2021年03月23日更新
会社譲渡とは?手続きやメリット、リスクを解説!相場や案件一覧あり

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
会社譲渡とは何かを解説します。手続きの内容や流れ、実施するメリット、注意すべきリスクとは何かなどについて知っておきましょう。会社譲渡の相場や案件も併せて紹介しています。これから手続きを検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
1. 会社譲渡とは
この記事では、会社譲渡とはどのようなものかについて詳しく見ていきます。「よく耳にするけど会社譲渡とは何のこと?」と疑問に感じている方は多いはずです。会社譲渡とは何かを理解し、今後の自社の経営に活かしていきましょう。
会社譲渡とは、会社の経営権を第三者に譲渡することを意味しています。
もう少し具体的にいうと、会社が保有する株式を第三者に譲渡することで、会社の経営権を第三者に譲り渡すことです。会社譲渡は事業承継でもよく活用されています。
事業譲渡との違い
会社譲渡と似た用語に「事業譲渡」があります。「事業譲渡」とは、会社が運営している「事業」の一部または全部を第三者に譲渡することです。
会社全体を譲渡する会社譲渡とは異なり、会社が保有している事業のみを取引します。会社譲渡と事業譲渡は混同されやすいですが、企業の経営戦略として活用していきたい場合は、しっかりと違いを押さえておきましょう。
また、この事業譲渡は「M&A手法」の一つであり、事業承継のためのM&Aなどの場面で利用されることが多いです。買い手にとって必要な事業だけを譲渡できるので、事業承継の後継者がいない場合でもM&Aで事業を引き継いでもらいやすいとされています。
企業経営者で後継者不足に悩んでいるなら、事業譲渡によるM&Aも覚えておくと良いでしょう。
株式譲渡との違い
会社譲渡・事業譲渡と類似した用語に「株式譲渡」があります。この株式譲渡は、会社譲渡と同様の意味で使われることが多いです。
つまり、会社が保有する株式を第三者に譲渡することを「株式譲渡」といいます。
株式譲渡を行う結果、株式を譲受した第三者に会社の経営権が移行されるため、「会社譲渡」と同義です。
また、この株式譲渡も非常によく利用されるM&A手法の一つとなっています。したがって、企業の経営戦略としてM&Aを考えているなら、「会社譲渡とは何か」「事業譲渡とは何か」「株式譲渡とは何か」についてしっかり区別できるようになりましょう。
2. 自主的に会社譲渡を検討する理由
「会社譲渡とは何をさしているのか」が何となくわかっても、「自主的に会社譲渡を実施する理由とは何か?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、経営者が自主的に会社譲渡を検討する理由について見ていきます。
自主的に会社譲渡を検討する理由には、以下のようなものが挙げられます。
- アーリーリタイアを考えた
- 企業経営について将来性を感じなくなった
- 新しい事業・会社を起ち上げたくなった
経営戦略のほかに、さまざまな理由で会社譲渡は検討されています。それぞれの会社譲渡の理由とはどのようなものなのか、順番に確認していきましょう。
①アーリーリタイアを考えた
自主的に会社譲渡を検討する理由の一つとして、「企業経営者からのアーリーリタイアを考えるようになった」というものが挙げられます。
「アーリーリタイア」とは、早期リタイア・退職のことで、定年を待たずに自身の仕事をリタイア・退職することです。
アーリーリタイアをすることで、仕事のプレッシャーから解放されたり、時間に余裕ができたり、自分がやりたいことに没頭したりできます。
このアーリーリタイアは、会社に勤めているサラリーマンに限らず、会社を経営している社長・経営者の方の中にも実施するケースが多いです。
ただし、社長・経営者がアーリーリタイアする際は、ただ辞めれば良いわけではありません。
突然社長・経営者が自分の会社を閉じてしまうと、従業員や取引先、顧客に大きな迷惑をかけることになるからです。
そこで、会社譲渡を希望する第三者・後継者を募集し、会社を譲り渡すことで、社長・経営者のアーリーリタイアを実現できます。
②企業経営について将来性を感じなくなった
会社譲渡を実施する理由として、「企業経営について将来性を感じなくなった」というものがあります。
会社で展開している事業の成績が芳しくないと、いつまで経っても経営状況・財政状態が改善されないため、事業の撤退を検討する経営者が多いです。
その際に、会社譲渡や事業譲渡相手を募集して、第三者に事業を譲り渡すことができれば、譲渡金額を受け取れるなどのメリットがあるため、会社譲渡・事業譲渡を実施しようと考えることになります。
③新しい事業・会社を起ち上げたくなった
「新しい事業・会社を起ち上げたくなった」という理由で、積極的な会社譲渡を検討するケースも多いです。新規事業を起ち上げたり、会社を発起させたりするには、ある程度まとまった資金が必要になります。
しかし、新事業や新企業をスタートさせる資金が十分にある経営者ばかりではありません。
そこで、株式譲渡や事業譲渡などの取引相手を募集して、第三者に会社・事業を譲り渡すことで、譲渡金額を獲得し、その譲渡金額を新しい事業・会社の起ち上げ費用として利用することがあります。
以上、自主的に企業経営者が会社譲渡について検討する理由とはどのようなものかを解説しました。ここからは、会社譲渡を行う手続きを知るためにも全体の流れを見ていきましょう。
3. 会社譲渡の全体の流れ
会社譲渡とはどのような流れで進められるのでしょうか。ここでは、会社譲渡を実施する際の一連の流れについて解説していきます。
- M&A仲介会社と契約
- 自社の価値算定
- 譲受企業の募集・決定
- 会社譲渡の手続き
- 会社譲渡の成立
- 会社譲渡の公表
- 会社の引継ぎ
会社譲渡の流れを理解して、スムーズに手続きを進められるようにしておきましょう。それぞれの手続きについて、順番に確認していきます。
①M&A仲介会社と契約
会社譲渡の実施を検討している場合、手続きを始める前に、「M&A仲介会社」などのM&A専門家に相談・契約しておきましょう。
会社譲渡・株式譲渡や事業譲渡の手続きをスムーズに進めるためには、会社の財務・税務に関する専門的知識が必要となります。そのため、自社のみでM&A手続きを進めたり、契約書を作成したりすることは非常に難しく、失敗するリスクも伴うのでおすすめしません。
株式譲渡や事業譲渡に関する知識・ノウハウ・実績が豊富なM&A仲介会社を利用することで、安全に会社譲渡を進められます。
株式譲渡とは何かという基本知識から教えてくれる専門家に相談すれば、安心して最後まで会社譲渡の手続きができるでしょう。
②自社の価値算定
会社譲渡を成功させるためには、自社の価値・譲渡金額相場を適切に把握しておく必要があります。譲渡金額の相場価格を理解していないと、本来よりも過小評価された金額でM&A手続きが進められてしまうリスクが伴うからです。
ただし、自社の価値・譲渡相場金額などを算定するのは非常に難しいため、企業価値算定サービスを提供しているM&A仲介会社に算定を依頼することをおすすめします。
M&A総合研究所では、M&Aに必要な専門的知識を持つM&Aアドバイザーが、会社譲渡をフルサポートいたします。
無料の「企業価値算定サービス」も提供しておりますので、「自社の価値・譲渡相場を知りたい」という方もお気軽にお問い合わせください。
③譲受企業の募集・決定
自社の価値・譲渡相場を把握したら、会社を譲り渡す相手を募集・決定します。近年では、後継者不足などの影響で、会社譲渡・事業譲渡を行う相手を見つけられないという問題が発生しがちです。
しかし、幅広い情報を持っているM&A仲介会社を利用すれば、スムーズに自社に適した譲受相手を探し出してくれます。
自分だけで適切な会社譲渡の相手を見つけるのは困難です。できるだけ早い段階で、会社譲渡についてM&A仲介会社に相談してみましょう。
④会社譲渡の手続き
譲受企業を決定したら、「会社譲渡の手続き」に移ります。会社譲渡の手続き方法・手続きの流れについては、以下の章(会社譲渡の手続き)で詳しく解説しますのでそちらをご覧ください。
⑤会社譲渡の成立
会社譲渡の手続きが無事に完了すれば、会社譲渡が成立します。この時点で譲渡金額の受け渡しなどが実施されます。
⑥会社譲渡の公表
会社譲渡の手続きが完了したら、会社譲渡の実施を公表することが必要になります。中小企業であれば、従業員や取締役に対しての説明、大企業であればマスコミへの発表などを行いましょう。
会社譲渡の公表タイミングを誤ると、従業員や取引先などに不信感を与えてしまう可能性もゼロではありません。会社譲渡が確実なものになってから、丁寧に公表するようにしてください。
⑦会社の引継ぎ
最後に、会社譲渡を実施したら、「会社の引継ぎ」作業を丁寧に進めます。この引継ぎ作業を疎かにすると、従業員の退職や会社経営の失敗などの原因となり、譲受企業に大きな迷惑をかけてしまうからです。
4. 会社譲渡の手続き
ここからは、上記「会社譲渡の流れ」で紹介した「会社譲渡の手続き」に関して、より詳しく解説していきます。
会社譲渡の手続きとは具体的にどのようなことを行うのか、どのような流れで手続きが進むのか、以下の説明を確認しておきましょう。
- 会社譲渡の承認請求
- 取締役会・株主総会の招集
- 会社譲渡契約
- 株主名簿の書き換え請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
- 会社譲渡の完了
ちなみに、ここで紹介する会社譲渡の流れは、会社が発行する株式に「譲渡制限」が設けられている際の流れとなります。
「譲渡制限」とは、定款に定めることによって「株式を自由に取引できないようにする」制限のことです。
通常、会社は「公開市場で自由に株式を売買できる」上場会社と、「公開市場で自由に株式を売買できない」非上場会社に分かれています。
原則として、株式は自由に取引することが可能です。上場会社が発行する株式は、公開市場をとおして売買が可能で、非上場会社の株式は、当事者間で売買交渉を行う「相対取引」が利用されます。
ただし非上場会社のほとんどが、発行する株式に対して「譲渡制限」を設けているのが現状です。これは、会社にとって望ましくない第三者に自社の株式が渡ってしまうことを防いだり、会社が乗っ取られてしまうことを防止したりする目的があります。
譲渡制限が設定されている株式を「株式譲渡」することで会社譲渡を実施しようとしている場合、「株式譲渡の承認請求」や「取締役会・株主総会での承認決議」など、譲渡制限がない株式を譲渡する場合とは多少異なる手続きが必要になってくるので注意しておかなければなりません。
それでは、具体的な会社譲渡の手続きを確認していきましょう。
①会社譲渡の承認請求
まずは「会社譲渡の承認請求」を行う必要があります。譲渡制限株式を譲渡する場合、株式の譲渡者は「株式譲渡承認請求書」に必要事項を記載して、譲渡の承認請求を行わなければいけません。
ただし、中小企業における会社譲渡の場合は、会社の経営者と株式譲渡者が同じ人物であるケースが多く、この「譲渡承認請求」の手続きを踏む前に合意が得られることがあります。
②取締役会・株主総会の招集
会社譲渡の承認請求が行われたら、承認決議を実施するために、会社側は「取締役会または株主総会」を招集します。
承認請求を受けた会社が「取締役会設置会社」であれば、原則として「取締役会」が承認機関です。一方、「非取締役会設置会社」である場合は、「臨時株主総会」を開催して承認決議を進めることになるでしょう。
③会社譲渡契約
承認決議の結果、会社譲渡請求が承認され、「承認通知」を受け取ったら、会社譲渡契約の締結を行います。会社譲渡契約の締結では、具体的に、株式の譲渡側・譲受側の双方が「株式譲渡契約書」と呼ばれる契約書を作成しなければなりません。
④株主名簿の書き換え請求
会社譲渡契約を締結したら、「株主名簿の書き換え請求」手続きを進めていきます。株式譲渡・会社譲渡をする場合、ただ株式を第三者に譲り渡せば成立するわけではなく、会社が保有する「株主名簿」を書き換えることで初めて有効となる点に注意が必要です。
そのため、株式の譲渡者・譲受者は会社に対して「株主名簿書き換え請求」をして、株主の名簿を変更してもらう必要があります。
⑤株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
続いての会社譲渡の手続きは「株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付」です。特に、新しく株主となる株式譲受者は、株主名簿がしっかり書き換えられていて、自分が株主となっているのかを確認するために、株主名簿記載事項証明書の交付を請求することが必要になります。
⑥会社譲渡の完了
上記で説明した手続きがすべて実行されると、会社譲渡の完了です。ここでは「会社譲渡」という用語を使って説明してきましたが、この一連の手続きは「株式譲渡の手続き(譲渡制限株式の場合)」と同様なので覚えておいてください。
このように会社譲渡にはさまざまな手続きがあり、なかには専門知識が必要となるものもあります。そのため、会社譲渡をスムーズに進めていくには、専門家のサポートが必要不可欠です。
M&A総合研究所では、M&Aの経験と知識が豊富なM&Aアドバイザーが会社譲渡の交渉からクロージングまで案件をフルサポートいたします。
また、料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は完全無料です。無料相談を行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
5. 会社譲渡の手続きに必要となる書類一覧
続いて、会社譲渡の手続きに必要となる書類をまとめていきます。会社譲渡を成立させるためには、以下で紹介する書類の種類・内容をしっかりと理解しておく必要があるのです。
- 株式譲渡承認請求書
- 株主総会招集に関する取締役の決定書
- 臨時株主総会招集通知
- 臨時株主総会議事録
- 株式譲渡承認通知書
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿
- 株主名簿記載事項証明書交付請求書
- 株主名簿記載事項証明書
会社譲渡を行う際には、このようにさまざまな書類がなければ手続きが進みません。それぞれの会社譲渡の手続き書類について、順番に確認していきましょう。
①株式譲渡承認請求書
会社譲渡の手続きに必要な書類に「株式譲渡承認請求書」があります。これは、譲渡制限が設けられている株式を譲渡する際に提出が必要で、株式の発行会社に対して、「株式譲渡を承認」するように請求する書類です。
「株式譲渡承認請求書」には、「譲渡する株式の種類および株式数」と「株式を受け取る側の氏名または名称」を記載します。
②株主総会招集に関する取締役の決定書
株式譲渡承認請求書を受け取った会社側は、承認決議を行うために「承認機関の招集」手続きを実施しなければいけません。「非取締役会設置会社」の場合は、臨時株主総会を開く必要があり、「株主総会招集に関する取締役の決定書」が必要となります。
③臨時株主総会招集通知
臨時株主総会が承認機関となる場合、会社側は、株主総会が開催される1週間前までに「臨時株主総会招集通知」を発送しなければいけません。
④臨時株主総会議事録
株主総会が開催された場合、議事の経過の要綱を記載する「株主総会議事録」の作成が、会社法によって義務付けられています。株式譲渡承認請求を決議するための「臨時株主総会」が開かれた際も、「臨時株主総会議事録」の作成が必要です。
⑤株式譲渡承認通知書
取締役会・臨時株主総会で決議が行われたあと、会社側は承認請求者に対して「株式譲渡承認通知書」を送付する手続きを実施する必要があります。
この通知は期限が決まっていて、承認請求が行われた日から「2週間以内」に「承認・不承認の通知」を行わなければいけません。もし2週間以内に「株式譲渡承認通知書」が送付されなかった場合、「株式譲渡の承認がされたもの」と認められることになります。
そのため、株式譲渡請求を「不承認」とした場合、会社側は期限内での通知書送付に注意しなければならないことを覚えておきましょう。
⑥株式譲渡契約書
株式譲渡契約を締結するために必要な契約書が「株式譲渡契約書」になります。「株式譲渡契約書」は、株式譲渡側・譲受側の双方が必要事項を記載しなければいけません。
⑦株式名義書換請求書
株式譲渡を成立させるために、株式譲渡側・譲受側は「株式名義書換請求書」を作成して、会社に提出する必要があります。
⑧株主名簿
「株主名簿」とは、その会社の各株主に関する基本情報が記載されているものです。株主名簿に記載される内容は、「株主の氏名・名称および住所」「株主が所有する株式数および株式の種類」「株式が株式を取得した日」が基本となります。
⑨株主名簿記載事項証明書交付請求書
株主名簿がきちんと書き換えられているかを確認するには、「株主名簿記載事項証明書交付請求書」を会社に提出する必要があります。
⑩株主名簿記載事項証明書
「株主名簿記載事項証明書交付請求書」を提出すると、会社側から「株主名簿記載事項証明書」が発行されます。この証明書を見て、自分が株主となっているかをチェックできます。
以上が、会社譲渡の手続きに必要となる書類でした。多くの書類が会社譲渡には必要となるので、忘れずに準備しておきましょう。
6. 会社譲渡のメリット
ここからは、会社譲渡を実施するメリットについて5つ解説していきます。
- 後継者問題のスムーズな解決
- 売却・譲渡益を得る
- 従業員の雇用を確保する
- 企業を存続・発展させる
- 個人保証や担保の解消
会社譲渡のメリットを順番に確認していきましょう。
①後継者問題のスムーズな解決
会社譲渡のメリットとして、「後継者問題を解決できる」というものが挙げられます。
近年は、人材不足と経営者の高齢化の影響により、多くの中小企業で「後継者問題」が深刻化しているのが現状です。
M&A仲介会社などを利用して、会社譲渡や事業譲渡などを実施することで、スムーズな事業承継が実現し、後継者問題を解消することが期待できます。
②売却・譲渡益を得る
会社譲渡を実施すると、譲渡する株式の対価として現金を獲得できます。これは売却益や譲渡益と呼ばれるもので、まとまった資金を獲得することが可能です。
特に、経営者に大きな利益が生まれることから「創業者利益」と呼ばれることもあります。
③従業員の雇用を確保する
特に中小企業では、後継者問題に直面していたり、経営状況の悪化や資金難で会社を継続していくのが困難となり「廃業」に追い込まれたりするケースがあります。
廃業してしまうと、その会社で働く従業員は職を失うことを押さえておかなければなりません。
しかし、会社譲渡を成功させることができれば廃業をせずに済むため、従業員の雇用を確保することが可能となります。会社譲渡を行って、今まで頑張ってくれた従業員の将来も確保しましょう。
④企業を存続・発展させる
会社譲渡することで、大手企業の傘下・グループ企業となることができます。大手企業が持つ資本力や経営資源をフル活用することで、企業を存続させたり、収益力を向上させて発展させたりすることが可能です。
⑤個人保証や担保の解消
会社譲渡・株式譲渡を実施した場合、その会社が持つ資産・負債などをすべて譲受・買収側に引き継ぐことができます。
そのため、会社が抱える負債や担保、経営者が抱える個人保証なども買い手側に引き継げるので、個人保証や担保から解放されるのも嬉しいメリットです。
個人保証で悩んでいる場合は、会社譲渡を検討してみるのが良いでしょう。
7. 会社譲渡のリスク
上記で会社譲渡のメリットを紹介しましたが、会社譲渡には以下のような「リスク」も伴うので注意が必要です。
- 旧経営者として拘束を受ける可能性
- 簿外債務などの発覚や情報漏えいにより破談になる可能性
- 従業員や役員の処遇が交渉時と変わる可能性
- 会社名が変わってしまう可能性
- 希望どおりの売却先が見つからない
①旧経営者として拘束を受ける可能性
「アーリーリタイア」を目的に会社譲渡の実施を検討する経営者もいますが、会社譲渡をした際に、旧経営者として「拘束」を受ける可能性があります。
株式譲渡や事業譲渡によるM&Aを実施したときに、売却側企業の経営者を「複数年」会社に残るように定めることを「ロックアップ」というので覚えておきましょう。
ロックアップは、買収した会社の経営者がすぐに抜けてしまうと、事業・企業運営の引継ぎが上手くいかなかったときに、事業が回らなくなることを防ぐ目的があります。つまり、ロックアップが定められていると、指定期間内は会社を辞められないことを押さえておくべきです。
②簿外債務などの発覚や情報漏えいにより破談になる可能性
これは買収・譲受側企業が抱える可能性のあるリスクですが、会社譲渡後に「簿外債務」が発覚したり、「情報漏えい」による交渉の破談が発生したりする危険性があります。
このようなリスクを未然に防ぐために、M&A仲介会社を利用して、徹底的なデューデリジェンスを行うことが大切です。
③従業員や役員の処遇が交渉時と変わる可能性
会社譲渡後、従業員や役員の処遇がM&A交渉時と変わってしまうリスクが考えられます。このようなことを避けるためにも、M&A仲介会社を利用して、安全な交渉を実現することが必要です。
④会社名が変わってしまう可能性
会社譲渡を実施したあと、買収・譲受側企業の意向によって会社名が変わってしまう可能性があります。このようなことが発生すると、従業員を困惑させてしまうので、事前に説明をしたり、アフターケアをしっかり行ったりするなどの対策が必要です。
急に会社名が変わってしまうと周囲が驚くので、事前に告知のスケジュールを考えておきましょう。
⑤希望どおりの売却先が見つからない
会社譲渡をはじめ、事業譲渡などを利用してM&Aを実施する際によくあるリスクとして、募集を行っても「売却先が見つからない」というものが挙げられます。
売却先をスムーズに見つけることができないと、結果的に廃業に追い込まれてしまう可能性もゼロではありません。
スムーズに株式譲渡・事業譲渡の交渉相手を見つけたいという方は、優秀なM&A仲介会社のネットワークを駆使して、自社を買収・譲受してくれる企業を募集することをおすすめします。
8. 会社譲渡したあとの流れ
会社譲渡は成立させたらそれで終わりというわけではありません。会社譲渡を実施したあと、対象会社の経営者や従業員、関係のあった顧客や取引先がどのようになるのかを解説します。
経営者の流れ
会社譲渡が実施されたあと、対象会社の経営権は譲受会社に移行します。経営権のなくなった経営者の処遇は、以下のいずれかのケースになるはずです。
- 会社譲渡が完了したあと、すぐに退任する
- 譲受企業の相談役や顧問などの役職について、一定期間会社にとどまって、引継ぎ作業などを行う
会社譲渡後の経営者の処遇がどのようになるのかは、M&A交渉を進める中で決定していくことになります。交渉を入念に行い、後悔をしないようにしておきましょう。
経営者・会社が持つ債権・債務・保証など
会社譲渡・株式譲渡を実施した場合、経営者・会社が持つ債権や債務、保証などはすべて、譲受会社に引き継がれます。そのため、経営者は債務・個人保証から解放されることになるでしょう。
ちなみに、「事業譲渡」を実施した場合は、債券・債務・保証がすべて引き継がれるわけではないので、注意が必要です。
従業員の流れ
会社譲渡が実行されると、従業員は全員、譲受側企業に引き継がれることになります。また、基本的に処遇も従来どおりとなるケースが多いです。
一方で、会社譲渡が実施されたあと、リストラの実施や雇用条件の悪化などが起こるケースは滅多にないため安心だといえます。
顧客・取引先の流れ
会社譲渡によって、環境が変化してしまうことで、関係のあった顧客や取引先に迷惑をかけてしまう可能性があります。顧客や取引先に不安を感じさせないように、ケアをすることが大切です。
9. 会社譲渡でかかる税務
会社譲渡・株式譲渡を実施すると税金が発生します。個人が株式を譲渡した場合は「所得税+住民税」が、法人が株式譲渡した場合は「法人税」がかかるのです。税金について覚えておかなければ、あとでトラブルになるので注意しておきましょう。
所得税の金額は、「株式の譲渡所得×15%」で算出できます。住民税の金額は、「株式の譲渡所得×5%」です。
また、法人税の金額は「譲渡益×法人税率(29%~42%)」で求められます。
10. 会社譲渡の相場
会社譲渡を実施する際の「相場価格」について気になる方も多いのではないでしょうか。実際のところ、会社譲渡の相場を断言することは難しいです。
なぜなら、会社譲渡の譲渡金額は対象企業の価値・資産・負債などによって差が出てくるからです。
会社譲渡を実施しようとしている会社の規模やその業界の動向などによって、それぞれの譲渡金額が変わります。「相場価格がこれくらい」と一概に表現できませんが、自社を会社譲渡する際に、どのくらいの譲渡金額になるかということは判断できます。
企業価値算定を行い、自社の譲渡金額がどのくらいの相場になるのかを把握しておけば、実際に会社譲渡手続きを進めていくうえで、相場よりも低い価格で交渉が進むことを未然に防ぐことが可能です。
11. 会社譲渡における売却価格の主な算定方法
上記で、企業価値算定を実施して、自社の売却価額相場を把握しておくことが大切と説明しました。企業価値を算定する方法としては以下のようなものがあるのでご紹介しておきます。
- 時価純資産法
- DCF法
- 類似会社法
それぞれの企業価値算定方法について、順番に確認していきましょう。
時価純資産法
「時価純資産法」は、帳簿上のすべての資産と負債を「時価」で評価し、純資産の金額を計算することで企業価値を算定する方法です。
DCF法
「DCF法」とは、将来のキャッシュフローを「現在価値」に割り引くことで企業価値を算定する方法です。会社譲渡をはじめとしたM&A実施の際に、最もよく利用される算定方法がこの「DCF法」になります。
類似会社法
「類似会社法」とは、会社譲渡の対象となっている会社と「同一業種・同一業界」の上場企業の株価を基にして、企業価値を算定する方法です。
企業価値算定はM&A仲介会社に依頼を!
自社の譲渡価額の相場を把握するために、企業価値算定を実施することは非常に大切ですが、自分だけで行うことは難しいものです。そこで、企業価値算定サービスを提供しているM&A仲介会社に算出を依頼することをおすすめします。
もしM&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。
M&A総合研究所では、無料の企業価値算定サービスを提供しておりますので、会社譲渡をご検討の方や自社の譲渡価額相場をお知りになりたい方は、どうぞお気軽に無料相談をご利用ください。
12. 会社譲渡の案件一覧
現在、M&A総合研究所に登録されている会社譲渡案件をご紹介します。
どのような会社が譲渡希望・買い手募集をしているのか、また、どのくらいの譲渡金額を希望しているのかは以下の案件をご覧ください。
建設会社 | |
---|---|
所在地エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡・売却希望価額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡・買い手募集の理由 | 後継者不足の解消 |
アピールポイント | ・宅地造成、盛土、整地などの土木工事や造成工事、道路改良工事、外構工事など実績が多種 ・1級土木施工管理技士:1名、2級土木施工管理技士:3名 |
イベント企画・運営 | |
---|---|
所在地エリア | 中部 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡・売却希望価額 | 5,000万円〜1億円 |
譲渡・買い手募集の理由 | 戦略の見直し(新規事業への取り組み) |
アピールポイント | ・さまざまな業種や業態からの依頼に対応でき企画力がある ・イベントの口コミにより全国から依頼有り |
給食委託業務 | |
---|---|
所在地エリア | 四国 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡・売却希望価額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡・買い手募集の理由 | 後継者不足の解消 |
アピールポイント | ・大手企業との強固な顧客基盤があるため安定的な売上を毎年確保 ・ほかの大手企業との取引も予定している(業績拡大の予定) |
13. 会社譲渡を成功させるポイント
この章では、会社譲渡を成功させるポイントについて解説していきます。
この章では、譲渡側・譲受側それぞれが、会社譲渡の手続き前・手続きをするときに意識すべきポイントを押さえておきましょう。
- 他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
- 事前準備を入念に行う・タイミングを誤らないこと
- 企業価値評価を行い適正価格の算出をすること
- 簿外債務などを事前に把握すること
- 会社譲渡の専門家に相談すること
それぞれの会社譲渡の成功ポイントとは、どのようなものなのかを見てください。
①他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
会社譲渡を成功させるためには、「他社にはない強み・アピールポイントを持つこと」が大切です。
他社と差別化を図れるようなアピールポイントを提示できれば、スムーズに譲受企業・買い手企業を探し出すことができます。
②事前準備を入念に行う・タイミングを誤らないこと
会社譲渡の手続きに入る前に、「事前準備」を入念に行うことが大切です。「何を目的に会社譲渡を実施するのか」「どのような手法でM&Aを行うのか」などを十分に考える必要があります。
また、会社譲渡のタイミングを誤らないことも重要です。業界の市況が悪いタイミング、自社の業績が悪いタイミングで会社譲渡相手を募集しても、相手が見つからない、企業価値よりも低い金額で交渉が進んでしまうなどのリスクが起こり得ます。
③企業価値評価を行い適正価格の算出をすること
先述したとおり、企業価値評価を実施して、自社の適正価格をしっかり把握しておくことで、過小評価された金額で交渉が進んでしまうことを防ぐことが可能です。
④簿外債務などを事前に把握すること
会社譲渡を成功させるために、「簿外債務などを事前に把握しておくこと」が大切です。簿外債務などを把握するためには、「デューデリジェンス」を徹底します。
⑤会社譲渡の専門家に相談すること
会社譲渡を成功させたい方は、「M&A仲介会社」などのM&A専門家に相談することが大切です。M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーが、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
14. 会社譲渡の際の相談先
「会社譲渡の手続きを安全・スムーズに進めたい」「自社の譲渡価額相場を把握しておきたい」「会社譲渡時の契約書をしっかり作成したい」などとお考えの方は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所では、M&A・事業承継に関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーが、M&Aをフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
15. まとめ
当記事では、会社譲渡とは何か、会社譲渡の手続き方法や流れ、会社譲渡のメリット・リスク、会社譲渡を成功させるためのポイントなどを解説してきました。
【自主的に会社譲渡を検討する理由】
- アーリーリタイアを考えた
- 事業の将来性を感じなくなった
- 新しい事業・会社を起ち上げたくなった
【会社譲渡の流れ】
- M&A仲介会社と契約
- 自社の価値算定
- 譲受企業の募集・決定
- 会社譲渡の手続き
- 会社譲渡の成立
- 会社譲渡の公表
- 会社の引継ぎ
【会社譲渡の手続き】
- 会社譲渡の承認請求
- 取締役会・株主総会の招集
- 会社譲渡契約
- 株主名簿の書き換え請求
- 株主名簿記載事項証明書の交付請求・交付
- 会社譲渡の完了
【会社譲渡のメリット】
- 後継者問題のスムーズな解決
- 売却・譲渡益を得る
- 従業員の雇用を確保する
- 企業を存続・発展させる
- 個人保証や担保の解消
【会社譲渡のリスク】
- 旧経営者として拘束を受ける可能性
- 簿外債務などの発覚や情報漏えいにより破談になる可能性
- 従業員や役員の処遇が交渉時と変わる可能性
- 会社名が変わってしまう可能性
- 希望どおりの売却先が見つからない
【会社譲渡を成功させるためのポイント】
- 他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
- 事前準備を入念に行う・タイミングを誤らないこと
- 企業価値評価を行い適正価格を知ること
- 簿外債務などを事前に把握すること
- 会社譲渡の専門家に相談すること
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