2023年04月25日更新
事業承継で役員退職金を活用する方法とは?メリットや適正金額の計算方法も解説!
本記事では、事業承継で役員退職金を活用する方法とメリットを解説します。事業承継の際に退職金を活用すると、当期利益の圧縮や株価引き下げなどの税金対策が可能です。自社株式の評価額が高くなるほど税金負担は大きくなります。事業承継を検討している方は必見です。
目次
1. 事業承継で役員退職金を活用する3つのメリット
事業承継の際はさまざまな問題が付きまといますが、役員退職金をうまく活用することで対処できるものもあります。なかでも特に大きなメリットには、以下の3点が挙げられます。
【事業承継で役員退職金を活用するメリット】
- 当期利益の圧縮
- 自社株の評価引き下げ
- 経営者の引退後の資金確保
当期の利益を圧縮できるメリットがある
事業承継で役員退職金を活用する1つ目のメリットは、当期利益の圧縮による法人税の節税です。役員退職金は経費計上が認められているため、当期利益をある程度コントロールできるでしょう。役員退職金も所得税と住民税が課せられますが、通常の所得と比較すると納税負担は小さくなっています。
一方、役員報酬の改定は決算期から3カ月以内と定められています。以降の増減は経費計上が認められなくなるため、法人税の節税対策として機能しなくなってしまうでしょう。いずれにせよ、利益圧縮による節税対策として活用するためには、年間利益の的確な予測と適切な役員退職金の設定が必要です。
自社株の評価を引き下げるメリットがある
事業承継で役員退職金を活用する2つ目のメリットは、自社株の評価引き下げによる節税対策です。役員退職金は経費として会社の資産から支払われるため、会社の純資産を引き下げて自社株の評価を下げられます。
自社株の事業承継では、贈与税もしくは相続税を納めなくてはなりません。平成30年の事業承継税制の特例を活用すると、全額の納税猶予措置を受けられますが、ただちに免除される制度ではないため、独自の節税対策も必須です。
贈与税・相続税は自社株の評価額に準じて算出されるので、事業承継の際に役員退職金を支給することで納税負担を抑えられます。
事業承継の株価引き下げ(自社株対策)の方法については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
経営者の引退後の資金が用意できるメリットがある
事業承継で役員退職金を活用する3つ目のメリットは、経営者の引退後の資金確保です。経営者は会社のリーダーとしての貢献の見返りに役員退職金が支給されます。経営者に支払われる役員退職金は、個人所得として経営者やその家族の生活資金として活用できます。
ただし、事業承継の役員退職金の設定額には、注意が必要です。過大役員退職金として税務当局から否認されると、経費計上できなくなるうえ、通常所得通りに所得税が課税されてしまうので注意が必要です。
2. 事業承継で役員退職金を活用する方法
事業承継の際は、自社株式や事業用資産に関して相続が発生します。相続人同士の紛議や高額納税負担などの問題があり、事業承継の課題として挙げられることも多いです。
役員退職金を活用すれば、遺産分割と納税対策を両立させることが可能です。会社の固有資産を現金で分けることで公平な分配を行い、株価評価を引き下げることで税金負担を大幅に抑えられます。
事業承継の際の役員退職金
事業承継の際に役員退職金を活用するためには、いつどのような形で支払うのかを事前に決めておく必要があります。役員退職金の受け取り方には、以下の3つがあります。
【事業承継の際の役員退職金】
- 生前退職金を受け取る
- 死亡退職金を受け取る
- 弔慰金を受け取る
生前退職金を受け取る
事業承継の際の生前退職金は、リタイア後の生活資金として必要であることから、税務上で優遇措置が取られています。
「(退職金-退職所得控除)×1/2」で課税所得に対する税額が算出されます。役員退職金は高額になりがちですが、在任期間に準じた退職所得控除が差し引かれるため、税金負担は抑えやすい仕組みです。
ただし、生前に退職金を受け取った場合は相続財産を増やすことになります。相続時まで財産が残った場合は相続税の課税対象となるため、相続税と所得税の両方を納めなくてはなりません。
死亡退職金を受け取る
役員が在職中に死亡した場合、遺族に死亡退職金が支払われます。これは、生前退職金として受け取るはずであった退職金を、遺族が死亡退職金として受け取る形になります。税務に関しては、被相続人の死亡後3年以内の支給は「被相続人の相続財産」となり、相続税の課税対象です。
ただし、相続財産の全てが課税対象となるわけではありません。「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、死亡退職金から差し引いた金額に対して相続税が課せられます。
法定相続人に関しては、相続を放棄した人あるいは相続権を失った人は非課税制度が適用されない点に注意が必要です。
弔慰金を受け取る
弔慰金は、亡くなった役員の功労に対して贈与される金銭です。死亡退職金は遺族の生活資金として支払われるのに対して、弔慰金は儀礼的な意味合いが強くなっています。
弔慰金は基本的に課税対象外ですが、一定の額を超える段階で退職手当金とみなされて課税対象となります。限度額まで弔慰金として受け取り、残りは死亡退職金として受け取ることで高い節税効果が得られるでしょう。
【弔慰金が課税対象になる範囲】
- 業務上の死亡だった場合:死亡当時の普通給与の3年分
- 業務外の死亡だった場合:死亡当時の普通給与半年分
生命保険を役員退職金の原資に充てる
解約返戻金がたまる法人保険を契約しておくことで、解約時に退職金に充てられます。退職金を準備しつつ保障も受けられるので、役員退職金の備えとして有効的な方法です。
商品の代表格としては「終身保険」や「逓増定期保険」などがあります。満期時の保険金や解約時の返金の扱いなどに注目しながら、さまざまな商品を比較して選ぶとよいでしょう。
なお、契約中の保険料は損金として計上できますが、途中解約で返ってくる返戻金は全額を益金として計上しなくてはなりません。保険会社の保険商品や解約返戻率を確認したうえで、解約返戻金と退職金がうまく相殺されるように計画を立てることが大切です。
M&Aで会社売却した時の退職金の扱いについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
3. 事業承継対策としての役員退職金と事業承継税制
事業承継を行う際に退職金を支給するケースは多いでしょう。なぜなら退職金を支給することで、自社株の評価額を下げる効果があります。退職金を支払うことで自社株に対して課税される贈与税や相続税を引き下げる効果が期待できるため、税金対策としても有効です。
退職所得は給与所得と違い税負担が少ない仕組みです。したがって、多額の利益が発生した年に退職金の支給を実施すると、当期の利益を圧縮でき、負担する税金を大きく減らせる可能性があります。
一方、法人税法上、役員の退職金には適正額の算定方法が定められています。適正額を超える不相当に高額な役員退職金は、損金算入ができない可能性もあるため注意が必要です。
オーナー経営者が所有する自社株を後継者へ贈与や相続を行った場合、税金を負担しなくてはなりません。贈与税や相続税は譲り渡す自社株の評価額に応じて計算されるため、評価額の引き下げができれば、贈与税や相続税の負担額も引き下げられます。
4. 事業承継における役員退職金の計算方法
事業承継の際の役員退職金は、税法上における「適正額」の範囲内に抑える必要があります。この範囲を超えると税務当局から否認を受けて、節税対策として活用できなくなります。
事業承継における役員退職金の計算方法はいくつかありますが、一般的に用いられている方法は「平均功績倍率法」です。役職としての功績に応じた退職金を支給するもので、以下の式で計算されます。
【平均功績倍率法における役員退職金の計算式】
- 役員退職金 = 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率
最終月額報酬や在任年数には明確なデータがありますが、功績倍率には明確な参照データが存在していません。過去の事例から一般的な数値を参照することが好ましいとされています。
昭和55年の東京地裁判決では、社長の功績倍率は3.0とされています。しかし、かなり昔のデータであるうえ、実際は会社の財務状況や地域的な慣習も影響するため、必ずしも一定ではない点に注意が必要です。
【昭和55年5月26日の東京地裁判決による功績倍率の基準】
- 社長3.0
- 専務2.4
- 常務2.2
- 平取締役1.8
- 監査役1.6
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5. 事業承継で役員退職金を活用する方法のまとめ
本記事では、事業承継の役員退職金の活用方法を解説しました。事業承継は会社を存続させるために必要不可欠ですが、問題も発生します。
特に事業承継の際の納税義務は大きな負担となっており、役員退職金を活用することで負担を大きく抑えられるでしょう。しかし、退職金が適切でなければ否認されてしまうケースもあるため、事業承継の専門家に相談することをおすすめします。
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