物流(運送)会社の事業承継まとめ!後継者が頼りない場合はどうすれば良い?

提携本部 ⾦融提携部 部⻑
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

物流会社(運送会社)の事業承継で後継者が頼りない場合、本当に継いでくれるのか不安に感じることもあるでしょう。会社を任せられるか、事業承継にかかる手続きはどうしたら良いかと悩みは尽きないものです。物流会社(運送会社)の事業承継を知り、安心して事業を残しましょう。

目次

  1. 運送業界の概要
  2. 運送業界の事業承継
  3. 運送業界の親族内承継
  4. 運送業界の親族外承継
  5. 運送業界のM&A承継
  6. 物流(運送)会社を廃業させずに事業承継を選ぶべき理由
  7. 後継者が頼りない場合に検討すべき2つの方法
  8. 物流(運送)会社でM&Aの事業承継をした成功事例
  9. M&Aも含めて事業承継を進める5つのステップ
  10. 物流(運送)会社の事業承継でもっとも注意すべきこと
  11. 物流会社の事業承継でお悩みの方はM&A総合研究所にご相談ください
  12. まとめ
  13. 運送・物流業界の成約事例一覧
  14. 運送・物流業界のM&A案件一覧
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1. 運送業界の概要

運送業は企業の事業運営や私たちの生活に不可欠な存在ですが、近年は課題も多く抱えています。まずは、運送業界の現状や課題、今後についてみていきましょう。

運送業界の現状

矢野経済研究所の調査によれば、物流17業種の2021年度における総市場規模は23兆1860億円であり、前年度比115.7%という大きな伸びとなりました。

大幅増加の要因は、ネット通販市場の拡大に加えフリマアプリなどを活用した個人間取引の広がりによって、宅配便の取扱個数が急速な増加傾向にあることが考えられます。

参考:株式会社矢野経済研究所「物流17業種市場に関する調査を実施(2023年)」

運送業界の課題

需要が拡大している運送業界ですが、解決すべき課題も抱えているのが実情です。特に以下2つの課題は、業界が安定した成長を続けるために早期解決が求められています。

ドライバーの高齢化と若手人材の不足

運送業界のなかでもトラック運送事業は典型的な労働集約型産業であり、ドライバー不足は業績に大きく影響します。しかし、近年はドライバーの高齢化が進む一方であり、若手人材は継続的に不足している状態です。

全日本トラック協会の資料によれば、2021年度における道路貨物運送業の従業員年齢は50歳以上が45.2%を占めており、40歳未満の従業員は全体の24.1%と、高齢化が進んでいることがわかります。

参考:公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」

DX化などによる生産性の向上

国内企業は「働き方改革」への対応を進めていますが、運送業界では長時間労働の抑制対応が急務となっています。

しかし、ドライバーの高齢化や若手人材不足を抱える運送業界が、課題解決を図りつつ成長を図るためには、生産性の向上が不可欠です。現在、業界ではDX化などによる業務効率向上や労働力の確保に向けた対応などが進められています。

運送業界の今後

国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」より

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001625915.pdf

国土交通省が公表している資料によれば、2022年度の宅配便取扱個数は50億588万個であり、前年度より5265万個(前年度比1.1%)でした。

そのうちトラック運送が49億2508万個であり、全体の9割以上を占めています。1989年以降、宅配便取扱個数は右肩上がりで推移しており、今後も取扱個数は増加すると考えられますが、物流業界では人材不足をどうカバーするかが業績にかかわるカギといえるでしょう。

参考:国土交通省「令和4年度 宅配便・メール便取扱実績について」

2. 運送業界の事業承継

運送業界では、ドライバーなどの従業員だけでなく経営者の高齢化も進んでいます。国内の多くの中小企業が後継者問題を抱えていますが、運送業界においても後継者不在の事業者は少なくなく、廃業を選択するケースも多々みられます。

また、後継者がいても経営環境の厳しさから事業承継を行わないケースも多いです。運送業界の中小事業者は下請けあるいは三次受けであることも多く、価格競争は厳しさを増す一方で利益率はあがらないという状況が続いています。

本来であれば事業承継は適切なタイミングで行われるべきですが、このような理由から事業承継が進んでいない企業が多いのも運送業界の実情です。

3. 運送業界の親族内承継

親族内承継は古くから用いられている方法であり、特に中小企業では二代目・三代目と代々事業を引き継ぐケースも非常に多くみられます。

親族内承継とは

経営者の子供や親族を後継者として、自社を引き継ぐ方法です。中小企業においてはポピュラーな事業承継方法であり、最も多く活用されています。

親族内承継メリット

親族内承継を選択するメリットには、主に以下の3つが挙げられます。

関係者に受け入れられやすい

経営者の親族が事業を代々引き継いでいる場合、従業員や取引先などの関係者は心情的に受け入れやすく、既定路線であると納得が得られやすい点がメリットです。

後継者教育の期間が確保できる

経営者の子や親族が後継者候補であれば、事業承継の計画を早めに立てることができ、経営者としての教育期間を充分確保することができます

育成方法はさまざまあり、自社で経験を積ませるだけでなく、関連会社や付き合いのある他社で経験を積ませることも可能です。

所有と経営の分離を回避できる

親族内承継では、事業用資産と株式を贈与や相続によって引き継ぐことができます。財産と経営権を一体で後継者へ引き継ぐことができ、所有と経営の分離を回避できる点がメリットです。

親族内承継デメリット

親族内承継を選択するデメリットとしては、主に以下の2つが考えられます。

親族内に適性のある後継者がいないケースがある

経営者の親族に後継者候補がいても、その人物に経営者としての資質が備わっているとは限りません。また、経営者としての適性があっても、本人に会社を引き継ぐ意思がない場合もあるでしょう。

経営者としての資質がなかったり、本人に引き継ぐ意思がなかったりする場合、無理に事業承継を行ってしまうと将来的に事業運営がうまくいかない可能性もあります。

親族内でトラブルが起こる可能性がある

相続によって事業承継が行われる場合、後継者候補以外に複数人の相続人がいることもあります。このようなケースでは、財産分与をめぐり親族内でトラブルが起こる可能性もあるため、経営者は事前に相続時の財産分与等を決めておくことが重要です。

特に株式は分散してしまうと経営権の集中が難しくなり、事業運営に支障をきたす可能性も考えられます。そのようなリスクを避けるためにも、親族内承継を選択する場合は生前から後継者を決めておき、後継者以外の親族への財産分与についても親族会議で決めておく必要があるでしょう。

  • 運送・物流会社のM&A・事業承継

4. 運送業界の親族外承継

経営者の親族だけでなく、社内の役員や従業員を後継者として、自社を引き継ぐこともできます

親族外承継とは

親族外承継とは、自社の役員や従業員など経営者の親族以外から後継者を選び、自社を引き継ぐ方法です。自社の役員や従業員であれば企業理念や経営方針もよく理解しているため、事業承継後の一貫性が保ちやすく、安定した事業運営を見込むことができます。

親族外承継メリット

親族外承継の大きなメリットは、役員や従業員の資質や能力を経営者自身が見極められる点です。一般的に親族外承継で後継者候補となるのは、役員や若手経営陣、共同創業者であるケースが多く、経営者はこれまでの働きぶりや能力などから将来任せるかどうかを判断することができます。

親族外承継デメリット

親族外承継で弊害となるのは、自社株を買い取るための資金を後継者候補が用意しなければならないことです。親族外承継では贈与というかたちではなく有償譲渡が一般的ですが、経営権を掌握できるだけの株式を取得するには多額の資金が用意しなければなりません。

役員や従業員が個人的に資金を持っているケースはまれであり、金融機関からの融資が必要となるケースがほとんどです。その際は個人保証を負うことになるため、後継者候補から辞退される可能性もあります。

親族外承継成功ポイント

親族内親族外承継を成功させるためには、まず株式の取得費用をどうするかについて後継者候補とよく話し合うことが必要です。同時に後継者候補の家族から理解を得る必要もあります。

また、経営者の親族へも丁寧に説明して充分な理解を得ることが、事業承継後のトラブルを避けて安定した企業運営を行うためにも不可欠といえるでしょう。

5. 運送業界のM&A承継

M&A承継とは

M&A承継とは、自社を第三者(他社)へ売却して事業を引き継ぐ方法です。事業承継でM&Aを活用する場合、他社が株式譲渡によって株式を取得して経営権を移転させるケースがほとんどですが、事業譲渡や合併といった別スキームを使用することもできます。

株式譲渡や合併は包括承継スキームであり、譲渡側の経営権だけなく、保有資産や負債、従業員の雇用や取引先との契約、許認可なども譲受側へ承継するかたちです。

事業譲渡の場合は、対象となる事業の一部あるいは全部を譲受側へ引き継ぐことができますが、個別承継スキームであるため、権利・義務が自動で引き継がれるわけではありません。そのため、譲受側が雇用や取引先を引き継ぎたい場合は、個々に同意を得て改めて契約しなおす必要があります。

M&A承継メリット

M&A承継には、主に以下のようなメリットがあります。

従業員の雇用維持

中小企業の経営者にとって、従業員の雇用維持は事業承継時の第一希望であるケースが非常に多くみられます。M&A承継の場合はほとんどのケースで株式譲渡が用いられますが、株式譲渡では権利・義務がすべて譲受側へ引き継がれます

従業員の雇用契約も譲受側が引き継ぐかたちで維持されるため、譲渡側の経営者にとって大きなメリットのひとつです。

創業者利潤(売却益)の獲得

中小企業の場合、経営者の退職金を積み立てていることは少ないため、引退後の生活資金が不安というケースもあるでしょう。M&Aの場合、自社あるいは事業売却すれば対価が得られます。

株式譲渡の場合は、株主であるオーナー経営者が譲渡対価を得るため、それを引退後の生活資金などに充当することが可能です。

事業譲渡の場合は対価を受け取るのは法人(会社)ですが、その場合は退職金という形でオーナー経営者がまとまった現金を得ることもできます。

個人保証(経営者保証)からの解放

企業が事業運営して行くためには、金融機関などから融資を受けることもあります。中小企業が融資を受ける場合、経営者が個人保証(経営者保証)を負うケースが非常に多いです。

もし廃業という選択をしても返済がなくなるわけではなく、親族や従業員などに後継者候補がいても個人保証(経営者保証)の引継ぎが足かせとなり、事業承継が難しいケースも考えられます。

M&A承継の場合、譲受側が個人保証(経営者保証)そのものを引き受けるか、融資を肩代わりするかたち行われるケースがほとんどです。

譲渡側の経営者にとって、個人保証(経営者保証)の存在は金銭的にも精神的にも負担の大きいものですが、M&A承継であればその負担から解放されます。

M&A承継デメリット

M&A承継には当然デメリットとなりうる点もあります、主に考えられるのは以下の3点ですが、検討時はメリット・デメリットの両方をよく考えたうえで決定することが重要です。

M&Aの経営統合に時間が必要

M&A承継では、これまで別々に事業運営していた企業同士が統合されます。M&A後は人事体制・組織体制・業務システムといったハード面だでけでなく、企業文化や従業員の意識面など目に見えない部分が融合できなければ、M&A前に想定していた効果を得ることはできません。

この作業をPMIと呼び、PMIがうまくいってこそM&Aが成功したといえるほど重要な工程です。PMIは時間をかけて丁寧に進め、譲渡側の経営者も協力する必要があります。

経営方針が変わる可能性がある

M&A承継後は経営権が譲受側へ移転され、統合後は譲受側の経営方針に従い事業を運営していくこととなります。従業員の雇用条件も譲渡側の方針に従うかたちとなるため、従業員の雇用条件維持や取引先との関係継続など希望する場合は、交渉時によく話し合っておき、M&A条件に組み込んでおくことが重要です。

従業員の流出や取引先との契約中止が起こる可能性がある

譲渡側の従業員やこれまで付き合いのあった取引先にとって、M&Aによって経営者が変わることは少なからず不安に感じるものです。

なぜM&Aを行ったのか、今後の雇用条件や契約はどうなるのか、などを適切なタイミングで丁寧に伝えなければ離職や契約中止につながる可能性もあります。

もし幹部や優秀な従業員が多く流出してしまうと、M&A後の事業運営に支障をきたしかねないため、公表タイミング・伝え方には十分な注意が必要です。

M&A承継成功ポイント

事業承継は単純に事業を引き継げばよいというものではなく、経営理念や築き上げてきた地域や取引先との関係、従業員の持つノウハウや技術力など、無形資産も引き継いでいかなければなりません。

どのような相手先へ自社・事業を任せるべきかをよく考え、将来のビジョンや目的を明確にしたうえで進めていくことが重要です。高い価額で売却が望める相手先が必ずしも自社にとって最良とは限らないため、しっかり検討していく必要があります。

また、自社や経営者の周囲からM&A相手先を探すことは難しいケースが多いため、M&A承継を検討し始めたら早めに専門家へ相談し、マッチングを依頼すると適切なタイミングで事業承継ができる可能性が高くなるでしょう。

6. 物流(運送)会社を廃業させずに事業承継を選ぶべき理由

後継者がいても頼りなく、廃業の選択肢を考えていませんか?本当に廃業で良いのか悩んでいる人も多いでしょう。

結論からいえば、廃業よりも事業承継を選ぶ方が圧倒的にメリットが多いです。しかし、「後継者が頼りなくて廃業以外に方法がないのでは」と考える人も少なくありません。ここでは、なぜ廃業させずに事業承継を選ぶべきかを見ていきましょう。

①従業員や取引先に影響が少ない

事業承継を選ぶ理由の1つ目が「従業員や取引先に影響が少ない」ことです。

廃業してしまうと会社はなくなり、従業員は仕事を失ってしまいます。取引先への影響も決して少なくはありません。

今まで苦労して守ってきた会社を廃業することは、経営者として辛い選択となります。また、廃業を取引先などに伝えるのも心苦しいものです。

ですが、事業承継を選べば、今までどおり事業は続けられます。もちろん従業員や取引先にも大きな影響はありません。今まで築き上げてきた従業員や取引先との信頼関係を守ることを考えると選びたい選択肢です。

しかし、後継者が頼りない場合や、後継者候補がいないときには「事業承継できないだろう」と考えます。そこがポイントで、事業承継はもう1つの選択肢としてM&Aを活用する方法があります。

次の理由も見ていきましょう。

②事業が発展する可能性を残せる

事業承継を選ぶ理由の2つ目が「事業が発展する可能性を残せる」ことです。

後継者が生み出す新しいアイデアは、今の事業を良い方向へ発展させるかもしれません。業績があまり良くないとしても、創意工夫によって回復する可能性もあります。発展途上なら、今後も事業が伸びていく姿を見ることができるはずです。

では、ここで運送会社の現状を考えてみましょう。現在では、物販サイトの拡大によって荷物が増え続けているなか、事業者数が足りていない現実があります。

しかしながら働き方改革によって、例えば以下のような課題があるのが現状です。
 

  • 残業ができない
  • 従業員の不足
  • 設備が追いついていない 

経営する側としてもとても難しいのが事実です。しかし、ここで廃業を選んでしまうと発展の可能性は完全に途絶えてしまいます。まだ伸びていくはずの物流事業で廃業してしまうのは大きな可能性を失うことになるのです。

事業承継を選べば多くの可能性を残せます。頑張って経営を続けてきた自社を、後世に託して発展を楽しめるのもメリットです。物流業界には伸びしろは十分にありますから、どのようにしたら会社を残していけるのかを考えてみましょう。

また会社にある資産はどうなるでしょうか。次の項目で資産にも触れていきます。

③トラックなどの資産を活用できる

事業承継を選ぶ理由の3つ目が「トラックなどの資産を活用できる」ことです。

物流会社を廃業してしまうと残ってしまったトラックなどの資産はどうなるでしょうか。会社から離れた日常で使うことは難しく、売却などで処分するにしてもなかなか買い手が見つからないものが多いです。

上手く処分できたとしても、処分コストがかかりすぎて赤字になってしまうことはよくあります。そうなると、会社そのものを失うだけではなく、現金も手元に残りません。場合によってはマイナスになることもあります。

では、物流会社を後継者に事業承継をした場合はどうでしょうか。

今使っているトラックなどの資産はそのまま活用でき、従業員や取引先にも影響はほとんどありません。新たな経営者を迎えることで、資産を活かした新サービスの導入やコスト削減などでより発展する可能性も残せます。

このように、トラックなどの資産を無駄なく活用できるのも事業承継のメリットです。

ここまで読むと、最も重要な問題点である後継者が頼りないときや、いないときはどのようにしたら良いのかという疑問が残るでしょう。

その疑問も問題なく解決できるので、なぜ解決できるのか次の理由を見てください。

④売却金額で今後のことも考えられる

事業承継を選ぶ理由の4つ目が「売却金額で今後のことも考えられる」ことです。

いきなり売却の話が出てきて驚く方も多いでしょう。

実は、物流会社の事業承継は家族や従業員の他にも「別企業への売却」という選択肢があります。この方法では、会社の経営権から資産、従業員から取引先までが売却の対象です。

つまり、今ある物流会社はそのまま残していけるのです。

事業承継ではありますが、会社を別企業が買い取る形ですからまとまった売却金額が得られます。トラックなどの資産もそのまま買い取ってもらえるので処分コストもかかりません。

物流会社はトラックなどの資産から人材まで揃っているので、場合によっては売却金額が億単位になることもあるでしょう。売却金額が高ければ高いほど、後の生活の心配をしなくても良くなります。

このように、物流会社の事業承継は、家族や従業員以外にも別企業に売却する選択肢もあります。これがM&Aと呼ばれる方法です。

M&Aであれば、後継者が頼りなくても、いなくても問題ありません。事業の買い手を見つけるだけで良いのです。

悩み続けているよりも、専門家に相談する方が多くの選択肢を得られます。選択肢を見つけてから、事業承継をどのようにしたらできるのかを考えてみましょう。

M&Aについてもよくわからず、選択肢としては曖昧な方もいるはずです。では具体的にどのような方法を検討すべきなのかについて、見ていきましょう。

7. 後継者が頼りない場合に検討すべき2つの方法

①従業員・役員に承継する

まず1つ目の方法が親族外承継の「従業員・役員に承継する」です。要するに今いる従業員または役員の中から後継者候補を選び事業承継します。

従業員が後継者となる場合のメリットは、仕事内容や取引先情報などの細かい部分まで知っていることから育成期間を短縮できることです。ただし、経営面での知識や能力は備わっていないことがほとんどですから、別途伝えていく必要があるでしょう。

具体的に物流会社を従業員に事業承継するときの方法として、以下の2種類があります。
 

  1. 従業員が株式を買い取るEBO(エンプロイー・バイ・アウト)
  2. 役員が株式を買い取るMBO(マネジメント・バイ・アウト)

8. 物流(運送)会社でM&Aの事業承継をした成功事例

ここまで物流会社で後継者が頼りないときに選べる2つの方法について紹介してきました。

「本当にM&Aで承継先が見つかるのか」不安に感じた方もいるでしょう。しかし、物流会社は物販サイトの発展によって注目されており、M&Aが頻繁に行われています

そこで実際に、M&Aの事業承継をした成功事例を見ていきましょう。

UACJの事例

UACJ

UACJ

出典:https://www.uacj.co.jp/

2020年8月にUACJが、これからの事業環境に応じた柔軟でスピーディーな運営強化を目指すために、連結子会社のUACJ物流の構内運搬事業を会社分割で承継しています。完全親子会社間での吸収分割なので、株式その他金銭などの割り当てや交付はありません。

SBSホールディングスの事例

SBSホールディングス

SBSホールディングス

出典:https://www.sbs-group.co.jp/

2018年8月にSBSホールディングスが事業拡大のために運輸・倉庫業のリコーロジスティクスの株式を買収しました。運送ネットワークの強化と機械化、自動化といったIoTへの対応で海外も視野に入れての買収です。

西日本鉄道の事例

西日本鉄道

西日本鉄道

出典:http://www.nishitetsu.co.jp/

次は、2018年10月の西日本鉄道の事例です。

国際物流事業の拡大と強化を推し進めている西日本鉄道が、フランスの物流会社を買収しました。フランスの物流会社が持つファッションや石油プラント、生鮮食品などのノウハウを活かして事業強化につなげるのが狙いです。

このように物流会社を対象にM&Aは頻繁に行われています。もっと成功事例を知りたい方は以下の記事でまとめているので、こちらも参考にしてみてください。

【関連】【2020年最新】運送会社・物流会社のM&A・買収事例25選!

9. M&Aも含めて事業承継を進める5つのステップ

ここまで物流会社の事業承継の方法を詳しくお伝えしましたが、ここからは事業承継を進める手順をわかりやすく5つのステップに分けてまとめていきます。

①資産と経営状況を整理する

まず、物流会社の事業承継では「資産と経営状況を整理する」必要があります。

どうしてかというと、経営状況や資産状況によって事業承継で手に入れられる金額が変わるからです。より具体的に整理するためにも以下のような項目をチェックしてみてください。
 

  • 会社の現状
  • 株式の数と評価額
  • 保有する技術やノウハウ
  • パソコンなどの細かい設備
  • 経営者の資産状況
  • 後継者候補のリストアップ 

中でも、後継者の資産は会社が保有しているもの、経営者個人が持っているものに分かれています。個人で所有している資産を事業用に使っているときには、どこまでを自社の資産とするのか明確に決めておきましょう。(後で範囲についてトラブルになるため)

株式の数と評価額は会社の価値を決める大きなポイントとなります。未上場会社の場合は、正確に株式の価値を把握するのは難しいので専門家に相談して今後の方針を決めると簡単です。

では、相談も含めて次のステップにいきましょう。

②M&A/事業承継の仲介会社に相談する

資産と経営状況を整理できたら「M&A/事業承継の仲介会社に相談」していきます。もちろん、資産と経営状況が整理できていないときから相談しても問題ありません。

M&A仲介会社は、運送会社の価値から実際にM&Aをするかしないかも含めて、いろいろな選択肢を一緒に考えてくれるパートナーとなってくれます。

おさらいとして、後継者が頼りない場合に検討すべき方法は下記の2種類です。
 

  1. 従業員・役員に承継する親族外承継
  2. M&Aで承継先を探す

運営会社で事業承継したいけれど後継者が頼りなくて困っているときには、M&Aで承継先を探します。

なぜなら、後継者が育つ可能性が低いこと、今後も後継者を見つけられない可能性が高いことが考えられるからです。M&A仲介会社に希望を伝えれば、細かく買い手候補の報告を入れてくれます。

また、事業承継に関する細かい疑問や知らないことはM&A仲介会社に相談してみてください。「わからないことは相談相手にいつでも話せる」という状況は安心感があります。

M&A仲介会社に相談をしたら、いよいよ具体的な計画をまとめていく次のステップです。

③具体的な計画を5〜10年分まとめる

物流会社の事業継承でM&Aをするしないに関わらず「具体的な計画を5〜10年分」まとめてみてください

事業承継では以下のような計画がとても大切です。
 

  • 企業理念
  • 中長期経営計画
  • 後継者の承継時期
  • 承継の基本方針 

5〜10年分もなぜ必要なのかというと、いつ事業が別の経営者に承継されるのかなどを明確にしておくことで従業員の混乱を防げるからです。

もちろん、契約変更の手続きから名義変更、引き継ぎ期間なども決めておきます。理想どおりの事業承継はとても難しいので細かい計画が必要です。

どのようなタイミングでどのようにしたら安心して承継できるのか悩んだときには、M&A仲介会社に相談してみましょう。このような具体的な計画にも的確に答えてくれるので順序よく進められます。

【関連】中小企業庁が事業承継の5ヶ年計画を策定!その内容を簡単解説!

④事業承継を計画に沿って実行する

事業承継の方法と今後の計画を決めたら、計画に沿って実行していきましょう。

中でも早めに始めておきたいのは以下のものです。
 

  • 事業承継方法の決定
  • 資産整理
  • 従業員・取引先への説明

物流会社の事業承継をM&Aでするなら、このタイミングで最終契約締結に向かいましょう。税務、法務、会計の知識はどのようなケースでも不可欠です。

積極的にM&A仲介会社などの専門家からアドバイスを受けて進めていきましょう。

⑤少なくとも1年は社内に残りケアする

事業承継を計画どおり進めたとしても「少なくとも1年は社内に残りケア」していきます。

承継したのにどうして残る必要があるのかというと、いきなり経営者としての仕事を後継者に任せるとトラブルにつながることがあるからです。M&Aで承継した場合でも、アフターケアは必要となります。

また、ここで注意しておきたいのが経営方針の変更です。新しくなった経営者のケアを怠り、経営方針が変わったら従業員はどうなるでしょうか。最悪の場合、従業員の大量離職につながってしまいます。

物流会社では細かい引き継ぎなどもあるので、取引先に影響が出てしまうこともあるでしょう。どこまで残るかは後継者もしくは企業にもよりますが、1年程度を目安として考えてみてください。

M&A仲介会社では、事業承継後のことも相談できますので、働きやすい環境作りにまで力を注いでみましょう。

10. 物流(運送)会社の事業承継でもっとも注意すべきこと

ここまで物流会社の事業承継の方法について解説してきました。

最後に物流会社の事業承継でもっとも注意すべき点についてお伝えします。それは「事業承継を考え始めたときがタイミング」ということです。

後継者探しや引き継ぎなどをトータルで考えてもかなり時間がかかります。今は経営者にも会社にも体力があるかもしれません。しかし、実情は時間と共に変わっていきます。

例えば、3年経つと状況も変わり、後継者候補すら見つからないこともあるでしょう。経営者に体力があっても、会社の経営が立て直しを必要とするなら、後継者探しどころではなくなってしまうのです。

事業承継は考え始めたときがタイミングです。タイミングを見失ってしまい失敗しないためにも、すぐに計画を考え始めましょう。

11. 物流会社の事業承継でお悩みの方はM&A総合研究所にご相談ください

ここまでの記事を読んで考えるべきことは多いでしょう。

例えば、以下のような内容です。
 

  • 後継者は誰にするべきか
  • M&Aを承継先にするべきか
  • 従業員にはどのように説明すれば良いのか
  • 取引先はどうしたら良いのか 

運送会社に限らず、事業承継は経営者自身の将来だけではなく、会社に関わってくれている従業員やお客さん、取引先に影響が出るとても重要なものです。

迷ったり困ったり、どのようにしたら良いのか悩んだりしたときは、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。特別な準備は必要ありません。ヒアリングから悩みを1つずつ解決していきましょう。

M&A総合研究所は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は完全無料です。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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12. まとめ

物流会社で後継者候補が頼りなく廃業を悩む前に、事業承継を検討してみてください。M&Aは活発に行われていますので、後継者がいないときでも問題ありません。

事業承継に詳しい専門家のアドバイスをもらってから決めても遅くはないのです。

まずは気軽に相談することが、今ある会社と従業員、取引先を守る1つの方法となります。時間が過ぎてしまう前に、前向きに検討していきましょう。

13. 運送・物流業界の成約事例一覧

14. 運送・物流業界のM&A案件一覧

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