事業再生の手法一覧!成功に向けた戦略・メリット・手続きの流れも徹底解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

事業再生は、経営不振の事業の立て直しを図ることです。事業再生の手法は複数存在しておりそれぞれ異なる特徴があるので、場面に合わせた適切な手法選択が重要です。今回は、事業再生の手法や成功方法、メリット、手続きについて解説します。

目次

  1. 事業再生とは
  2. 事業再生の手法一覧
  3. 事業再生の手続き・流れ
  4. 事業再生の成功に向けた戦略
  5. 事業再生をするメリット・デメリット
  6. 事業再生で利用できる支援制度
  7. 事業再生ADRとは
  8. 事業再生の成功事例
  9. 事業再生の手法に関する相談先
  10. 事業再生の手法まとめ
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1. 事業再生とは

会社を長く経営していると、事業の多角化が進んで会社全体の見通しが悪くなる傾向にあります。事業のなかには、必要以上に経費がかかって不採算事業が発生していることもあります。

最初は小さな影響でも、放置していると負債が負債を呼ぶ悪循環に陥って経営に息詰まり、最終的に倒産するケースも珍しくありません。

事業再生は、このような事態を避けるための方法として用いられています。この章では、事業再生の概要と企業再生との違いを解説します。

事業再生を解説

事業再生とは、経営不振に陥っている事業を対象に、再生させる取り組みを行うことをいいます。事業単位で悪い部分を把握して改善を図り、最終的に会社全体の健全化を目指す方法です。

主に不採算事業に着目して債務整理や事業再建計画を立て、改善を目指すといった内容になるでしょう。計画策定段階で改善が難しいと判断された事業は、売却などの手法による切り離しも検討されます。

企業再生との違い

企業再生とは、債務超過などの何かしらの原因により経営不振に陥っている企業の原因特定と排除を行い、再生することをいいます。

事業再生と企業再生は、最終的な目的は会社全体の再生となっており同じ意味合いで使われることが多いでしょう。企業再生するための具体的な方法として、事業再生が使われています。

金融機関等の債権者の立場から見れば、債権回収のために債務企業の再生を図ることになるため、事業再生よりも企業再生が適切になることがあります。

【関連】企業再生と事業再生の違いとは?条件、手続き、メリットを解説【成功事例あり】

事業再生を検討するタイミング

事業再生が成功すれば再起を図れますが、どの場面でも実施できるわけではありません。タイミングを誤ると手法選択の幅や得られる効果も小さくなり、成功率が下がってしまうおそれもあるでしょう。

したがって、状況が悪化する前に早期に事業再生の計画を進めておくことが大切です。予兆としては以下の2つが挙げられます。

【事業再生を検討するタイミング】

  • 業績が著しく悪化
  • 廃業する可能性が出てきたとき

業績が著しく悪化

業績が著しく悪化すると、既存の返済計画ではキャッシュ・フローが回らなくなる可能性が高いでしょう。借入金の返済に支障が出ている状態は債権者にも好ましくないので、リスケジュールを行います。

リスケジュールの過程では、コスト削減や収益性向上のための事業見直しを行う必要があるでしょう。計画性の伴うものであれば債権者より同意が得られて、リスケジュールの実施とともにキャッシュ・フローを改善できます。

廃業する可能性が出てきたとき

廃業した場合は経営者が債務を抱える場合もあるので、可能な限り事業再生を目指したいと考えます。

全体としては赤字経営でも、独自性のある事業が一つでもある場合はスポンサーからの支援を受けられる可能性があるでしょう。早期に事業再生を検討すれば、その分だけ時間的な猶予を作れるので、スポンサーを見つけやすくなります。

【関連】会社の借金は廃業しても残る?残る借金と対応方法を徹底解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 事業再生の手法一覧

事業再生を検討する際は、まず事業再生の手法を把握しておくことが大切です。事業再生は大きく分けると、下記の4つの手法があります。

【事業再生の手法】

  • 事業再生
  • 法的再生
  • 私的再生
  • 倒産

事業再生

事業再生とは、事業単位に見直しを図り、企業全体の健全化を目指す手法です。企業の債務整理や、不採算事業を切り離して採算事業のみを存続させるなどの方法があります。

事業再生の特徴

事業再生の特徴は、経営陣が主体的に事業再建計画を策定できることです。裁判所の関与がないので、事業再生の過程で処分する事業・財産やその処分方法に関して、全て主体的に決定できます。

事業再生で資金が必要になる場合は、スポンサーを探して資金提供を受ける必要があるでしょう。債務整理とキャッシュ・フローの安定化を図り、事業単位で再生を目指します。

法的再生

法的再生は、裁判所の関与の下で行われる手続きで事業再生を目指すことをいいます。事業再建計画について、債権者ではなく裁判所の認可を得られるかどうかがポイントになる手法です。

法的再生の特徴

法的再生の特徴は、裁判所の介在により手続きの透明性・公平性が担保されることで、債権者に対する法的拘束力を持たせるのが可能です。具体的な手続きは、再建型の民事再生、会社更生、特定調停と、清算型の破産、特別清算などがあります。

いずれの場合も再生不可能な計画は裁判所からの認可が下りないため、債権者から納得を得やすい手法となっています。

再生型M&Aとは

法的再生では、事業譲渡などのM&A手法を用いて事業再生を目指せます。主に下記の4つの手法があります。

【再生型M&Aの手法】

  • 企業再生方式
  • 事業譲渡方式
  • 会社分割方式
  • 第二会社方式

企業再生方式

企業再生方式は、事業再生対象の法人格を維持したまま、スポンサー企業の子会社として事業再生を目指す手法です。法人格を維持しながらの手続きになるため、この手法のみ私的再生として手続きが行えるでしょう。業種的に、法的再生の社会的なイメージダウンを避けたい場面で利用されることが多いです。

事業譲渡方式

事業譲渡方式は、会社の経営を別の法人格に移転させて、採算事業を中心として事業再生を目指す手法です。債務者企業は事業譲渡で調達した資金を元手に清算を行います。

清算できるだけの資金が必要になるため、切り離す事業は一定以上の収益性など、買い手にとって魅力になる要素を持つ必要があります。

会社分割方式

会社分割方式は、会社の経営を別の法人格に移転させて採算事業と不採算事業を分割し、事業再生を目指す手法です。基本的には、採算事業を切り離して、分割会社が不採算事業を清算するケースが多いでしょう。

債権者からの協力を得られる場合は分割会社の再生を目指せます。しかし、採算事業が切り離された分割会社の再生は容易ではないため、分割会社の株式や遊休資産の売却などで調達した資金で清算することが一般的です。

第二会社方式

第二会社方式は、事業譲渡あるいは会社分割と清算を併用した手法です。親族や役員・従業員などの身内が新会社を設立し、事業存続に必要な人材や資産を引き継いだ後、残された会社を清算します。

優良な従業員や事業、資産などを新設会社に引き継げるため、会社に与えるダメージが少ないことが特徴です。

身内ではなくスポンサー企業が会社を新設して、経営権や事業実態を移す手法もあります。こちらは広義的な第二会社方式として用いられています。

私的再生

私的再生は、裁判所の関与がない状態で、個別に債権者と交渉を行って事業再生を目指す手法です。法的再生のように議決ではないので、債権者と債務者の間で合意を得ることが前提となる手法となっています。

私的再生の特徴

私的再生の特徴は、各債権者との合意で事業再生を目指す手続きのため、合意さえ得られれば柔軟な債務弁済計画を策定できることです。

債権者からの同意を得るためには、破産などの法的再生よりも私的再生で事業を存続させたほうが債権回収がしやすいと判断してもらう必要があります。

この基準さえ満たせれば、法的再生を使わずに事業再生を図ることが可能です。

倒産

倒産は、経済的に破綻して経済活動の存続が困難な状態を示す言葉です。債務の弁済などに追われて事業活動をまともにできなくなっているため、破産手続などを行う必要があります。

破産手続では、裁判所が破産管財人を選任して、破産管財人の主導で債務者の財産処分が行われます。換金された資金は、債権の優先順位に基づいて債権者に配当されるでしょう。

経営者が個人保証・担保を提供している場合は、経営者も所有資産(不動産や株式など)の全てを提供することになります。なお、家族名義の資産は提供する必要はありません。

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3. 事業再生の手続き・流れ

事業再生を実現させるためには、一定の手順に沿って手続きを進めなくてはなりません。ここでは、その一般的な流れを紹介します。

【事業再生の手続き】

  1. 現状把握と方針の策定
  2. デューデリジェンスの実施
  3. 事業計画案の策定
  4. 不採算事業の割り出し
  5. スポンサー選定と資金調達
  6. 事業再生の実行

①現状把握と方針の策定

経営状態が悪化しているときは、まず会社の現状を把握することから始めます。正確に現状把握ができれば、解決策を見いだして方針を策定できるようになるでしょう。

現状把握で事業再生に必要なものが分かったら、適切な手法を選択します。状況に合わせて、リスケジュールによる返済計画の見直しや、再生型M&Aの債務整理などを使い分けます。

②デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスは企業の価値・リスクを調査する活動のことです。財務内容を基に多角的な評価を行うので、より適正な価値を把握できます。

自社の価値を再認識するといった意味合いもありますが、スポンサーや債権者に提供する資料としても役立ちます。いずれの手法を用いた場合も貴重な資料となるので、重要な工程です。

③事業計画案の策定

デューデリジェンス後、その結果をもとに再生後の事業計画案の策定を行います。事業計画案では、収益力のある事業を残し、リストラや赤字事業の撤退、遊休資産の売却など、コスト削減を行い収益改善を目指します。事業計画案では、3年から5年程度で再生できるように計画するのが一般的です。

④不採算事業の割り出し

デューデリジェンスで手掛けている事業の実態を正確に把握できた後、ここで採算事業と不採算事業の割り出しを行いましょう。

割り出した不採算事業は用いる手法によって扱いが異なります。自力での事業再生であれば徹底あるいは資本の増強、再生型M&A手法であれば事業譲渡や会社分割などで切り離しを行います。

⑤スポンサー選定と資金調達

事業再生は手法によっては多額の資金が必要になります。自己資金で賄えない場合は資金提供してくれるスポンサーを探す必要があります。

多くのスポンサーを集めれば、豊富な資金力を元手に事業再生の速度を速めることも可能です。日本政策金融公庫の支援制度も活用すると、資金を確保しやすくなります。

⑥事業再生の実行

ここまでの準備が完了したら、各手法の再建計画に基づいて事業再生を実行します。再生型M&A手法の場合は、M&A仲介会社などの仲介を受けてM&A手続きを進めることになります。

私的再生や事業再生ADRの手法を用いる場合は、交渉が難航するケースも想定されるでしょう。あまり長期化すると状況が悪化する場合もあります。したがって、債権者からの合意が期待できない場合は法的再生に切り替えることも視野に入れるとよいでしょう。

4. 事業再生の成功に向けた戦略

事業再生は手法の把握以外にも成功させるためのいくつかのポイントがあります。事業再生に臨む経営者が押さえておきたいポイントは下記の6つです。

【事業再生の成功方法】

  1. 事業再生するための覚悟を持つ
  2. 現状の把握と対策を練る
  3. 会社内と会社外で情報共有
  4. スケジュールを明確にする
  5. 不要事業などの調査
  6. 支援やサポートを求める

事業再生するための覚悟を持つ

事業再生では、再建計画の策定や債権者・スポンサーへの協力打診などで、経営者にあらゆる決断が求められます。会社全体を牽引(けんいん)できるように、経営者自身が事業再生するための覚悟を持たなくてはなりません。

経営者の事業再生に対する熱意や覚悟があれば、債権者からの理解も得やすくなります。債権者と強固な協力体制を築ければ、事業再生で利用する手法の選択の幅も広がるので、事業再生が成功する可能性も高まります。

現状の把握と対策を練る

事業再生の計画を立てるためには、企業が置かれている現状を把握する必要があります。不採算事業やその事業が不採算の原因を特定することで、計画策定の足掛かりを作ることが可能です。

キャッシュ・フローの改善で対応できるものであれば、借入金に関するリスケジュールや、国からの支援制度の活用による資金調達などの対策を立てられます。

不採算事業自体の切り離しが必要であると判断がされた場合は、単純な資金調達では根本的な原因を取り除くことは難しいため、再生型M&A手法を用いて事業再生を目指すことになるでしょう。

会社内と会社外で情報共有

事業再生の手法次第では、債権者やスポンサーからの協力が必要不可欠です。会社が置かれている状況を社内外で広く情報共有することで支援者を見つけやすくなります。

支援者の候補が見つかったら、詳細な事業再生の計画を説明して協力してもらえるように取り付けます。具体性のある計画であれば同意を得やすくなるでしょう。

ただし、経営状態が悪化していることが世間に知られると、企業全体のイメージダウンにつながることがあります。情報共有を図る際は、同時に情報漏えいにも注意する必要があります。

スケジュールを明確にする

事業再生では、会社の現状把握や手法の決定、スポンサーの獲得など、すべき手続きが多くあります。最終目的である会社の再生を達成するためには、各手続きのスケジュールを明確化させておくことが大切です。

事業再生で債権者やスポンサーから資金提供を受ける場合は、資金を調達できるタイミングも重要です。資金が必要な手続きなども含めて、資金繰りの調整を進めておきましょう。事業再生のスケジュールを明確にしておけば、限られた時間と資金で何を犠牲にして何を優先するのか、的確な判断を行いやすくなります。

不要事業などの調査

事業再生を成功させるためには現状把握を徹底して不要事業を明確化させておくことも大切です。不採算事業だけでなく、将来的な不安を持つ事業も検討対象に入れて調査することになります。

調査の結果、今後の経営に不要と判断された事業は事業再生の過程で切り離します。不採算の原因が人件費である場合もあるため、事業や資産の処分と同時に従業員のリストラも検討しなくてはなりません。

支援やサポートを求める

事業再生はさまざまな手法がありますが、いずれの手法を用いる場合でも債権者の協力は必要不可欠です。特に金融機関は企業が経営を行ううえで最も重要な存在なので、事業再生の理解を得ておく必要があります。

金融機関以外に、日本政策金融公庫などから支援を受けることも可能です。地域金融機関や公的再生支援機関などとの連携により、事業再生を図る企業の支援を行っています。外部の支援機関からの協力を得られれば各種支援制度を活用しやすくなり、事業再生に用いる手法も決定しやすくなります。

5. 事業再生をするメリット・デメリット

事業再生の共通したメリットは、事業を存続させることが可能な点です。破産手続きを行うと法人格とともに会社や事業も消滅しますが、事業再生であれば事業を残せます。

この事業の存続を前提として、事業再生の各手法にはメリット・デメリットがあるでしょう。この章では、事業再生の各手法を比較検討しやすいように、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

事業再生

事業再生は、企業が抱えている債務の整理や弁済の繰り延べに関して、事業単位で見直しを図る事業再生の手法です。

メリット

自力で行う事業再生の場合、経営陣の主導で事業再生を進められます。事業再生に関して外部から干渉を受けないほか、事業再生後も経営権に変化がないなどのメリットがあります。なお、自力の事業再生といっても、金融機関からの返済金に関するリスケジュールなどで協力してもらうことは可能です。

完全に孤立無援になるわけではないので、事業再生の過程で必要となる資金を調達する手段もあります。

デメリット

自力の事業再生のデメリットは、事業再生に必要な手続きを全て自力で進める必要があることです。経営悪化の原因特定から事業再生の実行まで、客観的な視点を持ちながら進めなくてはなりません。

事業再生後に、想定していた資金繰りが機能しないこともあります。不採算事業の切り離しを行っても、採算事業に期待されていた収益が生み出されないなどのトラブルも想定されます。

外部の支援機関が介在しない事業再生では、ただの延命措置に留まってしまうことも多く、結果として法的再生や再生型M&Aのほうが、よい結果を得られていたといったケースも少なくありません。

法的再生

法的再生は、裁判所の関与を受けながら進める事業再生の手法です。裁判所が関与するため、いくつかのメリット・デメリットが発生します。

メリット

法的再生のメリットは、公平性が保てるため債権者からの同意を得やすいことです。裁判所の関与があるため、事業再生の計画に疑念を抱かれるケースもあまりありません。

法的再生は反対する債権者がいても、債務を整理できる可能性があるといったメリットもあります。多数決で再生案を決定する手法であるため、賛成票が上回れば賛成者が反対者を拘束できます。

債務免除は元本を含めた90%以上が認められており、残りの10%相当は無利息で長期間の分割払いをすることが可能です。

デメリット

法的再生のデメリットは、法的手続きが公になることによる企業全体のイメージダウンです。顧客・取引先との信頼関係に問題が起こるなど、業種次第では事業基盤を大きく損ねるほどの危険性が伴います。

法的再生は手続きを進めるために長い時間と費用を要するデメリットもあるでしょう。法務関連の知識が必要不可欠のため、弁護士などの立ち会いのもとで時間をかけて進めていきます。

再生型M&A

再生型M&Aは、M&A手法を利用した事業再生の手法です。M&Aの効果を最大化するために、事業譲渡や会社分割などの手法から適切なものを選択します。

メリット

再生型M&Aのメリットは、スポンサーからの支援を受けられる点です。資金面におけるバックアップを受ければ、債務返済のめどが立ちやすくなり、事業再生に計画性を持たせられます。

再生型M&Aには、不採算事業を切り離しやすい特徴もあるでしょう。M&A手法には、特定事業のみを譲渡する効果を持つものがあり、それらを計画に組み込むことで採算事業のみを存続させる事業再生が実現させやすくなります。

不採算事業が評価されて売却できるケースもあります。自社にとって不採算でも、買い手側には有益な事業である可能性があるため、清算ではなく売却で一定の利益を獲得することも不可能ではありません。

デメリット

再生型M&Aのデメリットは、M&A分野の専門的な知識が必要になることです。知識不足の場合、M&A手法の検討や戦略策定を満足に行えなくなるため、ほかの手法と比較すると難易度が高くなります。

スポンサーや買い手を探す場合は、相応のネットワークも必要です。事業再生をスムーズに進めるためには、広範囲から選定して好条件の相手を見つけることが前提です。

これらの問題はM&Aの専門家のサポートを受けることで解決できます。M&A仲介会社は日常的にM&A案件を扱っているので、豊富な知識や広範囲のネットワークを保有しています。

私的再生

私的再生は、裁判所の関与を受けずに、債権者と個別に交渉を進めて事業再生を目指す手法です。社会的認知を避けられるので、法的再生よりも先に検討されることが多くなっています。

メリット

私的再生のメリットは、手続きに要する費用を削減できることです。裁判所を介さずに債権者と個別に交渉を行うため、スムーズに合意を得られた場合は裁判所に支払う費用を支払う必要がなくなります。

手続きを迅速に進めやすいメリットもあります。債権者の数が少ない場合や、債権者からの同意が得られることが事前に明らかの場合は、法的再生よりも迅速に事業再生を目指すことが可能です。

デメリット

私的再生のデメリットは、反対する債権者がいる場合は時間がかかりやすいことです。事業再生に合意する債権者が多い場合でも、反対する債権者に対して法的な拘束力を持たないため、あくまで交渉で合意を得なくてはなりません。

私的再生は訴訟や財務上において一定のリスクがあるため、債権者は条件変更に対して消極的になる傾向が強くなります。全ての債権者の合意を得る算段がついていない場合は、選択しづらい手法といえるでしょう。

倒産

倒産は、経営状態が悪化して事業の存続が困難な状態のことです。倒産状態の会社は債務整理するために、破産手続きを行うことが多いでしょう。

メリット

倒産のメリットは、資金繰りの悩みから解放されることです。破産手続きを行って清算すれば法人自体が消滅するので、資金繰りや経営に頭を悩ませる必要がなくなります。

裁判所の関与により、透明性・公平性の高い手続きを期待できるメリットもあるでしょう。破産手続きを行わずに放置した場合、残された財産を巡って債権者同士で争いが起こる可能性もありますが、裁判所に仲介してもらうことで安全に進められます。

デメリット

倒産のデメリットは、会社や事業が消滅することです。従業員の雇用や技術・ノウハウが失われるほか、顧客・取引先に与える悪影響も計り知れません。

破産手続きを行うと経営者の信用を失うことがあります。個人資産で債務を弁済しきれない場合は、経営者個人の自己破産の手続きが必要になり、約7年間は信用情報機関にブラックリスト登録されます。

【関連】M&Aで事業再生する方法は?手順・ポイント・企業再生との違いを解説

6. 事業再生で利用できる支援制度

ここまで事業再生の手法をみてきましたが、事業再生には各種支援制度を活用する方法もあります。各種制度に設けられた一定の条件を満たすことで融資を受けられます。

【事業再生で利用できる支援制度】

  • 経営環境変化対応資金
  • 取引企業倒産対応資金
  • 再挑戦支援資金
  • 中小企業経営力強化資金
  • 企業活力強化資金

経営環境変化対応資金

経営環境変化対応資金は、社会的・経済的環境の変化の影響により、一時的に売上高や利益が減少している中小企業・小規模事業者に対して融資を実施する制度です。

中小企業に対しては、長期運転資金として限度額7億2,000万円まで融資を行っています。利率は上限3%となっており、信用リスク・融資期間などに応じて利率が適用されます。

取引企業倒産対応資金

取引企業倒産対応資金は、取引先や関連企業の倒産により、事業の存続が困難な状態の事業者に対して融資を実施する制度です。

融資限度額1億5,000万円(直接貸付と代理貸付の合計)、利率上限1.4%で長期運転資金として融資を行っています。

再挑戦支援資金

再挑戦支援資金は、過去に事業に失敗した経験を持つ事業者に対して、事業に再挑戦するために必要な資金の融資を実施する制度です。

限度額7億2,000万円(設備資金4億7,000万円、運転資金2億5,000万円)、利率上限1.4%で融資を行っています。資金の用途は設備投資と運転用に分けられています。

中小企業経営力強化資金

中小企業経営力強化資金は、経営革新や新事業分野の開拓を目指す事業者に対して融資を実施する制度です。経営革新等支援機関の指導、および助言を受けている事業者が対象です。

中小企業への融資限度額7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)、利率約2%で融資を行っています。創業間もないタイミングでも融資を受けられる特徴があります。

企業活力強化資金

企業活力強化資金は、企業活力強化に取り組む、商業・製造業の中小企業・小規模事業者を対象に融資を実施する制度です。

融資限度額は7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)、利率約2%で融資を行っています。返済期間や担保の有無などによって、異なる利率が適用されます。

【関連】M&Aの資金調達方法とは?スキーム、銀行融資のポイント、返済期間、LBO・MBOも徹底解説

7. 事業再生ADRとは

事業再生ADRとは、企業の事業再生のための「準則型私的整理手続」の一つです。ADR法および産業競争力強化法に基づく認定を受けた、事業再生実務家協会(JATP)が関与することで手続きが進められます。

JATPの仲介で企業名は非公開で進められるため、社会的なイメージダウンを回避しつつ事業再生を図ることが可能です。その反面、手続きが厳格で柔軟性がないことや、債権者全員の同意を得る必要があるなどのデメリットもあります。

8. 事業再生の成功事例

私的再生による事業再生の成功事例として、日本の航空会社である「スカイマーク」が挙げられます。スカイマークは、2014年に経営破綻し、私的再生手続きを通じて事業再生を果たしました。この成功事例から学ぶべきポイントは以下のとおりです。

  • 早期の対応:経営破綻が明らかになった段階で迅速に私的再生手続きを開始したことで、事業活動の継続や信用回復が可能となった。
  • クレジットサポート:債権者である主要な銀行からの経営支援を受け、事業再生に向けた資金調達や債務整理がスムーズに進められた。
  • スポンサー企業の選定:経営再建に適切なスポンサー企業(全日本空輸およびANAホールディングス)を選定し、スポンサー企業からの支援により、経営ノウハウや資源の共有が実現し、事業再生が進められた。

9. 事業再生の手法に関する相談先

事業再生では、計画策定から実行までに幅広い知識が必要になります。業績の悪化などで赤字経営が続いていて事業再生を検討の際は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。

M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模の案件を取り扱っているM&A仲介会社です。M&A経験豊富なアドバイザーが私的再生や法的再生も含めて最善策を模索します。

事業再生にお悩みの際は、お気軽にM&A総合研究所までご連絡ください。無料相談は24時間体制で受け付けており、M&A・事業再生に明るいスタッフが真摯(しんし)に対応させていただきます。

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10. 事業再生の手法まとめ

本記事では、事業再生の手法や成功方法を解説しました。手法の検討や計画策定などを慎重に行う必要があるため、事業再生の必要性を感じた場合は早期に行動を起こすことが大切です。

M&Aの専門家に相談すると再生型のM&A手法も検討しやすくなります。幅広い選択肢を持てるので、事業再生が成功する可能性も高まります。

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