事業買収とは?事業譲渡との違いや買収方法・注意点を解説!

Medium
この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業買収とは、売り手側の事業を買い取る方法のことです。事業買収の方法には事業譲渡や株式譲渡があります。本記事では事業買収とはどのような方法なのか、事業譲渡との違いや買収方法、事業買収の注意点や個人で事業買収を行う場合の注意点などを解説します。


目次

  1. 事業買収とは
  2. 事業買収の目的
  3. 事業買収側のメリット
  4. 事業売却側のメリット
  5. 事業買収側のデメリット
  6. 事業売却側のデメリット
  7. 事業買収の買収方法
  8. 事業買収完了までの主な手続きと流れ
  9. 事業買収ののれん代
  10. 事業買収をする際の注意点
  11. 個人による事業買収
  12. 友好的事業買収と敵対的事業買収について
  13. 事業買収の事例
  14. 事業買収の相談は専門家へ
  15. まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. 事業買収とは

事業買収とは

事業買収とはどのような方法のことを言うのでしょうか。まずは事業買収の意味について解説します。

事業買収と売却の違い

事業買収とは、買い手側が売り手側の事業を買い取ることを指します。一方事業売却とは、売り手側が買い手側に事業を売却することです。事業買収とは買い手目線、事業売却は売り手目線の呼び方を表しています。

事業買収と事業譲渡や会社合併との違い

M&Aとは合併と買収という意味ですが、この買収には株式譲渡と事業譲渡が含まれています。株式譲渡とは、会社の株式を譲渡することで経営権を引き継ぐM&Aの方法のことです。

事業譲渡とは、事業資産の一部または全部を現金によって売買するM&Aの方法のことです。事業買収とは、株式譲渡と事業譲渡を合わせた呼び方のことで、事業譲渡は事業買収の方法の1つです。

事業買収と呼ぶ場合は、事業譲渡か株式譲渡のどちらかの手法を用いていることを意味します。

一方会社合併とは、2社以上の会社を1つの会社に統合するM&Aの方法のことです。会社合併では1社が存続し、他の会社は消滅します。会社合併は事業買収には含まれません。

【関連】事業譲渡と株式譲渡の違いを解説!税務面などメリット・デメリットを徹底比較!

2. 事業買収の目的

事業買収の目的

事業買収を行う買い手企業にはさまざまな目的があります。事業買収の目的として多い以下の3点について解説します。

  1. 事業買収による相乗効果への期待
  2. 事業規模拡大への期待
  3. 新規事業・事業の多角化への期待

①事業買収による相乗効果への期待

同業種の事業を事業譲渡や株式譲渡によって取得することで、買い手企業は事業のシナジー効果を期待できます。シナジー効果とは、事業や会社が統合することで、プラスアルファの成長が得られることを指します。

シナジー効果には技術のシナジー、人材のシナジーなどさまざまな効果があります。買い手企業は事業譲渡や株式譲渡を行う際に、買収する事業の事業内容や技術力、優秀な人材などを調査し、買収価額以上のシナジー効果が得られる事業を買収します。

②事業規模拡大への期待

買い手企業は事業譲渡や株式譲渡によってスケールメリットが得られ、競争力を高めることができます。スケールメリットとは、事業規模が拡大することによって得られるメリットのことです。

商品の販売シェア拡大や販売網の拡大が期待できるだけでなく、仕入れ価格や生産コストの削減など、さまざまなスケールメリットが得られます。

③新規事業・事業の多角化への期待

ゼロから新規事業を立ち上げると、多くのコストと時間がかかります。しかし事業譲渡や株式譲渡によって、すでに軌道に乗っている事業を取得することができます。

アメリカでは、新規事業は自ら立ち上げるのではなく、買収によって始めることが一般的です。シリアルアントレプレナーがゼロから立ち上げた事業を企業が事業買収するケースが多くあります。

シリアルアントレプレナーとは、事業の立ち上げと売却を繰り返す起業家のことです。近年は日本でも、事業譲渡などの事業買収によって短期間でいくつもの新規事業を始めたり、多角化経営を進めたりする企業が増えています。

3. 事業買収側のメリット

  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談
事業買収側のメリット

事業譲渡や株式譲渡によって得られるメリットについて、以下の4点をそれぞれ解説します。

  1. 新規事業を低コスト・短時間で始められる
  2. 事業規模の拡大や多角化ができる
  3. 事業買収による技術力やマニュアルを手にできる
  4. 事業買収による節税対策になる

①新規事業を低コスト・短時間で始められる

事業買収の目的で前述したように、買い手側は事業譲渡や株式譲渡によって、新規事業をゼロから立ち上げるよりもコストと時間を減らすことができるメリットがあります。

事業譲渡による事業買収は、企業だけでなく個人が行うケースもあります。個人事業主が経営するお店や、最近では個人が運営するWEBサイトやWEBアプリを事業譲渡で買い取ることで、事業を開始する個人が増えつつあります。

個人が運営するWEBサイトを売買するマッチングサイトも増加していて、アメリカではすでに浸透していますが、日本でも広がりを見せています。

②事業規模の拡大や多角化ができる

事業買収の目的でも前述したように、事業譲渡や株式譲渡によってスケールメリットが得られたり、コストやリスクを抑えて事業の多角化を進めることができたりします。

事業規模の拡大や多角化は、業界でトップシェアを競っている大企業や、地域でシェア争いをしている企業などにとって特に大きなメリットとなります。

③事業買収による技術力やマニュアルを手にできる

買い手側にとっては、事業譲渡や株式譲渡によって技術力やマニュアルを手に入れることができるメリットがあります。

新技術をゼロから開発するには多くのコストと時間、人材が必要になり、開発に失敗するリスクもあります。しかし事業買収によって、開発期間を短縮し、早期の収益化を実現することができます。

例えば医薬品の開発には莫大な時間とコストがかかりますが、大手製薬会社は事業買収によって期間を大幅に短縮しています。

技術力とノウハウを持った人材だけを引き抜く事例もありますが、技術の盗用で訴えられることもよくあるので、事業譲渡などの友好的な事業買収によって手に入れた方がリスクを抑えることができます。

④事業買収による節税対策になる

事業譲渡や株式譲渡による事業買収では、のれんを利用することによって節税節税が可能です。のれんについては本記事で後述しますが、のれんとは、簡単に言うと企業の付加価値のことです。

事業買収では現在の企業価値に加えて、将来生み出すであろう価値も上乗せした買収価額で事業買収を行います。こののれんによって節税ができます。

4. 事業売却側のメリット

事業売却側のメリット

事業譲渡などの事業買収は、売却側にもメリットがあります。売却側のメリットについて、以下の4点をそれぞれ解説します。

  1. 事業売却で後継者問題を解決できる
  2. 売却益を手にできる
  3. 事業売却により廃業の手間やコストがない
  4. 事業や従業員の雇用を継続

①事業売却で後継者問題を解決できる

日本の中小企業は深刻な後継者不在問題を抱えています。事業の成長性はあっても、親族が事業を引き継ぎたがらないことから、廃業を余儀なくされている企業が多く存在します。

そこで事業譲渡や株式譲渡を用いることで、事業を継続し、従業員の雇用を維持したり、オーナー社長のリタイア資金に充てたりすることができます。

国でも後継者不在問題の対策に力を入れていて、各都道府県に事業承継支援センターを設置し、事業承継に関わる制度を改正するなど、さまざまな施策を進めています。

②売却益を手にできる

事業譲渡や株式譲渡によって、売却側の経営者は売却益を得ることができます。上記のように売却益をオーナー社長のリタイア資金に充てる目的の他、一部事業を売却することによって他事業の事業資金に充てる場合や、事業を売却して新規事業を始める場合もあります。

③事業売却により廃業の手間やコストがない

廃業の際には、従業員や取引先、債権者の整理や事業資産の清算など、手間やコストがかかります。しかし事業譲渡や株式譲渡であれば、売却方法によっては廃業よりも小さな負担で手続きを終えることができます。

売却側にとって、従業員や資産などをそのまま引き継ぐことができることは大きなメリットとなります。

④事業や従業員の雇用を継続

オーナー社長にとっては、それまで大事に育ててきた事業や従業員の今後に不安を感じます。しかし事業譲渡や株式譲渡であれば、契約内容によっては事業の継続や従業員の雇用継続が可能なので、オーナー社長にとっては精神的にも大きなメリットがあります。

5. 事業買収側のデメリット

事業買収側のデメリット

事業買収による買い手と売り手のメリットをご紹介してきましたが、事業譲渡などの事業買収にはデメリットもあります。事業買収側のデメリットとはどのようなものか、以下のデメリットについて解説します。

  1. 買収側の社員と意思統一が図りにくい
  2. 簿外帳簿などの見えなかったリスク
  3. 事業買収による人材の流出
  4. のれんの減損処理へのリスク

①買収側の社員と意思統一が図りにくい

企業によって企業風土や社内ルール、雇用の待遇など、違いは多くあります。事業買収によって、売却企業の従業員と買収企業の従業員の間で軋轢が生まれるケースはとても多いです。

事業譲渡の場合は対応の違いに対する不満が出やすく、株式譲渡の場合は待遇の違いに不満が出やすくなります。

多い事例としては、買収側の上司と売却側の従業員が合わないケース、待遇の違いや事業買収後の部署異動に不満を抱えるケース、事業買収後の短期間に何人も従業員が辞めていくケースなどがあります。

事業買収後の従業員間の軋轢を減らすには、事業買収前にPMIを綿密に行う必要があります。PMIとは、事業統合後のマネジメント計画のことです。M&Aコンサルタントなどの協力を得ながら綿密に統合計画を立てることで、M&Aの成功率は大幅に上がります。

②簿外債務などの見えなかったリスク

事業買収の方法には事業譲渡と株式譲渡がありますが、事業譲渡の場合は債務を引き継ぐ必要がないので簿外債務のリスクはありません。しかしM&Aの際に株式譲渡を用いた場合、簿外債務のリスクがあります。

株式譲渡とは株式を譲渡することによって会社の経営権を得るM&Aの方法なので、買い手企業は資産だけでなく負債も引き継ぐことになります。その中には簿外債務が隠れている場合があります。

簿外債務とは、帳簿に記載されていない債務のことです。悪質な場合は売り手側が簿外債務を隠してM&Aを行うケースもありますが、売り手も簿外債務に気付かないまま売却してしまうケースも多くあります。

事業譲渡とは買い取る資産を選択できる方法のため、簿外債務リスクはありません。しかし株式譲渡の場合は簿外債務リスクが発生する可能性があります。

【関連】会社売却・M&Aで問題になる簿外債務とは?粉飾発見方法と対処方法

③事業買収による人材の流出

事業買収で気を付けなければいけない注意点が、事業買収の際の人材流出です。M&Aでは優秀な人材の獲得も目的の1つなので、予定外の人材流出は事業買収にとって大きな痛手となります。

株式譲渡とは経営権を買い手側に移す方法なので、基本的には売り手側の内部に大きな変化はありません。

しかし事業譲渡とは個別の資産を引き継ぐ方法のことなので、人材に関しても買い手側と雇用契約を結び直し、買い手側の条件に合わせることになります。そのため事業譲渡の場合は従業員間の不満が出やすく、人材流出につながる場合があります。

事業買収側のデメリット①で、PMIとは統合後のマネジメント計画で、非常に重要なプロセスということをご紹介しましたが、事業譲渡で人材を引き継ぐ場合も、PMIを綿密に行う必要があります。

④のれんの減損処理リスク

買収側のメリットで前述したように、のれんによって節税ができるというメリットはあります。しかしのれんの見積もりに失敗すると、減損処理リスクを抱えることになります。のれんとは、企業が将来生み出す利益などの付加価値のことです。

事業買収する企業は、この付加価値を上乗せした金額で株式譲渡や事業譲渡を行います。しかし事業買収後に経済環境の変化や企業自体の事情などで、売却企業の企業価値が下がってしまうことがあります。

価値が下がったのれんは、減損処理をしなければならない場合があります。この減損処理によって一時的な業績の悪化などが生じるデメリットがあります。

6. 事業売却側のデメリット

事業売却側のデメリット

事業買収側と同様、事業売却側にもさまざまなデメリットがあります。事業売却側のデメリットについて解説します。

  1. 従業員の雇用確保が不透明
  2. 想定していた価格では買い手がつかない
  3. 取引先や顧客離れが起きる
  4. 事業売却により企業文化が立ち消える可能性

①従業員の雇用確保が不透明

事業売却側にとって、従業員の雇用がどうなるかが不安要素です。株式譲渡の場合は従業員もそのまま引き継がれ、事業譲渡の場合は雇用契約が解除された後に事業買収した側とあらためて雇用契約を結びます。

この時点で雇用が守られていたとしても、事業買収からしばらく経った後に事業買収側の経営判断で、従業員が解雇される可能性はあります。従業員の処遇は、事業売却側の経営者が売却先を決める際の大きな判断要素となります。

②想定していた価格では買い手がつかない

事業買収の買収価額は、企業価値評価の算定額を基に、最終的には交渉によって決まります。企業価値評価算定とは、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチといった方法を組み合わせながら、企業の客観的な価値を見積もる方法です。

事業譲渡の場合は譲渡資産の価値、株式譲渡の場合は株式の価値を算出します。

しかし企業価値評価算定とは、ある側面から企業の価値を見積もる方法なので、正確な数字が出せるわけではありません。しかも交渉の際はお互いの希望価額があります。

売却側は極力高く売りたい、買収側は極力安く買いたいと考えます。その結果、当初の想定よりも安く事業を売却しなければならないリスクが出てきます。

【関連】M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法を解説【事例あり】

③取引先や顧客離れが起きる

事業買収によって売却側の取引先や顧客が離れるリスクも想定しておかなくてはなりません。特に小規模の企業や個人事業主の場合は、経営者との付き合いで取引が続いているケースがあります。

事業譲渡の場合、取引先との契約も一旦途切れます。事業譲渡後も取引を継続してもらうためには、事業譲渡を行う前にしっかりと説明をしておくなどの対処が必要です。

④事業売却により企業文化が立ち消える可能性

事業買収の中でも特に株式譲渡の場合は、買い手企業の企業文化に変えられる可能性も考慮しておく必要があります。事業譲渡では一部の事業を売却した場合、残った事業は独立性を保てます。

しかし株式譲渡とは経営権が事業買収企業に移るM&A方法なので、事業買収側した企業の判断によっては、企業文化を変えられる可能性もあります。

実際は売却側の人材流出リスクがあるので、徐々に企業文化を融合していくことになりますが、最終的にそれまでの企業文化が消えてしまう可能性はあります。

7. 事業買収の買収方法

事業買収の買収方法

ここまで何度か事業買収の方法として事業譲渡と株式譲渡に触れてきましたが、ここで事業譲渡や株式譲渡とはどのようなM&Aの方法なのかについて解説します。

①事業譲渡による事業買収

事業譲渡とは、事業資産の一部または全部を引き継ぐM&Aの方法です。事業譲渡では引き継ぐ資産を選択できるので、事業買収の際に負債を引き継ぐ必要がなく、リスクを抑えられるメリットがあります。

しかし事業譲渡の手続きは他のM&A方法に比べて煩雑で、税金も高くなりやすいというデメリットがあります。事業譲渡は主に小規模な企業のM&Aや個人事業主のM&Aに用いられます。

②株式譲渡による事業買収

株式譲渡とは、株式を譲渡することで経営権を引き継ぐM&Aの方法です。株式譲渡は事業譲渡などに比べて手続きが簡単なことから、中小企業のM&A方法として最も多く採用されています。

事業買収側の手間がかからず、税金も事業譲渡より安く抑えやすいメリットがありますが、会社を丸ごと引き継ぐので、債務や簿外債務などのリスクもまとめて引き継ぐことになるデメリットもあります。

8. 事業買収完了までの主な手続きと流れ

事業買収完了までの主な手続きと流れ

事業買収の手続き方法は事業譲渡と株式譲渡で多少違いはあるものの、大まかな流れは同じです。事業買収に必要な以下の手続き方法について解説します。

  1. 事業買収のための取締役会による決議
  2. 事業譲渡・売却契約の締結
  3. 株主総会による決議・株式買取請求
  4. 事業買収のための各種許認可の申請手続き
  5. 事業買収の効力発生

①事業買収のための取締役会による決議

取締役会設置会社の場合、事業買収を行うことを決定したら、取締役会で承認を得る必要があります。取締役会の決議は、事業買収の方法として事業譲渡と株式譲渡のどちらを用いる場合でも基本的には必要です。

取締役会の決議には、取締役が2人以上いる会社で過半数の承認を得る必要があります。

②事業譲渡・売却契約の締結

売却側と買収側のマッチングや交渉、デューデリジェンスなどが済んだら、当事者間で契約を締結します。事業譲渡であれば事業譲渡契約書、株式譲渡であれば株式譲渡契約書を作成します。

事業譲渡契約書、株式譲渡契約書とは、買収価額や効力発生日などの必要事項を記載した合意書のことです。事業譲渡契約書や株式譲渡契約書の記載項目は法令で定められていませんが、後のトラブルを防ぐためにも、しっかりと作成する必要があります。

③株主総会による決議・株式買取請求

当事者間で契約を締結したら、株主に公告や通知を行い、株主総会で決議を行います。事業買収に反対の株主がいる場合は、会社に対して株式買取請求を行うことができます。

会社側は反対株主に対して、株主買取請求ができることをあらかじめ周知しておかなければなりません。

④事業買収のための各種許認可の申請手続き

株式譲渡の場合は許認可もそのまま引き継がれますが、事業譲渡の場合は買い手側が許認可を取得し直す必要があります。事業譲渡後スムーズに事業を開始できるように、早めに必要な許認可を取得しておく必要があります。

⑤事業買収の効力発生

当初予定していた効力発生日までに手続きが全て完了していれば、事業買収の効力が発生します。効力発生以降も、必要に応じて事業の引き継ぎなどを続けます。

株式譲渡の場合はそのまま事業を続けることができますが、事業譲渡で引き継いだ事業は、しばらく引き継ぎ作業が必要になることがあります。

9. 事業買収ののれん代

事業買収ののれん代

本記事で前述したように、のれんとは事業買収の際に上乗せされるプレミア価格のようなものです。こののれん代がメリットになることもあれば、デメリットになることもあります。のれん代が減価償却費になる場合と減損損失になる場合について解説します。

のれん代が減価償却費になる場合

事業買収によって計上されたのれん代は、一括で経費にすることはできないので、徐々に減価償却していきます。減価償却とは、簡単に例えると、使った分を数年に分けて経費にしていくことです。

のれんとは売却企業が収益を生み出すための付加価値なので、事業買収した企業は毎年減価償却費として経費に計上していきます。

のれん代が減損損失になる場合

のれんとは売却企業の持つ付加価値のことですが、この付加価値の見積もりを見誤ると、想定していたよりも収益などの価値を生み出さない場合があります。

想定よりも価値が大幅に下がってしまうと、減損損失として損失計上しなければならない場合があります。減損損失とは会計上の損失なので、実際にキャッシュが減るわけではありませんが、営業利益が減ることになったり税金が高くなったりするデメリットがあります。

10. 事業買収をする際の注意点

事業買収をする際の注意点

事業買収の際には、買収側も売却側も注意点があります。デメリットのところでも少し触れましたが、事業買収の注意点について解説します。

事業買収側に潜むリスク

事業買収側には、事業譲渡を用いるか株式譲渡を用いるかによって、以下のような注意点があります。

  1. 簿外帳簿などの債務のリスク
  2. 買収先の契約内容のリスク
  3. 買収先の雇用契約にあるリスク
それぞれの注意点について解説します。

①簿外帳簿などの債務のリスク

事業買収を事業譲渡で行う場合は問題ありませんが、株式譲渡によって行う場合の注意点として、簿外債務のリスクを把握する必要があります。株式譲渡とは売却企業の債務も含めて全て引き継ぐM&A方法です。

簿外債務リスクを防ぐには、事業買収手続きの際にしっかりとデューデリジェンスを行う必要があります。デューデリジェンスとは企業の監査のことですが、このデューデリジェンスをどれだけしっかりと行えるかでリスクの大きさが大きく変わります。

②買収先の契約内容のリスク

事業買収契約の注意点として、事業買収契約を取り決める際は契約内容に漏れがないか確認する必要があります。事業譲渡契約書や株式譲渡契約書は法令で記載内容が定められているわけではありません。

そのため、例えば瑕疵担保責任について記載していなかった場合など、後々トラブルになることがあります。

瑕疵担保責任とは、買い手がデューデリジェンスを行っても気付くことができなかった問題点が後に出てきた場合、売り手に対して損害賠償請求ができる契約のことです。

他にも競業避止義務や守秘義務、善管注意義務など、契約書に記載した方が良い項目を確認する必要があります。

③買収先の雇用契約にあるリスク

事業買収における雇用契約の注意点として、売り手側従業員の処遇に関する交渉には気を付けなければいけません。事業譲渡で従業員を引き継ぐ場合、その従業員1人ずつから同意を得る必要があります。

しかし買い手側の雇用条件に不利な条件があると、交渉がこじれたり、引き継いだ後に不満が出てくる可能性があります。事業譲渡では雇用契約をよく確認して交渉する必要があります。

事業売却側に潜むリスク

続いて売却側の注意点として、事業譲渡の場合と株式譲渡の場合でリスクが生じる可能性があります。以下の3点について解説します。

  1. 隠れ債務のリスク
  2. 売却先の契約内容のリスク
  3. 売却先の雇用契約にあるリスク

①隠れ債務のリスク

売却側の注意点として、会社の中に隠れ債務がないか入念に確認が必要です。隠しているつもりはなくても、気付かないうちに隠れ債務のリスクが潜んでいることがあります。

事業譲渡の場合は債務を引き継がないので問題ありませんが、株式譲渡の場合は注意が必要です。また、事業譲渡でも、少ないケースですが債務を引き継ぐ場合があります。その際も隠れ債務に気を付けなければなりません。

買収側もデューデリジェンスによって極力隠れ債務を洗い出しますが、売却側も事前に専門家の協力を得て、買収側に対して全て公表しなければいけません。

②売却先の契約内容のリスク

売却先の契約内容にも注意点があります。事業譲渡の場合、事業譲渡契約で競業避止義務について取り決めをしていない場、法令で売却側に対して競業避止義務が適用されます。

競業避止義務とは、売却側は事業譲渡後に一定期間一定の地域で同業種の事業を行なってはならないとする制約です。

事業譲渡契約で競業避止義務を適用しない契約をする事もできるので、事業譲渡後も事業を続ける場合は競業避止義務について明確にしておく必要があります。

また、事情変更や協議事項が契約内容にある場合は、事業売却後に思わぬリスクを抱える場合があります。事情変更とは、特別な事情があった時に契約内容を変えられる契約です。

協議事項とは、契約書にない事項については協議によって決めるという契約です。売却後に思わぬ要求を突きつけられることがないよう、契約の段階で細かく取り決めを交わしておく必要があります。

③売却先の雇用契約にあるリスク

売却先の雇用契約に関する注意点として、雇用契約の維持を明確にしておく必要があります。買い手側としては、事業買収後に従業員の整理解雇を行う可能性があります。

また、従業員を引き継いだ直後に全く関係のない部署に異動させられることもあります。従業員の取り扱いは売却側にとっても買収側にとっても非常に大事なポイントです。交渉の時点で細かく規定しておく必要があります。

11. 個人による事業買収

個人による事業買収

個人による事業買収は、企業が行う事業買収とは違った特徴や注意点があります。個人による事業買収の方法や注意点について解説します。

個人が事業買収を行う方法

個人が事業買収を行う方法としては

  1. 自ら事業買収の交渉をする
  2. 売却を予定している相手を紹介してもらう
  3. マッチングサイトを利用する
などの方法があります。

①買収先を探す

個人で事業買収する場合、自ら買収先を探してアプローチする方法があります。しかし企業間の交渉とは違って信用性が低いので、交渉まですら進めない場合も多くあります。現実的には、信用のおける人からの紹介などに頼ることになります。

②売却予定の企業を探す

事業を売却予定の相手を探すには、、M&A仲介会社に相談する方法や、事業引継ぎ支援センターに相談する方法などがあります。

M&A仲介会社とは、M&Aのマッチングからクロージングまで一貫して行うM&A専門の会社です。また事業引継ぎ支援センターとは、各都道府県に設置されている、中小企業庁管轄の支援機関です。買収先候補や専門家を紹介してもらえます。

③事業買収・M&Aマッチングサイトを利用する

個人が事業買収する場合は、マッチングサイトを利用する方法もあります。現在はさまざまな種類のマッチングサイトが増えていますが、支援機関などとは違って信頼性は低くなるので、見極めに注意が必要です。

個人による事業買収の注意点

個人による事業買収は、アメリカとは違い日本ではまだ多くありませんが、近年は数百万円の事業を買い取って起業するというブームが一部で広がり始めています。しかし個人による事業買収には注意点もあります。

①信用性が乏しい点

個人の事業買収は、企業の事業買収よりも信用性が乏しいデメリットがあります。買収側だけでなく売却側も信用性が低いので、交渉がなかなか円滑に進まない可能性が高くなります。また信用力が低いので、事業買収の資金を調達しにくいという問題点もあります。

②資金力に不安がある点

個人で事業買収するケースでは、資金力がそれほど多いわけではない場合が大半です。

近年流行し始めているのは、数百万円で買収できる小規模の会社や個人事業を買収し、育ったらまた新たな事業を買収するというスモール起業です。小さい事業から始めて信用と資金を貯めていく方法が増えています。

【関連】小規模M&Aの成功の秘訣は?オススメの仲介会社は?

12. 友好的事業買収と敵対的事業買収について

友好的事業買収と敵対的事業買収について

事業買収は相手の同意があるかどうかによって、友好的事業買収と敵対的事業買収に分かれます。それぞれの買収方法について解説します。

友好的事業買収の手段

友好的事業買収とは、買収側と売却側の合意の下に進められる事業買収のことです。合意があるのでさまざまなM&Aスキームを使えるメリットがあります。友好的事業買収の方法には、事業譲渡や株式交換、株式移転、合併や会社分割などがあります。

敵対的事業買収の手段

敵対的事業買収とは、友好的事業買収とは違い、相手の合意無しに一方的に事業買収を仕掛ける方法のことです。相手の合意が無いので、M&Aのスキームは限られます。

敵対的事業買収の手段には、公開買い付け(TOB)や市場買い付けがあります。市場買い付けとは公開取引市場で株式を買い集める方法で、TOBとは公開取引市場外で株式を集める方法のことです。

非上場企業の場合は多くが株式譲渡制限を定めているので、敵対的事業買収は主に上場企業に対して仕掛けられます。

敵対的事業買収への防衛策

敵対的買収は、2005年頃に村上ファンドが初めて本格的に仕掛けたことで日本でも認知され、ライブドアによって広く知られるようになりました。この時同時に防衛策も連日ニュースになりました。

敵対的事業買収への防衛策として主なものに、ポイズン・ピル、ホワイトナイト、クラウンジュエルなどがあります。ポイズン・ピルとは、新株発行によって買収側の持株比率を下げ、買収にかかるコストを吊り上げる方法です。

ホワイトナイトとは、他の友好的な企業に株式を買い取ってもらう方法です。クラウンジュエルとは、保有資産を手放すことで企業価値をあえて下げる方法です。

他にもさまざまな防衛策がありますが、防衛策は経営陣の都合で行われるもので株主の利益を無視しているケースが多いことから、株主から強い批判を浴びることもあります。

13. 事業買収の事例

事業買収の事例

事業買収の事例として、業界で話題となった以下の3企業をご紹介します。

  1. 日本たばこ産業(JT)
  2. RIZAPグループ
  3. ドンキホーテHD

①日本たばこ産業(JT)

事業買収の事例①

事業買収の成功事例としてよく取り上げられるのが、日本たばこ産業(JT)です。

日本国内の喫煙者は大幅に減少し続けていますが、JTはたばこ事業を行う世界各国の大手企業買収を繰り返し、順調に販売数量を伸ばしています。最近ではバングラデシュの大手たばこ会社を買収して話題になりました。

②RIZAPグループ

事業買収の事例②

トレーニングジムを運営するRIZAPグループは、事業買収戦略の失敗によって業績が大きく落ち込むこととなりました。

RIZAPグループが買収してきた企業は本業のトレーニングジム運営と直接関係のない事業が多く、また短期間で複数の赤字企業を中心に買収してきたため、再建が間に合わず業績に影響が出ました。

しかし本業のトレーニングジム運営自体は好調を維持しているため、今後どのように経営を立て直していくのか注目が集まっています。

【関連】負ののれんとは?分かりやすく解説!仕訳、税務処理はどうなるの?

③ドンキホーテHD

事業買収の事例③

ディスカウントストア事業を展開するドンキホーテHDは、ユニー・ファミリーマートHDの子会社であるユニーを買収して話題となりました。株式譲渡は2019年1月を予定しています。

ドンキホーテHDはこれまでもスーパーを買収したり百貨店買収に興味を示したりと、流通業界の再編に大きな影響を与えています。

14. 事業買収の相談は専門家へ

事業買収の相談は専門家へ

本記事でご紹介してきたように、事業買収の手続きや税務は複雑でさまざまなリスクもあるため、専門家の協力が欠かせません。事業買収を検討するのであれば、専門家に相談することをおすすめします。

M&Aアドバイザーは会計、税務、法務などの幅広い知識を持っているM&Aのスペシャリストなので、事業買収のマッチングからクロージングまで一貫してサポートすることができます。

M&A総合研究所は独自のAIを活用したマッチングプラットフォームを運用しています。事業買収に最適な相手とのマッチングが実現できます。報酬体系は、着手金と中間報酬が無料、成果報酬は業界最安水準となっています。まずはお気軽にご相談ください。

M&A専門会計士が対応します/

【無料相談】
M&Aのプロに相談する>>
【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはコチラ>>【※無料】M&Aの資料請求はコチラ>>

15. まとめ

まとめ

ここまで事業買収について解説してきました。最後に感嘆にまとめます。

事業買収とは、売り手側の事業を買い取る方法のことを指します。事業買収の方法には事業譲渡と株式譲渡があります。

事業譲渡とは、事業の一部または全部を引き継ぐ方法のことです。事業譲渡は手続きが煩雑ですが、引き継ぐ資産を選択できるメリットがあります。

株式譲渡とは、売り手側の株式を買い手に譲渡することで、経営権を引き継ぐ方法の事です。株式譲渡は手続きが簡単なことから、主に中小企業のM&Aで多く採用されています。

事業買収では、事業譲渡を用いるか株式譲渡を用いるかによって、メリット・デメリットが変わります。

事業買収には以下のような目的があります。

  1. 事業買収による相乗効果への期待
  2. 事業規模拡大への期待
  3. 新規事業・事業の多角化への期待

買収側には以下のようなメリットがあります。
  1. 新規事業を低コスト・短時間で始められる
  2. 事業規模の拡大や多角化ができる
  3. 事業買収による技術力やマニュアルを手にできる
  4. 事業買収による節税対策になる

売却側には以下のようなメリットがあります。
  1. 事業売却で後継者問題を解決できる
  2. 売却益を手にできる
  3. 事業売却により廃業の手間やコストがない
  4. 事業や従業員の雇用を継続

また、買収側には以下のデメリットもあります。
  1. 買収側の社員と意思統一が図りにくい
  2. 簿外帳簿などの見えなかったリスク
  3. 事業買収による人材の流出
  4. のれんの減損処理へのリスク

売却側には以下のようなデメリットがあります。
  1. 従業員の雇用確保が不透明
  2. 想定していた価格では買い手がつかない
  3. 取引先や顧客離れが起きる
  4. 事業売却により企業文化が立ち消える可能性

買収側は以下のリスクに備える必要があります。
  1. 簿外帳簿などの債務のリスク
  2. 買収先の契約内容のリスク
  3. 買収先の雇用契約にあるリスク

また、売却側には以下のようなリスクがあります。
  1. 隠れ債務のリスク
  2. 売却先の契約内容のリスク
  3. 売却先の雇用契約にあるリスク

事業買収には上記のようにさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットやリスクもあります。これらのリスクを極力減らすには、M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーの協力が欠かせません。

M&A総合研究所には、最適な事業買収を実現する以下のような特徴があります。

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら専門の会計士のいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
  2. M&Aに強い会計士がフルサポート
  3. 圧倒的なスピード対応
  4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は会計士が運営するM&A仲介会社です。
企業会計に強く、かつM&Aの実績も豊富です。全国にパートナーがいるので案件数も豊富。
また、業界最安値水準の完全成果報酬制のため、M&Aが成約するまで完全無料になります。
まずはお気軽に無料相談してください。

秘密
厳守

M&A専門会計士が対応します

お電話で相談 03-6427-8841メールで相談
  • 【国内最安値水準】
    M&A仲介サービス

    Img hand

    公認会計士が国内最安値水準でM&A・事業承継をフルサポートいたします。
    まずはお気軽にご相談ください。会社、事業の譲渡または買収をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。

    M&A仲介はこちら
  • 資料請求

    Img book

    M&A・事業承継を成功させるポイントやM&Aの実態をまとめた「後悔しない会社売却・事業承継 M&Aのために抑えておきたいポイント」(16ページ)を無料で進呈いたします。

    資料請求はこちら
  • 【無料】企業価値
    算定サービス

    Img graph

    M&A総合研究所の会計士が貴社の企業価値を無料で算定いたします。
    無料企業価値算定をしても、無理にM&Aや会社売却を勧めることは致しませんのでまずはお気軽にお問い合わせください。

    お申し込みはこちら

関連するまとめ

新着一覧

最近公開されたまとめ