会社売却・M&Aで問題になる簿外債務とは?粉飾発見方法と対処方法

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

当記事では、会社売却・M&Aでたびたび問題になる「簿外債務」についてまとめています。簿外債務・簿外負債とはどのようなものか、見つけ方はあるのか説明しています。また、簿外債務が会社売却・M&Aに与える影響や、簿外債務・簿外負債が問題になった事例も解説しています。

目次

  1. 簿外債務とは?
  2. 簿外債務となる原因
  3. 簿外債務が発生する理由
  4. M&Aの際に簿外債務となるケース
  5. 簿外債務により問題が起こった事例
  6. 簿外債務による粉飾決済の発見方法
  7. 粉飾決算が見つかった時の対処方法
  8. 簿外債務を出さないための対応
  9. まとめ
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1. 簿外債務とは?

簿外債務とは?

当記事では、会社売却・M&Aの際に問題となることがある「簿外債務」について解説していきます。「簿外債務とはどのようなものか知りたい」「簿外債務の発見方法を知りたい」という方は、ぜひ当記事を参考にしてみてください。

まずは、簿外債務とは何なのか解説してます。簿外債務とは、文字通り「帳簿の外にある債務」のことで、企業の貸借対照表上の計上されていない債務のことを意味しています。「簿外負債」という表現のされ方もします。

簿外債務という文字とその意味を知ると、簿外債務があることが犯罪のように感じてしまいます。しかし実際には、簿外債務が発生すること自体は決して珍しいことではありません。特に、中小企業の場合、当たり前のように簿外債務・簿外負債が発生します。

なぜ中小企業では当たり前のように簿外債務・簿外負債が発生するのかというと、仕訳処理の際に「税務会計」を用いているためです。中小企業では、「偶発債務」「飛ばし」といった意図的な簿外債務を発生させています。詳しくは、以下の章で解説します。

2. 簿外債務となる原因

簿外債務となる原因

上記で、中小企業は意図的な簿外債務・簿外負債を発生させると解説しました。その意味について、この章で詳しく説明していきます。会社売却・M&Aの際に問題になる「簿外債務」が発生する原因として、「偶発債務」「飛ばし」があります。

偶発債務

中小企業が意図的に発生させる簿外債務・簿外負債の一つが「偶発債務」です。偶発債務とは、文字通り「偶発的に発生することが考えられる債務」のことです。

もう少し具体的に説明すると、「現在はまだ発生していない債務だけれど、将来的に一定の条件が満たされたときに発生する債務」のことです。

「債務の保証人になる」「損害賠償義務が発生しそうな裁判の途中」「手形を裏書譲渡した」「含み損を抱えそうな金融商品を保有している」場合などが、この偶発債務に当たります。

偶発債務のうち、発生確率が高いものに関しては「引当金として計上」する必要があります。しかし、発生確率があまり高くないものに関しては、基本的に、「偶発債務が発生する可能性がある」という注意喚起のために、決算書に注意書きをするだけで良いのです。

そのため、将来的に企業の債務・負債となり得そうなものがあったとしても、偶発債務そのものは仕訳処理の段階で帳簿に反映されず、「簿外債務・簿外負債」となります。

飛ばし

簿外債務・簿外負債が発生する原因として、中小企業が意図的に「飛ばし」を発生させていることも挙げられます。「飛ばし」とは、企業が保有している「評価損・含み損を抱えた有価証券や資産」を第三者に売却する行為のことを指しています。

企業が保有している株式や不動産、債券などが値下がりしてしまうと、その影響が貸借対照表上に現れてしまいます。仕訳処理の段階で、資産の評価損・含み損をそのまま計上してしまうと、企業の財務状態が悪化しているように見えてしまいます。

それを避けるために、含み損・評価損が出ている有価証券などを、買い戻しの条件付きで、第三者に割高価格で売却します。これが「飛ばし」であり、簿外債務の一つです。「飛ばし」を実施することで、自社の損失が決算書からは見えないようにすることができます。

この「飛ばし」は、1980年代までは、「山一証券」や「大和証券」といった証券会社でよく使われていた手法でした。しかし、1990年代に社会問題となった証券会社の不祥事によって、現在では「粉飾決算」の一つとされ、金融証券取引法により禁止されています。

3. 簿外債務が発生する理由

簿外債務が発生する理由

ここからは、簿外債務・簿外負債が発生する「理由」について解説していきます。上記でも少しだけ触れましたが、中小企業では当たり前のように簿外債務が発生する理由は、仕訳処理をする際の会計方式が「税務会計」を利用しているからです。

税務会計とは?

「税務会計」とは、企業活動の成果であり、課税されるべき企業の所得額を算出するための会計方式です。中小企業が毎年の税額を決定するために作成する「決算書」や「課税申告書」は、この税務会計を利用して作成されています。

「税務会計」は、課税されるべき所得額を算出する会計方式です。そのため、中小企業の経営者は、税務会計を利用した仕訳処理の段階で、できるだけ利益を小さく見せることで、税額を抑えることが可能となります。

国は中小企業の意図を理解しており、現実に発生していない債務・負債は「損金ではない」という立場をとり、中小企業が利益を過小評価しないように努め、可能な限り税額を増やすことを考えます。

この企業側と国側の意図が乖離している状況により、多くの中小企業は仕訳処理の段階において、発生していない負債・債務の計上をないがしろにします。その結果、簿外債務・簿外負債が発生してしまいます。

財務会計とは?

「税務会計」と似た用語に「財務会計」というものがあります。「財務会計」とは、該当する決算期の経営成績を、外部のステークホルダー(利害関係者)に対して開示するための会計方式のことを指します。基本的に、上場企業などの大企業が利用する会計方式です。

外部のステークホルダー(利害関係者)とは、株主や投資家、銀行、取引先などのことです。ステークホルダーに対して、「自社は今期このくらい利益を上げました・成長しました」とアピールする目的があるため、財務会計は「利益を大きく見せよう」とします。

財務会計と税務会計の違い

財務会計と税務会計の大きな違いは、「利益の見せ方」にあります。仕訳処理の方式として「税務会計」を採用している中小企業は、できるだけ支払う税金を抑えるために、「利益を少なく見せよう」という意識を持って、仕訳処理を実行します。

「税務会計」で算出される利益は、その企業の「課税されるべき利益(課税所得)」であり、税務会計の仕訳処理の結果、算出された利益が小さい方が、支払う税金を抑えることができます。その結果として、簿外債務・簿外負債が発生します。

一方で、仕訳処理方式として「財務会計」を採用している大企業・上場企業などは、ステークホルダーにできるだけ良い印象を与え、投資・取引するに値する企業であると認識してもらうために、「利益を多く見せよう」という意識で仕訳処理を実行します。

簿外債務が発生する流れ

ここまで、「簿外債務とはどのようなものなのか」「仕訳処理の際に発生する簿外債務の原因」「簿外債務が発生する理由」についてそれぞれ解説してきました。これらの内容を踏まえ、簿外債務が発生する流れを以下にまとめます。

  1. 中小企業は決算書・課税申告書を作成する会計方式として「税務会計」を採用する
  2. 「税務会計」では、課税されるべき利益が算出される
  3. 支払う税金をできるだけ低く抑えるために、偶発債務などを決算書に反映しない
  4. 簿外債務が発生する

決算書や課税申告書を作成するにあたり、中小企業は「税務会計」を採用しています。税務会計は、上記で解説している通り、「課税されるべき企業の所得額を算出する会計方式」です。この段階で算出される利益に応じて、支払う税額が決定します。

「税務会計」を採用している企業は、支払う税金の額をできるだけ抑えるために、偶発債務などを決算書に計上しないようにします。このような流れで「簿外債務」が発生するのです。

【関連】負ののれんとは?分かりやすく解説!仕訳、税務処理はどうなるの?

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4. M&Aの際に簿外債務となるケース

M&Aの際に簿外債務となるケース

多くの中小企業は「税務会計」を採用しているので、簿外債務が発生していることは、決して珍しいことではありません。そのため、特に中小企業が対象の会社売却・M&Aでは、簿外債務が問題となるケースも多いです。

ここでは、会社売却・M&Aの際に「簿外債務」として扱われるものを紹介していきます。簿外債務となるケースには、以下のようなものが挙げられます。

  • 賞与引当金
  • 退職給付引当金
  • 回収見込みの少ない売掛金
  • 買掛金や残業代未払い金の計上漏れ
  • 社会保険の未加入
  • 環境汚染のリスク
  • 他社・他人の保証人・連帯保証人となっている
  • 損害賠償請求が発生し得る訴訟リスク
  • 金融商品の含み損

5. 簿外債務により問題が起こった事例

簿外債務の問題事例

ここから、簿外債務によって問題が発生した事例について紹介していきます。以下のように、大手企業・有名企業の簿外債務が社会問題となるケースもあります。

①シャープによる簿外債務

日本の大手電機メーカーである「シャープ」を、台湾の電気製品を受託生産するEMS「鴻海」が買収してことは記憶に新しいです。この買収劇の裏で、シャープの簿外債務の存在が浮き彫りとなりました。

シャープは、退職金や他社との契約に関する違約金などの「偶発債務」が、およそ3500億円もあるという内容の文書を提示したことで、鴻海は一時的にシャープの買収を延期しました。

②山一證券による簿外債務

日本の四大証券会社と言われていた「山一証券」は、上記で解説した「飛ばし」による簿外債務を発生させていました。

山一証券はバブル期に、他社よりも利回りを保証することで営業特金(運用資金)を獲得する手法によって、短期間に多額の手数料収入を得ていました。しかし、バブルが崩壊したことが原因で、山一証券が抱える営業特金は1千億円を超える含み損を計上してしまいます。

含み損が帳簿に反映されることで、大きな損失を被ることを避けようとした山一証券は、「飛ばし」を実施して、簿外債務を発生させて、損失隠しを行いました。

しかし、含み損をすべて隠せるだけの「飛ばし先」もなくなってきたことで、山一証券は海外に作ったペーパーカンパニーに損失を移転したのです。これは完全な「粉飾決算」でした。

この粉飾決算は社会問題となり、結果的に四大証券会社と言われた山一証券は自主廃業に追い込まれてしまいました。

③大和証券による簿外債務

大手証券会社の一つである「大和証券」は、上記で解説した「山一証券の事件」と同様の時期に、「飛ばし」による損失隠しを行っていました。

④オリンパスによる簿外債務

日本の電子機器メーカーの「オリンパス」は、損失隠しのために「飛ばし」を実行し、問題となりました。

オリンパスは、「飛ばし」の手法を用い、10年以上も巨額の損失を隠し続け、結果的に負債を粉飾決算で処理したことで、株価急落・会長の辞任などの事件となりました。

⑤エルエスエムによる簿外債務

物流サービス業者の「エルエスエム」は、粉飾決算による資金調達が発覚し、最終的に自己破産申請をしました。

エルエスエムは、多角化経営に失敗し、大きな損失を出した後、資金繰りが厳しくなったために、借入額を過少に見せる粉飾決算を実施し、資金繰りを行っていました。

エルエスエムの自己破綻申し立て時に提出された負債額は、金融機関に提出されていたものよりも40億円以上も多く、40億円以上の簿外債務があったことが判明したのです。

6. 簿外債務による粉飾決済の発見方法

粉飾決済の発見方法

ここまで簿外債務についてみてきた方の中には、「簿外債務は見つけにくいものなのでは」と感じている方もいるのではないでしょうか。そこでここからは、会社売却・M&Aを実施する際に、簿外債務の発見方法・見つけ方を解説していきます。

簿外債務の発見方法・見つけ方として、「デューデリジェンスの徹底」「表明保証の明記」の2種類が挙げられます。

デューデリジェンスの徹底

会社売却・M&Aによって企業を買収する際に、売却側の企業が持つ簿外債務は、買収側が引き継がなければいけません。簿外債務を引き継いでしまい、後々問題が発生するのを避けるためにも、会社売却・M&Aの段階で「デューデリジェンス」を徹底しましょう。

「デューデリジェンス(DD)」とは「買収審査」のことで、会社売却・M&Aを進める際に、会計士や弁護士といったM&Aの専門家が売却企業を細かく調査し、買収するに値する企業か・問題が無い企業かを精査します。

デューデリジェンスは、会計士・弁護士などの専門家が売却企業の財務状態を細かく調査してくれるため、簿外債務の効果的な発見方法・見つけ方と言えます。

表明保証を明記

簿外債務の有効な見つけ方に「表明保証を明記する」方法があります。「表明保証」とは、会社売却・M&Aを実施する際の契約に必ず記載する事項の一つで、「契約前に確認した、財務・税務、法務などに関する事実が正確であること」の保証です。

簿外債務の見つけ方・発見方法の一つである「デューデリジェンス」は、短期間で実施されるものであり、すべての問題点を把握できない可能性があります。

そこで、会社売却・M&Aの契約に「表明保証」を明記することで、契約前に確認した「売却会社の財務・法務・税務状態が正確である」ことを保証してもらいます。この表明保証を確実に明記することで、会社売却・M&A後の簿外債務発見を防ぐことができます

M&Aを実施した後に、簿外債務が発覚したり、粉飾決算をしていた事実が見つかると、大きなトラブル・問題に発展してしまいます。それらを避けるためにも、簿外債務・粉飾決算の見つけ方・発見方法である「デューデリジェンス」と「表明保証」を徹底しましょう

【関連】M&AにおけるDD(デューデリジェンス)項目別の目的・業務フローを徹底解説!

7. 粉飾決算が見つかった時の対処方法

粉飾決算の対処方法

簿外債務などの問題の発見方法・見つけ方を試した結果、粉飾決算が見つかった時、どのような対応をとれば良いのでしょうか。ここから、売却会社の問題点の見つけ方・発見方法を試した結果、粉飾決算などの問題が発覚したときの対象方法を解説していきます。

M&Aの中止

簿外債務等の問題点の見つけ方・発見方法である「デューデリジェンス」を実施し、買収対象の会社に粉飾決算があることが判明した場合、まずはM&Aを中止しましょう。M&Aによって企業を買収すると、相手企業のすべてを引き継ぐ必要があります。

そのため、財務諸表や決算書に問題があったとしても、その問題(簿外債務など)も引き継がなければいけなくなります。このような場合、M&Aの買収側の企業としては、予期せぬ負債・問題を抱えることになるため、M&Aのメリットを享受できません。

デューデリジェンスなどによって、事前に問題が発覚した場合は、M&Aの中止を検討することで、自分たちの会社を守ることができます。

事業譲渡によるM&Aに切り替える

もし、事前のデューデリジェンス等で簿外債務・粉飾決算が見つかった場合、M&Aスキームを「事業譲渡に切り替える」という対処方法があります。

先程説明した通り、M&Aを実施すると、基本的に売却側が持つ簿外債務なども引き継ぐ必要があります。しかし、M&Aスキームを事業譲渡に切り替えることで、事前に不要な資産や契約、簿外債務などを取り除き、手に入れたい事業のみを獲得することができます

表明保証内容を遂行

M&A実施後に、簿外債務や粉飾決算が発覚し、自社に損失が発生しそうな場合は、簿外債務の見つけ方・発見方法の一つである「表明保証」の内容を遂行しましょう。

「表明保証」はM&Aの契約における一つの条項です。そのため、会社の売主側がこの契約に違反した場合は、「損害賠償請求」や「契約の解除」などを請求することができます。

【関連】M&Aスキーム・手法別でメリット・デメリットを比較!

8. 簿外債務を出さないための対応

簿外債務を出さないための対応

最後に、M&Aにおいて「会社売却側」が簿外債務を出さないようにするための対応方法についてご紹介します。

偶発債務に注意する

決して簿外債務を出してはいけないわけではありません。しかし、M&Aによって会社売却を検討している場合、簿外債務があることで、買収を敬遠・躊躇されてしまう可能性があります。普段からできるだけ「偶発債務を出さないようにする」ことを意識しましょう。

外部から監査人を入れる

簿外債務を防ぐための方法として、「外部から監査人を入れる」という対処方法もあります。財務諸表の作成、企業会計などは、専門的知識を要します。会計士等の専門家を外部監査人とすることで、簿外債務を抑えることが可能となります。

9. まとめ

まとめ

今回は、「簿外債務とは何か」「簿外債務が発生する原因や理由は何か」「簿外債務の見つけ方・発見方法は何か」など、簿外債務について詳細に解説してきました。これからM&Aを実施しようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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