建設業界のM&A動向!買収・売却事例30選、譲渡案件、メリットも紹介【2021年最新】

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執行役員 企業情報第一部 部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

建設業界・ゼネコン業界におけるM&Aの動向として、建設業界・ゼネコン業界が持つ他産業にはない特異な体質のため、M&Aは積極的に進んでいませんでした。建設業界・ゼネコン業界におけるM&Aの動向を、業界の実情などを交えながらまとめます。

目次

  1. 建設業界とは
  2. 建設業界のM&A動向
  3. 建設業界のM&A・買収・売却事例30選!
  4. 建設業界でM&Aを行うメリット
  5. 建設業界でM&Aを成功させるポイント
  6. 建設業界のM&A・売却・譲渡案件
  7. 建設業界のM&Aまとめ
  • 建設・土木会社のM&A・事業承継

1. 建設業界とは

建設業界・ゼネコン業界のM&Aを解説する前に、建設業界の業界定義や現在の状況を見ていきましょう。

建設業界の定義

建設業は、建設業法で定義づけされており「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう」(第2条第2項)となっています。

また、建設業法第2条柱書および別表第1では、29業種が建設工事に定められています。

建設業界は大きく分けると、横断的に工事を請け負う総合建設業(土木・建築)と専門的分野を請け負う職別工事業(専門工事業)です。

建設業界の商流

ゼネコン業界や建設業界など建設会社の商流は、どのような流れなのか簡単に説明します。

請負・下請契約の商流

発注者から仕事を受注する建設会社の元請け会社と、元請け会社から見合った工事を受注する建設会社の下請け会社が存在します。

元請け会社は施主となる発注者から工事名や工事場所、工期そして請負金などを締結するのです。また、約款や設計図書などの工事に必要な書類全般も作成します。

下請け会社は、元請け会社との下請契約を締結していることを条件に、仕事を請け負うことが可能です。また、下請会社が不利な条件を被らないよう建設業法令遵守ガイドラインなどの法律が定められています

建設業全体の商流

建設業界の全体的な商流としては、元請会社が営業などから仕事を発掘すると発注者に対して予算見積もりなどを作成し締結します。

その後、下請けの建設会社などに仕事を振り分けて、請け負った工事を完成後引き渡しする形です。

建設会社の発注者は、国や地方などの公共団体から請け負う公共工事と民間企業や個人から請け負う民間工事に大きく分かれます。

公共工事の場合は、主に入札で工事請負価格が決定します。民間工事の場合は、予算金額などに合わせた見積もりなどから締結するのです。

事業特性

どのような業界にもそれぞれの特性が存在します。ここでは、建設業界の事業特性を簡単に説明します。

受注生産

建設業界が生産する全ての物は、受注生産型です。発注者から建設会社が請け負い、発注者からの注文に合わせ、さまざまな構造や形態に対して工事を行うからです。

そのため、類似した工事は存在しますが、全く同じものの構築はほぼありません。

公共工事などの入札

建設工事が他の業界と大きく違う特性の一つに、公共工事の存在があります。公共工事は、入札参加資格を申請し保有する建設会社が受注できるのです。

発注者である公共団体が定めた算出方法で導かれた予定金額の範囲内で、基本的に価格が一番安い建設会社に仕事を発注します。

多段階の請け負い体制

建設業界は、元請け会社と下請け会社から成り立つピラミッド構造です。このピラミッドは、下へ行くほど広く形成されます。

下請け会社の受注段階は、元請けから一次下請け、一次下請けから二次下請け、さらに三次下請けといくつにも下請けが重なるケースがあります。

建設業界の主要企業

建設会社は国内に数多くありますが、スーパーゼネコンと呼ばれる建設会社は大林組、大成建設、鹿島、清水建設、竹中工務店の5社のみです。

いずれの建設会社も創業から100年以上の長い歴史をもち、技術力と開発力は国内でも飛びぬけています。その実績は、海外の建設事業にいたるほどです。

建築業を主な生業とする建設会社で大手と呼ばれるメーカーは、積水ハウスと大和ハウス工業です。いずれの会社もスーパーゼネコンをしのぐ完工高を実現しています。

また、スーパーゼネコンに次ぐ売上の準大手ゼネコンと呼ばれる建設会社も売上規模が大きく、それぞれ多くの実績があります。

建設業界の動向データ

日本の雇用を支える建設業ですが、建設業界の動向はどのようになっているのでしょうか。データを基に紹介します。

建設業許可業者の推移

国土交通省が発表した建設業許可業者数調査の結果によると、2020年で一般建設業許可を保有している業者数は44万9,015業者です。

許可業者数が最も多かった2000年3月末時点の数と比較すると、マイナス12万8,694業者となり22.3%の減少となりました。

建設業界の市場規模・売上推移

建設業界の売上推移

国土交通省「建設産業の現状と課題」

出典:http://www.mlit.go.jp/common/001149561.pdf

国土交通省による建設業界の2016年度(平成28年度)までの売上推移を見ると、1998年をピークに右肩下がりです。

建設会社は、民間工事主体の会社と公共工事主体の会社に大きく分かれているのも特徴です。バブル崩壊や公共工事の減少などから、1998年のピーク時に比べると苦しい状況を強いられています。

建設業界のM&A件数の推移

建設業界のM&A件数は、M&Aベストパートナーズの「建設業のM&Aの動向」によると、2016年には66件、2018年には97件でした。そして、2019年には国内同士の建設業界におけるM&A件数が121件で、過去最高です。

現在は多くの建設需要があり、技術者不足の状況が続くため建設業のM&Aは成り立っています。しかし、公共・民間の建設投資額が冷え込めば、仕事の絶対数が減るので建設業界のM&Aは減少すると予測されます。

建設業界のM&Aは、建設投資額と連動するといえるでしょう。

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建設業界が抱える課題・展望

ゼネコン業界や建設業界は以前より人材不足が叫ばれてきました。特に、地方建設業では、若手が地元に定着しないなどの問題から若手技術者不足が深刻化しています。そうした状況を打破するため、外国人労働者受け入れなどの施策が検討されています。

外国人労働者の受け入れは、担い手や労働力の確保にはなるものの、賃金や品質の低下を招くのではないかと懸念されているのが現状です。

建設業界は働き方改革に伴う週休二日制度の導入にも取り組んでいます。しかし、産業の性質上実現までは数々の問題を抱え、課題にどのように対処するのか注目が集まっています。

また、都心と地方との業績格差も建設業界の課題です。国土交通省による建設総合統計では、2017年における地域別建設活動の出来高ベースは、地域別トップ(関東地方)が約20兆円、最下位(四国地方)が約1.6兆円で、約12.5倍の差があります。

これには、東京オリンピックなどに関連した大型受注などの背景があります。しかし、スーパーゼネコンや準大手・中堅ゼネコンと比較すると、公共工事受注に必要な経営事項審査の点数が低い地方の中小企業は、公共工事の受注が困難な状況です。

そのため、これからも都心と地方との業績格差は縮みにくいでしょう。

2. 建設業界のM&A動向

2000年をピークとして建設許可申請保有者が減少していることから、建設会社は減少の傾向にあります。それでは、建設業界やゼネコン業界のM&Aは、どのような動向を推移してきたのでしょうか。

長年M&Aは進んでいなかった

建設業界では、今までに準大手ゼネコンと中堅ゼネコンの合併などはありましたが、M&Aはあまり進んでいる業界とはいえない状況でした。

規模の経済が働きにくい

同じ仕事の規模を大きくすることで効率的に費用が抑えられる、いわゆる「規模の経済」は建設業界では働きにくい構造です。

それは、受注生産型である業界の特性を見ればよくわかります。建設業界でも一部プレキャスト化などが進んだ部材はあるものの、建設会社自体では「規模の経済」における効率化は考えにくい現状です。

公共工事における入札参加が限定される

M&Aなどで規模を拡大すると、入札参加資格におけるランクの枠組みなど公共工事で入札に参加できる機会が限定されます。また、受注チャンスが減少するデメリットも存在します。

廃業が増えている

建設業界は他業種よりも会社減少幅が大きく、地方では現在でも廃業する建設会社が多いです。これは、売上減少などもありますが、担い手不足などによる後継者問題なども影響しています。

業界をまたいだM&Aが活発化している

一方、最近では業界をまたいだM&Aが活発化を見せています。例えば、戸建ての大手である大和ハウス工業は、パーキングの大手であるダイヨシトラストを買収し事業を成功させました。

このように、業界ごとの強みを生かしたM&Aが今後も増える動向が、建設業界内に見られるのです。

海外M&Aが徐々に増加している

国内需要が伸び悩みを見せる中、海外で需要機会を得るために海外M&Aを行う建設会社が徐々に増加しています。大和ハウス工業は、米国バージニア州で戸建住宅の開発・販売を手掛けてきたスタンレー・マーチンを買収するなど積極的に展開を図っています。

人材確保を図るM&A需要が高まっている

建設業界では、技術者不足の状況が継続中です。そのため、技術者などの人材確保を目的とするM&Aの需要が多いといえます。建設業界では、とりわけ若い人材を確保することが難しい状況です。

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3. 建設業界のM&A・買収・売却事例30選!

ここでは、建設業界・ゼネコン業界におけるM&Aの事例をIN-IN(国内企業-国内企業)、IN-OUT(国内企業-国外企業)、異業種-国内建設会社、に分けて30選紹介します。

IN-INのM&A事例18選!

まずは、IN-INのM&A事例18選から見ていきましょう。

①東京エネシスによる日立プラントコンストラクションの事業取得

建設会社の日立プラントコンストラクションは、2021年7月に吸収分割のスキームで東京エネシスに買収されることを発表しました。

これにより、東京エネシスは、優れた技術や人材を獲得し、生産性を上げてグローバルな事業展開や施工力を強めるなどのシナジー効果を狙います。

②ワキタによるグランドアースと九州機械センターの子会社化

2021年3月、ワキタは福岡県にあるグランドアースと九州機械センターの株式を各90%取得し、子会社化することを発表しました。これにより、九州北部で建機事業の業容を広げること、既存拠点とのシナジー効果、などを見込んでいます。

③高松建設による大昭工業の子会社化

建設事業を手掛ける大昭工業は、2021年2月に、株式譲渡の手法で高松建設により買収されました。これにより、両社は、経営資源を相互活用して建設工事の受注数を増やすこと、不動産の有効活⽤による投資成果を上げることを狙っています。

④飛島建設によるアクシスウェアの子会社化

アクシスウェアは、2021年2月、中堅ゼネコン会社の飛島建設に株式譲渡の手法で買収されました。これにより、デジタルトランスフォーメーションの加速で事業運営体制を強め、事業領域を広げることを見込んでいます。

⑤TAKUMINOホールディングスによる木戸建設との資本提携

2021年1月、TAKUMINOホールディングスは、木戸建設と資本提携しました。これにより、東北地方における社会資本の老朽化対策、後継者問題の解決を狙います。

⑥戸田建設による佐藤工業の子会社化

2019年5月、戸田建設は福島県にある佐藤工業を子会社化しました。これによって福島はもとより東北地域までにおよぶ営業エリアの拡大を図ります。

⑦土木管理総合試験所によるアイ・エス・ピーの子会社化

2018年10月に、土木管理総合試験所が土木測量設計プログラム開発のアイ・エス・ピーを子会社化しました。これにより、生産性向上やIT技術の強化を図りAIやIoTに対応していきます。

⑧大盛工業による井口建設の子会社化

2018年8月、大盛工業は山梨県にある井口建設を子会社化しました。これにより、山梨県内を始めとする新地域での地盤拡大を図ります。

⑨ヒノキヤグループによるハウジーホームズの子会社化

2018年3月に、ハウジーホームズの全株式をヒノキヤグループが取得しました。東海地方における注文住宅事業の強化を期待しています。

⑩飛鳥建設によるノダックと関連会社の子会社化

2018年2月、飛鳥建設はノダックとその関連会社であるジャパンレイクアンドキャピタルを子会社化しました。これにより、ノダックグループがこれまでに蓄積したノウハウなどを活用して水関連のインフラ設備におけるリニューアル事業参入を目指します。

⑪積水化学工業によるソフランウイズの完全子会社化

2017年12月に、ソフランウイズを完全子会社化した積水化学工業は、成長する不燃ウレタン市場への事業拡大を図ります。

⑫住友林業による熊谷組との業務資本提携

2017年11月に、住友林業は熊谷組と業務資本提携を締結しました。これにより、海外での住宅や都市開発、介護福祉事業で協力していきます。

⑬飛鳥建設による杉田建設興業の買収

2017年7月、飛島建設は杉田建設興業を完全子会社化しました。これにより、新たな営業エリアを模索して業務を拡大する見込みです。

⑭旭化成ホームズによる中央ビルト工業の業務・資本提携

2017年3月、住宅鉄骨材料の加工販売を行う中央ビルト工業と業務および資本提携を結んだ旭化成ホームズは、住宅用鉄骨材料生産の強化やコスト削減を進めています。

⑮徳倉建設による九州建設の子会社化

2017年2月、徳倉建設は九州建設を子会社化しました。これにより、九州地区における営業体制の強化だけでなく、海外を含めた工事施工要員の交流などを促進する見込みです。

⑯トヨタホームによるミサワホームの子会社化

2016年11月にミサワホームを子会社化したトヨタホームは、戸建住宅だけでなくリフォームや高齢者住宅への進出を図っています。

⑰長谷工コーポレーションによるジョイント・コーポレーションの子会社化

2015年11月、長谷工コーポレーションはジョイント・コーポレーションの全株式を取得し子会社化しました。

長谷工コーポレーションの建設事業とジョイント・コーポレーションのデベロッパーとしての経験などを融合させることで、拡充したサービスを提供します。

⑱長谷工コーポレーションによる総合地所の子会社化

2015年4月に長谷工コーポレーションは、総合地所の全株式を取得し子会社化しました。両社のノウハウが融合することで、マンションに関わる良質なサービスを提供する見込みです。

IN-OUTのM&A事例7選!

次に、IN-OUTのM&A事例7選を見ていきましょう。

①三栄建築設計によるAlpha Constructionの買収

2021年2月、三栄建築設計は、建設工事の請負を主な事業とする米Alpha Construction Co. Inc.の発行済み株式過半数を取得し、子会社化しました。これにより、三栄建築設計は米国事業の拡大展開を見込んでいます。

②大和ハウスによるTrumark Companiesの子会社化

2020年1月、大和ハウス工業の完全子会社であるDaiwa House USA Inc.は、米国で総合不動産開発などを行うTrumark Companiesの創業者と持分譲渡契約を締結し、持分の60%を取得して子会社化しました。

大和ハウス工業における北米事業拡大の推進を図っています。

③淺沼組によるSINGAPORE PAINTSの子会社化

淺沼組は2018年10月に、シンガポールの建物塗装・修繕工事会社SINGAPORE PAINTS&CONTRACTOR PTE.LTDを子会社化しました。海外進出の足掛かりとする見込みです。

④応用地質によるFongConsultなどの子会社化

2018年10月、応用地質はシンガポールにある建設コンサルティング会社のFong Consult Pte. Ltd.などを子会社化しました。東南アジア方面へインフラメンテンス事業などを提供するとしています。

⑤大和ハウス工業によるアッカの子会社化

2017年11月、大和ハウス工業はアッカ・インターナショナルを子会社化しました。eコマース分野を強化することで、物流施設などの提案能力を飛躍させる見込みです。

⑥積水ハウスによるWoodside Homes Companyの合併

2017年2月に積水ハウスは、アメリカにある戸建住宅販売のWoodside Homes Companyを完全子会社化しました。これにより、環境に配慮した住宅の開発などに力を入れる見込みです。

⑦大林組によるケナイダン社の株式取得

2011年3月、大林組はカナダの建設会社であるケナイダン社の株式51%を取得しました。これにより、カナダの建設マーケットに進出を図ります。

異業種→建設業界のM&A事例5選!

最後に、異業種→建設業界のM&A事例5選を紹介します。

①オリックスによる杉孝グループホールディングスの買収

2020年12月、オリックスは、建設業界に向けたサービスを行う杉孝グループホールディングスの発行済み株式過半数を得ました。これにより、建設・物流関連機器レンタル業界における連携の促進を狙います。

②前田道路による前田建設工業の買収

前田建設工業は、2020年3月に、前田道路により買収されました。

これにより、前田道路は、グループ内の一体感向上と経営資源の共有を狙い、インフラ運営事業が拡がることによる安定した高収益基盤の確立を見込んでいます。前田建設工業も、新事業領域における収益基盤の確立を図ります。

③フクビ化学工業による積水化学工業の事業譲渡

2018年9月に積水化学工業は、フェノールフォーム断熱ボード事業をフクビ化学工業に譲渡しました。これにより、技術向上や新商品開発を進める見込みです。

④大林組による大林道路の買収

道路の舗装工事や建築工事など請負事業を手掛ける大林道路は、2017年5月に、大手建設会社の大林組により買収されました。

これにより、両社は、グループ経営の自由度をより高めて飛躍的に生産性を上げ、高度な技術を持つ人材を得ることでグループ全体の収益性を高めることを狙っています。

⑤タカラレーベンによる日興建設の買収

2014年12月にタカラレーベンは、日興建設の全株式を取得しました。これにより、横浜エリアに幅広いシェアを得ることを図っています。

  • 建設・土木会社のM&A・事業承継

4. 建設業界でM&Aを行うメリット

建設業界やゼネコン業界のM&Aには、どのようなメリットがあるのでしょうか。買収側と売却側に分けて、簡単にまとめました。

買収側のメリット

まずは、買収側のメリットです。

新規事業の進出・推進の迅速化

買収側が、建設業界でM&Aを実施する大きなメリットとして、新規事業の進出・推進の迅速化が挙げられます。

既存の建設事業をより拡大するケースでは、作業員確保や建設業許可の取得、設備機器の購入などにかなりの時間が必要です。建設事業に新しく進出する場合は、上記にプラスして顧客確保や認知力の形成なども要ります。

M&Aを実施すれば、売却側の持つ作業員の雇用契約や設備機器、ブランド力などの経営資源が得られます。必要とするリソースがそろった状態で事業ができるので、時間が大幅に短縮できて迅速化するのです。

人材不足の解消

建設業界は、深刻な人手不足に陥っています。採用活動をするにしても、労働環境に対するイメージが良くないため、必要とする従業員の確保は難しい状態です。

また、建設事業を広げるためには、優れた技術を持つ人材や一級建築施工管理技士などの有資格者を必要とします。しかし、このような人材を育てて確保するのは困難で、時間もかかるでしょう。

M&Aで建設会社を買収すると、優秀な人材や有資格者をまとめて獲得でき人材不足が解消するメリットがあります。

事業規模の拡大

建設会社同士がM&Aを実施すると、人員や機械設備などのリソースが増加するので、事業規模を広げられます。また、別の地域で建設事業を行う会社とM&Aを行うと、自社の商圏を広げられるでしょう。

特に、一定範囲の地域に高いブランド力がある会社が存在すると、その地域への新規参入は難しいです。M&Aでこのような会社を買収すると、新しい地域へ進出でき事業規模を広げられるメリットがあります。

つまり、すでに地盤を築いた会社とM&Aを行えば、シェアがより拡大できるのです。

コストの削減

小さな建設会社は、毎回少しの資材しか買えません。単価交渉力が弱いだけでなく購入ごとに輸送費用などがかかるので、資材の購入にかかる全体の費用が高くなりがちです。

M&Aを実施すると事業規模が拡がるので、一度に大量の資材を購入できます。単価交渉力も上がるので、単価を下げたり、購入回数を少なくして輸送コストを削減したりすることも可能です。

売却側のメリット

次に、売却側のメリットを見ていきましょう。

後継者不在問題の解消

特に、地場の建設会社は、後継者不足が大きな問題です。後継者を確保する一つの手段として、M&Aを活用するメリットがあります。

前述したように、建設業界では後継者不足が深刻な課題です。後継者不足のために事業承継ができず、黒字廃業する会社もあります。

M&Aを行えば、親族や社内に後継者がいなくても事業承継が可能です。廃業しなくてよいので、従業員の雇用や取引先との関係が保てます。廃業にかかる費用も不要です。

譲渡利益の獲得

M&Aで建設会社や事業を売却する場合、一般的には「時価純資産+営業利益の2〜5年分」の譲渡利益が得られます。現金をまとめて獲得するため、新規事業や主力事業へ使えます。

また、経営者は、会社員と異なり前もって計画しなければ退職金が得られません。そのため、会社を畳んだ後、生活資金に苦難することもあります。M&Aを実施して譲渡利益を獲得すれば、不安に感じることなく老後の生活が送れるでしょう。

社員の雇用維持

廃業すると、従業員が路頭に迷うことになります。しかし、M&Aにより会社あるいは事業を売却すると、従業員が職を失うことはありません

また、自社よりも財務基盤の安定した会社とM&Aを実施すると、従業員は安定した環境で働けます。つまり、経営困難な状況に陥っても、M&Aを活用すれば企業の存続が見込め、社員の雇用が維持できるのです。

相手先企業の経営資源の活用

M&Aで買収側の傘下に入ると、買収側が持つ経営資源を生かしながら建設事業が行えます。

買収側の豊富な資金、最新の設備機器、人員、ブランド力などを生かすことにより、安定的に建設会社が経営でき、建設事業が成長するスピードを上げられるでしょう。

5. 建設業界でM&Aを成功させるポイント

建設会社のM&Aを成功させるには、ポイントが何点かあります。建設業界・ゼネコン業界におけるM&Aのポイントについて、いくつか紹介します。

買収側のポイント

まずは、買収側のポイントから見ていきましょう。

建設業許可の引き継ぎ方法について

株式譲渡により建設会社を買収するケースでは、株主が変わるのみです。会社内の権利や義務は変わりません。そのため、建設業許可もそのまま引き継ぐことが可能です。

事業譲渡により建設事業のみを買収するケースでは、建設業許可は自動的に引き継げません。建設業認可を申請する必要があり、資料の準備をしなければならないのです。そのため、交渉の時点から売却側と一緒に準備を行いましょう。

人員構成を確認する

経験豊富な技術者や有資格者の人数、年齢構成の確認も、M&Aによる相乗効果を考慮するために必要です。また、正規雇用と非正規雇用の割合、離職率による人材面での安定性確認、社会保険における加入状況の確認も欠かせません。

財務デューデリジェンスを徹底する

建設業は、粉飾決算が多い傾向があります。粉飾決算を行う建設会社を買収すれば、後に多額の追徴が行われたり、会社の評判が下がったりすることもあるでしょう。

このようなリスクを避けるには、財務デューデリジェンスの徹底が欠かせません。財務諸表の分析、ヒアリングや現地調査なども行い、複雑な粉飾決算を見つけましょう。多くの費用や時間をかけてでも、財務デューデリジェンスは徹底することをおすすめします。

受注体制・取引先を確認する

建設業は、ピラミッド構造の受注体制です。そのため、何次請けで仕事を受注しているか確認しましょう。利益確保が可能な工事の安定した受注、取引先との信頼関係、技術力なども重要です。また、独自技術の有無、独自技術による収益への影響もチェックしてください。

受注状況を確認する

定期受注案件や民間と公共の工事割合、土木と建築の工事割合における確認も、強みを把握するために欠かせません。受注状況を確認して、M&A後の収益性や安定性を予測しましょう。

売却側のポイント

次に、売却側のポイントを解説します。

顧客の担当変更について

M&A成立後における顧客担当の変更や引継ぎなどの問題です。建設会社の場合、地元との密着度や先代からの信頼関係などがあります。そのため、顧客に合わせた対応が必要です。

現場の声を反映させる

経営陣同士で話し合うことの多いM&Aですが、建設現場は常に動いています。建設現場が滞ることが一番の損失です。現場の声も反映してM&Aを決定しましょう。

自社の強み・アピールポイントを洗い出す

最終的に、売却側と買収側の交渉によりM&Aの価格は決まります。買収側が売却側を高評価すると、企業価値よりも高値で売却できる可能性が高まります。

優秀な人材、特定地域での知名度やブランド力、安定した受注実績など、高く評価される強みを明確化して的確にアピールしてください。

シナジー効果の大きい相手先を探す

自社と大きなシナジー効果が見込める相手先は、そうでない相手先より事業を高評価してくれるでしょう。そのため、高値で建設会社・事業を売却したい場合は、シナジー効果の大きい相手を探してください。

買収側にシナジー効果を認識してもらうには、客観的なデータや事業計画の準備が欠かせません。幅広く買収先を探したり複数の買収候補と交渉したりするのもおすすめです。

M&A会社選び

M&Aを円滑に進める仲介会社の存在は必要不可欠ともいえます。

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6. 建設業界のM&A・売却・譲渡案件

建設業界ではどのようなM&A売却案件があるのでしょうか。ここでは、建設業界における3つの売却案件を紹介します。
 

案件 売上高 譲渡希望価格 所在地 譲渡理由
主に土木工事・解体工事を手掛ける建設会社 2.5億円〜5億円 1億円〜2.5億円 関東・甲信越 後継者不在のため
建設系の資材製造販売会社 2.5億円〜5億円 希望なし 北海道 後継者不在のため
建設業・不動産業 5億円〜10億円 1億円〜2.5億円 新潟県 財務的な理由

7. 建設業界のM&Aまとめ

建設業界・ゼネコン業界のM&A動向をまとめました。建設業界は、特異な性質を持つ産業にもかかわらず減少傾向にあります。

事業廃止を検討している建設会社には技術力のある会社も多く、M&Aを行うことで自身の技術に取り組むことが可能です。建設業界やゼネコン業界の動向を確認して、M&Aを考えてみてはいかがでしょうか。

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