2021年08月23日更新
マルチプルとは?マルチプル法による企業価値の算出方法を解説!
M&Aでは企業価値の算定が欠かせません。そのための計算式にはさまざまなものがありますが、代表的な一つがマルチプル法です。マルチプル法の基本からメリット・デメリット、EBITDAなどの指標や具体的な算定方法などについて解説します。
目次
1. マルチプル法とは
マルチプル法とは、企業価値・株式価値を算定する手法の一つです。マーケット・アプローチに分類される手法であり、客観的な数値が比較的簡単な計算式で算出できるため、M&Aの初期段階で活用されています。
また、M&Aの際に資産価値を評価するDCF(Discounted Cash Flow)法と、併用して活用されることが多い手法です。
なお、マルチプルとは、特定の財務指標、および企業価値・時価総額を比べた際の倍率を意味します。
以下の動画でM&Aアドバイザーが計算例を用いて分かりやすく解説しておりますので、是非ご覧ください。
そもそも企業価値とは
企業価値評価とは、ひと言でいえば「会社の値段」のことです。
「エンタープライズ・バリュー(Enterprise Value= EV)」と呼ばれることもあります。企業価値評価は、M&Aでの価格交渉における判断基準の土台として用いられますが、そこで何を判断するかというと以下のとおりです。
- オファーする価格の検討(売り手側)
- 投資するべきか否かの検討(買い手側)
また、企業価値評価は以下のような場面でも活用されます。
- 投資判断(ベンチャーキャピタルや金融機関)
- 相続税の評価(株式譲渡をする事業承継の場面)
- 経営戦略の策定
経営において企業価値評価の重要性は高く、常に企業価値を高めなければなりません。
企業価値評価の算定方法について、以下の動画と記事でも詳しく解説しているので、具体的な方法が知りたい場合には確認してみてください。
マルチプル法の考え方
マルチプル法の根底にある考え方は、評価対象企業と類似する上場企業は、同じ企業価値・株式価値があるという要素から成り立っています。
そのため、類似した複数の企業をピックアップし、各社の株価から事業価値や評価を簡単な計算式に当てはめ、平均値などを出すのです。
この数値に評価対象企業の主要指数をかけ、企業価値を推定します。
マルチプル法の意味
マルチプル法の大きな特徴は、簡単な計算で比較的客観性の高い企業価値・株式価値を知ることができる点です。
DCF法のように複雑な計算を必要としないため、M&Aを行う初期段階で活用されることが多くなっています。
なお、マルチプル法は、倍率法や乗数法と呼ばれることもある方法です。その理由は、マルチプルが「評価倍率」を意味するためであり、評価対象企業の企業価値を推定するために、類似企業の評価倍率を活用することからマルチプル法と呼ばれるようになりました。
2. マルチプル法のメリット・デメリット
マルチプル法を活用して、企業価値・株式価値を算出するうえで、知っておきたいメリット・デメリットを掲示します。
マルチプル法のメリット
マルチプル法のメリットは、簡単な計算式で算出できること、客観性の高い対象企業の評価価値がわかる点です。併用して活用されることの多いDCF法と比較すると、メリットがより明確になります。
DCF法は、将来的なキャッシュフローを現在の価値に割り引いて計算し、絶対的な企業価値・株式価値を求めるものです。したがって、高い確度の将来的なキャッシュフローが導き出せますが、複雑な計算が必要となります。
一方、マルチプル法は、複数選んだ類似企業の平均値から、相対的な企業価値・株式価値を簡単な計算式で導き出すことが可能です。
また、相対的な評価をするため、比較的客観性の高い評価価値を知れます。
マルチプル法のデメリット
マルチプル法のデメリットは、算出する人間の裁量が入る点です。複数の類似企業を選ぶ際、類似事例を選ぶ際、採用する株式価値の日時を決める際など、算出する人間の裁量が大きく関わってきます。
そのため、マルチプル法のメリットの一つである高い客観性は、完全なものではありません。あくまでも、高い客観性が保たれていると考えておくとよいでしょう。
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3. マルチプル法とDCF法との違い
マルチプル法とDCF法の大きな違いは、アプローチの種類です。
マルチプル法は株式市場における価格をベースにして、企業価値を算定するマーケット・アプローチに分類されるため、おおむね相対的な評価になります。
一方、DCF法は将来的に期待される経済的な利益から、リスクや不安要素などを考慮して割引を行うインカム・アプローチであるため、絶対的な評価です。
マーケット・アプローチとは
マーケット・アプローチは、企業価値を算定する方法の一つです。特徴の一つに、算定する材料として現在の株価を使用することが挙げられます。
現在の株価では、対象企業へ向けられた市場の評価がわかるのです。また、業種に対する展望なども加わるため、近未来の予測も加わっています。
こうした理由から、現在の株価は買い手・売り手がさまざまな思惑の中で取引して決定されたものであり、それを使用して算定された企業価値は、客観的な市場の評価となるでしょう。
マーケット・アプローチを使用する場面は、簡単な計算式を使い、手早く簡単に企業価値を算定したい場合です。
インカム・アプローチにおけるDCF法について
インカム・アプローチとは、将来的な収益として得られる利益を現在の価値に計算して還元し、企業・事業価値を算定する方法です。
代表的な算出方法には、「DCF法」と「収益還元法」の2種類があります。
DCF法とは、M&Aにおける企業価値評価の算出方法でよく使われる評価基準です。
4. マルチプル法で使われる指標
マルチプル法を算定する際、「EBIT」「EBITDA」「PER」「PBR」といった指標が活用されます。この項では、それぞれの意味や特徴、求め方を見ていきましょう。
EBIT
EBITとは「Earnings Before Interest and Taxes」の略です。直訳すると「利息、および税金控除前の収益」という意味になります。
EBITにおける利息とは、支払利息(借入金に対する利息)と受取利息(預金などに対する利息)を表し、EBITを求める際に支払利息から受取利息を差し引くものです。
【EBITの計算例】
- 税金控除前の収益+支配利息-受取利息=EBIT
EBITの用途は、借入金に対する利息を税金控除前の収益から除くことです。企業が借り入れている金額は、利益として計上されないため、あらかじめ取り除く必要があります。
主に、マルチプル法を用いて、起業したばかりの会社の企業価値を判断する際、EBITにて支払利息を取り除いた利益を判断します。
EBITDA
EBITDAとは「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略です。直訳すると「利息控除前の利益と減価償却費」という意味になります。
EBITDAは、支払利息を除く前に減価償却費を加えて計算した指標です。
【EBITDAの計算例】
- 利息控除前の利益+減価償却費=EBITDA
マルチプル法で使用されるEBITDAは、営業利益に対して、非資金損益項目である減価償却費を加えて計算するため、営業キャッシュフローもしくはキャッシュベースの利益として考えられます。
PER
PERとは「Price Earnings Ratio」の略です。直訳すると「株価収益率」という意味になります。PERは業績面を背景にして、株価の状況を判断する指標です。
対象評価企業の市場価値を知れるため、マルチプル法と関連性が強い指標といえるでしょう。なお、PERは、PBRとともに現在の株価を判断する際に重要視されています。
【PERの計算例】
- 株価÷1株あたりの当期純利益=PER
PERは対象株式に投資を行った場合、どれくらいの期間で回収できるかを予測できます。
PERの値が低いほど、現在の対象株価は割安であり、回収期間が短いと判断するのです。逆に、PERの値が高いと、投資金の回収まで時間がかかります。
PBR
PBRとは「Price Book-value Ratio」の略です。直略すると「価格簿価比率」という意味になります。株価の純資産倍率を表す指標で、企業の純資産から株価の状態を判断するのです。
PERと同様に、対象評価企業の市場価値を知れるため、マルチプル法と関連が強い指標といえるでしょう。
【PBRの計算例】
- 株価÷1株あたり純資産=PBR
PBRは、現在の株価が、対象評価企業の企業価値に対して、割安か割高かを判断する指標となっています。つまり、PBRの値が低いほど、割安であると判断できるでしょう。
5. マルチプル法による企業価値・株式価値の算出方法
この項では、マルチプル法を利用した企業価値・株式価値の算出方法を掲示します。
マルチプル法による企業価値・株式価値の求め方・計算式
マルチプル法を用いて企業価値・株式価値を求めるときは、以下のように算出します。
- 評価対象企業と類似している上場企業を複数リストアップする。
- ①の各社において、企業価値・株式価値を求める。
- 計算式を用いて、②で導き出した値の平均値を評価対象企業の財務指標やEBITDAに掛ける。
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6. マルチプル法の注意点
マルチプル法の注意点は、「どの類似企業を選定するのか」、「どの数字を選定するのか」といった、機械的に選定することが難しい点です。
これは、マルチプル法を活用して、企業価値・株式価値を算出する裁量によるところが大きいため、絶対的な結論が導き出せません。
そのため、M&Aの際はマルチプル法のみで企業価値・株式価値を推計するのではなく、DCF法などを併用しましょう。
7. 企業価値評価をするならM&A総合研究所にお声がけください
企業価値を正しく知っておくことは、M&A交渉を進めるうえで非常に重要であるため、専門家に依頼することをおすすめします。
企業価値評価のことでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。無料で現在の企業価値の算定をいたします。
無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
8. まとめ
マルチプル法とは、どういった手法なのかについて解説しました。メリット・デメリット、用途がはっきりしている手法であるため、M&Aの行程の中で活用されるシーンがわかりやすくなっています。
簡単な計算や客観性の高さなど便利な面もありますが、裁量が大きく反映される面もあり、その他のアプローチ手法との併用が必須です。
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