2021年09月02日公開
抱合せ株式とは?会社の合併・分割で消滅してしまう株式について紹介!
抱合せ株式とは、会社の合併や分割で消滅してしまう株式を指し、消滅会社の法人格が消滅すると存続会社が持っている株式も消滅します。このよ記事では、抱合せ株式とはどのようなものなのか、生じるケースや必要となる経理処理について解説します。
1. 抱合せ株式とは

経営の効率化やコスト削減などのため、企業は合併や分割を行うことがありますが、その際に「抱合せ株式」が発生することがあります。
抱合せ株式とは、合併や分割時に存続会社が持っている消滅会社の株式のことを指します。一般的に、存続会社が消滅会社の株式を所有している場合、存続会社からから消滅会社に対価が支払われます。
しかし、抱合せ株式の場合は例外的に対価を支払うことが認められていないため、抱合せ株式は消滅することになります。
この記事は、抱合せ株式が発生するケースや会計処理、抱合せ株式の消滅によるメリットやデメリットについて解説します。
2. 抱合せ株式が生じるケースと必要な会計処理
抱合せ株式が生じるケースとしては、合併の場合と会社分割の場合とがあります。この章では、それぞれのケースにおける会計処理についてみていきます。
合併の場合
親子関係にある企業での吸収合併時
親会社のA社が子会社のB社を吸収合併する場合、吸収合併前にA社が持っていたB社の株が抱合せ株式になります。
吸収合併によってA社はB社の資産も負債も引き継ぐことになりますが、会計処理ではA社が引き継いだ純資産は時価、消滅するB社の株式は簿価となるため差額が生じます。この差額を「抱合せ株式消滅差損益」といい、特別損益に計上します。
もしA社以外の個人や会社が持っているB社の株を買う場合、株主が純資産と同じ金額で株を売ってくれることはまずありません。というのは、株主にとっては株を売るよりも毎年利益をもらったほうが得だからです。
そのため、この株を買うには純資産より高い金額を支払わなければなりませんが、そうなると純資産と買取価格に差額が生じます。この純資産と買取価格の差額は「のれん(あるいは負ののれん)」となります。
のれんは、無形固定資産に計上されて減価償却をします。償却期間はのれんの効果が及ぶ期間内で、20年以内で自由に設定できます。
償却方法には毎年同じ金額が償却される定額償却と、初年度の償却金額が一番大きく毎年償却金額が減っていく定率償却がありますが、のれんの場合は定額償却です。
また、B社がA社の100%子会社の時は税制的確合併となる可能性があり、その場合は資産及び負債を簿価で引き継ぎます。この場合は税務上の利益は出ることはなく、みなし配当も発生しません。
なお、100%子会社でない場合は税制非適格合併となり、子会社の資産と負債は時価で引き継ぎので、損益が出る可能性があり、みなし配当も発生します。
会社分割の場合
次は会社分割の場合における会計処理をみていきます。会社分割や合併においては、その前後で同じ株主によって継続的に支配される場合は共通支配下の取引になり、100%親子関係にある会社間もこれに該当します。
ここでは、実務上多い100%親子関係にあって無対価での分割における会計処理について解説します。
親会社から子会社への分割時
100%親子関係にある親会社から子会社への事業(親会社のもつ事業の一部)を移す場合、適正な簿価で引き継ぎます。
というのは、分割前後で両社の間では投資が続くので、どちらの会社においても移転損益は認識しないためです。
分割を引き継ぐ子会社における株主資本などの増減は、以下2つのどちらかの方法で引継ぎの処理をします。
- 子会社が分割契約で決めた「資本金」あるいは「資本剰余金」として処理
- 親会社の資本金と資本剰余金は子会社の「資本剰余金」、利益剰余金は「その他利益剰余金」として処理する
子会社から親会社への分割時
100%親子関係にあるケースでは、子会社から親会社に事業(子会社のもつ事業の一部)を移した場合、親会社は子会社への投資を清算したものとして損益を認識します。
子会社の消滅する株式=抱合せ株式となり、親会社はこの抱合せ株式の簿価とそれに伴う資本(増加資本)の差額については「抱合せ株式消滅差損益」として計上します。
対して、子会社は分割先が親会社になるため、投資は続くと考え適正な簿価での引継ぎとなり、移転損益は認識しません。
連結決算上は、子会社株式および抱合せ株式消滅差益をその他利益剰余金と相殺するので、損益への影響はありません。
なお、会社分割には簡易分割という方法があり、移転する資産の簿価額が分割会社の総資産の5分の1以下の場合は株主総会決議を省略できるというものですが、抱合せ株式消滅差損が生じるケースでは行うことができないため注意が必要です。
子会社間での分割時
兄弟会社にあたる100%子会社同士で分割を行った場合も、会計上は共通支配下の取引と考えます。会計処理では、資産や負債の移動は分割元の適正な簿価で計上します。
この場合、親会社が子会社の純資産を受け入れるわけではないので、抱合せ株式消滅差損益は発生しません。また、株式資本の増減についての処理は、親会社から子会社へ分割する場合と同様に取扱います。
3. 抱合せ株式の消滅で生じるメリット・デメリット

合併や分割は事業の効率化などを目的として行われることが多いですが、その際に生じる抱合せ株式の消滅には、どのようなメリットがあるのでしょうか。この章では、抱合せ株式の消滅で生じるメリットだけでなく、デメリットについてもみてきます。
メリット
抱合せ株式が消滅することによって得られるメリットとしては、主に次の2つが挙げられます。
【抱合せ株式の消滅によるメリット】
- グループ全体としての節税につながる
- 相続税評価額が下がる場合がある
1.グループ全体としての節税につながる
抱合せ株式の消滅が生じることによって、グループ全体の節税につながることもあります。100%子会社であっても、連結納税を選択していない限り、他社の損失を相殺して申告することはできません。
しかし、例えば合併によって抱合せ株式株式の消滅が生じる場合は、損失や欠損金を損益通算できるので節税になる可能性があります。
2.相続税評価額が下がる場合がある
抱合せ株式の消滅により純資産が圧縮されたり、損益通算により利益水準が圧縮されることがあります。
相続税は純資産の評価額によって決まりますが、抱合せ株式を消滅させることによって純資産の評価額が下がれば、相続税の評価額も下がることになるので、節税できるケースがあります。
デメリット
次は、抱合せ株式の消滅で生じ得るデメリットについて解説します。主なデメリットとしては、次の2つが挙げられます。
【抱合せ株式の消滅で生じ得るデメリット】
- 中小企業の特例が活用できなくなる
- 相続税評価額が上がる場合がある
1.中小企業の特例が活用できなくなる
中小企業者の実務負担を図るために、消費税の計算を簡素化した簡易課税制度というものがありますが、中小企業者が合併の消滅会社である場合、この制度が適用外となる可能性があります。
また、将来繰越すはずだった欠損金が消滅してしまうこともあり得るため、事前にしっかり試算しておく必要があります。
2.相続税評価額が上がる場合がある
先程、抱合せ株式の消滅によって相続税評価額が下がれば節税につながるというメリットを挙げましたが、実際は相続税評価額が上がるケースもあります。
というのは、抱合せ株式を消滅させることで利益水準が圧縮したりしても、必ず株式評価額は下がるとは限らないためです。
抱合せ株式を消滅させる際は、メリットだけでなくデメリットがどの程度及ぶのかもしっかり検討することが大切です。
4. M&Aに関するご相談はM&A総合研究所へ

抱合せ株式の消滅にはメリットも当然ありますが、特例が使えなくなる可能性などのデメリットもあります。
M&Aを行う際は、デメリットを極力抑えてメリットを最大化できるよう、計画的に進めていくことが大切です。
M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を主に扱う仲介会社です。M&Aの知識・支援実績豊富なアドバイザーが責任をもってフルサポートいたします。
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5. まとめ

経営の効率化やコスト削減などのために合併や分割が行われることも多いですが、その際、存続会社がもっている被合併会社の株式が「抱合せ株式」となり消滅することがあります。
抱合せ株式の消滅にはメリットもデメリットもあるので、事前によく検討することが大切です。
【抱合せ株式の消滅によるメリット】
- グループ全体としての節税につながる
- 相続税評価額が下がる場合がある
【抱合せ株式の消滅によるデメリット】
- 中小企業の特例が活用できなくなる
- 相続税評価額が上がる場合がある
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