M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?算定方法を解説【事例・図解あり】

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企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

企業価値評価(バリュエーション)はM&Aで必ず実施されるプロセスです。この企業価値評価(バリュエーション)は売却企業の取引価額に直結するものですから、算定方法の内実を知っておくことは、M&Aの成功確度を高めると言っても過言ではありません。

目次

  1. M&Aの企業価値評価(バリュエーション)簡単まとめ
  2. M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?
  3. 企業価値評価(バリュエーション)の種類
  4. コストアプローチによるバリュエーション
  5. インカムアプローチによるバリュエーション
  6. マーケットアプローチによるバリュエーション
  7. 企業価値評価(バリュエーション)の影響力
  8. 上場企業の企業価値評価(バリュエーション)の方法
  9. 未上場企業の企業価値評価(バリュエーション)の方法
  10. 企業価値評価(バリュエーション)を向上させるには?
  11. 企業価値評価(バリュエーション)が向上した会社の事例
  12. 企業価値評価(バリュエーション)に関するおすすめの本
  13. 企業価値評価(バリュエーション)のまとめ
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1. M&Aの企業価値評価(バリュエーション)簡単まとめ

企業価値評価とは、会社の価額のことです。「エンタープライズ・バリュー(Enterprise Value = EV)」と呼ばれることもあります。

M&Aにおいて売り手企業の譲渡価額のベースとなるため、企業価値評価は大変重要です。M&Aにおいては、インカムアプローチのDCF法がよく用いられます。インカムアプローチを含め、企業価値評価の方法は以下の3つです。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

この記事では、M&Aにおける企業価値評価の方法や企業価値評価向上のポイントを解説します。なお、企業価値評価は、相応の知識があれば誰でも計算することが可能です。しかし、M&Aではとても重要な数字ですから、専門家に相談することをおすすめします。

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2. M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?

企業価値評価を簡単に説明すると「会社の値打ち」のことです。「エンタープライズ・バリュー(Enterprise Value =EV)」と呼ばれることもあります。M&Aにおいて、売り手側と買い手側の金額交渉における、判断基準の土台として用いられるものです。

企業価値の意味

企業価値とは、言葉そのままに企業全体の価値のことです。企業が行っている事業の価値のみならず、非事業価値も合わせた価値ということになります。非事業価値とは、非事業用資産の価値のことです。

  • 企業価値=事業価値+非事業用資産

非事業用資産とは、事業には用いていないが企業が所有している資産をさします。一例としては、何らかの遊休資産(使用していないが所有している不動産や機械・設備類など)、有価証券、貸付金、出資金、保険積立金などです。

企業価値と時価総額の違い

企業価値は「企業が現在保有している資産」と「将来に稼ぐ利益」を元に算出します。一方で、時価総額とは上場企業を対象とするもので、発行済み株式数と株価を掛け合わせて算出される金額です。株式価値ともいえます。

  • 時価総額=株価×発行済み株式数

企業価値と事業価値の違い

事業に関連する資産や事業活動で生み出されるものの価値が事業価値です。企業価値から非事業用資産を差し引いたものともいえます。

  • 事業価値=企業価値-非事業用資産

企業価値と株主価値の違い

株主に帰属する価値が株主価値です。端的に言えば、企業価値から他人資本である有利子負債を差し引いたものが、自己資本である株主価値になります。

  • 株主価値=企業価値-有利子負債

企業価値と買収価額の違い

M&Aにおける買収価額は、売り手・買い手の交渉によって決するため、企業価値・事業価値・株主価値のような定義はありません。ただし、交渉の基になる金額として、企業価値評価の数値が重要な役割を持ちます。

企業価値が問われる場面

M&Aでの価額交渉以外にも、企業価値評価は以下のようなシーンで重用されます。

  • M&Aでオファーする価額の検討(売り手側)
  • M&Aで投資するべきか否かの検討(買い手側)
  • 投資判断(ベンチャーキャピタルや金融機関)
  • 相続税の評価(株式を譲渡する事業承継の場面)
  • 経営戦略の策定

企業価値評価(バリュエーション)の必要性

M&Aでの当事会社には株主がいます。投資を行うベンチャーキャピタルにいるのが出資者です。このように、M&Aや投資では、直接の当事者+利害を受ける関係者の存在があります。当事会社が、利害関係者に対して負うのが説明責任です。

投資判断を論理的に説明するうえで、企業価値評価の数値は大いに説得力を持ちます。企業価値評価の必要性は明らかです。

企業価値評価(バリュエーション)を行うタイミング

M&Aのプロセスの中で、必ず企業価値評価を実施するタイミングは2回あります。なぜ、そのタイミングで企業価値評価を行うのか、その意味合いを確認しましょう。

基本合意契約の締結前

M&Aの売り手・買い手が、お互いを交渉相手に定めると、秘密保持契約が締結され、相互に会社の情報も開示しながら交渉が開始されます。交渉が進み、大筋で条件が合意できた段階で締結するのが基本合意書です。

基本合意書に法的拘束力はありませんが、その段階で合意している内容として取引価額も記載されます。取引価額を決めるためには、交渉で基となる数値が必要です。

したがって、基本合意書締結前の具体的な取引価額交渉をする段階では、売り手側に対する企業価値評価を終えていなければなりません。

デューデリジェンス後の最終契約交渉前

基本合意書締結後、買い手によるデューデリジェンス(売り手企業に対する精密監査)が実施されます。それを経て最終的な交渉が行われ、合意に至れば最終契約書の締結です。基本合意書締結前の企業価値評価は、売り手から提供された情報に基づき実施します。

売り手側に悪意はなかったとしても、厳密な企業価値評価のためには情報が足りなかったり抜けていたりするかもしれません。そこで、デューデリジェンスで徹底的に調べて得た売り手側の全情報を基に、最終交渉用の精密な企業価値評価を実施するのです。

【関連】企業価値とは?概念や計算方法、時価総額との違いを解説
【関連】事業価値、企業価値、株式価値の違いや関係、算出方法を解説【英語も記載】

3. 企業価値評価(バリュエーション)の種類

企業価値を高めていくにあたっては、企業価値をどのように評価するのか知っておかなければなりません。そこで、企業価値評価を算出する方法で、代表的なものを紹介します。M&Aの現場でよく使われるのは、インカムアプローチの中のDCF法です。

また、企業価値評価の算定には、以下の3つの体系によるアプローチ方法があります。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

それぞれ、順番に確認していきますが、以下の動画でも解説しておりますので、そちらもご覧ください。

コストアプローチ

コストアプローチとは、企業の純資産を基準に企業価値評価をする方法のことです。とても簡単に計算できるため、今すぐに価値を知りたいという人に最適な方法といえるでしょう。また、客観性に優れている点にも着目しておくと活用しやすいです。

コストアプローチのメリットとデメリット

コストアプローチ最大のメリットは、算出方法がとても簡易であり、それこそ誰にでもわかりやすい点です。したがって、その企業の現時点での純資産を評価するという意味合いには、とても適します。

その反面、企業の将来性が全く加味されていない点が表裏一体のデメリットです。M&Aは該当企業の将来性にも着目して実施されるものですから、その点、コストアプローチでは不十分といわざるを得ないでしょう。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来に発生する収益やキャッシュフローをベースに、リスクなどを加味して算出する企業価値方法のことです。リスクは割引率として算出されるため、多くのリスクを抱えている場合にはやや低めに計算されます。

したがって、安定した経営でリスクが少ないという場合には、高く算出されるでしょう。

インカムアプローチのメリットとデメリット

インカムアプローチの特徴ともいえるメリットは、コストアプローチでは欠落してしまっていた企業の将来の収益性が勘案されている点です。算出の基とする中期計画書のテーマの持たせ方によって、複数の「if」シナリオごとの企業価値評価ができます。

そのことにより、資金の調達方法や買収の形式の差による節税効果の違いまでをも反映可能です。ただし、それら事業計画のシミュレーションには時間を要してしまいますから、まずこの点もデメリットでしょう。

そして、最も懸念すべきデメリットは、事業計画策定者の恣意性が入り込む余地がある点です。したがって、その点について、いかに客観性を確立するかがポイントとなるでしょう。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、売り手側企業と類似する上場企業や、類似するM&A取引を基にして企業価値評価をする方法です。

マーケットアプローチのメリットとデメリット

マーケットアプローチのメリットは、コストアプローチ同様に算出にあまり手間がかからないことです。また、該当企業が現在、赤字であったとしても、他社の企業価値評価を連用するマーケットアプローチであれば、プラスの企業価値評価となる可能性がある点もメリットでしょう。

マーケットアプローチ最大のデメリットは、条件に合う既存の企業・取引が見つからなければ、この方法が使えないことです。企業を探した手間も無駄になります。また、参照できるのは既存企業の現在の価値であって、将来の価値までは参照できない点もデメリットです。

【参考】企業価値評価(バリュエーション)はM&A総合研究所へご相談を!

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また、守秘義務契約のもとで作業させていただきますので、企業価値算定で知り得た情報について外部に漏れるようなことは決してございません。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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4. コストアプローチによるバリュエーション

ここでは、具体的なコストアプローチ方法について掲示します。主なコストアプローチとしては、以下の2種類です。

  1. 時価純資産価額法
  2. 修正簿価純資産法

①時価純資産価額法

時価純資産価額法とは、帳簿上の全ての資産と負債を時価で再評価し、純資産の金額を計算して企業価値評価をする方法です。この方法では、無形資産も一緒に計算に入れ込みます。無形資産とは、従業員や特許技術などのことです。

実は、無形資産は企業価値を大きく左右します。企業ごとに従業員の技術や特許などに違いがあるので、計算に入れ込められれば、低いと感じていた企業価値が実は高かったということもあり得るでしょう。

②修正簿価純資産法

修正簿価純資産法とは、時価純資産価額法と似ていますが、全ての資産と負債を再評価はしません。有価証券や土地・建物などで含み損益が大きく、かつ、時価を算出しやすい項目のみ時価修正して企業価値評価をする方法です。

時価純資産価額法による算定事例

時価純資産価額法による算定例を、以下の簡易な貸借対照表の内容を前提としてで例示します。
 

資産 負債
売掛債権 100 買掛債権   50
有形固定資産 400 固定負債 300
無形固定資産 200 純資産 350
合計 700 合計 700

【資産の時価算定要素】

  • 売掛債権の回収不能分:10
  • 有形固定資産(土地)の評価含み益:50

【負債の時価算定要素】
  • 他社の債務保証(オフバランス):200×リスク50%

【算定例】
  • 資産の時価評価=売掛債権100-10+有形固定資産400+50+無形固定資産200=740
  • 負債の時価評価=買掛債権50+固定負債300+債務保証(オフバランス)200×リスク50%=450
  • 資産740-負債450=純資産(企業価値評価)340

算定の結果、貸借対照表上の純資産は350でしたが、時価評価した結果の企業価値評価は340となりました。

【関連】【図解あり】コストアプローチとは?メリット・デメリット、計算方法

5. インカムアプローチによるバリュエーション

ここでは、インカムアプローチの詳細について掲示します。インカムアプローチの主な具体的手法は、以下の3つです。

  1. DCF(Discounted Cash Flow)法
  2. 収益還元法
  3. 配当還元法

①DCF法

DCF法は、将来、期待できるキャッシュフローを現在価値に割り引くことで算出していくものです。たとえば、事業計画書などをベースとして、将来性のある収益はどのくらいあるでしょうか。

できるだけ正確に算出したいなら、起こり得るリスクについても加味して収益を出しておかなくてはなりません。面倒かもしれませんが、リスクについても含めて計算することで将来性を価値に反映できるのは、DCF法の大きな利点です。

DCF法は、無形資産やのれんなど、ほかの方法では含められない部分まで幅広く計算に入れ込むことで、一定の尺度による正確な数字まで導き出せます。多くのケースでDCF法が好んで使われるのは、この理由のためです。

②収益還元法

収益還元法とは、分子に平均収益、分母に資本還元率を用いて企業価値評価をする方法です。こちらは、市場金利や長期国債利回りなどのリスクも含めて計算していきます。そのため、総合的にリスクを判断することにも役立つでしょう。

ただし、平均収益を使ったものですから、収益が拡大するベンチャー企業などでは正確な数字を導き出せません。もし、ベンチャー企業で企業価値を知りたいのであれば、専門家に依頼して細かく見てもらう必要があるでしょう。

③配当還元法

配当還元法とは、株式の配当金に着目して企業価値評価を行うものですが、その方法により、実際のところ、M&Aでは、あまり用いられることはありません。算出方法としては、会社の資本金と株式配当金が基準になります。

前期、前々期の2年度分の配当金を10%の利率で割り戻し、その結果で株価を算定するのです。その会社の株式全体の5%未満程度を主有している株主が、株式譲渡を実施する際に用いられるケースがあります。

DCF法による算定事例

DCF法による企業価値評価は、以下のステップで行われます。順番に見ていきましょう。

  1. 将来のフリーキャッシュフロー予測
  2. 割引率の算出
  3. 企業価値評価

①将来のフリーキャッシュフロー予測

フリーキャッシュフローは、以下の計算式です。

  • フリーキャッシュフロー=税引後営業利益+減価償却費-設備投資±運転資本などの増減

少なくとも5期分は必要なので、5期分を以下の事例とします。
 
  1期 2期 3期 4期 5期
税引後営業利益 20 30 50 50 50
減価償却費 5 5 10 10 10
設備投資 0 10 30 10 10
運転資本などの増減 0 -5 -10 0 0
フリーキャッシュフロー 25 20 20 50 50

②割引率の算出

割引率は、企業の自己資本コストと負債コストを加重平均して計算したものであるWACC(Weightted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト)を使用することが一般的です。

WACCの算出は複雑なので本欄では詳細を省略しますが、ここでは5%とします。つまり、割引率は5%です。

③DCF法による企業価値評価

DCF法による企業価値の算出方法は、以下の計算式です。

  • 1期目のフリーキャッシュフロー/(1+割引率)
  • +2期目のフリーキャッシュフロー/(1+割引率)²
  • +3期目のフリーキャッシュフロー/(1+割引率)³
  • +4期目…

これを1から2までを元に当てはめると以下のようになります。
  • 1期:25/(1+0.05)≒24
  • 2期:20/(1+0.05)²≒18
  • 3期:20/(1+0.05)³≒17
  • 4期:50/(1+0.05)⁴≒41
  • 5期:50/(1+0.05)⁵≒39
  • 合計(DCF法による企業価値評価)=139

このDCF法の計算例では、5年後までのキャッシュフローをもとに企業価値を算定していますが、5年後のキャッシュフローが6年目以降も永続的に続くものとして算出する方法として、ターミナル・バリューというものがあります。

【関連】インカムアプローチとは?メリット・デメリット、計算方法
【関連】【企業価値算定】DCF法とは?計算式や割引率、メリット・デメリットをわかりやすく解説

6. マーケットアプローチによるバリュエーション

ここでは、マーケットアプローチの詳細について見ていきましょう。主なマーケットアプローチには、以下の3種類があります。

  1. 類似業種比準方式
  2. 類似会社比準方式
  3. 類似取引比準方式

①類似業種比準方式

類似業種比準方式とは、企業価値を知りたい業種の標準的な企業をベースに算出する方法です。この方法では、国税庁が提示している『類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等』を目安として計算されます。

主な要素となるのは、標準的な企業における株価、配当金額、利益額、純資産の帳簿上の額です。とても簡単に企業価値を知れますが、M&Aでは基本的に使用しません。ただし、純資産を基準にしたときに税負担が大きくなり過ぎるというケースでは重宝するでしょう。

②類似会社比準方式

類似会社比準方式とは、同じような事業をしている上場企業の株価をベースとして調べる方法です。上場企業をベースとして計算することから、やや企業価値にバラつきが出てしまう特徴を持っています。

これは、上場企業がどれほどの価値を持っているかによって、大きく影響を受けるからです。ただし、ベンチャー企業などの成長が早い会社や、特殊な業種である場合などには上場企業が存在しない場合があります。

目安となる企業がない場合は、算出方法として使えないので注意しておきましょう。

③類似取引比準方式

類似取引比準方式とは、過去に実施された同一業種に関わるM&Aで、類似する企業規模・M&A取引規模のものを参照し企業価値を算出するものです。

過去のM&A事例から企業価値や株式価値の数値を取り出し、そこから各種倍率を導き出したうえで、その倍率を用いて、該当企業の企業価値を求めます。ただし、過去のM&A事例で情報が開示されているのは上場企業だけです。

該当企業が中小企業である場合には、参考にできるM&A事例の情報が得られるのはほとんどないため、この方式は使えません。

類似業種比準方式による算定事例

類似業種比準方式の計算式は以下のとおりです。類似業種のデータは、国税庁のWebサイトにありますので、自社に該当する数字を当てはめます。

  • 類似業種の株価
  • ×(自社の配当/類似業種の配当+自社の利益/類似業種の利益+自社の簿価純資産/類似業種の簿価純資産)/3
  • ×0.7(大会社)or 0.6(中会社)or 0.5(小会社)

なお、株価、配当、利益、純資産は、いずれも1株当たりの数字です。また、大会社か中会社、もしくは小会社のどれに該当するかは細かい規定があるのですが、本欄では省きます。

そしてここでは、従業員100人、純資産5億円、売上高100億円の総合スーパー(小売業)が該当する大会社という前提とします。

【類似業種の株価】
「各種商品小売業」の2年間平均を採用するとして、今回は392です。
※課税時期の属する月、その前月および前々月と、過去2年間の平均から選べます。

【自社の1株当たりの数字】
  • 自社の配当金額:1
  • 自社の利益:5
  • 自社の簿価純資産:200(つまり、発行済み株式数は250万)

【類似業種の1株当たりの数字】
  • 類似業種の配当金額:2.6
  • 類似業種の利益:21
  • 類似業種の簿価純資産:180

以上を計算式に当てはめます。
  • 392
  • ×(1/2.6+5/21+200/180)/3
  • ×0.7
  • ≒155(1株当たりの株価)

1株当たりの株価155円×発行済み株式数250万=3億8,750万円が算定結果です。

【関連】マーケットアプローチとは?特徴やメリット、計算方法を解説【企業価値評価の実例あり】

7. 企業価値評価(バリュエーション)の影響力

この項では、企業価値評価がどのような場面につながり、影響力を発揮するのかを紹介します。企業価値評価が影響を及ぼすとされる事柄は、以下のとおりです。

  1. M&AやTOBに影響
  2. 金融機関の融資に影響
  3. 中小企業は倒産対策に影響
  4. 株価への影響

①M&AやTOBに影響

企業価値評価は、M&Aで売るか買うかの意志決定における大きな指標です。売る側にとっては、企業価値評価をして会社がどのくらいで売れそうかわからないと、誰に売ればよいかわかりません。

買いたい相手が現れたとしても、その相手が提案した買収価額が適切であるか理解できないでしょう。これらは、買う側から逆に考えても同様です。

また、上場企業に対してTOB(株式公開買付)を実施する場合においても、その買付価額は、通常、DCF法などにより算定された株式価値を参考にして決定されます。ここでも、企業価値評価が大きな役割を果たすのです。

②金融機関の融資に影響

金融機関の融資に影響を与える可能性も考えられます。なぜなら、金融機関で行われる融資の判断の中には、企業価値を算定するのと似たような工程があるからです。当然のことながら、返済できるだけのキャッシュフローが見込めないときには融資してもらえせん。

つまり、インカムアプローチなどで企業価値評価が高い場合はキャッシュフローが見込めるため、銀行からの融資を受けやすいと考えられます。

必ずしも100%当てはまるわけではありませんが、企業価値を磨き上げることにより、融資を受けやすくなる可能性についても知っておくと便利です。

③中小企業は倒産対策に影響

中小企業は倒産対策にも影響してくると考えられます。なぜなら、企業価値によって融資の金額が変わってくるからです。つまり、企業価値が低い状態であれば満足できるほどの融資を受けられず、資金ショートして倒産に向かってしまう可能性があります。

倒産対策として、十分に融資を受けられるようになるためにも、企業価値を正しく知って磨き上げることが必要です。中小企業で融資を満足に受けられなくて悩んでいる場合は、企業価値を正しく算定してもらい磨き上げるという手段も検討してみるとよいでしょう。

④株価への影響

最後に、株価への影響についても知っておきましょう。企業価値は、株価にも少なからず関連するものだからです。たとえば、株価に反映されている市場の期待値や予想などは、企業価値に影響されます。当然、企業価値が高ければ株価も上がるはずです。

そして、株価が上がると企業価値が上がることにもなります。これは、高い株価を維持している企業は市場でもしっかりとした基盤を得ているからです。このことは絶対とはいいきれませんが、こうした影響が少なからずあるということは知っておいて損はないでしょう。

以上のように、企業価値評価は大きく経営に影響を及ぼします。どれを見ても、経営をしていくうえで大切なことばかりです。つまり、常に企業価値評価を高めておくことが経営者に求められています。

どのように企業価値評価を高くしていくべきか、考える必要があるといえるでしょう。

【関連】M&Aの企業価値評価とは?算出方法を詳しく解説!

8. 上場企業の企業価値評価(バリュエーション)の方法

上場企業の企業価値は、株式をベースとして計算できます。具体的には、1株あたりの株価×株式数で、株式の時価総額で計算するのです。これは、実際に取引されている純資産をベースに算出することになります。

しかしながら、時価総額は市場の期待と予想、つまり市場に参入している多くの人のバイアスがかかって算出されたもので、企業価値評価の方法で算出される金額とは乖離が生まれることがほとんどです。
 
そこで上場企業においては、株価を参考にしつつ、複数の企業価値評価方法を折衷させて企業価値評価を算出することがあります。つまり、絶対的な評価はありません。

【関連】マルチプルとは?マルチプル法による企業価値の算出方法を解説!

9. 未上場企業の企業価値評価(バリュエーション)の方法

未上場の企業では、株式の市場価値相場からは算出できません。したがって、価格については交渉次第となることがほとんどです。しかし、ある程度の目安がなければ交渉をするにあたっても不便でしょう。そこで主に使われるのがDCF法となります。

DCF法であれば無形資産まで価値に含めるので、市場価値相場がなくてもある程度の概算をすることが可能だからです。以上のことから、未上場企業の価値を調べたい場合には、専門家に依頼するとよいでしょう。

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10. 企業価値評価(バリュエーション)を向上させるには?

企業価値評価を常に高めておくことで、経営の安定化や最善の経営戦略を取れます。したがって、企業価値評価を高めることはとても重要といえるのです。そこで、企業価値評価を向上させるために、どのようなことをすべきかを紹介します。

企業価値評価を向上させるために必要なことは、以下の4つです。

  1. 利益を増やす
  2. 投資先を絞る
  3. 従業員の待遇を見直す
  4. 財務を見直す

①利益を増やす

1つ目の方法が「利益を増やす」です。しかし、そうは言っても今より利益を増やすことは、なかなか難しいでしょう。そこで行いたいのが、コスト削減による利益率の向上です。さまざまな社内業務の見直しにより、コストを削減できるところがあるかもしれません。

売上に注力するあまり、コストがかかり過ぎていることに気づかない場合も多いのです。こうして利益を増やせれば、企業価値はそれだけでも十分に上がります。すぐに結果は出なくとも、利益を上げるための施策を行っているというだけでも違うので試してみてください。

安定した利益を出せるようになっていれば、企業価値は自身が思うよりも伸びているはずです。

②投資先を絞る

2つ目の方法が「投資先を絞る」です。単純に投資効率を上げるだけでも効果的ですが、投資先を絞り込むようにしてみてください。なぜなら、本当に投資に見合うキャッシュフローが得られているかに注目する必要があるからです。

どれだけ投資をしていても、キャッシュフローが見込む値よりも低ければ効率が悪くなります。そのため、投資先を絞りこむことが必要となるわけです。いきなり絞り込むことは難しいかもしれませんが、だらだらと投資していることも少なくありません。

再度、見直しを行い、キャッシュフローを生み出せる部分に注力してみましょう。

③従業員の待遇を見直す

3つ目の方法が「従業員の待遇を見直す」です。厳しい経営の中、待遇を見直すにしても難しいことはあるでしょう。しかし、生産性を向上して利益を出していくためには待遇について見直すことも大切です。

最大限にパフォーマンスを引き出せる環境まで待遇を整えられれば、自然に企業価値も向上していきます。そして、待遇の見直しにあたっては以下の要素についても整備してみてください。

  • リーダーシップ
  • 適度なストレス
  • 業務量のバランス
  • ゴール・目標の明確化
  • 上司との関わり方
  • 企業イメージ・ミッション

これらを整備することで、従業員一同が同じ目的に向かって進むこととなり、より生産性を向上させられるでしょう。

④財務を見直す

4つ目の方法が「財務を見直す」です。財務を見直し、最適化することで企業価値の向上を狙います。たとえば、負債の節税効果について考えてみましょう。利益を出している事業の負債を増やし、有利子負債にかかる支払い利息を税法上の損金に算入します。

すると、納税額を減らせるのでより収益性を向上させられるのです。ただし、うまく活用できなければ失敗してしまうこともあります。場合によっては脱税と判断されて厳しい措置を受ける可能性もあすので、税理士に査定してもらうことは忘れないでください。

こうした財務の見直しだけでも大きな効果が得られます。今までを振り返ると同時に見直しを行い、適正な状態に整えていきましょう。

【関連】バリュードライバー分析とは?企業価値を向上させる戦略を解説!

11. 企業価値評価(バリュエーション)が向上した会社の事例

日本取引所グループが、企業価値向上表彰というものを行っています。2019(令和元)年度の大賞は、小松製作所が選ばれ受賞しました。受賞のポイントについては、以下のように発表されています。

  • 資本コストを意識した経営目標・指標を掲げ、長期にわたり企業価値向上実現に向け継続し実行している。
  • 経営管理について資本生産性を踏まえた仕組みにより、企業価値向上実現に向けた体制が構築できている。
  • ステークホルダーや投資者らとの意見交流の重要性について社をあげて認識し、経営トップ自らが積極的に実践・行動している。

小松製作所は施策を実施しただけでなく、それをきちんと成果として表せたことが、大賞受賞の大きな評価要素だったようです。ポイントは、自社の資本コストを上回る企業価値に到達すべく、その創造を目指し1つずつ実践している点といえるでしょう。

【関連】M&A成功事例60選!取引規模・業界別、海外企業のケースも紹介【2021年最新版】

12. 企業価値評価(バリュエーション)に関するおすすめの本

企業価値評価についてもっとよく知りたいと考えたら、以下の本をおすすめします。

  1. 企業価値評価 第6版[上]〜バリュエーションの理論と実践
  2. 企業価値評価 第6版[下]〜バリュエーションの理論と実践
  3. バリュエーションの教科書
  4. 企業価値評価ガイドライン

①企業価値評価 第6版[上]〜バリュエーションの理論と実践

本のおすすめ第1弾は、「企業価値評価 第6版[上]〜バリュエーションの理論と実践」です。
 

出版社 ダイヤモンド社
ページ数 524ページ
価格(税込) 4,620円

DCF法による企業価値評価の本家、マッキンゼー・アンド・カンパニーがまとめた企業価値評価の一冊で、発売以来25年超のロングセラーです。やや学者向けの本格的なもので高価ですが、時代の実務ニーズに細やかに対応すべく改定されてきました。

第6版では、「スタートアップのように発生時点で費用計上される研究開発費やマーケティング費用」への対応や、「必要資本が小さいビジネスへの対応法」などが加えられています。

②企業価値評価 第6版[下]〜バリュエーションの理論と実践

本のおすすめ第2弾は、「企業価値評価 第6版[下]〜バリュエーションの理論と実践」です。
 

出版社 ダイヤモンド社
ページ数 524ページ
価格(税込) 4,620円

これは上記のおすすめ本「企業価値評価 第6版[上]〜バリュエーションの理論と実践」の下巻です。

③バリュエーションの教科書

本のおすすめ第3弾は、「バリュエーションの教科書」です。
 

出版社 東洋経済新報社
ページ数 244ページ
価格(税込) 2,860円

著者はグロービス経営大学院教授で、ゴールドマン・サックスにてM&Aアドバイザー業務に従事した経験もあります。また、M&Aを題材にしたテレビドラマと映画の監修も行いました。

複雑な理論やモデルよりも、企業価値評価の全体像や、「そもそも価値とはどういうことか?」といったところから、実務に即した形で企業価値評価を解説しています。

全く財務的な知識がなければ難しいかもしれませんが、企業価値評価のビジネスにおける立ち位置や意味を含めて理解しやすい一冊です。

④企業価値評価ガイドライン

本・おすすめ第4弾は、「企業価値評価ガイドライン」です。
 

出版社 日本公認会計士協会出版局
ページ数 431ページ
価格(税込) 2,860円

日本公認会計士協会が、株式の価値を評価する場合の実施・報告についてまとめた企業価値評価ガイドラインです。企業価値評価ガイドラインには、実務で使えそうな内容が、丁寧に凝縮されて書かれています。

【関連】M&Aの勉強になる本・書籍おすすめ30選〜初心者にもわかりやすい

13. 企業価値評価(バリュエーション)のまとめ

企業価値評価とは、ひと言でいえば「会社の値打ち」のことです。M&Aにおいて、売り手側と買い手側の価格交渉における、判断基準の土台として用いられます。経営をしていくにあたって、企業価値評価は常に高い状態を保っておくことが重要です。

企業価値評価は、以下の3つの方法で算出できます。
・コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチ

算出方法を詳しく知っておくことで、企業価値をどのようにあげていくべきか、経営戦略を考えることが可能です。

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