2024年07月16日更新
コールセンター業界のM&A・事業承継動向!売却・買収事例11選やメリットを解説!【2024年最新】
コールセンター業界のM&A・事業承継に関する情報をまとめました。コールセンターが地方に分散してきた経緯やコールセンターを買収・譲渡・売却する背景、M&Aの売却側・譲渡側それぞれのメリットなどを事例の紹介も交えながら解説します。
目次
1. コールセンター業界の概要と現状
一般的に、コールセンターは「電話による企業の窓口」というイメージを持たれることがあります。しかし、昨今では電話による対応を行わないコールセンターなども登場してきました。本章では、まずコールセンター業界の定義や現状などを確認します。
業界定義
コールセンターとは、電話などによる顧客対応の窓口業務を専門的に行う事業のことです。CRM(Customer Relationship Management)による顧客満足度の向上や、通信販売の受付、要望や苦情などへの対応など、その内容は多岐にわたります。
従来は電話受付対応(インバウンド)が主な事業でしたが、昨今は顧客の新規開拓や能動的アフターサービスを行う発信業務(アウトバウンド)のコールセンターも増えてきました。積極的なM&Aを行い、異業種のノウハウを取り入れた新しいコールセンターも登場しています。
コンタクトセンターとは
コンタクトセンターとは、顧客との電話対応を専門に行うコールセンターに対して、従来の電話応対業務に加えてメールやチャットコミュニケーション、Webのようなマルチメディアを利用した顧客対応を行うセンターのことです。
基本的にコールセンターとコンタクトセンターは「カスタマー対応を行う」意味では同じカテゴリーですが、その方法が電話か電話以外かという部分で定義が分かれます。なお、企業によってもその呼び方は異なり、統一された呼称ではありません。
同じコールセンター・コンタクトセンターでも、「ヘルプデスク」「お客様相談センター」「サポートセンター」「カスタマーセンター」などさまざまな名称が用いられています。
コールセンターの市場規模
近年、コールセンター(コンタクトセンターを含む)の市場規模は拡大傾向にあり、その背景にあるのは新型コロナ感染拡大の影響によってスポット案件(公共分野/官公庁案件)が多く発生したことによる押上げです。
矢野経済研究所が行った調査によれば、国内コールセンターサービス市場の2021年度の売上高(事業者売上高ベース)は1兆1259億円で、前年度より8.0%の増加となりました。
国内コンタクトセンターソリューション市場の売上高は4271億円と前年より1.9%増加し、市場全体としては順調な伸びといえるでしょう。
コロナ禍でコールセンターは非対面/非接触コミュニケーションチャネルとして注目されるようになったことや、人材不足を補うために民間企業によるアウトソーシングニーズが拡大したことなども、市場全体の売上を押上げた要因と考えられます。
参考:株式会社矢野経済研究所「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査を実施(2022年)」
コールセンターの現状
従来、コールセンターは首都圏に拠点を置く企業が数多くありました。しかし、昨今は「地方活性化」と「経費節約」の2つの観点で、首都圏から地方にコールセンターを移す企業が増加しています。
沖縄県や北海道の札幌などでは、地方自治体の雇用対策として企業に補助金を出す施策が行われました。「地元採用」を増加し地方の雇用を活性化させるアイデアが、企業の「地方での雇用は東京と比較して人件費を抑えられる」という思惑に見事にマッチしました。
全国平均では時給1,200円台の人件費が、ほとんど同じ業務内容でも札幌市・那覇市・福岡市・仙台市に開設すると時給900円〜1,100円台で済むことが多いでしょう。そのほか、コールセンターを置くための事業所の賃料やインフラ整備にも、地方と首都圏では大きな差がありました。
こうした事情があり、首都圏に置かれていたコールセンターは次々と地方に移転しています。地方に移転したコールセンターは、フリーダイヤルを採用しているケースが多いでしょう。IP電話を最大限に活用し、利用者に通話料の負担を強いることなく、コールセンターの運営費用を半分程度に抑えられるようになっています。
拠点が札幌・沖縄に集中
新型コロナの影響によりオフィス需要は全国的に停滞し、オフィスビルは空室の割合が高くなっています。このようななか、コールセンターのニーズが高まっている状況です。
ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、コールセンターの拠点数が最も多いのは札幌市で98拠点となっています。次いで、那覇市が65拠点、福岡市48拠点、仙台市が43拠点となっており、なかでも福岡は2016年以降の開設拠点数が最多となりました。
コールセンターの形態はオペレーターとPCや電話などの通信機器が揃えば成りたち、立地をあまり問わないため地方都市に集中する傾向がみられます。
コールセンター業界はECサイトの普及・拡大に加え、地方自治体は誘致支援策や雇用対策として重視しており、今後の成長が期待される業界のひとつです。
参考:ニッセイ基礎研究所「地方都市において存在感を高めるコールセンターのオフィス需要~需要拡大が期待される一方で、課題も~」
ノンボイス化が注目されている
現在、コールセンターでは、電話以外のコミュニケーションが注目されています。ノンボイス化の動きとしては、チャット・インスタントメッセージなどさまざまな動きがあり、その中で特に「LINE」を使ったサービスが人気です。
スマートフォンの普及率が高くなるにつれて、LINEが個人のメッセージのやり取りだけではなく、企業がカスタマーとやり取りをするために積極的に活用されるようになりました。電話業務のみのコールセンターがM&Aによる事業売却・譲渡を行い、電話以外のコミュニケーションツールを利用し始めているケースが増加傾向にあります。
コールセンターの課題と展望
堅調な推移が見込まれるコールセンター業界ですが、現状の課題となっているのは「慢性的な人材不足と離職率の高さ」「多様化する問い合わせへの対応」です。
コールセンター業界にオペレーター不足の解消は喫緊の課題ですが、少子高齢化による労働人口の減少や業務の難しさなどが要因となり、慢性的な人材不足が続いています。
さらに、コールセンター業務が複雑化するにつれ求められるスキルも多様化しており、新規採用が難しく離職率も高くなっているのが現状です。
また、近年は従来の電話に加えメールやチャットなどの問い合わせチャネルが多様化し、利用者にとっては利便性が向上しましたが、
オペレーターには素早い回答と文章力も求められるようになりました。
顧客満足度を向上させつつオペレーターの負担を軽減するためには、高いスキルをもつオペレーターの配置や運用体制の整備が必要です。
コールセンターはクラウド化やAI化によって単価が低下しましたが、コロナ禍でコンタクトセンターの重要性が広く認識されたこともあり、今後はこれまで利用の少なかった中小企業への普及も期待されています。
ニーズを逃さないためにはこの課題をどう解決するかが重要です。そのためには、コールセンターとwebチャネルを組み合わせた新体制の構築や強化などシステム整備が重要になると考えられます。
また、顧客からの迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策として、人工知能(AI)の活用が進んでいます。AIを使って相手の声を再現し、その声で応対の練習ができるほか、コールセンターでの通話内容をAIが分析し、オペレーターの心理的負担を軽減する試みも行われています。
AIは今後、テキストや音声、ビジュアルデータを学習して人間のように振る舞う能力を持つようになる見込みです。AIの能力が向上するにつれ、電話応対だけでなく、さまざまな場面でのカスハラ対策にも応用されることが期待されています。
2. コールセンターのM&A・買収・売却・譲渡・事業承継の動向
順調に業績を伸ばしているコールセンター業界ですが、2008(平成20)年のリーマン・ショックの影響を大きく受けたこともあり、昨今は経営立て直しのためにM&Aが活用されるケースも増えてきました。
電話以外の新しいコミュニケーションツールを利用するため、異業種企業と事業売買を行うためなど、さまざまな目的でM&A・企業統合が行われています。
需要の変化
コロナ禍以前、コールセンター業界は圧倒的な売り手市場だったため、他業界と比べ好条件でM&Aが成立するケースも多かったですが、現在ではその需要も落ち着いてきました。
しかし、これまでの人材確保や拠点拡大を目的としたM&Aだけでなく、コロナ禍で企業が非接触顧客窓口を注目したことにより、今後もM&Aの需要があると考えられます。
3. コールセンターM&Aの相場・売買価格
コールセンターのM&A相場がいくらなのかは、企業・事業の規模や条件によって変わってくるため一概に述べることはできませんが、一般的に時価純資産にのれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加算した金額が目安といわれています。
「時価純資産+営業利益2〜5年分」で求めることができるので、大まかな相場として考えるとよいでしょう。M&Aの取引価額は最終的に交渉で決まりますが、そのベースとなるのは売却側の企業価値です。
企業価値の算出方法はいくつかの種類があります。企業価値評価を簡易的に無料算定しているM&A仲介会社もあるため、一度相談してみるとよいでしょう。
4. コールセンターのM&A・事業承継の事例【2024年最新】
ここでは、最近、実施されたコールセンターのM&A・買収・売却・譲渡事例を紹介します。
①アップセルテクノロジィーズによるスリーコールのM&A
アップセルテクノロジィーズは、2024年4月9日付でスリーコールの全株式を取得し、子会社化したことを発表しました。
アップセルテクノロジィーズは、インサイドセールス事業および営業DXツール「UPSELL CLOUD」の開発・提供を行っている企業です。創業から20年以上にわたり、コールセンターを中心としたインサイドセールスの分野で、6,000社以上の顧客の営業課題を解決し、顧客満足度の向上と事業の拡大に努めてきました。
スリーコールは、コールセンター事業を専門とし、特に成長が続くECや通信販売市場で豊富な経験と独自のノウハウを持っています。また、オペレーターの稼働状況をリアルタイムで可視化する自社システムを導入しており、今後はこのシステムを改良してHRテックツールとして販売することも視野に入れています。スピード感のある対応を重視する社風のもと、300名以上のスタッフが常時対応可能で、大型案件にも迅速に対応しています。
この度の買収により、両社の持つノウハウとリソースを結集し、さらなる顧客満足度の向上と業務効率化を目指します。これにより、高品質なコールセンターサービスを提供することを目指しています。
②NCS&Aがフューチャー・コミュニケーションズをFCホールディングス等へ譲渡
2022年3月、NCS&Aは子会社でありコールセンター事業を行うフューチャー・コミュニケーションズを譲渡しました。譲渡先となったのは、投資会社であるFCホールディングスおよびフューチャー・ コミュニケーションズの社長である床田宗隆氏らです。
NCS&Aはソフトウエア開発事業を主軸としていますが、フューチャー・コミュニケーションズの事業とシナジーがうまく発揮されない状況が続いていため、グループからの切り離しが望ましいと判断したとしています。本M&Aの使用スキームは株式譲渡、譲渡価額は4億5000万円です。
参考:NCS&A株式会社「連結子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ」
③昭文社ホールディングスがコールセンター事業子会社Kuquluを譲渡
2022年3月、昭文社ホールディングスは連結子会社でコールセンター事業を手掛けるKuquluの全株式を譲渡しました。譲渡先となったのは、Kuqulu社長の小笠原健治氏です。
昭文社ホールディングスは、海外のレストラン予約や現地ツアー販売などのコールセンター業務をグループ内で展開する目的で、2018年にKuquluを子会社化しました。
しかし、新型コロナ感染拡大などにより海外旅行に関連した観光事業の見通しが立たず、事業の見直しを行いKuquluの譲渡を決断したとしています。本M&Aの使用スキームは株式譲渡、譲渡価額は1億1000万円です。
参考:株式会社昭文社ホールディングス「連結子会社の異動を伴う株式譲渡及び特別損失の計上に関するお知らせ」
④ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスの連結子会社間のM&A
2021年11月、ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスは、連結子会社4社による吸収合併の実施を発表しました。合併予定日は2022(令和4)年2月で、合併するのはMIRAIt Service Design、ソフトワイズ、MSD Secure Service、盛達テクノロジーです。
存続会社はMSD Secure Serviceで、各社の事業を承継し今後はソフトウェア受託開発業、開発技術系コールセンター事業、システムエンジニアリングサービス業を行っています。
ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスとしては、事業の集約により経営を効率化させ、顧客への提供サービス内容を充実させる考えです。
参考:ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス株式会社「当社連結子会社間の吸収合併に関するお知らせ 」
⑤ジェイフロンティアとAIGATEキャリアのM&A
2021年12月、ジェイフロンティアは、AIGATEキャリアの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。ジェイフロンティアは、ヘルスケアセールス事業、メディカルケアセールス事業、ヘルスケアマーケティング事業などを行っています。
AIGATEキャリアは、医療人材紹介事業、営業人材紹介・派遣事業、コールセンター運営事業などを行っている企業です。ジェイフロンティアとしては、コールセンターの内製化により収益基盤強化を図れると判断しました。
参考:ジェイフロンティア株式会社「AIGATE キャリア株式会社の 子会社化 についての お知らせ」
⑥インバウンドテックとOmniGridのM&A
2021年11月、インバウンドテックは、OmniGridの株式65%を取得し子会社化しました。取得価額は9億2,950万円です。インバウンドテックは、マルチリンガルCRM事業、セールスアウトソーシング事業として多言語コンタクトセンターを運営しています。
コンタクトセンターとは、通常のコールセンター業務に加えて、Eメール、Web、ソーシャルメディア、チャット、FAX、ハガキなどの手段も含めた対応を行うサービスです。
OmniGridは、音声予約システム開発・運営、音声通話システム開発・運営、レンタルサーバー事業などを行っている企業です。インバウンドテックとしては、安定収益と音声技術の開発ノウハウ取得を目的としています。
参考:株式会社インバウントテック「インバウンド及びコンタクトセンターの強化を目的とした、株式会社 OmniGrid の株式取得 (子会社化)と株式会社 EPARK との合弁事業開始に関するお知らせ」
⑦ジャパンベストレスキューシステムとアクトコール、TSUNAGUのM&A
2021年9月、ジャパンベストレスキューシステムは、株式交換によってアクトコールとTSUNAGUを完全子会社化しました。ジャパンベストレスキューシステムは、コールセンター運営を含む駆けつけ事業、会員事業、保険事業、リペア事業、ライフテック事業などを行っています。
アクトコールとTSUNAGUは、シック・ホールディングスの100%子会社でした。アクトコールは住生活関連総合アウトソーシング事業、TSUNAGUはコールセンター運営事業を行っている企業です。
ジャパンベストレスキューシステムとしては、営業リソースやコールセンター業務の効率化により収益性の向上を見込んでいます。
参考:ジャパンベストレスキューシステム株式会社「連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」
⑧日本PCサービスとミナソルのM&A
2021年8月、日本PCサービスは、ミナソルの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。日本PCサービスは、IT機器の総合サポートサービス業、コールセンター運営、ビジネスソリューション事業などを行っています。
ミナソルは、コールセンター事業を行っている企業です。日本PCサービスとしては、ミナソルの高い提案力を評価し、シナジー効果が創出できると判断しています。
参考:日本PCサービス株式会社「ミナソルをグループ化 アウトバウンドに強みを持つミナソルの提案力で『家まるごと・オフィスまるごと』サポートを強化」
⑨サンネクスタグループ子会社間のM&A
2021年7月、サンネクスタグループの完全子会社3社の間で、以下のようなM&Aが行われました。
- スリーSが存続会社、サンネクスタリーシングが消滅会社となる吸収合併
- 日本社宅サービスがコールセンター事業をスリーSに事業譲渡
サンネクスタグループは、社宅マネジメント事業、マンションマネジメント事業、マネジメントサポート事業、コールセンター運営を含むインキュベーション事業などを行うグループの持株会社です。
今回のM&Aにより、マネジメントサポート事業とコールセンター事業がスリーSに集約されました。サンネクスタグループとしては、品質の向上と効率化が図られ収益力が強化されるとの考えです。
参考:サンネクスタグループ株式会社「完全子会社間の合併及び事業譲渡に関するお知らせ」
⑩デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーといわきテレワークセンターのM&A
2021年5月、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーは、いわきテレワークセンターの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。いわきテレワークセンターは、M&A後にデロイト トーマツ テレワークセンターに社名変更しています。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーは、デロイト トーマツ グループのファイナンシャルアドバイザリーファームです。いわきテレワークセンターは、コールセンター事業を主軸としてBPO(Business Process Outsourcing)サービスを行ってきました。
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーとしては、グループ内のコールセンター機能の強化を目的にM&Aを実施しています。
参考:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社「デロイト トーマツ、いわきテレワークセンターの全株式を取得」
⑪インバウンドテックとシー・ワイ・サポートのM&A
2021年4月、インバウンドテックは、シー・ワイ・サポートの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は9,323万7千円です。インバウンドテックは、マルチリンガルCRM事業、セールスアウトソーシング事業(多言語コンタクトセンター運営)を行っています。
シー・ワイ・サポートは、岩手県に2拠点を持つコールセンター事業を行っている企業です。これまで、インバウンドテックのコールセンター拠点は、東京都と鹿児島県の2拠点でした。M&Aにより、異なる地域のコールセンター拠点の獲得を図っています。
参考:株式会社インバウントテック「株式会社シー・ワイ・サポートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
5. コールセンターのM&A・買収・売却・譲渡・事業承継のメリット
コールセンターのM&Aには数多くのメリットがあります。本章では、売却側と買収側に分けて、M&Aのメリットを確認します。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
コールセンターのM&Aに関して、売却側企業のメリットは主に以下の6つがあります。
従業員の雇用維持
会社が廃業や倒産した場合、従業員は解雇されますが、これは経営者としてなるべく避けたい事態です。コールセンターをM&Aで売却できれば、会社は存続します。基本的に従業員も引き継がれるため、雇用は維持することが可能です。
後継者問題の解決
後継者不在で経営者が引退時期を迎えた場合、コールセンターは廃業せざるを得ません。しかし、M&Aでコールセンターを売却できれば、買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継を実現させられます。
有力グループ傘下に入れる
コールセンターに限らずいかなる業界でも、M&Aでは売り手よりも買い手の企業規模が大きいのが一般的です。M&Aにより大手企業の傘下になれば、これまでになかった経営資源・資金・ノウハウを活用できるようになります。
売却益の獲得
M&Aでコールセンターを売却することで、オーナー経営者はその対価を受け取れます。獲得した売却益は、老後の生活資金や新規事業向け資金など、さまざまな目的で使えます。
債務解消
コールセンターを株式譲渡(会社売却)した場合、基本的に債務は買い手に引き継がれます。これにより、コールセンターの売り手経営者が負っていた個人保証や担保は解消されるでしょう。
事業存続ができる
M&Aを実施することにより、これまで長年にわたり経営してきたコールセンター事業を存続できます。買い手の経営資源・資金・ノウハウを得ることで、経営は安定化し業績の向上も狙えるでしょう。
買収側のメリット
コールセンターのM&Aで、買収側の主なメリットは以下の3点です。
経営資源の獲得
コールセンターを買収する側は、M&Aによって人材・機材・拠点などをまとめて獲得できます。経営者からすると、ゼロの状態から構築することと比べて、短時間での経営資源の獲得は大きなメリットです。
ノウハウの獲得
コールセンターのM&Aにおける買い手側では、有形資産だけでなく、コールセンターの運営ノウハウなど無形資産も獲得できます。自社とは異なるノウハウを入手し、両者を融合させることで、他社との競争に勝つノウハウが編み出される可能性もゼロではありません。
事業規模拡大
コールセンター事業を手掛ける企業同士でM&Aを行った場合、買収側は事業規模の拡大が実現し、売却側のシェアも獲得できます。
事業基盤の強化やコスト削減などのシナジーも見込め、売上拡大や競争力強化につながる点も大きなメリットです。
6. コールセンターのM&A・事業承継を成功させるポイント
コールセンターのM&Aは活発で、多数の成功事例があります。しかし、焦ってM&Aを進めてしまっては、統合後にトラブルが発生する可能性も少なくありません。コールセンターのM&Aを成功させるポイントは、以下の5つです。
①債務や未払い賃金がないかチェックする
コールセンターは人材の入れ替わりが激しく、未払い賃金が発生しやすい業界です。元従業員は退職後も未払い賃金を請求できるため、賃金支払いがしっかりと行われていなければM&A直後に大きなリスクを抱えてしまいかねません。
会社の債務もリスクの高い要素です。買い手はデューデリジェンス(売却企業の精密監査)によりチェックするものの、売り手側も認識していない債務(例:簿外債務)は、M&A後に会社経営に大きな悪影響を与える可能性があります。
したがって、M&Aでは、「売り手が債務や未払い賃金をしっかりと把握しておくこと」「買い手が専門家とともにデューデリジェンスを行い、売り手の経営体制を徹底調査すること」が必要です。
②従業員への対応を早めに行う
人材不足が深刻な問題のコールセンター業界では、人材流出の危険をなるべく抑えることが大切です。M&Aに際して、会社の環境が変わるのを嫌がって退職してしまう従業員も少なくありません。
従業員が仕事に集中できるよう、経営者は適切な時期を見計らって、今後の予定などをしっかりと説明しておきましょう。
M&A後に待遇が悪化してしまうと、良い職場を求めて従業員が大量に離職してしまうことも考えられます。売り手・買い手がきちんと話し合い、待遇を悪化させないよう最大限に配慮することが大切です。
③人材の育成方法を話し合っておく
人材不足が問題のコールセンター業界では、人材育成の重要性も高まっています。質の高いサービスが重視される中で、顧客となる企業に合わせた対応が必須です。
しかし、これまで売り手と買い手は、それぞれ異なる方法で人材育成を行ってきたはずです。育成の方法や指導する人も異なる状況ですから、今後の方針をきちんと話し合っておかなければ、人材育成方法にズレが生じて従業員同士のトラブルに発展するおそれがあります。
M&Aの際は、お互いの持つ考え方を尊重し、なるべく時間をかけて人材育成の方針をすり合わせましょう。人材育成以外にも、お互いの会社文化を理解し、従業員が働きやすい環境を作っていくような努力が必要です。
④契約や顧客情報の管理を徹底する
コールセンター事業の大きな特徴として、他業種と比べて膨大な数の顧客情報や契約を扱っている点があります。これらの情報管理が適切に行われておらず、仮に外部に漏えいしてしまった場合、当事企業はコンプライアンス違反を問われます。
したがって、コールセンターの売却側は情報管理を徹底して行っておく必要があります。これと同様に、買収側も売却側がどのような情報管理体制を取っているか入念にチェックする視点が重要です。
⑤買収側のニーズに応える
コールセンターのM&Aでは買い手ニーズに対応できているほど高い評価が得られやすくなります。特にポイントとなるのは、インバウンド活動やアウトバウンド活動への対応できるかという点です。
コールセンター事業の場合、注文や問い合わせに対する「待ちの対応」をインバウンドといい、利用者のアクションに対して速やかにかつ確実に応じられるかが重視されます。
アウトバウンドとは、コールセンターの場合は商品・サービスを売り込む「攻めの対応」のことです。アウトバウンドでは、オペレーター教育の徹底や営業用スクリプトの完備されているかがポイントとなります。
7. コールセンターのM&Aの海外事例
国内外におけるコールセンターのM&A・買収・売却・事業譲渡には多くの事例があります。それらを体系で分けると、以下の3パターンです。
- 「IN-OUT」:日本企業が海外企業を買収するM&A
- 「OUT-IN」:海外企業が日本企業を買収するM&A
- 「OUT-OUT」:海外企業同士で行うM&A
①IN-OUTの事例
コールセンター業界最大手のトランスコスモスは、2011年にイギリスのメルリンへ出資、2015年にイギリスのメトロディールホールディングスを買収、2017年にはアメリカのリプライと資本提携を行うなど、積極的に海外進出を進めてきました。
そのほかにもアジア方面では、台湾の子会社が台湾で初となるコンタクトセンター拠点「江子翠(こうしすい)センター」を開設しています。ベトナムのホーチミンに5拠点目となるコールセンターの拠点「ホーチミン第三センター」を設立し、順調に事業拡大しました。
②OUT-INの事例
コールセンター業界最大手のトランスコスモスは、2011年にイギリスのメルリンへ出資、2015年にイギリスのメトロディールホールディングスを買収、2017年にはアメリカのリプライと資本提携を行うなど、積極的に海外進出を進めてきました。
そのほかにもアジア方面では、台湾の子会社が台湾で初となるコンタクトセンター拠点「江子翠(こうしすい)センター」を開設しています。ベトナムのホーチミンに5拠点目となるコールセンターの拠点「ホーチミン第三センター」を設立し、順調に事業拡大しました。
③OUT-OUTの事例
世界的に有名な顧客データベースを扱うSalesforce.comは、2008年にコールセンター用ソフトウェアを手がけるInStranetを買収しました。
M&AによってSalesforce.comのカスタマーサービスを強化して顧客満足度UPを図るとともに、顧客データベースと電話をコラボレーションした技術を利用して事業拡大を進めています。
8. コールセンターのM&A・買収・売却・譲渡・事業承継まとめ
コミュニケーションツールが電話からメールに、そしてメールからチャットへ移っていくように、コールセンター業界も電話のみのコミュニケーションでは生き残れない時代になりました。
コールセンター業界は業績そのものは好調であるため、ITの異業種と事業譲渡・売買などのM&Aを行い、業績を拡大しながらお互いのノウハウを手に入れ、さらに顧客満足度を高める施策を進めています。
このようなコールセンターのM&Aを行う際は、ノウハウを持っている専門家のサポートを得るとスムーズに進めていくことが可能です。
9. コールセンター業界の成約事例一覧
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