【保存版】吸収合併とは?新設合併との違いや事例、メリット・デメリット、登記を解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

会社合併の手法の1つである吸収合併についてまとめました。もう一方の合併である新設合併やほかのM&Aスキームとの違いも含め、吸収合併のメリット・デメリット、手続きの流れやスケジュール、その実務の内容などを解説します。

目次

  1. 吸収合併とは?
  2. M&Aにおける吸収合併と新設合併の共通点・違い
  3. 吸収合併のメリット
  4. 吸収合併のデメリット
  5. 吸収合併の手続きを行う流れ
  6. 吸収合併のスケジュール
  7. 吸収合併で必要な登記・契約書
  8. 吸収合併の事例3選【2021年最新】
  9. 吸収合併後の社員の処遇は?
  10. 吸収合併を経験した人の声
  11. 吸収合併に関する相談先
  12. 吸収合併のまとめ
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1. 吸収合併とは?

合併

M&Aスキーム(手法)の1つである吸収合併とは、一方の会社がもう一方の会社を丸ごと取り込むプロセスです。吸収された会社は解散・消滅し、全ての資産が存続会社に移されます。一般的に、規模の大きい会社が規模の小さい会社を吸収するケースが多いでしょう。

親会社が、子会社を吸収合併するケースもあります。子会社を吸収合併すれば、事業のシナジー効果やコスト削減が実現可能です。

会社合併には、新設合併という方法もありますが、多くの場合、吸収合併が行われています。

吸収合併の英訳

吸収合併の英語表現は、「Absorption-type Merger」、あるいは「Absorption Merger」になります。「Absorption」が吸収、「Merger」が合併という意味です。「Merger by Absorption」「Merger through Absorption」と表記される場合もあります。

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2. M&Aにおける吸収合併と新設合併の共通点・違い

会社合併のもう1つの方法である新設合併と吸収合併の違いを確認します。両者の得られるメリットは共通していますが、株主への対応や許認可の移転などが相違点です。

新設合併とは?

新設合併とは、新設会社を作り、複数の既存の会社を解散して新設会社に全ての資産を移す合併方法です。新設会社として新たなスタートになるので、吸収合併に比べて新設合併はデメリットが多く、新設合併の件数は非常に少なくなっています。

吸収合併と新設合併の共通点

吸収合併と新設合併をすれば、どちらも合併後に商品やサービス、技術や人材を合わせて、より良い商品やサービスが提供できる可能性を高められます。両社の顧客や取引先、店舗などの販売網を統合すれば、市場シェアを広げられます。

存続会社や新設会社の資本力や成長性をアピールすることにもつながり、市場の期待と信用を得られるのが共通点です。

吸収合併と新設合併の違い

吸収合併の場合、消滅会社の株主は、存続会社から現金、存続会社の株式・社債・新株予約権のうちどれかを受け取ります。一方、新設合併の場合、消滅会社の株主が受け取るのは、新設会社の株式・社債・新株予約権のいずれかです。

吸収合併は現金での受け取りが可能で、新設合併は現金での受け取りが不可能という点に違いがあります。吸収合併の場合、存続会社が消滅会社の株主に現金を渡しても、存続会社には既存の株主がいるので問題がありません。

しかし、新設合併の場合は、新設会社の株主に現金を渡すと新設会社の株主がいなくなってしまうので、新設会社の存続に問題が生じます。そのため、吸収合併の対価では現金が可能ですが、新設合併では現金の受け渡しが不可能です。

新設合併の場合は、新設会社に許認可や免許は引き継がれません。新設会社になってから、改めて許認可や免許の取得が必要です。消滅会社が上場企業だったとしても、その立場は引き継がれず、新たに上場申請するしかありません。
 

  共通点 違い
吸収合併 ・事業シナジー効果
・コスト削減
・市場の信用が得られる
・消滅会社の株主は存続会社から現金・株式・社債・新株予約権のいずれかを受け取る
・許認可や免許の申請は不要(一部業種では必要)
新設合併 ・事業シナジー効果
・コスト削減
・市場の信用が得られる
・消滅会社の株主は新設会社から株式・社債・新株予約権のいずれかを受け取る
・許認可や免許の申請が必要

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3. 吸収合併のメリット

ここでは、吸収合併のメリットを考えます。「組織の統合に関するメリット」と「金融・資金調達に関するメリット」という2つの側面で見てみましょう。

組織の統合に関するメリット

吸収合併における組織の統合に関する主なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 統合効果がスピーディーに得られる
  • 対等な立場でのM&Aをアピールできる
  • 事業に関する権利義務を包括的に承継できる

統合効果がスピーディーに得られる

別のM&Aスキームである株式譲渡などによって子会社化・グループ会社化した場合と比べて、吸収合併は1つの会社組織に全てが統合されるため、M&Aの狙い・目的の効果がより早く得られるのが特徴です。別組織・別会社のままでは、統合効果に一定時間を要します。

対等な立場でのM&Aをアピールできる

これも株式譲渡との比較です。株式譲渡では、グループ会社といっても一方は親会社、一方は子会社という関係になります。吸収合併の場合、存続会社と消滅会社という立場の違いは生じますが、合併比率1:1の対等合併であれば、親子会社にあるような従属関係はありません

合併後の役員構成や経営など、全て対等な立場で運営されていきます。

事業に関する権利義務を包括的に承継できる

たとえば、事業譲渡というM&Aスキームでは、事業や関連資産を買収できますが、それに関する権利義務は個別に取得しなければならないため、非常に煩雑な手間がかかります。一方、吸収合併では、消滅会社の事業について全て包括承継するので、そのような手間は生じません。

金融・資金調達に関するメリット

吸収合併における金融・資金調達に関する主なメリットは、以下の2点です。

  • 買収に資金調達を必要としない
  • 消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性

買収に資金調達を必要としない

吸収合併では、その対価として、現金以外に株式・社債・新株予約権などを用いられます。株式譲渡や事業譲渡では現金しか対価にできませんから、買い手となるにはその資金を用意しなければなりません。一方、吸収合併では、現金を調達せずとも実施が可能です。

消滅会社の繰越欠損金を引き継げる可能性

会社法で規定された要件を満たして吸収合併を行った場合、適格組織再編・適格合併と認められます。適格合併では、消滅会社の資産・負債を簿価で引き継げるのがメリットです。これは、実質的に税務上の優遇措置を得たのと同じ効果があります。

消滅会社に繰越欠損金があるとき、適格合併であればこれも引き継げるため、さらに税務上の節税効果が得られるのです。

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4. 吸収合併のデメリット

吸収合併でも残念ながらデメリットはあります。

組織の統合に関するデメリット

組織の統合に関しては以下のようなデメリットがある点をきちんと認識しておかなければなりません。

  • 膨大かつ複雑な手続きが求められる
  • 経営統合(PMI)に大きな負担がかかる
  • 当事会社間で顧客が被っていると取引縮小のおそれ

以下では、その詳細について記載します。

膨大かつ複雑な手続きが求められる

実施の際に手続き面で吸収合併と株式譲渡を比較してみます。株式譲渡は、売り手企業の株式を売買する取引ですから、手続きはシンプルに完了し、大きな手間はかかりません。

一方、吸収合併では、存続会社以外は消滅するなどの事情があることから、手続きの進め方について会社法上で細かく規定されています。手続きの種類も多く事務方の負担は多大です。一例として以下のような手続きがあります。

  • 吸収合併契約書などの関係書類の開示と本店での備え置き
  • 合併公告(官報への掲載)
  • 株主総会の招集・開催・特別決議
  • 債権者保護手続き
  • 反対株主への対応
  • 消滅会社の解散登記

経営統合(PMI)に大きな負担がかかる

M&A後の経営統合プロセスのことをPMI(Post Merger lntegration)といいます。M&Aでもくろんだ統合成果を得るためには、このPMIが有効に行われなければなりません。ただし、複数の会社が突然、1つの会社になるわけですから、これをまとめ上げる労力は大変なものがあります。

具体的には、以下のような事項を統合しなければなりません。

  • 社風・企業風土
  • 各業務システム
  • 組織再編・配置再編(重複組織や人員をどうするか)
  • 人事制度
  • 経理・総務などの管理システム
  • IT部門

当事会社間で顧客が被っていると取引縮小のおそれ

一般に、それぞれの企業には固有の顧客がついているはずですが、2つの企業が統合すれば、同じ顧客の取り合いになります。

その場合、取引の規模が縮小する可能性があるので、事前にそれぞれの顧客情報を共有しておかなければなりません。

統合当事会社間で顧客がかぶっていると取引縮小が縮小した結果として、統合のメリットであるシナジー効果を十分に得られない可能性がある点に注意が必要です。

金融・資金調達に関するデメリット

吸収合併に伴って、企業のファイナンス活動(金融・資金調達)に関するデメリットが生じる可能性がある点も忘れてはなりません。

金融・資金調達に関して、代表的なデメリットとして以下の3つを挙げられます。

  • 株式の現金化が困難となる可能性
  • 買収側株主の持株比率が低下するおそれ
  • 簿外負債・偶発債務など不要な資産の承継リスク

以下では、その詳細について記述します。

株式の現金化が困難となる可能性

吸収合併における消滅会社株主の受け取る対価が株式である場合、仮に存続会社が非上場企業だと、上場株式のように株式市場での取引はできません。したがって、対価で得た株式を現金化したい事情ができたときに、その手段が限られます。

具体的には、存続会社およびその関係者に株を売るしかありません。その場合、簡単に希望額で売却できず、結果的に現金化に困る事態があり得ます。

買収側株主の持株比率が低下するおそれ

株式を対価として合併が行われると、現金の支出なしで吸収合併できますが、存続会社の株主の持分比率が低下します。

したがって、割高な合併比率で吸収合併が行われると、株主にとってはネガティブな経済的帰結を招く可能性があるので注意が必要です。

たとえば、上場企業の場合、株価が下落する恐れもあり、合併比率の算定は慎重に行わねばなりません。

簿外負債・偶発債務など不要な資産の承継リスク

消滅会社に簿外負債や不要な資産が存在する可能性があります。

たとえば、法的な訴訟を起こされる可能性が高い企業を吸収合併した場合、帳簿上負債は認識されていませんが、訴訟によって会社の資産が流出する可能性が高くなります。

これは一般に偶発債務と呼ばれますが、こうしたリスクの評価は極めて難しいため注意が必要です。

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5. 吸収合併の手続きを行う流れ

吸収合併の手続きは、以下のような流れで進めます。

  • 吸収合併契約を締結するための取締役会決議
  • 吸収合併契約の締結
  • 債権者に対する異議申述公告・個別催告
  • 事前開示書類据置
  • 株式買取請求に係る株主への通知または公告
  • 株主総会招集手続き
  • 株主総会決議
  • 合併の効力発生
  • 事後開示書類の据置
  • 吸収合併の変更登記

上記のプロセスのうち、特に以下の手続きについて、その内容を説明します。
  1. 吸収合併契約の締結
  2. 債権者に対する異議申述公告・個別催告
  3. 書類の事前備置
  4. 株式買取請求に係る株主への通知または公告
  5. 株主総会招集手続
  6. 合併契約の承認
  7. 合併の効力発生
  8. 外部への通知
  9. 事後開示書類据置
  10. 登記申請

①吸収合併契約の締結

まずは吸収合併する当時会社同士で合併契約を結びます。ここから吸収合併の本格的な合併プロセスが始まります。契約が結ばれない限り、合併プロセスは開始されません。

合併契約では、効力発生日や、存続会社が消滅会社の株主に対価として現金、株式、社債のどれを渡すのかなどを決定し記載します。

②債権者に対する異議申述公告・個別催告

債権者は、合併によって債権の回収可能性が変化します。したがって、合併当事者となる企業は、合併効力発生日の1ヶ月前までに債権者に対して異議申述公告・個別催告を行わなければなりません。

③書類の事前備置

合併によってどの程度債権の回収可能性が変化する可能性があるかを確認できるようにするために、企業は合併に際して、事前開示書類の据置きが必要となります。

事前開示書類は、合併の効力発生日からいつでも確認できるようにするため、6ヶ月を経過する日まで据置かなければなりません。

④株式買取請求に係る株主への通知または公告

合併の効力発生の20日前までに、株式買取請求権に関する株主への通知・公告を行う必要があります。株式買取請求権は、合併によって既存株主が不利益を被らないようにするための制度です。

会社法では、合併に反対する株主は、自身が保有している株式を買い取るように会社に請求できます。

⑤株主総会招集手続

合併に際しては、会社の最高意思決定機関である株主による意思決定が必要となるので、その招集手続きを行わねばなりません。これを株主総会招集手続きといいます。

株主総会の招集は、その開催日の1週間前までに行わねばなりません。

⑥合併契約の承認

吸収合併を行う場合は、効力発生日までに株主から特別決議の承認を得なければなりません。株主に株主総会への招集通知を送り、株主総会決議で承認を得ます。ただし、簡易吸収合併に該当する場合は、株主総会での承認は必要ありません。

吸収合併する際は、官報公告に申し込んで債権者に告知する必要があります。その際に、債権者からの異議申し立てを受け付けるのも告知します。債権者への個別告知は省略できますが、大企業の場合などは官報広告と債権者への個別告知を同時に行うケースが多いでしょう。

存続会社・消滅会社ともに、債権者保護のために合併に関する情報を記載した書類を会社に設置する手続きが必要です。書類の内容は会社法で定められています。合併契約の内容や、消滅会社株主への対価に関する書類などが両社に置かれ、一定期間、閲覧可能にしなければなりません。

⑦合併の効力発生

合併契約書において事前に取り決めておいた合併効力日に、合併の効力が発生します。逆にいえば、契約書で取り決めた合併効力日にならないと、合併の効力は生じません。

組織再編行為のなかで、合併行為は権利・義務の発生と消滅を伴うものですから、合併によって発生と消滅が発生する日はいつなのかを明確に定めておく必要があるのです。

合併すれば、消滅会社の権利・義務が存続会社に継承され、消滅会社の権利・義務は消滅します。

⑧外部への通知

吸収合併の効力発生日に合わせ、対外的な通知も行わなければなりません。以下に「一般的な通知文」と「子会社が親会社に吸収合併される場合」の通知文の文例を掲示します。

一般的な通知文

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 
平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
この度、株式会社〇〇と〇〇株式会社は株式会社〇〇を吸収存続会社、弊社を吸収消滅会社として、令和〇〇年〇月〇日付で合併いたします。

本合併により、経営基盤の強化並びに品質のさらなる向上を図ることにより強固な経営基盤を構築し、お客様をはじめ、全ての皆様にこれまで以上のサービスを提供して参る所存でございますのでお取引先各位におかれましては引き続き変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

まずは、略儀ながら書中をもってご通知かたがた合併のご挨拶を申し上げます。 敬具

子会社が親会社に吸収合併される場合

謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り心より御礼申し上げます。

弊社はこの度、令和〇〇年〇月〇日をもって親会社である株式会社〇〇〇〇に、全ての事業を引き継ぐことといたしましたので、お知らせいたします。
なお、本件合併は、株式会社〇〇〇〇を存続会社とする吸収合併であり、同日をもって、子会社である当社は解散いたします。

当社の事業は株式会社〇〇〇〇の一事業として継続し、より一層充実したサービスを提供してまいる所存でございます。
本件合併により、経営の効率化、技術力の向上、営業力の強化を図り、高品質なサービスの運営をさらに推し進めてまいります。

皆さまには、今後も一層のご愛顧お引き立てを賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもって、ご通知かたがた合併のご挨拶申し上げます。


謹白 
〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇

⑨事後開示書類据置

合併の効力が発生した後、会社は遅滞なく事後開示書類の据置を行わねばなりません。

この事後開示書類についても、事前開示書類と同じように、合併効力発生日から6ヶ月にわたって据置きしなければならないと、会社法で規定されています。

⑩登記申請

吸収合併の効力が発生した後は、存続会社が登記申請を行います。消滅会社の解散登記も同時に行わなければなりません。

登記に必要な書類

登記の際に必要な書類の一覧です。状況に応じて必要な書類と必要ではない書類があります。法務省で案内している必要書類のテンプレートは、会社の実情によって変更が可能です。

書類名 内容
株式会社合併による変更登記申請書 登記申請の署名
合併契約書 合併契約の内容証明
合併に関する株主総会議事録 株主総会を行った証明
株主の氏名または名称、住所および議決権数などを証する書面(株主リスト) 株主の氏名・名称、住所、株式数
議決権数とその割合
取締役会議事録 簡易合併を行う場合に取締役会を行った証明
略式合併または簡易合併の要件を満たすことを証する書面 簡易合併の要件を満たす証明
簡易合併に反対の意思の通知をした株主がある場合における会社法第796条第3項の株主総会の承認を受けなければならない場合は該当しないことを証する書面 簡易合併に反対の意思を示した株主がいた場合に添付
公告および催告をしたことを証する書面 債権者への公告、個別催告の内容証明
異議を述べた債権者に対し弁済若しくは担保を供し若しくは信託したことまたは合併をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面 合併への異議申述書、弁済金受領証書
消滅会社の登記事項証明書 消滅会社に関する登記事項の証明
株券提供公告をしたことを証する書面 株券提供を求める公告をしたことの証明
新株予約権証券提供公告をしたことを証する書面 新株予約権証券の提供を求める公告をしたことの証
資本金の額の計上に関する証明書 資本金増加額が間違いないことの証明
登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書 資本金の額が増加する場合に添付
取締役および監査役の就任承諾書 株主総会で取締役や監査役に選ばれたことの承諾
印鑑証明書 印鑑証明
本人確認証明書 本人確認
認可書(または許可書、認証がある謄本) 許可証
委任状 原本還付の請求をする場合に記載
<出典:株式会社合併による変更登記申請書(法務局 - 法務省)

登録免許税の支払い

吸収合併を行った際は、存続会社で登録免許税の支払いが発生します。支払額は資本金によって変わりますが、吸収合併しても資本金の額が増加しなかった場合は、30,000円固定です。

吸収合併によって資本金額が増加した場合は、増加した分の資本金に1,000分の1.5をかけた金額が登録免許税額になります。この際、算出した金額が30,000円に満たない場合は、30,000円が税額です。

増加した資本金の額が消滅会社の資本金額を超えたときは、超えた分の資本金に対して1,000分の7をかけます。つまり、存続会社の資本金分に対しては1,000分の1.5をかけ、消滅会社の資本金を超えた額に対して1,000分の7をかけた額を加算します。

以下の前提で計算例を見てみましょう。
・存続会社の資本金:3,000万円
・消滅会社の資本金:2,000万円
・合併後の資本金:6,000万円
・増加資本金3,000万円のうち、消滅会社の資本金額超過分:1,000万円

登録免許税の計算例
2,000万円×1.5/1,000=30,000円
1,000万円×7/1,000=70,000円
30,000円+70,000円=100,000円
この場合の存続会社が支払う登録免許税は、100,000円です。

消滅会社の登録免許税は、廃止・解散登記なので一律30,000円です。下表に概要を掲示します。
 

項目 内容 課税標準 税率
合併、組織変更などの登記 合併または組織変更若しくは種類の変更による株式会社、合同会社の設立または合併による株式会社、合同会社の資本金の増加の登記 資本金の額、増加した資本金の額 1,000分の1.5
(合併により消滅した会社または組織変更若しくは種類の変更をした会社の当該合併または組織変更若しくは種類の変更の直前における資本金の額として一定のものを超える資本金の額に対応する部分については1,000分の7)
(3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円)
登記事項の変更、消滅若しくは廃止の登記   申請件数 1件につき3万円
<出典:登録免許税の税額表(国税庁)

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6. 吸収合併のスケジュール

一般的な吸収合併のスケジュールを表にしました。4月上旬に吸収合併契約締結が承認され、手続きが順調に進んで6月に効力が発生した場合のスケジュールになっています。

4月上旬に吸収合併契約が承認されるスケジュールとすると、3月のスケジュールは債権者に向けた説明などの準備期間です。4月中旬には、合併契約の締結や官報公告に掲載申し込みをします。4月下旬のスケジュールは債権者への催告、契約書などの準備です。

5月には株主総会に関するスケジュールを組みます。5月上旬に株主総会への招集通知を送ると、5月下旬には株主総会を開催する流れです。順調に進めば、6月には登記申請まで完了します。

ただし、必ずしもスケジュールどおりに進むとは限らないので、スケジュールが変更になる場合の準備も必要です。
 

日程 存続会社 消滅会社
3月中旬 準備期間(債権者への説明) 準備期間(債権者への説明)
4月上旬 吸収合併契約締結の承認 吸収合併契約締結の承認
4月中旬 吸収合併契約の締結、
官報公告の掲載申し込み
吸収合併契約の締結、
官報公告の掲載申し込み
4月下旬 官報公告の掲載、債権者への個別催告、
契約書などの準備
官報公告の掲載、債権者への個別催告、
契約書などの準備
5月上旬 株主に株主総会への招集通知発送 株主に株主総会への招集通知発送
5月下旬 株主総会で吸収合併契約の承認決議 株主総会で吸収合併契約の承認決議
6月上旬 債権者異議申述期間満了、
吸収合併の効力発生
債権者異議申述期間満了、
吸収合併の効力発生
6月上旬
以降
合併の登記申請~合併完了 解散登記申請

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7. 吸収合併で必要な登記・契約書

吸収合併では、合併により消滅する会社のすべての権利・義務を合併後に存続する会社(存続会社)に継承させます。

合併によって1つの会社が消滅しますし、存続会社は、合併の対価を支払って、権利・義務を包括的に継承するリスクを負います。

吸収合併を行うにあたっては、権利・義務が継承されると同時に、会社が消滅した証拠を残しておかなければ、合併後にトラブルが起きかねません。

以下では、吸収合併で必要な登記・契約書について説明します。

吸収合併の登記申請手続き

吸収合併を行った場合、合併の効力が発生した日から数えて2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に行わなければなりません。2週間という期限が設けられている理由は、あまりに登記が遅いと消滅企業の利害関係者にネガティブな影響を与える可能性があるからです。

以下では、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記について詳しく説明します。

存続会社の登記申請手続き

吸収会社は、法務局に、「株式会社合併による変更登記申請書」を提出しなければなりません。

この変更登記の申請書には、合併したこと、そして、吸収合併による消滅会社の商号および本店を記載します。吸収合併の際に、合併の対価として株式を交付している場合、発行済株式の総数並びに資本金の額を登記する必要があります。

変更登記には、合併契約書や取締役会議事録、公告および催告をしたことを証する書面、消滅会社の登記事項証明書、委任状などを添付しなければなりません。したがって、書類への記入だけではなく、添付書類の準備も必要となります。

消滅会社の登記申請手続き

消滅会社は、吸収合併の効力発生日から2週間以内に本店所在地を管轄している法務局に消滅登記申請を行わなければなりません。この消滅登記申請は、株式会社合併による解散登記申請書に記載します。

解散登記申請書によって行われる行為が、解散登記と呼ばれるものです。解散登記申請書は基本的に、吸収合併存続会社の変更登記と同時に行われる必要があります。

消滅会社では、解散登記代金として3万円の支払いが必要となりますが、関連書類の添付は必要ありません。

吸収合併の登記に係る登録免許税額

消滅会社の消滅登記には、その登録のための手数料として登録免許税を支払う必要があります。その額は3万円です。

一方、存続会社は、吸収合併によって資本金が増えている場合、つまり、合併対価として株式を交付している場合には、その0.15%の登録免許税がかかります。

ただし、この場合でも、資本金の増加額が消滅会社の資本金を超えていれば、超えた部分に対応する登録免許税は0.7%となります。

この計算の結果として、存続会社が支払わなければならない登録免許税額が3万円を下回っても、登記に際しては登録免許税を3万円支払わなければなりません。

つまり、存続会社は最低3万円を登録免許税として支払わなければならず、資本金の増加額に応じて、それ以上に登録免許税を支払わなければならない場合もあります。

吸収合併の契約書における記載内容

吸収合併に際しては、当事者企業の間で、どのような取引が行われたのかに関する記録をきちんと残しておかなければなりません。その中でも重要なのが、吸収合併に係る契約書です。

この契約書の記載事項は、法定記載事項と任意的記載事項に分かれており、法定記載事項は必ず記載しなければなりませんし、任意的記載事項は、記載しなければならないものではないものの、実務上、よく契約書に記載されるものです。

以下では、その詳細についてわかりやすく解説します。

法律で規定されている記載内容

吸収合併を行う際の契約書に記載しなければならないのは以下事項です。

各項目は、会社法によってそれぞれ規定されているので、必ず契約書に記載しなければなりません。

  • 合併当事者の商号、住所(会社法第749条第1項第1号)
  • 吸収合併消滅会社の株主に対して交付される吸収合併の対価と、株主への割当てに関する内容(会社法第749条第1項第2号・第3号)
  • 吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して交付される吸収合併存続会社の新株予約権または金銭の内容と、新株予約権者への割当に関する事項(会社法第749条第1項第4号・第5号)
  • 吸収合併の効力発生日(会社法第749条第1項第6号)

なお、会社法第749条第1項第2号・第3号および第749条第1項第6号は、合併契約のなかでも最も重要な事項です。契約書に必ず記載しなければなりませんが、第749条第1項第2号・第3号と第749条第1項第4号・第5号は、該当するものがない場合もあります。その場合、記載する必要はありません。

任意で記載する内容

吸収合併契約を行う場合、上の事項については必ず契約書に記載しなければなりません。会社法で記載が求められているからです。

しかし、法定記載事項以外を契約書に盛り込んではいけないというルールはありません。したがって、法定記載事項以外にも、契約当事者間で重要であると考えた事項については記載できます。

その代表的な任意の記載事項は次のとおりです。

  • 変更する存続会社の定款変更に関する事項
  • 就任する存続会社の取締役その他の役員の選任に関する事項
  • 効力発生日までにおける剰余金の配当の制限に関する事項
  • 効力発生日までにおける、増資・減資、新株発行、組織再編その他株主に利害関係のある重要事項に関する事項
  • 退任する取締役その他の役員に対する退職慰労金の支給に関する事項

吸収合併契約と法定外契約の違い

吸収合併契約は、吸収合併に関する契約となりますが、合併の際には、それ以外の契約を結ぶ場合があります。契約によって、合併や統合プロセスで行う内容を明確化するのです。

この契約は、吸収合併に関する法律によって契約を結ぶのを求められていないので、法定外契約と呼ばれます。

経営統合契約などがその代表的な例です。経営統合契約には、吸収合併に関する契約以外に、経営統合の準備体制に関する記述、合併契約後の経営体制・ガバナンスなどの事項が盛り込まれます。

8. 吸収合併の事例3選【2021年最新】

ここでは、上場企業またはその子会社が実施する吸収合併について、直近で発表された3事例を取り上げます。

  1. 綜合警備保障による子会社ALSOKリースの吸収合併
  2. ライドオンエクスプレスによるライドオンデマンドの吸収合併
  3. 東宝による連結子会社の萬活土地起業の吸収合併

①綜合警備保障による子会社ALSOKリースの吸収合併

①綜合警備保障による子会社ALSOKリースの吸収合併

綜合警備保障

出典:https://www.alsok.co.jp/

綜合警備保障は、子会社ALSOKリースを2022(令和4)年4月に吸収合併するのを発表しました。綜合警備保障は、セキュリティ事業、総合管理・防災事業、介護事業などを行っています。

綜合警備保障の完全子会社であるALSOKリースは、綜合警備保障グループの顧客に警備機器や防災機器などのリースおよび割賦販売を行ってきました。綜合警備保障としては、グループの体制を効率化させるため吸収合併を決断した模様です。

なお、完全親子会社間の吸収合併であるため、本件吸収合併は、簡易合併・略式合併として手続きが行われます。したがって、対価の発生はありません。

②ライドオンエクスプレスによるライドオンデマンドの吸収合併

②ライドオンエクスプレスによるライドオンデマンドの吸収合併

ライドオンエクスプレスホールディングス

出典:http://www.rideonexpresshd.co.jp/

ライドオンエクスプレスホールディングスは、完全子会社であるライドオンエクスプレスとライドオンデマンド間で、2022年4月に吸収合併を行うのを発表しました。ライドオンエクスプレスが存続会社、ライドオンデマンドが消滅会社です。

ライドオンエクスプレスホールディングスは、グループとして寿司・弁当などの宅配事業や提携レストランの宅配代行事業を行っています。その中で、ライドオンエクスプレスとライドオンデマンドは、ともに宅配事業を行ってきました。

ライドオンエクスプレスホールディングスとしては、昨今、事業環境の変化が著しい宅配事業において、機動的で効率的な対応を取るために、経営資源の集中を図ることが第一と判断し、この吸収合併の決定をしています。

なお、完全子会社同士の合併であるため、対価は発生しません。

③東宝による連結子会社の萬活土地起業の吸収合併

③東宝による連結子会社の萬活土地起業の吸収合併

東宝

出典:https://www.toho.co.jp/company/index.html

東宝は、株式56.87%を有する連結子会社の萬活土地起業を2021(令和3)11月に吸収合併するのを発表しました。東宝は、映画の製作・売買および賃貸、 演劇の企画・製作および興行、 土地・建物の賃貸借などの事業を行っています。

萬活土地起業は、長崎市・熊本市・鹿児島市に所有する5つのビルの賃貸事業を行ってきました。東宝では、その子会社TOHOシネマズも萬活土地起業の株式17.7%を所有しています。東宝としては、不動産事業の運営を集中させ、効率化を図る考えです。

なお、連結子会社対象の吸収合併であるため、本件吸収合併は、簡易合併として手続きが行われます。東宝グループ以外の株主に対しては、対価として「東宝0.8:萬活土地起業1」の割合で、東宝の自己株式と交換される予定です。

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9. 吸収合併後の社員の処遇は?

吸収合併後は、存続会社の労働条件で働きます。子会社化の場合は労働条件の違いで不満が出る場合もありますが、吸収合併では同じ労働条件になるのがメリットです。子会社ほどの不平等感はありません。

しかし、消滅会社から存続会社に移る際に労働条件は変わるので、労働条件の内容によっては条件が悪くなるデメリットもあります。そこで、合併後のPMI計画をしっかりと組み立て、統合後に不遇な社員や不満を持つ社員を極力出さないのが重要です。

特に消滅会社における役員の待遇は、事前にしっかりと練っておかなくてはいけません。合併をきっかけにモチベーションが下がる役員や、他社から引き抜きの話がくる役員がいます。

吸収合併では、優秀な社員や役員などの人材によるシナジー効果のメリットも大きいので、専門家と協力して十分なPMI計画を練り、社員の処遇を丁寧に行う必要があります。

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10. 吸収合併を経験した人の声

実際に吸収合併を経験した人の体験談を集めました。消滅会社側の社員、存続会社側の社員、消滅会社元社長の事例を紹介します。

人事部女性(消滅会社側)

吸収合併で配置転換され、それまでほとんど経験のない業務を担当しました。配置転換された人たちの中には、会社を辞める人も出ています。表面上は同じ会社の社員ですが、内情は大きな距離感がありました。肩身の狭い思いをしていますが、何とか続けています。

契約社員女性(存続会社側)

吸収合併後も業務内容は変わらず、人間関係も比較的良好でした。ただ、合併をきっかけに業務システムや社内ルールが変わったので、慣れるのに時間がかかりました。

会社風土の違いもあってしばらくはゴタゴタしていましたが、どちらの社員も今は新しい環境に慣れて違和感なく仕事ができています。

元ベンチャー企業経営者(消滅会社側)

主にインターネット広告の販売代理を行うベンチャー企業を経営していました。某大企業に吸収合併され、もともとの事業は大企業側の社員が担当し、私は新たに立ち上げる社内ベンチャーの代表を任されたのです。

社内から好きな人材を引き抜いてもよいといわれ、優秀な社員とともに仕事を開始しました。しかし、大企業側の社員は好奇の目や冷たい目で見る人も多く、しばらくは仕事がしづらい環境だったものです。

何かと承認が必要だったり短期間での結果を求められたりするので、モチベーションは下がるばかりでした。マネタイズできるようになってからは何もいわれなくなりましたが、一時期は辞めることばかり考えていたのは事実です。

【関連】吸収合併の際、退職金はどうなる?勤続年数や社員・役員で処遇が違う?

11. 吸収合併に関する相談先

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12. 吸収合併のまとめ

吸収合併とはどのような手法なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかなど、さまざまな面から解説しました。合併には吸収合併と新設合併がありますが、メリット・デメリットの比較から吸収合併が主流です。

吸収合併は、事業譲渡や株式譲渡とは違って1つの法人格になるので、より協力関係が築きやすいメリットがあります。事業シナジーやコスト削減ができる点もメリットです。ただし、吸収合併の手続きは複雑で幅広いため、広い知識と豊富な実務経験が求められます。

社員や株主の不満にも考慮して動かなければなりません。したがって、吸収合併の成否は、優秀なM&Aコンサルタントに依頼できるかどうかが分水嶺になるといえるでしょう。

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