M&Aに伴うIT統合を成功させるには?注意点や統合のポイントを解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年の技術革新の促進に伴い、あらゆる業種でIT分野の取り込みが急務です。特にM&AによるIT統合が効果的とされており、さまざまな企業が実践しています。本記事では、M&Aに伴うIT統合を成功させる方法や注意点、統合のポイントを解説します。

目次

  1. M&Aに伴うIT統合を成功させるには
  2. M&Aに伴うIT統合によるメリット
  3. M&Aに伴うIT統合のデメリット・注意点
  4. M&Aに伴うIT統合のポイント
  5. M&Aに伴うIT統合を成功させる方法
  6. M&Aに伴うIT統合のまとめ
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1. M&Aに伴うIT統合を成功させるには

近年のIT技術の発展は目覚ましく、近い将来に大体の業務はAIやロボットで代替できる話を耳にする機会が多くなりました。特にAIによる自動化はあらゆる業種に適用することが可能で、日本の少子高齢化による人手不足を解消する方法として期待されています。

そのような中、IT企業はさらなる技術革新のため、他業種の企業はIT技術を活用するためのIT統合への取り組みを見せており、その際のIT統合の手段としてM&Aが注目されてきています。

M&Aとは

M&Aとは、企業の合併買収の総称です。合併は2つ以上の企業を1つに統合することで、買収はある企業が他の企業を買い取って傘下に加えることをいいます。

それぞれ手段や得られる効果は違いますが、M&Aの大体の目的は経営資源の取り込みによる事業規模の拡大です。譲渡企業が持つ技術や人材を確保できるので、内製で開発を進めるよりもはるかに短期間で企業成長を図れます。

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日本のM&A事情・現状

日本ではITを軽視したM&Aが行われることが多いです。各企業は独自に開発したシステムを運用しているため、単純に一本化させようとするとシステム障害などのトラブルを起こす可能性が高いといった問題があります。

専門分野であるIT部門では、当然IT統合の必要性を熟知していますが、社内における発言権がないことも多いでしょう。その結果、IT統合が進まないままM&Aが実行されてしまい、M&Aによるシナジー効果を得られずに失敗に終わる事例もみられます。

IT統合とは

IT統合とは、複数のITシステムを統合・一本化させることをいいます。広義的には新たなIT技術を取り込むこともIT統合といわれることがあります。

グループ系列の企業でも、異なるITシステムを運用していることがあるでしょう。統合・一本化されていないためにシステムの管理コストが増加したままとなっており、グループ企業としての強みが生かせていないケースも多いでしょう。

IT統合は現在の体制からの脱却・変化を意味するので、企業としての体力が求められます。その反面、成功した際の見返りは非常に大きなものなので、積極的に取り組むべき課題とされています。

M&Aに伴うIT統合の重要性

M&Aによって複数の企業が一つになる場合、それぞれ企業が管理・運用していた情報システムの統合作業が発生します。顧客情報などの管理システムを統合すると、経営資源も増え、M&A後の経営戦略や事業展開の幅も広がるでしょう。

単純にシステムの統合を図るだけでは、関連事業の運営に支障をきたす恐れもあります。今後の経営を担う重要なポイントとなるため、スムーズに行う必要があるでしょう。慎重にIT統合に取り組むことで、安全性を担保しつつシナジー効果の創出を図れます。

M&Aを成功に導くために欠かせないのが、ITシステムやIT組織の統合であり、その重要性は高いといえます。

M&Aに伴うIT統合の成功と失敗

M&Aに伴うIT統合に成功すると、高いシナジー効果だけでなく、業務効率化やコスト削減などの効果が得られます。M&Aにより企業全体が変化に対して前向きな姿勢のため、IT統合に対しても理解を得るチャンスです。M&AのIT統合に成功した場合に得られる効果は以下があげられるでしょう。

  • M&Aのリスク回避
  • M&Aにおけるすべての統合作業の完了
  • 企業間のセキュリティギャップの低減
  • 企業間の顧客共有、業務効率化
  • 役員・顧客を満足させられる

一方、M&AのIT統合に失敗した場合は以下のようなケースが考えられるでしょう。
  • TSA(システム移管のための取り決め)期限不履行による損失
  • 通常業務の中断に発展する可能性
  • 企業間のセキュリティギャップから生じる被害
  • 顧客情報が共有できない
  • 重複データや情報チェックなどの非効率な業務による社内からの不満

特に近年は社会全体が情報化しているため、システム管理による影響が多くなっています。いかに効率的にIT統合するかで、M&Aの成否が決まるといっても過言ではありません。

2. M&Aに伴うIT統合によるメリット

M&Aに伴うIT統合のメリットは、M&Aのシナジー効果を上げられることです。シナジー効果には経営・操業・投資などさまざまなものがあり、これらを最大限に引き上げることが重要です。

一般的なM&Aでは、譲渡企業の経営資源を獲得して業務効率化や事業規模拡大を図ることが目的とされます。しかし、グループ企業としての規模が大きくなるだけでは管理コストも肥大化し、満足にシナジー効果を得られません。

IT統合によりシステムの統合・一本化を行えば、管理コストを抑えたまま豊富な経営資源を活用できるようになり、グループ企業として飛躍的な成長の可能性が高まります。

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3. M&Aに伴うIT統合のデメリット・注意点

M&AのIT統合を軽視すると、M&Aが失敗に終わる可能性が高くなります。M&Aの失敗を回避して想定していたシナジー効果を得るためには、いくつかの注意点を押さえておくことが大切です。

【M&Aに伴うIT統合の注意点】

  • IT統合が進まないと各所で手間が増える
  • IT統合が進まないと大きな失敗につながる
  • IT統合が進まないと社会的な信用を失いかねない

IT統合が進まないと各所で手間が増える

M&Aは複数企業のITシステムが合わさるため、社内システムが倍増することにもなります。IT統合を進めてうまく活用できなければ、運用の手間が増えてランニングコストが肥大化するだけになってしまいます。

システムの統合・一本化がされていない場合、データの重複入力などの無駄な手間が増える可能性もあり、業務効率化どころか悪化してしまう状況にもなりかねません。

M&A後に運用を進めていく中でシステムの違いが発覚すると、システムの追加改修を行う必要性が出てくることもあります。改修の手間はもちろんのこと、追加の場合は初期開発コストもかかるため、費用面の負担も計り知れません。

IT統合が進まないと大きな失敗につながる

日本企業は独自のカスタマイズを施していることが多く、システム同士で背反する機能を搭載している場合は整合性が取れないこともあるため、どちらかが合わせる必要があります。

しかし、日本ではIT部門の立場は決して高くないため、現場からは意見をあげにくいのが現状です。本来ならば必要なIT統合を行わずにM&Aを実行してしまうと、システムがうまく稼働せずに生産性を落としてしまう恐れもあります。

最悪の場合はまともに機能しないことも考えられるため、IT統合に対する意見は積極的に取り入れる必要があります。

IT統合が進まないと社会的な信用を失いかねない

IT統合が進まないとシステム障害などの深刻な事態に陥る恐れもあります。システムを使ったサービスを提供している場合、取引先や顧客、消費者にも影響を与える恐れがあるため、大きな失敗につながる可能性が高くなります。

IT統合にかかるコストを嫌って、各企業のシステムをそのまま運用させるケースがありますが、異なる規格のシステムをそのまま運用すると、通信状態がビジーになって関連サービスが一時停止するなどの事態もあり得るでしょう。

有名な事例としては、みずほ銀行の第一勧業・富士・日本興業の3銀行のシステム統合時のトラブルがあります。

このケースでは、IT統合を軽視したために合併当日にATM停止や公共料金の二重引き落としなどを引き起こし、みずほ銀行の大失態やIT統合に対する見通しの甘さが指摘されて、社会的な信用を失う結果となりました。

4. M&Aに伴うIT統合のポイント

M&Aに伴うIT統合ではいくつかのポイントがあります。特に意識しておきたいものには、以下の3点があります。

【M&Aに伴うIT統合のポイント】

  • IT統合のビジョンを持ってM&Aを行う
  • IT統合を重要と考えてM&Aを行う
  • M&AによりITに対する改革を行う

IT統合のビジョンを持ってM&Aを行う

具体的なM&A戦略を策定するためには、IT統合後の明確なビジョンを持つことが大切です。IT戦略に注力してIT部門の意見に耳を傾けることで、IT統合で得られる効果やメリットを把握できます。

ビジョンを共有できれば、IT統合を軽視してM&Aを強行するようなケースも少なくなるでしょう。IT統合のための時間を確保しやすくなり、M&AやIT統合が成功する可能性も高くなります。

IT統合を重要と考えてM&Aを行う

IT統合の重要性を知るには、IT統合で進まない場合に起こりえる不具合やトラブルを把握することが一番です。IT統合の重要性を共有できれば、前向きに取り組めるようになってM&Aも成功しやすくなります。

日本企業は、新たな挑戦や変化に対する抵抗は強い反面、過去の事例は重視する傾向にあります。過去の失敗事例を反面教師にすることで、IT統合の重要性を説いてM&Aに臨む方法もあるでしょう。

M&AによりITに対する改革を行う

IT統合は多大な手間と費用を要するため、必要なことと承知していても二の足を踏んでしまうのが実状です。M&A変化のタイミングにIT統合を同時に進めることで、企業として大きく飛躍するチャンスととらえられます。

それでも改革が難しい場合は、社外の力を借りることも視野に入れるとよいでしょう。IT統合に対して理解があるM&Aの専門家に依頼することで、効率的な改革を行いやすくなります。

【関連】M&Aにおける人事DD(デューデリジェンス)からPMIまでを徹底解説!

M&Aに伴うIT統合のご相談はM&A総合研究所へ

M&Aおよびそれに伴うIT統合をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。中堅・中小規模の案件を主に扱っており、幅広い業種における豊富な実績を保有しています。代表自身が大手IT企業のエンジニア出身であるため、IT技術に強みを持っており、さまざまな形でM&A仲介事業にIT技術を取り入れています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時受け付けていますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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5. M&Aに伴うIT統合を成功させる方法

M&Aに伴うIT統合を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。この章では、IT統合のために特に重要となる4つの方法を解説します。

【M&Aに伴うIT統合を成功させる方法】

  • M&A後の経営戦略とともにIT統合・戦略を立案
  • IT統合を迅速に行う
  • 優先順位を決めて段階的に統合する
  • IT統合をすすめるとともに企業文化の統合も図る

M&A後の経営戦略とともにIT統合・戦略を立案

ITシステムの重要性を分かりつつも、運用方針や戦略立案をIT・システム部門だけに任せている企業も少なくありません。内部から率先してIT戦略とM&Aの経営戦略をひもづけることで、IT統合の重要性を発信しやすくなります。

経営者や役員などの社内における影響力の強い人材と、IT・システム部門の間で意見を共有しあえるような風通しのよい環境を構築できれば、経営戦略の一環として取り組みやすくなります。

IT統合を迅速に行う

M&Aは時間経過によって社内や社外環境が変化するため、IT統合・戦略が整うまで待っているとM&Aの経営戦略自体が破綻する恐れがあります。基本的に時間的な猶予はないため、早い段階からIT統合に取り組んでおき、迅速に実行することが大切です。

M&Aでは情報保護の観点から社員への情報開示タイミングは遅らせるのが一般的です。この場合、M&Aの成約からシステム運用開始までの間にIT統合を進める必要があるため、迅速な行動が重要です。

優先順位を決めて段階的に統合する

IT統合で取り組むべき工程は機能・品質・保守性など多岐にわたります。中には後回しにしても問題ない工程もあるので、システムを運用するために最優先となるものから段階的に統合していくことが大切です。

IT統合のスケジュールを立てておくと、それ以外の部門外とも情報を共有しやすくなり、IT統合をM&Aの経営戦略の一部として取り込みやすくなるでしょう。

IT統合をすすめるとともに企業文化の統合も図る

企業文化の違いはIT統合にも影響を与える恐れがあります。M&Aの際はIT統合と同時に企業文化の統合も図ることで、企業成長のチャンスにつなげられるでしょう。

しかし、M&Aによる企業文化の統合で強引な融合を図ると社員の反発を生むこともあります。大量の自主退職を招けば、譲渡企業の企業価値が一瞬で大きく変わることにもなりかねません。

企業文化の統合は、M&A戦略策定段階からM&A後の統合プロセス(PMI)を策定しておくことが大切です。両社の経営方針やルールに関して、社員の意識を融合しやすいように体制作りを進めておきましょう。

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6. M&Aに伴うIT統合のまとめ

IT統合を軽視すると、M&A自体が失敗に終わる恐れもあります。まずは、IT統合の重要性を把握することから始めて、意識改革の明確なゴールの定義や達成するまでの生涯の認識など、順序立てて取り組むことが大切です。

IT統合・戦略を進めるうえで息詰まることがあったら、専門家に相談して実用的なアドバイスをもらうとよいでしょう。

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