2021年09月04日更新
個人事業を承継した場合に減価償却費を計上する方法を解説
個人事業を事業承継した場合に、後継者が承継する建物や備品などの固定資産の中に減価償却できるものがあれば、減価償却費として経費計上できるので、後継者としては気になるところです。本記事では、個人事業を事業承継した場合に減価償却費に計上する方法について解説します。
目次
1. 個人事業を承継した際は固定資産が重要
個人事業を事業承継した場合は、自動車や建物など事業用固定資産の引継ぎの取扱いが重要になります。
というのは、会計処理を適正に行うことによって、引き継いだ事業用固定資産が減価償却費として経費計上が認められれば、事業を引き継いだ後継者はメリットを受けられるからです。
減価償却できる可能性がある事業用固定資産には、建物、自動車などの車両運搬具、工場や土地、施設などがあります。
個人事業主の事業承継の場合、事業用固定資産の引継ぎには、引き継ぐタイミングによって、先代の事業主が生きている間に引き継ぐ生前贈与と、亡くなってから引き継ぐ相続の場合とがあります。
事業用固定資産の活用、賃借料発生の有無、減価償却や贈与税、相続税などさまざまなことを考慮して、事業用固定資産の取扱いに注意する必要があります。
2. 個人事業を承継した場合に減価償却費を計上する方法
個人事業を事業承継する場合、生前贈与により事業承継するケースと相続により事業承継するケースも多いですが、その際はどのように減価償却すればよいのでしょうか。
ここでは、個人事業を生前贈与により事業承継した場合に減価償却費を計上する方法について解説します。
個人事業の承継は生前贈与が基本
個人事業の事業承継は基本的に生前贈与する形が多いです。というのは、事業や事業用資産の引継ぎなどを行ううえで、先代の事業主が関与するほうが手続きなど事業承継がスムーズに遂行できるからです。
また、事業承継を実施したら、後継者が事業を継続していくことになります。事業に事業用資産を利用する際は、生前贈与により後継者に所有権も移転したほうが都合がよい場合もあります。
建物など事業用固定資産の引継ぎを先代の相続によって行おうとすれば、事業承継後に事業を後継者が行う際に、不動産賃借料などの経費が発生する点をどうするかという点も考慮しなければなりません。(この場合でも、事業のための固定資産の賃貸借、生計を一にする親族からの使用貸借であれば減価償却可能)
他方、事業承継に伴う自動車や建物などの事業用固定資産の承継を生前贈与することにより、減価償却が可能になれば経費計上できるメリットがあります。
ただし、事業用固定資産を生前贈与する場合には、資産価値が高くなる傾向があり、高額な贈与税が発生することもあります。
したがって、贈与税の年間非課税枠や事業承継税制の活用なども含め、よく検討する必要があります。
個人事業を承継した場合に減価償却費を計上する手段
個人事業を生前贈与によって事業承継した場合、事業用固定資産の減価償却費計上における引き継ぐ事業用固定資産に関して、以下のようなルールが決められています。
- 先代事業主の事業用固定資産(償却用資産)の取得時期や取得価額をそのまま引き継ぐ(未償却残高や減価償却累計額も引き継がれる)
- 減価償却費を計算する償却方法は引き継がれないので、事業用固定資産引継ぎ時点で、後継者が減価償却を「定額法」と「定率法」のどちらで行うかを管轄税務署に届け出る(届け出を行わなかった場合は定額法になる)
なお、引き継いだ事業用固定資産には、引継ぎ時点での未償却残高を基準に算出された贈与税が課されます。
高額な贈与税を懸念して、事業用固定資産を事業承継時点で引き継がない場合でも、事業用の貸借(※賃貸借または生計を一にする親族からの使用貸借)と認められれば、減価償却が可能です。
3. 個人事業を相続した場合の減価償却について
ここでは、個人事業を生前贈与ではなく、相続により事業承継した場合の減価償却について解説します。
取得価額は?
減価償却資産の取得価額とは、資産の購入代金および資産を事業用に供するために要した費用を指し、耐用年数と同様に各年度に経費計上する金額を算出する際の基礎になります。
減価償却資産の取得価額から減価償却累計額を控除した金額が未償却残高となり、個人事業を相続により事業承継した場合、減価償却資産の取得価額等は先代の事業主の価額をそのまま引き継ぐことになります。
耐用年数は?
減価償却資産の耐用年数とは減価償却資産が利用に耐える年数をさし、各年度に経費計上する経費の金額を算出する場合の基礎になります。
個人事業を相続により事業承継した場合、減価償却資産の耐用年数は、先代の事業主の耐用年数をそのまま引き継ぐことになります。(※中古資産として扱われることはなく、引継ぎ資産として扱われます。)
減価償却費を算出するうえでは、国が決めている「法定耐用年数」を基準に算出することになります。法定耐用年数は、資産の種類・建物の構造・用途などで違いがあります。
耐用年数が過ぎた事業用資産は事業用資産としては活用できますが、減価償却はできなくなります。したがって、一般的に不動産担保価値などが大幅に低下します。
償却方法は?
相続により個人事業を事業承継したケースでは、被相続人の減価償却の償却方法は引き継げません。
減価償却の方法には、毎年一定金額を償却費として計上する「定額法」、未償却残高を一定割合で償却していく「定率法」の2種類があります。
相続人である後継者は原則として「定額法」になり、「定率法」を選択したい場合は管轄税務署に届け出る必要があります。
定額法は計算が簡単で毎年一定額なので、複数の資産があっても将来の計画が立てやすい特徴があります。
対して、定率法は計算が複雑ですが減価償却費が徐々に逓減していくので、減価償却開始当初は節税効果が期待できます。
どちらの償却方法を選択するかにより経費の計上方法が変わり、収益に影響を及ぼすことにもなるので熟慮して選択しましょう。
4. 個人事業を承継する際に贈与税や相続税を非課税にする制度
個人事業を事業承継する際に、原則として、固定資産を贈与する場合には贈与税、相続する場合には相続税が課税されることになります。(※贈与税の場合には、110万円の非課税枠がありますので、110万円未満の固定資産の贈与であれば贈与税が非課税となります。)
青色申告にかかる事業の後継者として、平成31年1月1日から令和6年3月31日までに都道府県知事から円滑化法の認定を受け、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの贈与・相続等により特定事業用資産を承継した場合に事業承継税制が適用されます。
事業承継税制が適用されると、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税が猶予されます。
5. 個人事業の承継を相談する際はM&A仲介会社がおすすめ
個人事業の事業承継を行う場合、複雑な手続きだけでなく減価償却費の会計処理なども必要になります。
専門的な知識やスキルが求められる場面も少なくないため、個人事業の承継を検討している場合はM&A仲介会社などの専門家に相談することをおすすめします。
個人事業の承継をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&A・事業承継の知識・経験豊富なアドバイザーが専任フルサポートいたします。
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6. まとめ
個人事業の承継を行う場合には、煩雑な引継ぎの手続きが必要となります。また、減価償却費の計上など事業を引き継ぐ者にとっては有利となる会計処理方法もあるので、事前によく検討する必要があります。
専門的な知識が必要であるうえ複雑な手続きも多いので、事業主単独で事業承継を進めてしまうと本業を圧迫する可能性もあります。
個人事業の事業承継をスムーズに進めるためには、M&A仲介会社などの専門家に依頼することをおすすめします。
【個人事業承継の減価償却費の計上方法】
- 事業承継した事業用固定資産は通常通りの減価償却を行う
- 事業承継時点で事業用固定資産を引き継がない場合で、事業用資産としての貸借(賃貸借または生計を一にする親族からの使用貸借)と認められれば減価償却が可能である
【個人事業主の事業承継の場合の償却資産の引継ぎ】
- 先代事業主の事業用固定資産(償却用資産)の取得時期や取得価額をそのまま引き継ぐ(未償却残高や減価償却累計額も引き継がれる)
- 減価償却費を計算する償却方法は引き継がれないので、事業用固定資産引継ぎ時点で、後継者が減価償却を「定額法」と「定率法」のどちらで行うかを管轄税務署に届け出る(届け出を行わなかった場合は定額法になる)
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