株式譲渡とは?手続きからメリット・デメリット、税金を専門家が徹底解説【成功事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

株式譲渡は他のM&A手法よりも手続きや税金面でメリットが多くデメリットが少ないため、最も多く用いられているM&A手法です。本記事では株式譲渡のメリット・デメリットや手続き方法、税金、注意点などを成功事例の紹介も合わせて解説します。

目次

  1. 株式譲渡とは
  2. 株式譲渡のメリット
  3. 株式譲渡のデメリット
  4. 株式譲渡の手続きと流れ
  5. 株式譲渡契約書とは
  6. 株式譲渡の手続きに必要な書類
  7. 株式譲渡手続きの際の確認事項
  8. 株式譲渡の価格算定方法
  9. 株式譲渡の税務
  10. 株式譲渡を行った企業の処遇
  11. 株式譲渡の注意点
  12. 家族間における株式譲渡の手続き
  13. 株式譲渡によるM&Aの成功事例
  14. 株式譲渡に関する相談先
  15. 株式譲渡のまとめ
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1. 株式譲渡とは

株式譲渡とは、売り手側企業の株主が保有株式を買い手側に譲渡するもので、会社の経営権を引き継ぐ手続きのことです。株式譲渡は、会社の規模拡大や組織再編、事業承継などさまざまな目的で行われています。

M&Aの手法として一般的

株式譲渡は手続きが簡易なことから、M&A手法として最も多く採用されています。買い手側は売り手側から株式を取得する必要があり、その方法は、公開買い付け(TOB)、市場買い付け、相対取引の3種類です。

公開買い付け(TOB)

公開買い付け(TOB)とは、上場企業の株式に対し買い手が公開取引市場以外で買い集める方法のことです。買い手は買い付ける株式数、買い付け価格、買い付け期間などを公告や個別通知によって周知し、株主はその条件に賛同すれば保有株式を譲り渡します。

買い集めやすくするため、買い付け価格は割高に設定するのが通例です。日本では友好的買収がほとんどですが、2005(平成17)年前後に村上ファンドが敵対的買収を行ったことで、日本でも敵対的買収が知られるようになりました。

市場買い付け

売り手側が上場企業の場合、公開取引市場で株式を買い集められます。一定の流通量があるので株式を短期間で集めやすいメリットはありますが、大量に購入すると株価が上昇してしまうデメリットもあるので、過半数以上取得する目的で行うのはあまり現実的ではありません。

相対取引

上場していない企業の株式を集める場合は、株主と直接交渉する相対取引を行います。非上場の中小企業の場合は、オーナー社長が会社の株式の大半を保有していることが多いため、オーナー社長の合意が得られればスムーズに株式譲渡手続きを進められる点がメリットです。

しかし、株主が分散していて過半数の取得に多くの株主との交渉が必要な場合は、株式譲渡手続きが滞ってしまいデメリットとなります。

株式譲渡と事業譲渡、会社合併の違い

株式譲渡と事業譲渡、会社合併には、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。
 

  メリット デメリット
株式譲渡 ・手続きが容易
・譲渡後も会社が存続する
・簿外債務リスクがある
・株式の買い集めに苦労する場合がある
事業譲渡 ・譲渡事業の選択ができる
・簿外債務を回避できる
・手続きが多い
・税負担が大きい
会社合併 ・事業シナジーを得やすい
・1社に統合される
・簿外債務リスクがある
・手間とコスト負担が大きい

事業譲渡とは

事業譲渡とは、売り手側の事業の一部または全部を買い手側に売却するM&A手法のことです。事業譲渡では引き継ぐ資産を個別に選択できるので、売り手側は会社の独立性を保ったまま事業再編ができます。

買い手側は必要な資産だけを引き継ぎ、債務は引き継ぐ必要がないので、リスクを最小限に抑えられるのがメリットです。しかし、事業譲渡は手続きが煩雑で税金の負担も大きいため、デメリットの少ない小規模の中小企業でよく用いられます。

会社合併とは

会社合併とは、2社以上の会社を1つの会社に統合するM&A手法をさします。消滅する会社の資産、負債、権利義務の全てが存続する会社に引き継がれるでしょう。会社合併には、既存の会社に他の会社が吸収される吸収合併と、新設会社が既存の会社を吸収する新設合併があります。

会社合併は1社に統合されるので、スケールメリットが得られる、ブランド力や信用力が上がる、事業シナジーが得やすいことなどがメリットです。しかし、会社合併には多くの手間とコストがかかるデメリットもあります。

それぞれの株式譲渡との違い

株式譲渡は、手続き完了後も経営権が買い手側に移るだけで、会社が消滅してしまうことはありません。買い手側が株式譲渡後、何もしなければ会社内の契約関係はほとんど何も変わりません。

一方で事業譲渡は、売り手企業はそのまま存続しますが、従業員や取引先、不動産など、引き継いだ資産の契約は解除され、買い手側が契約し直す必要があります。

会社合併では、存続する会社が他の会社の全てを引き継ぎ、他の会社の法人格は消滅するでしょう。吸収合併の場合、従業員の雇用契約や許認可なども引き継がれます。しかし、新設合併の場合は雇用契約をし直して、許認可も取り直さなくてはなりません。

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2. 株式譲渡のメリット

株式譲渡にはいくつかのメリットがあります。株式譲渡のメリットを、譲渡(売り手)側と譲受(買い手)側のメリットに分けて確認しましょう。

譲渡側のメリット

譲渡側には以下のメリットがあります。

  • 素早い現金化が可能
  • 後継者問題を解決可能
  • 会社のさらなる発展が可能
  • 課税を低く抑えられる

素早い現金化が可能

売り手側は株式を譲渡する対価として現金を受け取ります。非上場の中小企業の場合、株主は流動性の低い株式の売却に苦労しますが、株式譲渡によって契約手続き完了後に現金を受け取れる点がメリットです。

後継者問題を解決可能

株式譲渡は中小企業の事業承継にも用いられます。中小企業の事業承継では、親の事業を継ぐ子供の割合が年々、減少傾向です。その結果、廃業した会社や廃業を予定している会社が少なくありません。

廃業を予定している中小企業経営者へのアンケートでは、約6割の会社が事業に成長性や将来性はあると答えており、株式譲渡を用いることで後継者問題を解決して事業を継続できます。

会社のさらなる発展が可能

株式譲渡で買い手企業の子会社になることによって、売り手企業は買い手企業のさまざまなリソースを活用できるでしょう。買い手企業のブランド力や技術力、人材などによって成長可能です。

課税を低く抑えられる

株式譲渡の場合、税金の観点からみても手元に利益が残りやすい傾向があります。株主が個人の場合、譲渡所得の税率は基本的に20%です。株式譲渡は事業譲渡と比較すると税金が安く抑えられるでしょう。

事業譲渡の場合は、会社に約30%の法人税、課税資産に対して消費税も課されてしまいます(消費税を負担するのは買い手側)。株式譲渡は、譲渡代金の約80%が売り手企業の経営者の手元に残るため、創業者利益の最大化がしやすい手法です。

譲受側のメリット

M&Aでの取引の多くは、株式譲渡が選ばれています。中小企業の株式譲渡の場合、譲受側のメリットは、簡易的に経営権を取得できることです。

会社の支配権を全て取得できる

会社法によると、株式の過半数(50%超)を取得している場合、支配権を取得できます。したがって譲受側は、譲渡側の株式を全部取得すると、会社の支配権を全て取得できるでしょう。

しかし、株式譲渡が実行できたとしても、株式の全部を取得しないケースでは、残りの株主から経営に対して反対されるおそれもあります。重要な意思決定を行う株主総会の特別決議を可決するためには、議決権3分の2以上の賛成が必要です。

そこで、譲受側の意思決定をスムーズに実行させるためにも、3分の2以上の株式取得を目指すのが一般的です。非上場の中小企業が対象であれば、M&Aの際に全株式取得も可能であり、譲受側はスムーズに支配権を行使できます。

譲渡側・譲受側共通のメリット

ここでは、株式譲渡の譲渡側・譲受側共通のメリットを紹介します。

  • 複雑な手続きが不要
  • 従業員、許認可などをまとめて引き継げる(引き渡せる)

複雑な手続きが不要

株式譲渡は手続きが簡便なため、譲渡側と譲受側の交渉がスムーズに進めば短期間でM&Aが完了する可能性があります。譲受側は取引先や従業員との契約をし直す必要がなく、法務局への登記変更申請手続きも必要ありません。

M&Aは手続きが長引くほど費用の負担が大きくなり、経営者や従業員の精神的負担も大きくなります。M&A専門家への要望でよくあるのが、極力、短期間でM&Aの手続きを済ませてほしいものです。その点でも、株式譲渡にはメリットがあります。

従業員、許認可などをまとめて引き継げる(引き渡せる)

事業譲渡や新設合併では譲受側が許認可などを取得しなければいけないのですが、株式譲渡では許認可なども引き継がれます。取引先との契約や従業員との雇用契約も全て引き継げるため、あらかじめ許認可申請をする必要がなく株式譲渡後、スムーズに事業活動が可能です。

株式譲渡は事業譲渡に比べ、独立性を担保できます。PMIのために現経営者が譲渡後も社内にしばらく残るケースもあり、従業員にとっても新しい経営体制でのスタートを迎えられるでしょう。

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3. 株式譲渡のデメリット

ここでは、株式譲渡のデメリットについて、譲渡(売り手)側と譲受(買い手)側のデメリットに分けて紹介します。

譲渡側のデメリット

譲渡側の主なデメリットは以下のとおりです。

  • 株式を50%以上譲渡すると支配権を失う
  • 負債が大きいと譲受側企業が見つからないおそれ
  • 不採算事業があれば譲渡価額が低下する可能性

株式を50%以上譲渡すると支配権を失う

株式譲渡では、50%以上の株式を譲渡した場合、単独で取締役の選任や重要な議決が不可能となり、実質的に支配権を失ってしまいます。事業譲渡では、事業を切り出して売却できるため、会社名および法人格を残すことが可能です。

負債が大きいと譲受側企業が見つからないおそれ

株式譲渡では、負債もまとめて譲渡側に引き継いでもらえますが、負債が大き過ぎると譲受側企業が見つからないおそれもあります。その場合は、事業譲渡に手法を変更し、現金化しやすい事業のみ売却する方法に切り替えれば、譲渡先が見つかる可能性も高くなるでしょう。

不採算事業があれば譲渡価額が低下する可能性

採算が取れていない事業があった場合、評価が下がり譲渡価額が低下する可能性があります。できるだけ高い価額で株式譲渡を行うためには、不採算事業を会社分割で切り離したり、撤退したりする方法が有効です。

譲受側のデメリット

譲受側の主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 債務も引き継がれる
  • 簿外債務などのリスクがある
  • 買収資金が必要
  • 企業文化の違いでシナジー効果が得られないおそれ
  • 株主分散時は全株式を取得できない可能性

債務も引き継がれる

株式譲渡は会社を包括的に承継するので、債務も引き継ぐデメリットがあります。事業譲渡は債務を引き継がないので、小規模の中小企業の場合は株式譲渡ではなく事業譲渡を選択するのも1つの方法です。

簿外債務などのリスクがある

簿外債務とは、帳簿上には表れない債務を意味します。株式譲渡は債務も引き継ぐため、簿外債務を引き継iいでしまう可能性があるでしょう。簿外債務は譲渡側も気付いていない場合や、譲受側がデューデリジェンスをしっかり行ってもその時点では出てこないこともあります。

譲受側は、簿外債務によって経営にダメージを受けたり、訴訟リスクを抱えたりするデメリットに注意が必要です。

買収資金が必要

会社合併の場合は株式を対価にしたM&Aが可能ですが、株式譲渡の場合は株式を買い取る対価として現金を支払う必要があります。手持ち資金が足りない場合は、買収資金を銀行などから調達しなければなりません

特に銀行融資による資金調達は、利息の支払や長期的な返済によって資金繰りが悪化してしまう要因にもなりますので、返済計画をしっかりと立てて調達するようにしましょう。

企業文化の違いでシナジー効果が得られないおそれ

株式譲渡を行うと譲渡側は譲受側の傘下に入りますが、会社としての組織はそのまま継続されます。したがって、企業文化の違いや譲受側の経営陣との関係性によっては、シナジー効果が得られないおそれもあるでしょう。

トップ面談などの話し合いの際に、しっかりと互いの企業文化の見極めや相性を確認することが大切です。

株主分散時は全株式を取得できない可能性

譲渡側の経営者が全株式を保有していて、その全てを取得できれば問題はありませんが、株主が分散している場合、全株式を取得できす100%の支配権を手に入れられないかもしれません。したがって株主が分散している場合は、各株主から個別で買い取ることになります。

ただし、強制力はないため、株主から拒否されるかもしれません。その場合は、株式等売渡請求の手法を用います。総株主の議決権の90%以上を保有していれば、相手の同意なしで強制的に株式買い取りが可能です。

議決権の要件を満たさない場合には、全部取得条項付種類株式や株式併合の手法を用います。このような手法を活用するためには、専門的な知識や手続きが必要であるため、M&Aの専門家に依頼するのが得策です。

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4. 株式譲渡の手続きと流れ

上場企業の株式であれば原則、誰でも自由に売買できますが、非上場企業の場合は譲渡制限があることが一般的なので、譲渡制限株式の売買には承認機関の決議が必要です。

そして、株式譲渡の手続きの流れは、取締役会があるかないか、承認機関がどこかで手続き方法が変わります。ここでは、中小企業に多い、取締役会が非設置で承認機関が株主総会である場合の手続きの流れを確認しましょう。

  1. 株式譲渡の承認請求
  2. 臨時株主総会の開催日の決定と株主への招集通知
  3. 株式譲渡の承認決議
  4. 株式譲渡契約の締結
  5. 株主名簿の書き換え請求
  6. 株主名簿記載事項証明書の交付請求
     

①株式譲渡の承認請求

上場企業など株式を公開している会社であれば株式の売買は自由なので、承認手続きの流れは必要ありません。しかし、大半の中小企業は非公開会社で株式譲渡制限があるため、会社から株式譲渡の承認を得る手続きが加わります。

譲渡制限のある株式を売買するには、譲渡する当事者は株主譲渡承認請求書に必要事項を記載して会社に請求しなくてはなりません。中小企業の場合、オーナー社長が譲渡人であることが多いので、実際には請求書を提出する手続きの前に会社との合意は得られています。

②臨時株主総会の開催日の決定と株主への招集通知

会社は株主譲渡承認請求書を受け取ったら、臨時株主総会の開催日を決めて株主へ招集通知を送ります。臨時株主総会の開催には、過半数以上の取締役の承認手続きが必要です。招集通知は個別に書面で送付します。

③株式譲渡の承認決議

譲渡会社は臨時株主総会で株主譲渡承認請求の承認決議を行い、承認された場合は譲渡承認請求者に承認された旨を通知します。これにより、譲渡制限株式の売買が可能となります。

④株式譲渡契約の締結

譲渡人は承認された通知を受け取ったら、買い手と株式譲渡契約締結の手続きを行います。手続きの際は、作成しておいた株式譲渡契約書にサイン(記名捺印)することで締結が完了です。

株式譲渡契約書の記載内容は後述しますが、譲渡日や譲渡価額、株主名簿の名義書換え請求など、各種必要事項を記載します。

⑤株主名簿の書き換え請求

株式譲渡の効力は、譲渡制限株式を譲渡しただけでは発揮されません。会社が株主名簿を書き換える手続きが必要です。譲渡人と譲受人は、会社に対して株主名簿の書き換え請求手続きを行います。

⑥株主名簿記載事項証明書の交付請求

株主名簿書き換え請求手続きを受けた会社は、速やかに株主名簿書き換え手続きを完了させます。その後、譲受人から株主名簿記載事項証明書の交付請求手続きが行われたら、証明書を交付します。

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5. 株式譲渡契約書とは

株式譲渡を実施するには、その内容を記した契約書の締結が必要です。それが株式譲渡契約書であり、譲渡側・譲受側双方が、記名捺印することで契約が成立します。株式譲渡契約書締結後、その内容が履行(クロージング)されることで、株式譲渡が実現します。

株式譲渡契約書の記載内容

株式譲渡契約書の記載事項は会社法で規定されているわけではないので、当事者間の目的や交渉内容によって変わります。しかし、後々のトラブルを避けるためにも、記載すべき項目があるので注意しましょう。

  • 基本合意内容について
  • 株式譲渡価額や代金の支払い方法について
  • 譲渡承認手続きの内容について
  • 株主名簿の名義書き換えについて
  • 表明補償と損害賠償について
  • 株式譲渡契約書には印紙税が必要?

基本合意内容について

株式譲渡契約書には基本合意内容を記載します。具体的には、譲渡に合意した企業名、株式譲渡日、株式譲渡の目的などが主な記載事項です。

株式譲渡価額や代金の支払い方法について

譲渡側・譲受側が合意した株式譲渡価額や代金を支払うタイミング、支払い方法を記載します。

譲渡承認手続きの内容について

手続きの流れで述べたように、大半の中小企業は譲渡制限株式を発行しているので、譲渡承認手続きを行わないと効力が発生しません。株式譲渡契約書に、譲渡制限株式の譲渡承認手続きを行うことを明記します。

株主名簿の名義書き換えについて

こちらも前述したように、株式譲渡の効力発生には、株主名簿の書き換えが必要です。譲受側と譲渡側が書き換えの申請をし、会社が株主名簿を書き換えた時点で効力が発生します。

しかし、株券発行会社の場合は、譲受側は譲渡側から株券を受け取っていれば株主名簿書換請求を譲受側だけで行うことが可能です。名義書換え請求に関する合意は、必要ありません。

表明保証と損害賠償について

株式譲渡契約書には、表明保証と損害賠償の契約も記載します。表明保証とは、譲渡会社について売り手側が公開している内容に虚偽や間違いがないことを約束し、保証するものです。もし、虚偽や間違いがあった場合、買い手側は損害賠償請求ができます。

株式譲渡契約書には印紙税が必要?

株式譲渡契約書に税金はかからないので、収入印紙は必要ありません。税金が課せられるのは、領収書のようなすでに支払いが済んでいることを証明する受取証書の場合です。

株式譲渡契約書は株式譲渡代金が支払われる前に作成されるので、契約書の中には代金を支払ったといった文言はありません。よって、税金は課せられません。

しかし、少ないケースですが、株式譲渡契約書締結前に代金を支払っていた場合は、株式譲渡契約書へすでに代金を支払済みの記載をします。その場合は税金が課せられることになるので、注意が必要です。

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6. 株式譲渡の手続きに必要な書類

取締役会を設置している会社と、取締役会がなく株主総会が譲渡承認機関の会社とで、株式譲渡手続きに必要な書類は違います。それぞれの会社で必要な手続き書類を確認しましょう。

取締役会を設置している会社

取締役会を設置している会社の必要書類は、以下のとおりです。取締役会を設置している会社の場合、株式譲渡承認請求の承認決議は取締役会で行います。株主総会が承認機関である場合の必要書類とは違い、提出書類には取締役会議事録が必要です。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 取締役会議事録
  • 株式譲渡承認通知書
  • 株式譲渡契約書
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿
  • 株主名義記載事項証明書

取締役会を設置していない会社

取締役会非設置で株主総会が譲渡承認機関の場合、必要な書類は以下のとおりです。取締役会設置会社に必要な書類との違いは、取締役会が株主総会招集に承認した決定書や臨時株主総会の招集通知、臨時株主総会の議事録など、株主総会に関する書類の部分です。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株主総会招集に関する取締役の決定書
  • 臨時株主総会招集通知
  • 臨時株主総会議事録
  • 株式譲渡承認通知書
  • 株式譲渡契約書
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書
  • 株主名簿記載事項証明書

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7. 株式譲渡手続きの際の確認事項

株式譲渡手続きの際にはいくつか注意事項があります。以下の手続きを行わないと、株式譲渡契約は解除されてしまうため、確認しましょう。

株券の発行について

株式譲渡手続きは、株券発行会社か株券不発行会社かによって変わります。株券発行会社とは、定款で株券の発行を定めている会社のことです。

会社法が制定された2006(平成18)年以前に設立された会社の場合、株券を発行しない旨を明記しなければ自動的に株券発行会社とみなされます。それ以降に設立された会社は、定款で何も定めなければ自動的に株券不発行会社です。

株券発行会社は、株式譲渡手続きの際に株券の受け渡しをしなければ効力が発生しません。

株主名簿の書き換えについて

上記のように、株券発行会社の場合は現物の株券のやり取りで効力が発生します。しかし、昨今は大半の中小企業が株券不発行会社なので、現物株券のやり取りはありません。その代わり、株主名簿の名義を書き換えることで効力が発生します。

したがって、当事者同士で株式譲渡契約を行っただけでは無効になってしまうので注意が必要です。

株式の譲渡制限について

大半の中小企業は、自社の株式が自由に売買されて会社に不利益やトラブルが起きないように、株式の売買に制限をかけています。これが譲渡制限株式です。

この譲渡制限株式を売買する際は、当事会社から株式譲渡の承認を得る必要がありますが、株式譲渡承認請求が承認されるか承認されないかで、その後の対応が変わります

譲渡承認の場合

当事会社が譲渡制限株式の株式譲渡承認請求を承認した場合、請求があった日から2週間(これより短い期間を定款で定めている場合はその期間)以内に、承認したことを株式譲渡の当事者に通知しなければなりません。

譲渡非承認の場合

当事会社は譲渡を承認しないことを決定したら、株式譲渡承認請求された制限譲渡株式を買い取らなければなりません。株主総会で、株式を買い取る旨と買い取る株式の数を決議します。この決議に関して、株式譲渡の承認請求者には原則、議決権がありません。

譲渡非承認時の注意点

当事会社は、2週間以内(定款でそれより短い期間を定めている場合はその期間)に通知しなかった場合、非承認の決定をしていたとしても承認したとみなされます

株主総会で株式譲渡承認請求を否認したら、当事会社は株式の価額を算出して代金を保管しておかなくてはなりません。代金を保管し、譲渡請求者に書面を交付します。

会社が株券発行会社である場合、譲渡請求者は1週間以内に株券を保管所に預け、預けたことを通知しないと株式の売買契約は解除されます。

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8. 株式譲渡の価格算定方法

株式譲渡では、株式譲渡の価額算出が必要です。専門的な算出方法が数多く確立されており、それらは以下の3種に大別されます。

  1. コストアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. インカムアプローチ

①コストアプローチ

コストアプローチは、譲渡側の純資産を賃借対照表などで確認し、評価する方法です。純資産を基に算定するため、比較的簡易に算出できます。中小企業などのM&Aでは、取引前に簡易的な売却価額の目安を算出する際に用いられることが多いです。

純資産価額方式

純資産価額方式とは、会社を解散して資産を全て売却し、負債額や税金を引いた後の評価額のことです。純資産価額方式は、小規模企業の株式譲渡価額の算定に向いています。計算式は以下のとおりです。
 

1株当たり純資産価額=(相続税評価額から算出した総資産価額-相続税評価額から算出した負債-評価差額の法人税)÷株式数

なお、おおよその評価額を知りたい場合は、純資産額÷株式数でも算出できます。

②マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、株式市場での市場価格を基に評価する方法です。譲渡会社が上場企業であれば、市場株価を基に評価できます。非上場の中小企業であれば、類似した上場企業の市場株価を基に評価するため、客観性が高い評価方法といえるでしょう。

市場株価はさまざまな要因で変動するため、長期間の平均値を見て、一時的な変動が反映しないような工夫が必要です。

類似業種比準方式

類似業種比準方式とは、事業内容が似ているいくつかの上場企業との比較によって株式価額を算出する方法です。上場企業と比較するため、規模の大きい会社の株式譲渡価額を算出する方法に向いています。類似業種比準方式では、以下のような計算式で算出します。
 

類似業種の株価×比準割合×調整額

類似業種の株価や比準割合に使用する数字は、国税庁のホームページにある「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」を参照しましょう。調整額は企業規模によって変わり、大規模企業は70%、中規模企業は60%、小規模企業は50%で調整します。

類似業種比準方式では、参照する業種目の選択を間違いなく行いましょう。

③インカムアプローチ

インカムアプローチは、最も使われる企業価値算定の方法であり、譲渡会社の収益力を基に評価します。インカムアプローチとは、名前のとおりインカム、評価対象が将来、得られる収入に基づく企業価値算定手法です。

将来的な収益力を株式譲渡価額に加えられる一方で、客観性に欠けた恣意的な価額が算定される可能性も否定できません。しかし、M&Aでは最も合理的な価額算定方法といわれています。

DCF法

DCF(Discounted Cash Flow)法は、譲渡会社に将来、見込まれるキャッシュフローに対して、見込まれるリスクを加味し現在価値としたうえで、割り引いて算出する方法です。

DCF法は将来のキャッシュフローの計画をパターンごとに詳細にシミュレーションし、さまざまなシナリオでの価値算定ができます。柔軟な評価ができる一方で、主観的な要素も入りやすいため、論理的な思考に基づき評価できるかが重要となるでしょう。

配当還元方式

配当還元方式とは、会社の配当金額から1株当たりの評価額を算出する方法です。上記2種類の評価方式は計算が難しく、一般の株主にとっては使いにくいといったデメリットがあります。

その点、配当還元方式は比較的簡単に評価額を算出できることがメリットです。評価額は以下の計算式で算出します。
 

{年平均配当金額 ÷ (資本金などの額 ÷ 50円)}÷ 10% × {資本金などの額 ÷ (発行済株式数 - 自己株式数) ÷ 50円}

計算式にある年平均配当金額は、以下のように算出します。
 
(直前期の年間配当金+直前期の前期年間配当金)÷2

配当金がない会社の場合は、1株当たりの配当金を2円50銭として計算しましょう。

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9. 株式譲渡の税務

株式譲渡では、上場企業か非上場企業か、個人か法人か、時価の算出方法などによって税金が大きく変わります。株式譲渡で課せられる税金の注意点を確認しましょう。

譲渡所得税について

譲渡側が個人の場合、課せられる税金は、保有株式の譲渡益への譲渡所得税です。譲渡益は、売却して得た金額から株式の取得費用や手続きにかかった費用などを引いて算出します。譲渡所得税は、他の税金と通算しない申告分離課税の対象です。

上場企業の株式と非上場企業の株式は損益通算ができません。譲渡所得税の税金は、15%の所得税に復興特別所得税0.315%(2037⦅令和19⦆年まで)と5%の住民税を加えた、20.315%が税金として課されます。

譲渡側が個人の場合

相手が個人か法人か、譲渡価額が時価よりも高いか極端に低いかといった条件で税金は変わります。まずは売り手が個人の場合の税金を解説しましょう。

個人への株式譲渡

個人から個人へ時価で株式譲渡する場合、売り手側の税金は譲渡所得税が20.315%課せられます。このとき、買い手に税金は課せられません。

時価の2分の1未満の金額で株式譲渡した場合の税金は、譲渡益があれば差額分に譲渡所得税が課せられ、譲渡益がなければ売り手に税金は課せられません。そして、買い手には時価と購入代金の差額分に対し、贈与税が課せられるでしょう。

時価よりも高い金額で譲渡した場合の税金は、売り手には時価より高い部分に贈与税、時価の部分には譲渡所得税が課せられ、買い手への税金は課せられません。

法人への株式譲渡

個人が法人に時価で株式譲渡する場合の税金は、売り手側には譲渡所得税が課せられ、買い手の法人には税金が課せられません。

譲渡価額が時価の2分の1未満の場合の税金は、売り手は譲渡所得税が課せられ、買い手の法人には受贈益として時価と譲渡価額の差に対して法人税が課せられます。

時価よりも譲渡価額が高い場合の税金は、売り手の個人には時価との差額が給与所得や一時所得とみなされ、譲渡益には譲渡所得税が課せられるでしょう。買い手の法人は、差額が賞与や寄付金とみなされます。

時価と譲渡価額の差額 個人から個人 個人から法人
時価の場合 ・売り手 = 譲渡所得税
・買い手 = 税金なし
・売り手 = 譲渡所得税
・買い手 = 税金なし
時価の1/2未満の場合 ・売り手 = 差額に譲渡所得税
・買い手 = 差額に贈与税
・売り手 = 譲渡所得税
・買い手 = 差額に法人税
時価よりも高い場合 ・売り手 = 贈与税と譲渡所得税
・買い手 = 税金なし
・売り手 = 譲渡益に譲渡所得税
・買い手 = 差額が賞与・寄付金

譲渡側が法人の場合

譲渡側が法人の場合も、買い手が個人か法人か、時価よりも高いか極端に低いかといった条件によって税金に違いがあります。

個人への株式譲渡

法人から個人へ時価で株式譲渡した場合の税金は、売り手の法人には譲渡差益に法人税が課せられ、買い手の個人に税金は課せられません。

譲渡価額が時価の2分の1未満の場合の税金は、売り手の法人には法人税が課せられ、時価との差額は賞与や寄付金とみなされます。買い手の個人には、売り手が自分の会社の場合は給与所得、それ以外は一時所得とみなされるでしょう。

時価よりも譲渡価額が高い場合の税金は、売り手の法人は時価の部分の譲渡益と差額の部分に法人税が課せられ、買い手に税金はかかりません。

法人への株式譲渡

法人から法人へ時価で株式譲渡した場合の税金は、売り手の法人に法人税が課せられ、買い手の法人に税金は課せられません。

譲渡価額が時価の2分の1未満の場合の税金は、売り手の法人は時価の譲渡益に法人税が課せられ、差額は寄付金とみなされます。買い手の法人は、時価と譲渡価額の差が受贈益とみなされ、法人税が課せられるでしょう。

譲渡価額が時価よりも高い場合の税金は、売り手の法人は時価の部分に法人税が、差額の部分には受贈益として法人税が課せられ、買い手の法人は差額が寄付金とみなされます。

時価と譲渡価額の差額 法人から個人 法人から法人
時価の場合 ・売り手 = 法人税
・買い手 = 税金なし
・売り手 = 法人税
・買い手 = 税金なし
時価の1/2未満の場合 ・売り手 = 譲渡益に法人税
・買い手 = 給与所得・一時所得
・売り手 = 譲渡益に法人税
・買い手 = 法人税
時価よりも高い場合 ・売り手 = 法人税
・買い手 = 税金なし
・売り手 = 法人税
・買い手 = 寄付金

非上場企業は課税される税金額が時価に影響される

非上場企業の株式譲渡にかかる税金は、時価をベースに算出されます。

しかし、非上場企業の時価を正確に算出するのは難しく、前述したような企業価値算定方法を用いて数字を出したとしても、最終的には株式譲渡を行う当事者の交渉で決まった金額が時価とみなされることがほとんどです。

時価によって税金も変わることになるので、時価の算出や株式譲渡価額の交渉は税金の負担も考慮して慎重に行う必要があります。

株式譲渡損失の繰り越しについての注意

株式譲渡で生じた損失は、上場株式であれば翌年以降3年間の繰り越しが可能です。しかし、非上場株式は損失の繰り越しができません。上場株式と非上場株式の損益通算は2016(平成28)年以降できなくなりました。非上場株式同士の損益通算は可能です。

親族・関係者間の株式譲渡価額に対する課税の注意点

同族会社での株式譲渡は、親族関係から手続きや譲渡金額の決め方が緩くなりがちです。

通常であれば、株式譲渡価額の算定方法で前述したような客観性のある計算により時価を算出して取引額を決めたり、手続き方法で説明したような適正な手続きを踏んだりして株式譲渡を行います。

しかし、同族会社では、当事者の都合に合わせた譲渡価額の決め方をしたり、譲渡手続きを簡単に済ませていたりするケースも少なくありません。

税法上の評価額からかけ離れた価額で売買してしまうと、税務上で寄付金や贈与と認定されてしまい、余計な税金が発生する可能性があります。後々トラブルになった際に困らないよう、親族間であっても厳正な手続きを踏んでおくようにしましょう。

株式譲渡における節税方法

株式譲渡で売り手が自社のオーナー社長である場合、役員退職慰労金によって税金の負担を軽減できる場合があります。

役員退職慰労金は税金が優遇されているため、オーナー社長は通常の株式譲渡よりも税金が減額でき、会社は株式譲渡の対価を役員退職慰労金として渡すことで、損金への算入が可能です。

ただし、役員退職慰労金が不自然に高額であるなどの理由で税務署から否認される場合があるので、役員退職慰労金の金額には注意しましょう。

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10. 株式譲渡を行った企業の処遇

株式譲渡によって譲渡された企業は、経営権が買い手側に移ります。その際、譲渡企業の関係者の処遇はどうなるでしょうか。これら譲渡企業関係者の処遇を解説します。

  1. 経営者の処遇
  2. 従業員の処遇
  3. 取引先の処遇
  4. 債権者や債務者の処遇

①経営者の処遇

株式譲渡の目的や株式譲渡時の譲渡企業の状況によって、譲渡企業経営者の処遇は変わります。

事業承継目的で譲渡した場合、譲渡企業の経営者は事業譲渡手続き終了と同時にリタイアするか、しばらく何かしらの役職で会社に残り、引き継ぎを済ませた後に退職するパターンです

当事会社同士のさらなる成長のために株式譲渡を行った場合は、譲渡企業の経営者はそのまま残り、譲受企業の経営資源を利用して経営を続けるケースとなります。譲渡企業の経営者が、譲受企業の役員として招かれるケースも少なくありません。

②従業員の処遇

株式譲渡の場合、従業員は待遇を変えずに引き継ぎ、その後は必要に応じて徐々に変えていくのがよくあるパターンです。会社合併や事業譲渡などのM&A方法では、M&A完了後、引き継がれた従業員の処遇は大きく変わります。

その結果、処遇の変化や会社の風土になじめないなどの理由で不満を持つ従業員が現れることも少なくありません。株式譲渡は会社がそのまま引き継がれるので、そのようなデメリットを防止できます。

しかし、株式譲渡を完了する前にM&A専門家の協力も得ながら、入念にPMIの計画を策定しておくことが重要です。

③取引先の処遇

株式譲渡では、取引先との関係はそのまま引き継がれます。株式譲渡後にあらためて契約し直す必要もありません。しかし、中小企業ではオーナー社長との人間関係で成り立っている取引先も多いので、オーナー社長にしっかりと説明や引き継ぎをしてもらうなどの対処は必要です。

④債権者や債務者の処遇

株式譲渡では債権や債務もそのまま引き継がれるため、債権者や債務者に不利益が生じることは基本的にはありません。むしろ、資本力のある企業に会社が譲渡されることで、債権者としてはメリットが多くなるでしょう。

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11. 株式譲渡の注意点

株式譲渡では、注意しないと思わぬ損害を招くポイントがいくつかあります。

  1. 株主の所在が不明の場合
  2. 手続きの不備に注意
  3. 従業員持株会の株式譲渡
  4. 非上場会社の譲渡所得の取り扱い
  5. 各種規制(上場企業の場合)
  6. 名義株の対応

①株主の所在が不明の場合

不明株主への通知や催告は、株主名簿に記載されている住所に通知や催告を行えば有効とされています。5年以上、通知や催告が届かない場合、通知や催告はしなくてもよいとされているため、不明株主がいても議決などに影響するものではありません。

しかし、不明株主がいると譲受側にとってリスク要因になるため、譲受企業はできる限り不明株式を処分したいと考えます。

その場合、所在不明株主に通知や催告が5年以上届かず、配当も受け取らない状態であれば競売や売却といった方法で株式を処理することが可能です。この条件を満たしていない場合でも、強制的に不明株式を取得するスクイーズアウトで処理する方法もあります。

株主が死亡している場合

株式の相続は、株式に関する権利の包括的な承継です。株主が死亡した場合は、相続による株式取得者を確定させたうえ、株主名簿の名義書換請求を行いましょう。

株主が認知症になった場合

中小企業の株主の高齢化も加速度的に進んでいます。株主が認知症になってしまうと、判断能力が不十分なため株主総会で議決権を行使できなくなるなど、会社の事業に多大な影響を与えてしまいます。

認知症など株主の判断能力が不十分な場合には、成年後見人による手続きが必要となるでしょう。代表取締役の判断能力が衰えたときは、後継者が後見人とする「任意後見制度」を事業承継に活用するのが良いでしょう。

経営者も高齢化してきている中、事業承継前に現経営者が認知症などで判断能力を失うことも考えられるため、計画的に進める必要があります。

株主が制限行為能力者の場合

株主が未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者である場合は、保護者の特定と確認が必要となるでしょう。株式譲渡では、保護者が代理で行うか、保護者の同意が必要です。

株主が未成年者の場合は、親権者または未成年後見人から同意を得て株式譲渡を行うか、親権者もしくは未成年後見人が未成年者の代わりに株式譲渡の手続きを実行します。株主が成年被後見人の場合は、成年後見人が代わって手続きをする必要があるでしょう。

成年後見監督人がいれば、同意が必要です。成年後見監督人がいない場合、株式譲渡価額が多額になる際は家庭裁判所に事前相談が必要になります。

②手続きの不備に注意

株式譲渡は法務局への申請手続きが必要ないことから、小規模な企業であれば手続きをなるべく自社だけで済ませようとする場合もあります。

しかし、法務局へ申請手続きをする場合で書類に不備があれば差し戻しされますが、法務局に申請の必要がない場合、書類に不備があっても気付かないままになってしまいます。

後々、問題が起きないようにするためにも、書類作成などの手続きは、専門家に依頼した方が間違いありません

③従業員持株会の株式譲渡

従業員持株会は、上場企業では大半の企業が導入していて、非上場企業でも導入している企業は多く存在します。従業員持株会の株式を譲渡する方法は、従業員持株会加入者全員の承認を得るか、従業員持株会を清算しなくてはなりません。

④非上場会社の譲渡所得の取り扱い

非上場株式を株式譲渡した際に発生する譲渡所得は他の所得と区別されるので、損益通算して税金を減らせません。上場株式と非上場株式間で損益通算するのも不可能なので注意が必要です。

⑤各種規制(上場企業の場合)

中小企業などのように株式を公開していない会社が行う株式譲渡の場合、許認可の再取得などのような規制を受けないのですが、株式を公開している上場企業の場合はいくつかの規制を受けます。まず1つ目の規制は、TOB規制です。

この規制は、多くの株式が市場外で買い付けされるTOBの場合、公開買い付け開始広告などで一般の株主に対しても機会を与えるよう、情報の開示が必要となり、もしも一般の株主が応募の意思を表した場合は、それに応じなければなりません。

2つ目の規制は、インサイダー取引規制です。この規制は、会社の関係者が業務上で知った情報を基に、その情報が公表される前に株式の取引を行うことを禁止する規制であり、不正な利益を会社の関係者が得ないようにするために定めています。

このように、上場企業の場合は各種規制の影響を受けますので、その点も注意しなければなりません。

⑥名義株の対応

名義株は、株主でない人が名義だけ株主名簿に載せている株式です。M&Aにおける名義株は、発起人だけでなく外部から株式の引受人を募集し設立した場合、株式引受人が名義株主となっているケースがあるでしょう。M&Aでは株式を売買するため、保有者が明確でない名義株はトラブルとなる可能性があります。

設立後に従業員に株式を保有させるケースもあるため、株主か名義株主か分からなくなる場合もあるでしょう。名義株がある場合の対応は以下が挙げられます。

  • 出資者を確認する
  • 株主総会で議決権を行使している人を確認する
  • 名義株主本人から確認書を取得する
  • 名義株主に対して株券を渡していないことを確認する
  • 名義貸しの経緯を調査し、証明できる資料を用意する
  • M&Aの最終契約書に表明保証条項を入れる

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12. 家族間における株式譲渡の手続き

親族同士の間で生前贈与による株式譲渡を行う場合の手続きは、どのようものがあるのでしょうか。ここでは生前贈与を活用した際のメリットやデメリット、税金、手続きの流れを紹介します。

生前贈与のメリット

生前贈与の最大のメリットは、節税効果でしょう。生前贈与によって相続財産が減ると、課税対象も減少するため、累進課税の税率も低く抑えられます。

株式の価値が上昇する前に家族に贈与すると、相続で株式を譲渡するよりも税金が減るため、節税効果も高くなります。他にも生前贈与のメリットとして、贈与税免除措置が挙げられるでしょう。

年間110万円までであれば贈与税が免除されるため、計画的に行うと税負担を軽減可能です。

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリットは、贈与をしてから被相続者が3年以内に亡くなってしまうと、相続税の課税対象となることです。このような場合は、節税効果を得られません。自社株の場合、株式の所有比率が経営権です。

したがって、生前贈与で家族に株式を譲渡しようとする場合、株式所有比率が分散してしまうおそれもあります。自社の重大事項を決定する際に不都合が起こる可能性もあるため、計画的に行う必要があるでしょう。

生前贈与で課される税金

株式譲渡を家族間で生前贈与を行う場合、贈与税が課税されるのが一般的です。しかし、年間110万円までは非課税になります。生前贈与で課される税金は、贈与税、譲渡益税などです。仮に株式譲渡の贈与がみなし贈与と認められてしまった場合、税金が増加する可能性があります。

生前贈与を行う手順・流れ

株式譲渡を生前贈与で行う場合、手続きは以下のとおりです。

  • 株式の評価額決定
  • 贈与契約書作成

株式の評価額の方法で価格が決定された後、贈与契約書を作成します。贈与契約は口頭でも成立は可能ですが、トラブルの原因となるため契約書を作成しておくのがよいでしょう。

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13. 株式譲渡によるM&Aの成功事例

ここでは、実際に株式譲渡で成功している企業の事例を紹介します。いずれも株式譲渡によって大きなシナジー効果を得ている企業の事例です。

  1. ノベルバによる株式譲渡
  2. ユニー・ファミリーマートホールディングス(現:ファミリーマート)による株式譲渡
  3. 東洋造機による株式譲渡
  4. アーロンロイドによる株式譲渡
  5. DDTによる株式譲渡

①ノベルバによる株式譲渡

ノベルバ

ノベルバ

出典:https://novelba.com/

2018(平成30)年11月、スマホ向けの漫画配信サービスを運営しているビーグリーは、小説投稿サイト・アプリを運営するノベルバを完全子会社化しました。

漫画の電子化率に比べて小説の電子化率はかなり低く、これから成長が期待できる分野です。ビーグリーはこれを機に、電子書籍事業だけではなく新事業へも進出して成長していく計画を立てています。

②ユニー・ファミリーマートホールディングス(現:ファミリーマート)による株式譲渡

ファミリーマート

ファミリーマート

出典:https://www.family.co.jp/

2018年10月、ユニー・ファミリーマートホールディングスは、子会社ユニーの全株式をドンキホーテホールディングスに譲渡したと発表しました。

ユニー・ファミリーマートホールディングスは、コンビニエンスストア事業と総合小売り事業を展開していますが、ユニーの売却でコンビニエンスストア事業に経営資源を集中させる計画です。

一方でドンキホーテは、ユニーとは主力事業が異なり競合関係にないことから、お互いの強みやノウハウを生かした相互補完関係が築けるとして業務提携などで協力関係を作ってきました。

今回、ユニーがドンキホーテの完全子会社となることでより深い関係を築き、シナジー効果が得られるとしています。

③東洋造機による株式譲渡

ヨネックス

ヨネックス

出典:https://www.yonex.co.jp/

2018年10月、ヨネックスは、ガット張り機の製造をしている東洋造機を株式譲渡によって完全子会社化すると発表しました。テニスの大坂なおみ選手効果で、テニス関連市場は数百億円規模の経済効果があるともいわれています。

その中でも特に、大坂なおみ選手にラケットを提供しているヨネックスは大きな恩恵が得られるとの予測です。ヨネックスは選手も企業も、将来有望であればかなり早い段階から支援したり協力関係を築いたりしてきました。

その種まきが実ったタイミングで、ガット張り機製造の東洋造機の完全子会社化し、テニスラケット販売で世界一獲得を狙っています。

④アーロンロイドによる株式譲渡

電通

電通

出典:https://www.dentsu.co.jp/

2018年9月、電通は、ロシアの医薬品専門広告代理店であるアーロンロイド社の全株式を取得すると発表しました。

電通の海外M&A戦略は年々、加速していて、2018年は他にもアメリカ、オーストラリア、ポーランド、香港、スイスなど、世界各国の広告代理店関連会社にM&Aを行っています。

国内でも2018年10月にデジタル広告に強みを持つ専門広告代理店のセプテーニホールディングス株を公開買い付けによって取得しました。電通は高速でグローバルネットワークを築くことで、世界展開で鍵になる多国籍企業からの信頼を獲得しようとしています。

⑤DDTによる株式譲渡

DDT

DDT

出典:https://www.ddtpro.com/

2017(平成29)年9月、プロレス団体のDDTは、全株式をインターネット関連事業のサイバーエージェントに譲渡したことを発表しました。サイバーエージェントが最も力を注いでいるのが、インターネットテレビ局の「AbemaTV」です。

AbemaTVの視聴者は10代・20代の若者が中心であり、30代以上のファンが多いDDTはサイバーエージェントグループに入ることで、若者や女性のファンを獲得したい狙いがあります。

サイバーエージェント側としても、人気コンテンツの1つである格闘技をさらに広げていきたい戦略があり、DDTの完全子会社化によってシナジー効果を得るのが狙いです。

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14. 株式譲渡に関する相談先

株式譲渡は他のM&A手法に比べて手続きが簡便で、法務局への申請手続きが必要ないことから、手続きに不備があるまま放置されてしまうことがあります。同族企業の場合は、株式譲渡価額の交渉に問題が生じる可能性もあるでしょう。

手続きに不備やトラブルがないように株式譲渡を進めるには、専門家の協力が欠かせません。株式譲渡の一貫支援をご希望であれば、特にM&A仲介会社がおすすめです。

M&A仲介会社選びでお困りでしたら、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、株式譲渡を含むM&Aの知識と経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&A・株式譲渡をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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15. 株式譲渡のまとめ

株式譲渡は、事業譲渡や会社合併などの方法に比べて手続きが簡便なことから、最も多く用いられています。しかし、株式譲渡と事業譲渡・会社合併ではメリット・デメリットがそれぞれ違うので、目的に応じて使い分けることが必要です。

そして、デューデリジェンスやPMIを徹底して行うことはもちろん、株式譲渡を円滑に進めるにはM&A専門家の協力が欠かせません。株式譲渡を検討し始めたら、まずはM&Aの専門家に相談するのをおすすめします。

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