事業譲渡における消費税!課税・非課税資産を分類!計算方法も解説!

Medium
この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

今回は、事業譲渡における消費税について詳しく解説しています。事業譲渡の際に発生する消費税の計算方法や消費税の注意点について知りたい方はチェックしてみてください。また「事業譲渡の売り手・買い手の仕訳例」や「課税資産と非課税資産の分類」についても解説しています。


目次

  1. 事業譲渡における消費税とは?
  2. 課税資産と非課税資産の分類
  3. 事業譲渡における消費税の計算方法
  4. 売り手の仕訳例
  5. 買い手の仕訳例
  6. 事業譲渡における消費税の注意点
  7. まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. 事業譲渡における消費税とは?

事業譲渡における消費税

当記事では、M&Aスキームの一つである「事業譲渡」を実施した際に発生する「消費税」について解説してきます。現在、事業譲渡を検討されている方は、事業譲渡における消費税の計算方法や仕訳例、注意点などをチェックしてみてください。

事業譲渡で支払う税金

売り手側企業が持つ「事業」を買い手側企業に売却するのが「事業譲渡」です。この事業譲渡が実施された際に発生する税金には2種類があります。「消費税」「法人税」です。

消費税

M&Aスキームとして事業譲渡が実施され、自社が保有する事業を買い手側に譲渡した場合、「消費税」が発生します。ちなみに、M&Aスキームの一つである「株式譲渡」では消費税が発生しません。

事業譲渡は、「事業」という会社の資産・負債・人材・ブランドといった財産を、M&Aによって売買する行為と認識されます。そのため、事業(資産)の中に「課税資産」が含まれていると考えられる場合、消費税が発生することとなっています。

事業譲渡における消費税は、現在の消費税率を適用させると「課税資産額×8%」で計算できます。

例えば、事業譲渡における「全資産額」が10億円で、事業の「非課税資産」が2億円だった場合、「8億円(10億円-2億円)×8%=6,400万円」が消費税として発生します。もし消費税率が10%に引き上げれらると、「8億円×10%=8,000万円」の消費税となります。

細かく言うと、事業譲渡側は、「移転する『課税資産』に消費税率を掛け合わせた額」を「事業譲受側」から徴収して、消費税申告時に納付します。

ちなみに、事業譲受側は事業譲渡時に支払った消費税のうち、「仕入控除税額」として認識されるものについては、消費税申告時に還付できる可能性があります。ただし、「簡易課税」を採用している場合は還付が受けられないので注意です。

M&Aによる事業譲渡を実施する際、消費税が発生することをご存じなくて、資金計画が上手くいかなくなるケースがあります。「事業譲渡には消費税が発生する」ことをしっかり理解しておきましょう。

法人税

事業譲渡の際には、消費税の他に「法人税」が発生することも理解しておきましょう。事業譲渡は、売り手側企業が持つ事業を買い手側に売却し、売却金額は「売り手企業」が受け取ります。そのため、事業譲渡における売却利益は「法人税」の対象となっています。

事業譲渡では、譲渡する事業の「資産と負債の差額」を超過する売却金額が「(事業譲渡における)売却益」となり、法人税の課税対象となります。

企業・法人の利益に関する税金に対しては、法人税の他に、地方法人税、事業税、法人住民税などがあります。これらの税金に関するすべての税率を合わせたものを「実行税率」と呼び、現在の実効税率はおよそ30%とされています。

ちなみに、法人税が発生する事業譲渡とは異なり、「株式譲渡」では「所得税」が発生します。株式譲渡というM&Aスキームでは、売り手企業の「株主」が、買い手企業に株式を売却することで、売却代金を受け取ります。

株式を売却した株主が「個人」である場合には、株式売却によって獲得した利益は「譲渡所得」となるため、所得税が課せられることとなります。

【関連】事業譲渡・事業売却でかかる税金の種類や相場!節税方法も解説!

2. 課税資産と非課税資産の分類

課税資産と非課税資産の分類

上記でも少し述べたように、事業譲渡における消費税の計算では、譲渡される事業資産を「課税資産」「非課税資産」に分類する必要があります。

この章では、事業譲渡において売却される「資産」のうち、「課税資産」と「非課税資産」にはどのようなものが当てはまるのかについて解説していきます。

課税資産の分類

事業譲渡で売却される資産のうち、以下のようなものは「課税資産」として分類されます。「課税資産」として分類されるものは、文字通り、事業譲渡における消費税の課税対象となります。

  • 有形固定資産(土地を除く)
  • 無形固定資産
  • 棚卸資産
  • のれん代

有形固定資産(土地を除く)

事業譲渡における課税資産の一つが「有形固定資産」です。有形固定資産とは、譲渡される事業が持つ「建物」「器具備品」「車両運搬具」「機械装置」「船舶」などを指しています。この有形固定資産額は、消費税算出要素の一つとなります。

ちなみに、通常の「有形固定資産」のうち、「土地」に関しては「課税資産に含まれない」ので注意が必要です。譲渡される事業が持つ「土地」に関しては、消費税計算時に除外されます。

無形固定資産

「無形固定資産」も、事業譲渡の消費税計算要素となる「課税資産」の一つです。無形固定資産とは、文字通り「形の無い資産」であり、「長い期間にわたって利用ができる資産」になります。

具体的には、「特許権」や「商標権」「漁業権」「意匠権」などがこの無形固定資産に当たります。

棚卸資産

事業譲渡における「課税資産」の一つとなるのが「棚卸資産」と呼ばれるものです。「棚卸資産」とは、企業が販売や加工をすることを目的に保有している資産のことです。

企業がこれから販売しようとしている「商品」や、加工して商品を作るための「原材料」がこの「棚卸資産」に当たります。一般的には、「在庫」と表現されることもあります。この「棚卸資産(在庫)」も課税資産です。

のれん代

「のれん代」と呼ばれるものも「課税資産」の一つです。この「のれん代」は「営業権」と表現されることもあります。

「のれん代」は、譲渡される事業が持つ「利益を生み出す力」のことで、例えば「その企業・事業が持つ独自のノウハウ」や「顧客」「取引相手」などのことを指します。

「のれん代」自体を具体的に計算することは難しく、「営業キャッシュフローの3~5年分」として算出されるのが一般的です。「営業キャッシュフロー」とは、事業活動から企業が得た利益を「現金収支」として計算したもので、「営業利益+減価償却費」で計算されます。

非課税資産の分類

続いて、事業譲渡における「非課税資産」の分類について説明します。この「非課税資産」に該当する資産に関しては、事業譲渡の消費税を計算する際に「売却金額から差し引かれるもの」になります。「非課税資産」とされるのは以下のような資産です。

  • 土地
  • 有価証券
  • 債権

土地

上記の「課税資産」の部分でも触れましたが、「土地」は「非課税資産」の一つとして分類されます。通常の仕訳・会計処理では、「土地」は「有形固定資産」として処理されます。

「有形固定資産」として仕訳が行われるために、土地は「課税資産」と思われがちですが、事業譲渡の消費税計算に関しては、例外的に「非課税資産」とされています。

有価証券

事業譲渡において、消費税の「非課税資産」と分類されるものの一つが「有価証券」です。有価証券とは、企業が保有する「株式」や「商品券」「小切手」「手形」などのことです。「有価証券」は消費税を計算する際に、売却金額から差し引かれます。

債権

事業譲渡における資産のうち、「非課税資産」として分類されるものに「債権」があります。「債権」とは、自社が他社に対して、「ある行為を請求する権利」のことで、仕訳・会計処理における「売掛金」などがこれに当たります。

3. 事業譲渡における消費税の計算方法

事業譲渡における消費税の計算方法

ここまで、事業譲渡における消費税を計算する際に必要となる要素「課税資産」と「非課税資産」について説明してきました。この章では、具体的な「事業譲渡における消費税の計算方法」を解説します。

ここでの計算に用いる消費税率は、現在の消費税率である「8%」とします。事業譲渡の結果、以下のような場合、消費税はどのようにして求められるでしょうか。

  • 【売却金額:5億円】
  • 建物:6,000万円
  • 土地:1億円
  • のれん代:2,000万円
  • 棚卸資産:2,000万円
  • 特許権:1,000万円
  • 債権:3,000万円

上記の資産を「課税資産」と「非課税資産」に分類しましょう。「課税資産」は「建物・のれん代・棚卸資産・特許権」になります。一方、「非課税資産」は「土地・債権」です。

課税資産の合計額は「建物『6,000万円』+のれん代『2,000万円』+棚卸資産『2,000万円』+特許権『1,000万円』=1億1,000万円」となります。非課税資産の合計額は「土地『1億円』+債権『3,000万円』=1億3,000万円」です。

事業譲渡における消費税は、「課税資産」に「消費税率」を掛け合わせることで算出できます。なので、「1億1,000万円×0.8%=880万円」がこの事業譲渡における消費税となります。

もし消費税率が「10%」だった場合は、「課税資産『1億1,000万円』×10%=1,100万円」が消費税となります。この例の場合、非課税資産として計算される「1億3,000万円」は、この消費税の計算には関わりのない数字となります。

4. 売り手の仕訳例

売り手の仕訳例

ここからは、事業譲渡における仕訳・会計処理について解説していきます。事業譲渡の仕訳について知りたい方は参考にしてみてください。まずは、売り手(譲渡側)の仕訳例について紹介します。

事業移転直前の帳簿価格に基づいて算出される「株主資本相当額」と「譲渡価格」との差額は、基本的に「移転損益」として認識されます。また、事業譲渡にかかった支出額は、その支出が発生した事業年度の費用(負債)として仕訳処理されます。

【譲渡側の仕訳例】

  • 譲渡資産の帳簿価格:400
  • 譲渡負債の帳簿価格:200
  • 付随費用:50
  • 譲渡価格:350

借方 貸方
譲渡負債 200 譲渡資産 400
現預金 350 移転損益 150
付随費用 50 現預金 50

5. 買い手の仕訳例

買い手の仕訳例

続いて、買い手(譲受側)の仕訳例について説明します。事業の譲受価格(取得原価)に関しては、譲受した資産と負債を、譲り受けた時点での時価を基礎として配分されます。

また、譲受価格(取得原価)と取得原価配分額の差額は「のれん代」として計上され、定額法などの合理的な方法によって、20年で規則的に償却することになります。

【譲受側の仕訳例】

  • 譲受資産の帳簿価格:400
  • 譲受負債の帳簿価格:200
  • 付随費用:50
  • 譲受価格:350

借方 貸方
譲受資産 400 譲受負債 200
のれん 150 譲受価格 350

6. 事業譲渡における消費税の注意点

事業譲渡における消費税の注意点

この章では、事業譲渡における消費税の注意点についてまとめていきます。事業譲渡を検討されている方は、「事業譲渡を実施すると消費税が発生する」ことを理解するとともに、以下のような注意点があることを認識しておく必要があります。

  1. のれん代による上乗せ
  2. 棚卸資産の変動
  3. 消費税の変動
  4. 不動産譲受時の消費税の還付

注意点①のれん代による上乗せ

事業譲渡における消費税の注意点として、「のれん代による消費税の上乗せ」があります。非上場の中小企業が事業譲渡を実施する際には、事業譲渡の売却価格は「純資産額+のれん代」で算出されることが多いです。

のれん代は「課税資産」であるため、営業キャッシュフローが大きかったり、のれん代として評価されるノウハウ・ブランドなどが大きい場合、消費税がより多額になってしまう可能性があります。

会社分割なら消費税は課税されない

のれん代が大きくなりそうで、その分消費税が上乗せされる可能性がある場合には、事業譲渡以外のM&Aスキームを検討しましょう。「会社分割」を実施すれば、消費税は発生しません。会社分割はさらに、「新設分割」「吸収分割」に分けることができます。

【関連】M&Aの手法と特徴をどこよりも詳しく解説!

事業を売却・譲渡したい場合には、「事業譲渡」以外のM&A手法を活用することもできます。ただし、M&A手法は内容が複雑で、自社はどのM&A手法を取れば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

M&Aに関する知識や経験が無く、自分たちで手続きを進めるのが不安という場合には、M&A仲介会社である【M&A総合研究所】を利用してみましょう。【M&A総合研究所】は、公認会計士が多数在籍し、M&Aの手続きを一から専任でサポートしてくれます

【M&A総合研究所】への相談は無料となっていますので、事業の売却・譲渡をお考えの方は、お気軽にご相談してみてください。

電話で無料相談WEBから無料相談

注意点②棚卸資産の変動

事業譲渡における消費税の計算には「棚卸資産」も含まれます。この「棚卸資産」は、毎日その帳簿価格が変動するものです。

あらかじめ事業譲渡の際の棚卸資産価格を予測していても、最終的な事業譲渡日の棚卸資産価格は予測から大きくかけ離れている可能性も考えられます。棚卸資産が予測以上に大きくなっている場合、消費税も想定以上の額になってしまいます。

そのため、棚卸資産を多く抱えている事業を譲渡する際には、この「棚卸資産の不確実性」に注意する必要があります。

注意点③消費税の変動

2019年に消費税率の引き上げが検討されています。消費税率が現在の8%から10%に引き上げられると、当然のことながら、事業譲渡における消費税も、これまでよりも大きな額となってしまいます。

課税資産が1億円の時、「消費税率8%」の場合は「800万円」の消費税となります。これが10%に引き上げれれば、消費税は「1,000万円」となります。事業譲渡にかかる消費税は額が大きいため、消費税率の変動から受ける影響も大きくなります

よりたくさんの消費税支払いが必要になることに不安を感じる方は、事業譲渡以外のM&Aスキームを検討してみましょう。

注意点④不動産譲受時の消費税の還付(簡易課税採用の場合)

事業を譲受する側は、「簡易課税による消費税の還付ができない」点に注意しましょう。事業譲渡においてかかる消費税は、「事業譲渡側」に納付義務があります。事業譲渡側は、「消費税額」を「事業譲受側」から徴収して、納付をします。

この時、納付すべき消費税を支払う「事業譲受側」は、特定の条件を満たすことで、「消費税の還付」を受けることができます。

消費税の還付とは

年間を通して、「(消費税納付義務がある法人として)預かった消費税」よりも「(事業譲渡にかかった)支払った消費税」の方が多くなった場合、消費税支払いの超過分を還付してもらうことができます。

特に、事業譲渡によって不動産を譲受した場合、「預かった消費税」よりも「支払った消費税」の方が多くなって、還付の対象となる可能性が高くなります。

簡易課税とは?

小規模な会社や個人事業主などは、「簡易課税」を採用することで、簡易的な計算方法で消費税の納税額を計算することができます。具体的には、「簡易課税」で消費税納税額を計算する場合、「預かった消費税」に「みなし仕入れ率」を乗じて支払う消費税を計算します。

「簡易課税」を採用すると、年間の「預かり消費税」を集計するだけで、消費税額を計算できてしまいます。一方で、「簡易課税」を採用していると、消費税還付は受けられません

簡易課税では消費税還付を受けられない

「簡易課税」は、簡単に消費税額を算出できる一方で、消費税の還付を受けることができなくなります

事業譲渡の譲受企業で、簡易課税を採用している場合には、たとえ不動産の譲受などによって、「支払った消費税」が大きくなったとしても、還付を受け取れないので注意が必要です。

7. まとめ

まとめ

今回は、「事業譲渡における消費税」について解説してきました。「事業譲渡」というM&A手法を活用した場合には、「消費税が発生する」「簡易課税を採用していると消費税の還付が受けられない」などをしっかり理解しておきましょう。

ちなみに事業譲渡の場合、譲渡対象の資産・負債は契約の中で個別に指定することが可能です。そのため、余計な負債・簿外債務を引き継ぐリスクを抑えることができます。

一方で、事業譲渡以外のM&Aを実施した際には、簿外債務の発生によって余計な負債を抱えてしまうなどのリスクも伴います。M&Aをする場合には、売却側が保有する負債も引き継がなければいけません。

余計な負債を引き継ぎたくない・知らぬ間に負債を引き継がされていたというようなトラブルを未然に防ぐためにも、M&A仲介会社を利用し、「デューデリジェンス(DD)」を徹底するなどの対策を講じるようにしましょう。

【関連】M&AにおけるDD(デューデリジェンス)項目別の目的・業務フローを徹底解説!

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら専門の会計士のいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
  2. M&Aに強い会計士がフルサポート
  3. 圧倒的なスピード対応
  4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は会計士が運営するM&A仲介会社です。
企業会計に強く、かつM&Aの実績も豊富です。全国にパートナーがいるので案件数も豊富。
また、業界最安値水準の完全成果報酬制のため、M&Aが成約するまで完全無料になります。
まずはお気軽に無料相談してください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

電話で無料相談WEBから無料相談
  • 02
  • 03
  • 04
  • 05

関連するまとめ

人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ