとって、準備段階、交渉段階、最終段階の3ステップに分けて紹介します。

①準備段階

契約の準備段階では、M&Aを検討している買い手企業もしくは売り手企業がアドバイザリーを業務として行っているM&A仲介会社などに対して問い合わせ・個別面談を行います。契約締結前に、信頼できる相手かどうかを判断することが重要です。
 
そのうえで、双方の納得がいくようであれば、売り手企業はこの段階でアドバイザリー契約を締結します。合わせて秘密保持契約などを締結し、買い手企業側に提出する資料の作成など、実際のM&Aに向けた準備を進めていくでしょう。
 
買い手企業は、この段階では事業を買いたいニーズを表明するにとどまり、契約の締結は次の交渉段階で行います。

②交渉段階

アドバイザリーに対し、買い手企業と売り手企業の双方がM&A実行のニーズを登録したのち、仲介会社を通じて事業売却に向けた交渉が始まります
 
この段階では、買い手企業が売り手企業の情報を見ながら、実際に購入するかどうかを検討します。ノンネームシートでその企業を知りたいと考えた場合には秘密保持契約を締結のうえ、検討を進めるでしょう。その企業の購入を決めた場合には、アドバイザリー契約を締結する流れです。
 
その後、双方の企業でトップ面談を行い、M&Aへの基本合意が取れた場合には、契約の最終段階であるクロージングに進みます。

③最終段階

最終段階では、M&Aに向けたデューディリジェンスを行い、最終合意、最終契約の締結と進め、クロージングに向かいます。その後、買収を第三者に対して開示(ディスクロージャー)を行い、M&Aに関するアドバイザリー契約は終了です。

4. アドバイザリー契約の注意点

M&Aを遂行する際に相手企業との仲介をお願いするアドバイザリーですが、アドバイザリー契約を締結する際、どのような注意点があるのでしょうか。代表的な観点として、3点紹介します。

①専任契約と非専任契約

一つは専任契約と非専任契約のどちらがより適切な形式なのかといった観点です。それぞれのメリットを解説します。

専任契約のメリット

専任契約のメリットとしては、アドバイザリー契約を締結したM&A仲介会社とのみM&Aを進めることにより、他社に情報が漏れにくく自社がM&Aを検討していることが知られにくい点が挙げられます。
 
特にこの点は売り手企業にとって重要な問題です。売り手企業が気を付けるべき観点としては、複数のM&A仲介会社から買い手企業に対して紹介されることにより、買い手企業に何か経営上の大きな問題があるのではないかと懸念されるケースです。この場合、結果的に買収が実現できなくなってしまうリスクがあるでしょう。
 
そうしたリスクを避けるため、専任契約の形式をとることで、情報の出し方をコントロールできます。
 
専任契約の場合、契約締結の手続きや買収に必要となるさまざまな資料の作成に関する情報は、1社とのみやり取りを行えばよいため、作業工数を削減できます。限られた人員でM&Aを実行する場合には、工数とのバランスも含め、専任か非専任かを選択するとよいでしょう。

非専任契約のメリット

非専任契約のメリットとしては、複数のM&A仲介会社からM&Aの相手先企業を紹介されることで、専任契約よりも広い範囲で候補先を探せ、より良い相手企業とM&Aを行える可能性が高まる点が挙げられます。
 
一方、結果的にうまくいかなくなってしまうケースもあるため、慎重な検討が必要です。

②仲介方式とアドバイザリー方式

アドバイザリー契約に関連し、M&Aの交渉を行う場合に仲介方式とアドバイザリー方式の2つがあることも知っておく必要があります。それぞれの概要とメリットを解説しましょう。

仲介方式のメリット

仲介方式とは、同一のM&Aアドバイザーが、買い手企業・売り手企業の両方を仲介する方式です。中小企業のM&Aの多くはこの形式をとります。
 
交渉の仲介を中立的な立場で行う点が特徴で、M&Aの検討の相談からM&Aの成立まで、双方のニーズを把握し、利益のバランスを考えて行われる点が利点です。

アドバイザリー方式のメリット

アドバイザリー方式とは、買い手企業、売り手企業のそれぞれが別の企業とアドバイザリー契約を締結し、それぞれの側につくM&Aアドバイザー同士がM&Aの交渉を行う方式です。
 
アドバイザリー方式では、担当顧客の利益を最大化するために、相手企業の選定や譲渡価格などの条件面を調整する点が異なります。
 
ただし、M&Aにおけるクライアントの立ち位置は異なりますが、結果的に「顧客の利益を最大化する」といった観点は同一になりえるため、M&Aの目的をどうすれば達成できるかを明確にしたうえで、最良のパートナーを見つけることが重要です。

アドバイザリーの見つけ方は、下記リンクも参考ください。

【関連】M&Aアドバイザーって?選び方と利用するメリットを解説!

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③秘密保持の内容確認

秘密保持の内容をしっかり確認することも大切です。

M&A仲介会社が企業価値やリスクを判断するために、売り手企業側は多くの内部情報を提供する必要があります。アドバイザリー契約を締結する際には、秘密情報として保護される対象の範囲や秘密情報の開示条件などは、M&A仲介会社と相談した方がよいでしょう。

責任の所在を特定するためにも、当該情報の流出が第三者に損害を与える場合、別途秘密保持契約を結んでおくことが重要です。

④報酬・費用体系のチェック

アドバイザリー契約を締結した場合、報酬金としてはどの程度を支払う必要があるのでしょうか。一般的に、アドバイザリー契約の報酬は、着手金、中間金、月額アドバイザリー報酬金、成功報酬金の組み合わせから成り立っています。

着手金

着手金とは、M&Aアドバイザーとアドバイザリー契約を締結した時に支払う報酬です。アドバイザリー契約では、相手方企業の探索や資料作成などに伴い、さまざまな費用が発生するため、それをまかなうための着手金が支払われます。

中間金

中間金は、基本合意が締結された時点で支払われる報酬です。第1次成功報酬と呼ぶ会社もありますが、成功報酬の10~20%を占め、最終合意による成功報酬の一部を前払いしていると見られます。

月額アドバイザリー報酬金

月額アドバイザリー報酬金は、リテイナーフィーとも呼ばれます。アドバイザーがマッチングを成立させるための日々の活動実費に対して支払う報酬の意味合いが強く、月額30万円程度が相場です。

M&A成約の成功報酬金

成功報酬金は、M&Aがクロージングをした際に支払われる報酬です。成功報酬の多くは、取引金額に一定の料率をかけて計算します。一般的には、レーマン方式と呼ばれる手数料率が使われるでしょう。

報酬は会社により違う

近年では、仲介業者間の競争が激化していることもあり、着手金や月額報酬を請求しないなどの企業もあり、報酬体系は会社によりさまざまです。

一見これは有利にも見えますが、成功報酬に手数料率が上乗せされるなど、実質的にあまり変わらない場合もあります。報酬体系は事前によく確認しておくことが重要です。
 
一方、M&Aアドバイザー側としては、成約に導くにあたり多くの労力を割くため、月次報酬や着手金を支払うことによりアドバイザーのモチベーションを維持できる利点もあります。

最良のM&Aを実行するためにどのような契約が合理的なのか、企業ごとに検討のうえ決定するとよいでしょう。

⑤直接交渉の条件確認

M&A仲介会社が売り手や買い手の交渉を進めていくため、会社同士で直接交渉をするのは禁止されるケースが多いでしょう。しかし、条件付きで直接交渉できる場合もあります。

例えば、成約に支障をきたす可能性の高い条件である場合は、交渉をためらうケースがあるかもしれません。このような状況に備え、直接交渉の条件を事前に定めておくのが大切です。

⑥途中解約条項の記載

M&A仲介会社と結ぶアドバイザリー契約には、途中解約条項を盛り込むようにしましょう。例えば、仲介会社が売り手や買い手のリスクを考慮せずに成約を進めようとした場合、契約を白紙にできるよう盛り込んでおく方法です。

M&Aは、自社にとって大きな経営判断です。交渉の途中でM&Aを撤回するケースも出てくるでしょう。その際に途中解約の条項がなければ、契約期間中は費用を支払い続けなければなりません。

いつでも契約を解除できるといった条項は難しいかもしれませんが、仲介会社と妥当な期間を定めて事前に契約の解除を申し出るといった条項であれば問題はないでしょう。しかし、途中解約には違約金を求められケースもあるため、注意が必要です。

5. アドバイザリー契約のまとめ

M&Aのアドバイザリー契約には、さまざまな形式があり、専任契約か非専任契約か、報酬体系としてどのような体系を選択している会社を選ぶか、そもそもアドバイザリー形式か仲介形式かなどさまざまな要素が関連してきます。

それぞれの形式にメリット・デメリットがあるため、会社にとって最も良いM&Aを実行するための合理的な手段を選択することが重要です。

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