ノンネームとは?用語の意味や作り方の手順・注意点も解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

ノンネームは「1枚もの」とも呼ばれ、M&Aでは譲受側の会社へ打診する際に用いられます。ノンネームは、譲渡対象となる会社の社名を特定され得る要素は伏せた状態の会社概要書です。当記事では、ノンネームを使用する目的や作り方、注意点などを解説します。

目次

  1. ノンネームとは
  2. ノンネームで必要な企業評価の方法
  3. ノンネームの作り方・手順
  4. ノンネームを作成する際の注意点
  5. ノンネーム後に開示される企業概要書について
  6. ノンネームのまとめ
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1. ノンネームとは

M&Aを行う際に使用するノンネームとは、譲渡を希望する会社が自社名が特定され得る要素は伏せた状態で、業種・おおまかな地域などを記した企業概要書のことです。

M&Aの交渉を打診する際に使用され、譲受候補となる会社がノンネームに興味を持ち交渉を進めたいとなれば、秘密保持契約の締結後に社名などを明かし詳細情報を開示します(これをネームクリアといいます)。

ノンネームについて

ノンネームは「1枚もの」と呼ばれることもあり、譲渡を希望する会社の社名や詳細な地域などは伏せた状態で、業種・おおまかな地域・事業規模などを要約した会社概要書をさします。M&Aの実施は、会社にとって重要な機密事項です。

M&Aが成約するまで、情報の漏えいは避けなければなりません。ノンネームには、事業内容・社員数・譲渡理由などの必要最低限の項目のみを記載します。伏せた情報を開示するのは、交渉相手が定まり、相互に秘密保持契約を締結した後です。

ノンネームとM&Aの関係

M&Aの交渉は、準備フェーズ・交渉フェーズ・最終契約フェーズの3つに大別でき、ノンネームは準備フェーズと交渉フェーズ(具体的な交渉へ進む前)で使用します。M&Aは、交渉先となる会社が見つからなければ先に進めないため、ノンネームシートの役割は重大です。

ただし、同業他社が少ない地域では、社名を伏せても自社が特定される可能性があります。記載する情報や書き方は、M&A仲介会社などの専門家と相談して決めましょう。

ノンネームを用意する目的

ノンネームを用意する目的は、候補先である会社へM&A交渉を打診するためです。この時点では実際に交渉に進むかどうかわからないため、譲渡対象の会社は、自社名が特定されて情報漏えいするリスクを考え、概要のみを記します。

M&Aを行うにもかかわらず、なぜ自社の詳細情報を開示しないのかというと、譲渡側の会社にとってM&Aを行うこと自体が秘密情報だからです。

仮に自社を売却しようと考えていることが早い段階で周囲へ伝わってしまうと、従業員の流出や取引の中止にもつながりかねず、自社の企業価値評価が下がることも考えられます。

ノンネームが必要となる場面

M&Aによって自社を売却したいと考えた場合、まずM&A仲介会社へ相談しアドバイザリー契約を結ぶ流れが一般的です。アドバイザリー契約を結んだら、交渉先を探すために使用するノンネームシートを作成します。

M&Aの交渉先は、自社の希望条件を考慮してM&A仲介会社がピックアップした中から、数社を選びましょう。その後、選んだ候補先へノンネームシートを提示して、交渉を打診します。

ノンネームシートは会社概要をおおまかにまとめたものなので、譲受候補となる会社は具体的な情報を得られません。譲渡側の会社が特定されることなく、かつ譲受候補となる会社の興味をひけるような内容であることが必要です。

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2. ノンネームで必要な企業評価の方法

ノンネームは対象となる企業価値を評価することで作成されます。具体的には、企業評価は以下の方法で実施されるのが基本です。
 

評価内容 概要
会社情報の把握 企業の住所や従業員数、また事業内容などを把握する
定量分析 企業における資産や負債などの定量的要素について、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、コスト・アプローチなどの手法を用いて評価する。
定性分析 営業力や人材の素質、属する業界の成長性、売手の強みや弱みなどから評価する。

3. ノンネームの作り方・手順

ノンネームは、M&A仲介会社の担当アドバイザーが作成し、譲受側へ交渉を打診するために使用します。譲渡側が提出した資料と経営者からヒアリングした内容をもとに作成し、譲渡側に事実確認後、譲受側へ提示する流れです。

ノンネームへの記載内容

情報漏えいの危険性を考慮し、ノンネームには自社が特定され得る情報は載せませんが、あまりに情報を絞りすぎてしまうと、自社の強みや魅力を伝えられなくなります。ノンネームシートは、どのような買い手に対してアピールしたいのか、作成者に伝えましょう。

以下は、ノンネームシートに記載する項目例です。この中で特に重要な項目を解説します。

  • 業種(事業内容)
  • 所在地
  • 資本金
  • 業歴
  • 売上高
  • 経常利益
  • 従業員数
  • 譲渡の理由
  • 企業の特徴
  • 希望するM&A手法
  • 希望する譲渡額

事業内容

社名が特定されないことも重要ですが、単に「サービス業」や「製造業」だけでは、事業内容が伝わらず、譲受候補側も判断がつかないでしょう。どこまで詳しく事業内容を伝えるかは、所在地・売上高・従業員数との兼ね合いで決めます

ニッチな業種や同一地域で同業者が少ない場合は、書き方に工夫が必要です。同一地域に複数の同業者がいても、売上高や従業員が同等の同業者がいなければ、すぐに社名が悟られてしまいます。これらを考慮し、作成者とは綿密な打ち合わせが必要です。

所在地

最も社名の特定を避ける場合は、「関東地方」「近畿地方」など都道府県名も明かさず、地域区分で記載します、社名が特定されないことが明確であれば、都道府県名やさらにそれより細かく所在地を記載してもかまいません。

売上高

譲受側候補にとって、売上高情報は重要な項目です。しかし、ノンネームシートの場合、細かく正確な数値は記載せず、「5億円以上」「5億円~10億円」というように記載します。

従業員数

従業員数は、多くの会社がホームページ上で公開しています。したがって、ノンネームシートに正確な従業員数を記載すると、そこから社名が特定される可能性も否定できません。そこでノンネームシートでは、概算で「約200名」といった記載方法をとります。

譲渡の理由

細かな譲渡理由は、交渉開始後に伝えればいいので、ノンネームシートではできるだけ簡潔に記載します。長くても50文字程度が目安で、「後継者不在による事業承継のため」などの記載で十分です。

企業の特徴

譲受側候補にアピールできないと、交渉に進めません。しかし、社名の特定も防ぐことで、書き方は難しいですが、表現としては一般的でも、内容としては自社の特徴をアピールできる言葉を選んで記載します。一例としては以下のようなものです。

  • 特許権を所有
  • 独自設備を保有
  • 独自ノウハウを構築済み
  • 有力上場企業と取引あり
  • 従業員に資格所有者多数
  • 同業他社よりも従業員の平均年齢が低い

ノンネームを作る際の相談者

前述のように、ノンネームはM&A仲介会社の担当アドバイザーなどが作成するのが一般的です。表現が限られた中で自社の魅力をいかに伝えられるかは、アドバイザーの能力にかかっているといっても過言ではありません。

ノンネームは、満足のいくM&Aを実現させるための第一歩となる重要なものなので、しっかり作成できる専門家を選ぶことが大切です。

M&Aのサポートやノンネーム作成は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、経験豊富なアドバイザーが専任につき、ご相談時からクロージングまで親身になってM&Aをサポートします。

料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。初期費用を抑えたいとお考えの場合も安心してご利用いただけます。

無料相談は、電話・メールより24時間受け付けていますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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4. ノンネームを作成する際の注意点

ノンネームを作成する際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、特に注意すべき以下の3点を解説します。

  • 自社が特定されるような詳細情報を記載しない
  • M&A手法を絞る
  • ノンネームの提出先を増やしすぎない

自社が特定されるような情報を記載しない

1つ目は、自社が特定されてしまうような情報を記載しないことです。ノンネームシートに、自社の情報や事業の特徴を詳しく載せてしまうと、特定されてしまうおそれがあります。地域によっては対象事業を営む企業が少ないケースもあるので、そのような場合は特に注意が必要です。

しかし、自社が特定されることを懸念しすぎると、譲受側にとってはあまりにも検討材料が乏しく、かつこちらの魅力を伝えられません。ぎりぎりの判断が肝要です。

M&A手法を絞る

2つ目の注意点は、ノンネーム作成前に使用するM&A手法を絞っておくことです。ノンネームシートに希望の譲渡方法を記載していないと、譲受側がまだ会社を売る意思が固まっていないと考えてしまう可能性もあります。

ノンネームにはM&A手法を記載し、たとえば、株式譲渡なら譲渡する株式の割合、事業譲渡なら譲り渡す事業を記載しておくと譲受側がよりイメージしやすくなるでしょう。

ノンネームの提出先を増やしすぎない

3つ目の注意点は、ノンネームの提出先を増やしすぎないことです。多くの企業にノンネームシートを提示すればM&Aが成功しやすくなるのではと考えるかもしれませんが、逆にいえば情報漏えいのリスクを高めることにもなります。

ノンネームを提示したからといって、必ずその相手と交渉できるわけではありません。むやみにノンネームを提示することは情報漏えいのリスクを高め、実際に情報が流出してしまうと自社の評価を下げることにもつながるでしょう。

交渉に進みそうな企業をある程度絞り込んでノンネームを提示すれば、情報漏えいのリスクを下げられ、結果的にスムーズな売却にもつながります。

5. ノンネーム後に開示される企業概要書について

ノンネームによって興味を持った買い手に対しては、機密保持契約を締結した後に企業概要書を開示して交渉に進みます。

企業概要所とは売り手側が作成する書類であり、企業概要・事業内容・財務諸表などの詳細が記載された書類のことです。英語では「Information Memorandum」と表記され、IMの略称で呼ばれています。

企業概要書には、買収側に「どのようなメリットがあるのか」、「どのようなシナジー効果が得られるのか」を理解してもらうために、ノンネームよりもさらに詳しい内容が記されます。

6. ノンネームのまとめ

ノンネームは、M&Aの候補先へ交渉を打診するために使用するのが目的です。情報漏えいのリスクを考慮し、ノンネームには、自社が特定されるような情報は載せず、社名も伏せて作成します。

ノンネームに詳細は載せませんが、M&Aの交渉を進めるための重要な役割を担うので、しっかりと作成できるM&A仲介会社を選ぶことが大切です。本記事の概要は以下のようになります。

・ノンネームとは
→譲渡を希望する会社が自社名などの特定され得る要素は伏せた状態で、業種・おおまかな地域などを要約したもの
→譲受会社に対してM&Aを打診する目的で使用する

・ノンネームへの記載内容
→業種、所在地、資本金、業歴、売上高、経常利益、従業員数、企業の特徴、譲渡の理由、希望するM&Aの形態、希望する譲渡額

・ノンネームを作成する際に注意すること
→自社が特定されるような詳細情報を記載しない、M&A手法を絞る、ノンネームの提出先を増やしすぎない

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