2020年12月28日公開
LBOファイナンスとは?メリット・デメリットやスキームについて徹底解説

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
LBO(レバレッジド・バイアウト)は資金調達に成功するかが重要であるため、LBOファイナンスの内容をよく理解しておくことが重要です。本記事では、LBOファイナンスのメリットやデメリット、スキームの内容について徹底解説します。
目次
1. LBOファイナンスとは?
LBOは「レバレッジド・バイアウト」の略で、レバレッジを効かせて借入れを行い、自己資金だけでは実行できない大規模な買収を行うM&A手法です。LBOを活用していかに買収資金を調達するかという、その手法がLBOファイナンスです。
LBOは大企業の買収で使われるので、中小企業経営者が直接関わるケースは少ないですが、業界に影響を及ぼす大規模M&Aがどのように行われるか知っておくことは有益です。本章ではまず、LBOとは何かといった基本事項などを解説します。
LBOとは
LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収される側の企業(買収先企業)が生み出す売上・利益を担保にして買収資金を調達するM&A手法です。
普通は買収資金の調達は買収する側の企業(買収元企業)が行いますが、LBOでは買収先企業が負債を背負って返済していきます。
LBOファイナンスの特徴
LBOファイナンスは、大規模なM&Aを行いたいが自己資金が十分に用意できない、または用意したくない時に有効なスキームです。
例えば、ソフトバンクがイギリスの携帯電話会社ボーダフォンを子会社化したケースでは、自己資金は7500億円のみで、残りの1兆円をLBOファイナンスで調達したとされています。
買収された側の企業が借りた資金を返していくのも、LBOファイナンスがほかのスキームとは異なる点です。
LBOファイナンス以外の一般的なM&Aスキームでは、買収元企業が資金を調達し、借入れをした場合はそれを返していきます。
一方、LBOファイナンスでは自身は資金調達をしていない買収先企業が返済していくので、買収元企業はもし失敗しても自己資金を失うだけで済みます。
LBOファイナンスの仕組み
LBOファイナンスは、買収元企業がSPC(特別目的会社)という資金調達のための会社を設立し、SPCが資金調達する仕組みになっています。
SPCが調達した資金で買収先企業の株式を買い取って買収し、その後SPCと買収先企業が合併してLBOが完了します。
LBOファイナンスで借り入れた資金は、買収先企業が事業で得た利益から返していくことになります。
LBOファイナンスの内訳
通常のM&Aでは、買収資金の内訳は買収元企業の自己資金あるいは借入金になります。
一方でLBOの場合は、買収先企業の将来生み出すと予想される利益とキャッシュフローを担保にした借入れと、買収元企業の自己資金が内訳になります。
2. LBOファイナンスを利用する理由
LBOファイナンスはM&A手法のなかではやや特殊なので、利用する理由を明確にしたうえで実行する必要があります。LBOファイナンスを利用する主な理由としては、以下の3つが挙げられます。
【LBOファイナンスを利用する理由】
- 資金調達
- ノンリコース
- レバレッジ効果
資金調達
LBOファイナンスは担保とする資産がほかの手法とは違うので、ほかの手法では得られない大規模な資金調達ができるのが特徴です。
特に、買収先企業が将来大きなキャッシュフローが得られる見込みがあるならば、LBOファイナンスは非常に有力な資金調達手段となります。
ノンリコース
ノンリコースローンとは、責任範囲が限定されたローンのことです。返済に充てる資産(返済原資)が買収先企業の資産とキャッシュフローに限定されるので、もし返済不能に陥っても買収元企業は投資した自己資金を失うだけで済みます。
ノンリコースローンは、借り手にとって責任範囲が限定されるというメリットがありますが、貸し手にとっては貸付金を回収できないリスクがあります。
そのため、貸し手はノンリコースローンに対して慎重になり、金利も高く設定される傾向があります。
レバレッジ効果
レバレッジ効果とは、自己資金だけでなく借入金も使って投資をし、自己資金だけでは得られないリターンを得ることです。
不動産投資でよく使われる手法ですが、LBOファイナンスもレバレッジ効果を利用した投資スキームのひとつです。
3. LBOファイナンスを活用するメリット・デメリット
LBOファイナンスはスキームが特徴的でリスクが大きい手法なので、メリットとデメリットを正しく理解したうえで実行する必要があります。
この章では、LBOファイナンスのメリット・デメリットについて、買収元企業・買収先企業・買収先企業の株主・金融機関それぞれの立場から解説します。
LBOファイナンスを活用するメリット
LBOファイナンスは、買収元企業・買収先企業の株主・融資する金融機関のそれぞれにメリットがあります。
【LBOファイナンスを活用するメリット】
- 少ない投資で大規模な買収ができる
- 株式を高値で売却できる
- 高い金利で貸付できる
①少ない投資で大規模な買収ができる
買収元企業がLBOファイナンスを活用するメリットは、少ない投資で大規模な買収ができることです。LBOファイナンスで大規模な借入れを行えば、自己資金だけでは実現できない買収が可能になります。
また、もし買収先企業の事業が予定通りにいかず倒産してしまった場合でも、買収元企業は負債を返済する義務がないため自己資金を失うだけで済みます。
つまり、もしLBOファイナンスに失敗しても買収元企業が経営難に陥ったり、ほかの事業に支障がでたりすることがありません。
②株式を高値で売却できる
LBOファイナンスで買収元企業が買収先企業の株式を買い取る時、TOB(株式公開買付)という手法が用いられます。
TOBは市場株価より高い価格で買い取るのが一般的なので、株主はLBOファイナンスによって売却益を得られることになります。
③高い金利で貸付できる
LBOファイナンスはリスクが高いため、貸付の金利が高く設定されます。これは買収先企業にとってはデメリットですが、融資する金融機関にとってはメリットとなります。
また、LBOファイナンスは返済期間を短く設定することが多く、これも金融機関にとっては有利となります。
LBOファイナンスを活用するデメリット
LBOファイナンスを活用する際は、買収元企業・買収先企業・金融機関それぞれのデメリットを考慮する必要があります。
【LBOファイナンスを活用するデメリット】
- 評判が悪くなるリスクがある
- 経営戦略が制限される
- 回収不能のリスク
①評判が悪くなるリスクがある
LBOファイナンスは少ない資金で多額の借金をして、そのリスクは買収先企業に負わせるので、自分勝手で強引な買収とみなされることがあります。
これが原因となり、買収元企業は評判を落としてしまい、経営に悪影響がでる可能性もあります。また、買収先企業から会社を乗っ取られたと思われ、反感を買う可能性も考慮しなければなりません。
②経営戦略が制限される
LBOファイナンスで買収された買収先企業は、SPCが借入れした資金を事業の利益から返済していくことになります。
このため、短期的な利益を重視した経営を強いられるので、経営の自由度が狭まるデメリットがあります。
また、始めから大きな負債を背負った状態で事業が始まるので、追加の借入れや大規模な設備投資を行いにくいのもデメリットです。
③回収不能のリスク
LBOファイナンスは、買収先企業のキャッシュフローなどを担保に融資するので、もし買収先企業の事業がうまくいかなかった場合、融資した資金が回収できなくなるリスクがあります。
このためLBOファイナンスでは、金融機関が融資をすべきかどうか、的確に判断する高い専門性が要求されます。
4. LBOファイナンスのスキーム
LBOファイナンスという言葉を初めて見聞きした場合、どのようなスキームが分かりにくいのが難点です。
LBOファイナンスは、SPC(特別目的会社)という資金調達のための会社を利用するのが特徴なので、これを理解すればスキームが分かりやすくなります。
LBOファイナンスで買収資金を借り入れる手続きは以下のように行われ、SPCが何を行うかに注目することが、LBOファイナンスを把握するためのポイントとなります。
【LBOファイナンスのスキーム】
- SPC(特別目的会社)を設立する
- SPCが資金を調達する
- SPCが買収先企業を買収する
- SPCと買収先企業を合併する
①SPC(特別目的会社)を設立する
LBOファイナンスでは買収先企業が借り入れたお金を返していきますが、買収先企業が直接借入れをするのではなく、SPC(特別目的会社)という会社が買収先企業の代わりに資金を調達します。
SPCとは、営利活動は行わず、資金調達など特別な目的だけのために存在する会社のことです。LBOファイナンスでは、まず買収元企業がSPCを設立して、資金調達の受け皿を作ります。
②SPCが資金を調達する
買収元企業がSPCを設立したら、次はSPCが金融機関などから借入れを行い、買収先企業の株式を取得するための資金を調達します。
LBOファイナンスは融資する金融機関にとってはリスクのある取引なので、貸付には慎重になります。よって、ここでうまく資金調達を成功させることがポイントになります。
資金調達を成功させるためには、買収先企業の事業の将来性が高く、十分なキャッシュフローを生み出せるかが大切です。
③SPCが買収先企業を買収する
資金調達に成功したら、次はその資金でSPCが買収先企業を買収します。株式の取得は、主にTOB(株式公開買い付け)を用いて行われます。
一般に、TOBはプレミアムを付けて割高で買い取るので、LBOファイナンスは株主にとってもメリットがあるといえます。
④SPCと買収先企業を合併する
SPCが買収先企業の株式を取得すると親会社になりますが、SPCはLBOファイナンスを実施するためだけに存在しているので、その後親会社として事業に関わることはありません。
株式を取得した後は、SPCと買収先企業が合併してSPCが消滅するとともに、株式の取得のために負った借入金は買収先企業が返済していくことになります。
5. LBOファイナンスを活用する際の注意点
LBOファイナンスは、成功すればレバレッジを活かした高い収益を得られますが、その分失敗するリスクも高くなります。LBOファイナンスを活用する際は、注意点を押さえておくことが大切です。
【LBOファイナンスを活用する際の注意点】
- 返済不能になることを避ける
- コストの見通しを立てておく
1.返済不能になることを避ける
LBOファイナンスは買収先企業が返済義務を負うので、返済不能になるとせっかくLBOで手に入れた事業が頓挫することになります。
LBOファイナンスでは、返済不能にならないように慎重に手続きを進めていくことが重要です。そのために重要なのは、買収先企業が事業で生み出すキャッシュフローです。
将来のキャッシュフローを正確に見積もることは不可能なので、できるだけ慎重に事業内容を検討して、返済不能に陥るリスクを見極めたうえでLBOファイナンスを実行する必要があります。
2.コストの見通しを立てておく
LBOファイナンスではTOBで株式を取得するので、株式取得のコストは比較的見通しが立てやすくなっています。
ただし、買収先企業の合意を得ない敵対的TOBの場合は、買収先企業が防衛策を実施した結果、コストが予想外に跳ね上がる危険性もあります。
LBOファイナンスを行う際は、株式の取得にどれくらいのコストがかかるか見通しを立てておくことが重要です。
6. LBOファイナンスやM&Aの相談におすすめの仲介会社
LBOファイナンスなどを活用したM&Aは高度な専門性と経験を必要とするので、M&A仲介会社などの専門家のサポートを得ることが不可欠です。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業のM&Aを手がけるM&A仲介会社です。さまざまな業種で50件以上のM&A実績があるアドバイザーが、親身になってクロージングまでサポートいたします。
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料金は着手金・中間報酬無料の完全成功報酬制となっており、成約時に成功報酬をいただくだけのシンプルなシステムです。成約しなければ料金は一切発生しないので、コストを抑えてM&Aを行うことが可能です。
無料相談は随時受け付けておりますので、LBOファイナンスなどを活用したM&Aをお考えの経営者様は、お電話かメールでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
LBOファイナンスはやや特殊なM&A手法ですが、買収元企業がリスクを限定して大規模な買収を行うことが可能です。
メリットとデメリットを理解したうえで、メリットが大きい場面で活用すれば大きな事業拡大を目指すことができます。
【LBOファイナンスを利用する理由】
- 資金調達
- ノンリコース
- レバレッジ効果
【LBOファイナンスを活用するメリット】
- 少ない投資で大規模な買収ができる
- 株式を高値で売却できる
- 高い金利で貸付できる
【LBOファイナンスを活用するデメリット】
- 評判が悪くなるリスクがある
- 経営戦略が制限される
- 回収不能のリスク
【LBOファイナンスのスキーム】
- SPC(特別目的会社)を設立する
- SPCが資金を調達する
- SPCが買収先企業を買収する
- SPCと買収先企業を合併する
【LBOファイナンスを活用する際の注意点】
- 返済不能になることを避ける
- コストの見通しを立てておく
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