2021年08月11日更新
M&Aで借入金はどうなる?役員借入金や連帯保証が引き継がれるかなど解説!
M&Aでの借入金の取り扱いは利用するM&A手法によって変わります。手元に残る借金を少しでも減らすためには、M&A手法ごとの扱いを把握しておくことが大切です。今回は、M&Aでの借入金の扱いや、役員借入金の引継ぎについて解説します。
目次
1. M&Aで借入金はどうなる?
会社における借入金は、事業資金を確保するために必要不可欠なものです。主な借入先は取引先の金融機関や経営者個人であり、借入金は返済すべき負債として扱われます。
借入金は、M&A時の取り扱いや引継ぎに関して、いくつか気をつけなければならないポイントがあります。
M&Aでの借入金とは
M&Aでの借入金は買い手に引き継ぐことができます。M&Aで会社の経営権が移転する際に、会社の負債も全て自動的に引き継がれます。
個人の借入金と聞くと生活がひっ迫している状況を連想させますが、会社の借入金は事業活動をするための前向きな負債であることが多いです。
会社のお金を借り入れる目的は、事業活動のための設備投資やキャッシュ・フロー改善などです。主な借入先には、銀行・信用金庫・公的機関・民間企業などがあります。
M&Aでの経営者・役員借入金とは
M&Aでの経営者・役員借入金は買い手に引き継ぐことができます。M&A後に、借入金を引き継いだ買い手から経営者・役員個人に対して返済してもらう形になります。
買い手側にとっては、経営者・役員借入金の返済により実質的な買収費用が高くなることを意味します。できるだけ安く買収したいというのが本音であるため、返済を承諾してもらえない可能性もあります。
経営者・役員借入金は、返済資金が確保できるまで返済する必要のない都合のいい負債です。中小企業では、経営者や親族の役員から無利息で借り入れているケースがほとんどです。
M&Aでの連帯保証とは
M&Aでの連帯保証は買い手に引き継ぐことができます。買い手側が、売り手側経営者の連帯保証を肩代わりして、債権者に返済して解消するケースが多いです。
解消の手続きは、売り手・買い手・債権者の三者のやり取りで進められます。主に売り手・買い手の交渉で取り扱いや引継ぎ方が決められて、最終的に債権者からの了承を得る形となります。
連帯保証は、連帯保証人が債務者と連帯して債務を負うことをいいます。この場合、連帯保証人は経営者で、債務者は会社ということになります。
中小企業が金融機関等から融資を受ける際は、経営者の連帯保証や担保が必要なことが多いです。これは、中小企業は私的な経営がされやすいことから、企業と経営者が一体化と捉えられることが多いためです。
2. M&Aの際の役員借入金の引き継ぎについて
役員借入金は、会社が経営者や役員から借り入れているお金のことです。返済義務はあるものの、利息や返済期間を自由に設定できることから、中小企業の資金調達方法として重宝されています。
M&A時の役員借入金の取り扱いや引継ぎは、M&A手法によって異なります。ここでは、株式譲渡と事業譲渡の2つのパターンを解説します。
株式譲渡の場合
株式譲渡では、役員借入金を買い手に引き継ぐことができます。役員借入金は、会社(借入者)と役員(貸付者)の間で賃借契約が交わされており、経営者が変わる際は会社の権利義務として包括的に承継されます。
株式譲渡とは、売り手が保有する株式を買い手に売却することで経営権を移転するM&A手法です。会社に起こる変化は経営者(株主)の入れ替わりだけなので、資産・債務はそのまま引き継ぎます。
その他のM&A手法と比較すると、株式譲渡の手続きは簡便な特徴があります。会社を丸ごと売却したい時に便利なので、中小企業のM&Aにおいて最も利用されているM&A手法です。
事業譲渡の場合
事業譲渡では、役員借入金を買い手に自動的に引き継ぐことができません。株式譲渡のような包括承継ではないので、資産と負債は切り離されて取り扱われます。
事業譲渡とは、事業の一部あるいは全部を買い手に売却するM&A手法です。譲渡範囲を選択することができるので、事業の選択と集中などに広く活用されています。
事業譲渡で得られた売却益は会社の資金になります。多くの場合はこの資金を元手に、会社から経営者や役員に対して役員借入金の返済が行われることになります。
役員借入金には買い手側が引き継ぐメリットがないので、よほど魅力のある事業でもなければ引継ぎは難しいでしょう。
3. M&Aの際の連帯保証の引き継ぎについて
連帯保証は、会社が融資を受ける際に、経営者が債権者に対して提供する個人保証のことです。債務者(会社)の返済能力が失われた際は、連帯保証人(経営者)が返済義務を負います。
M&Aの際は、連帯保証の引継ぎも重要なポイントになります。この章では、株式譲渡と事業譲渡2つのパターンを確認していきましょう。
株式譲渡の場合
株式譲渡では、連帯保証を買い手に引き継ぐことができます。全ての株式を譲渡して完全に経営権が移転するという前提条件のもと、連帯保証の引継ぎや解除を行うことができます。
連帯保証の引継ぎには債権者の了承も必要になるので、経営者は事前に債権者と連帯保証の引継ぎ、あるいは解除に関する交渉をしておく必要があります。
また、株式譲渡と同時に買い手が債権者に一括返済するケースもあります。連帯保証の引継ぎやリスケジュール等の手間を省けるので、買い手側に資金的な余裕がある場合はこの手段が取られることが多いです。
事業譲渡の場合
事業譲渡では、連帯保証を買い手に自動的に引き継ぐことができません。譲渡範囲はあくまでも事業であるため、買い手に連帯保証を引き継ぐ義務がないためです。
事業譲渡の売却益で借入金を一括返済するかどうかは、経営者の判断に委ねられることになります。売却益を事業に投資して業績向上を図り、事業利益のなかから長期的に返済していく方法も取ることができます。
しかし、事業譲渡によるコア事業の売却で将来性が期待できない場合は、債権者から投資リスクが高いと判断されて一括返済が求められることもあります。
4. 借入金のメリット・デメリット
会社の経営では借金がないほうがイメージがよいと捉えられることもありますが、実際には多くの事業会社がなんらかの形でお金を借り入れています。
事業活動を行ううえでは、必ずしも無借金経営が最善とは言い切れません。この章では、借入金のメリット・デメリットを解説します。
借入金のメリット
まずは会社の借入金のメリットからみていきます。会社がお金を借り入れる目的としては、主に以下の2つが挙げられます。
【借入金のメリット】
- 事業成長スピードを早められる
- 社会的信用力を上げる効果がある
1.事業成長スピードを早められる
借入金で資金を確保しておくと、設備投資や新たな取引などの経営上の選択肢を広く持つことができるようになります。
無借金経営ならば事業に失敗した時も返済に追われることはないですが、よほどの資金があるか収益性が高くなければ会社・事業の成長速度は限定的となってしまいます。
借入金によって資金を持っていればビジネスチャンスを逃しにくくなるので、事業成長スピードを早める効果に期待できます。
2.社会的信用力を上げる効果がある
借入金は、会社に社会的信用力がなければ借り入れることができません。金融機関からの借り入れの際は、会社の信用力や事業の収益性に関する審査が行われるためです。
金融機関から融資を受けているというだけで、会社の社会的信用力や健全な事業活動を行っていることを広く証明することができます。
借入金のデメリット
続いて会社の借入金のデメリットです。金融機関等から借り入れる際は以下2点について注意しておく必要があります。
【借入金のデメリット】
- 借入金には利息がつく
- 返済計画を練る必要がある
1.借入金には利息がつく
会社の借入金には元本返済に加えて利息もつきます。融資する側は有用な投資先にお金を貸し付けて、得られる利息で事業利益を出すことを目的としているためです。
借入金を事業資金に活用する場合は、元本と利息の返済分を考慮したうえで収益性の向上を図る必要があります。
なお、経営者・役員借入金の場合は利息をゼロにすることも可能です。利息ゼロでも借入金という扱いなので、資本金増資による税金負担増加もありません。
2.返済計画を練る必要がある
借入金は資金の確保と同時に返済義務を負うことになります。金融機関からの借入であれば経営者が連帯保証人になることが多いので、計画的に返済を進めていく必要があります。
基本的に短期間返済の方が返済総額は安くなります。しかし、一回ごとの返済負担が大きくなり、キャッシュ・フローの悪化に繋がる恐れもあります。
キャッシュ・フローが悪化すると事業資金が枯渇してしまうので、事業への投資と無理のない返済方法を両立させたうえで計画的に返済しなくてはなりません。
5. 借入金とは別の資金調達の方法
会社は借入金の活用によって事業資金を確保することができますが、資金調達の方法は借入金以外にもあります。ここでは以下2つの方法について確認していきます。
【借入金とは別の資金調達の方法】
- 新株発行
- 資産の現金化
新株発行
新株発行とは、新しく株式を発行することをいいます。新しく割り当てを受ける株主が現金を払い込むことで新株が発行されて、会社の資本金が増資されることになります。
増資された資本金は、会社設立の際に払い込んだ資本金と同様に会社の事業資金として活用することができます。
新株発行のメリットは、返済する義務がないことです。起業して間もない会社は社会的信用力が低く借り入れる手段が限定されるので、特に有効な方法とされています。
注意点としては、資本金増資による法人税負担の増加が挙げられます。規模が大きくなるほど税制上の負担が増していくので、1000万円や1億円の水準を意識することが大切です。
資産の現金化
会社が保有する資産を売却して現金化する方法もあります。資産の整理と資金調達の両面で有効な方法となっています。
会社には、事業目的で取得したものの、何かしらの理由で稼働させていない遊休資産があることが多く、事業利益を生み出さないだけでなく、管理費が必要になることも少なくありません。
ただし、売却価格が実際の価値よりも低くなる可能性があります。土地や建物等の不動産であれば売却して現金化するまでの時間も必要になります。
6. 買収側が借入金の取り扱いで気をつける点
会社の借入金はM&A手法次第で買い手が引き継ぐことになります。この章では、M&Aの際に買い手が注意すべきポイントを解説します。
【買収側が借入金の取り扱いで気をつける点】
- 買収金額の算出
- デューデリジェンスの実施
買収金額の算出
M&Aを株式譲渡で行う場合、買い手は売り手の債務を引き継ぐことになります。ですので、株式の買収費用と借入金の返済費用を用意しておかなくてはなりません。
場合によっては融資や増資で資金調達する必要があるので、企業価値評価によって買収金額を算出して買収に要する費用の目安を付けておくことが大切です。
借入金の一括返済をしない場合は、引継ぎの際に金融機関とリスケジュール交渉を行うことになります。現実的な返済計画を提示して金融機関からの了承を得る必要があります。
デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、M&A対象の価値・リスクを調査する活動のことです。売り手の資産・負債の詳細や簿外債務などの潜在的リスクを正確に把握するために買い手側が実施します。
デューデリジェンスは調査範囲が広く、実施期間も長くなりがちです。稀に費用削減目的で実施を省くケースもみられますが、買収後に深刻な問題が発覚する恐れもあるので注意が必要です。
M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
M&Aは借入金の取り扱い方を誤ると、失敗に繋がる可能性が高くなります。売却・買収を検討の際はM&Aの専門家に相談したうえで、計画的に準備を進めることをおすすめします。
M&A総合研究所は、中堅・中小規模の仲介サポートを得意とするM&A仲介会社です。幅広い業種でM&A仲介に携わっており、豊富な経験とノウハウを培っています。
M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
M&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、M&Aや借入金にお悩みの際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
会社の借入金は、デメリット・デメリットがあり、M&Aの場面でも非常に深く関わってきます。M&Aを検討する際は、M&A手法ごとの借入金の取り扱い方や借入金状況の把握が大切です。
特に経営者の連帯保証の引継ぎは債権者も含めて交渉する必要があります。M&Aの専門的な知識が必要になる場面も多いので、早期にM&Aの専門家に相談しておくことをおすすめします。
【M&Aでの借入金まとめ】
- M&Aでの借入金は買い手に引き継げる
- M&Aでの経営者・役員借入金は買い手に引き継げる
- M&Aでの連帯保証は買い手に引き継げる
【借入金のメリット】
- 事業成長スピードを早められる
- 社会的信用力を上げる効果がある
【借入金のデメリット】
- 借入金には利息がつく
- 返済計画を練る必要がある
【借入金とは別の資金調達の方法】
- 新株発行
- 資産の現金化
【買収側が借入金の取り扱いで気をつける点】
- 買収金額の算出
- デューデリジェンスの実施
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