2021年12月10日更新
M&Aアドバイザリーとは?業務内容を徹底解説!
M&Aを行う際は、一般的にM&Aアドバイザリーなどの専門家に相談をします。この記事では、M&Aアドバイザリーの業務内容や、M&Aの相談を行った後に支払う成功報酬額について解説しています。また、経営コンサルタントやM&A仲介会社との違いも解説しています。
目次
1. M&Aアドバイザリーの業務内容について
近年、経営者の高齢化を理由に、中小企業では盛んにM&A(特に事業承継)が行われています。
しかし、M&Aを行う際は、財務・法務などの専門的な知識が必要であるため、経営者だけでM&Aを行うことは困難です。
M&Aを行うときには、M&Aアドバイザリーなどの専門家に相談する必要がありますが、M&Aアドバイザリーとはどのような業務を行うのでしょうか。
この記事では、M&Aアドバイザリーについて、詳しく解説していきます。
- M&Aアドバイザリーについて
- M&Aアドバイザリーの業務内容について
- M&Aアドバイザリーに依頼するときの手数料と注意点について
- M&Aアドバイザリーと仲介業務、コンサル業務の違いについて
2. M&Aアドバイザリーとは
M&Aアドバイザリーとは、M&Aについて専門知識を持った専門家です。まずは、M&Aアドバイザリーについて、詳しく紹介していきます。
M&Aを行う企業の利益最大化が目的
そもそもM&Aとは、会社の合併・買収を行うことをいいます。M&Aを行うには、多額の資金が必要となるため、買収する側・売却する側ともに利益が最大になるよう、相手会社の探索・M&Aの交渉をする必要があります。
そこで活躍するのが、M&Aアドバイザリーです。M&Aアドバイザリーは、会社(クライアント)の利益が最大化するように交渉などを行います。
以下では、買収する側・売却する側の利益を最大化させる項目について、代表的なものを紹介します。
買収する側の利益最大化
買収する側の利益を最大化させる項目は、主に以下の2つです。
- M&Aを行うときの買収価格
- 買収後のシナジー効果(相乗効果)
まず一つ目は、M&Aを行うときの買収価格です。買収する側の会社は、M&A後に予想される利益額や買収後の運転資金額を考慮して、買収価格の予算を算出します。
そこで、M&Aアドバイザリーはその予算に収まる会社を探索し、買収するように提案をするのです。
二つ目は、買収後のシナジー効果(相乗効果)です。買収を行う際の資金以外にも、買収後の利益をあげる技術・ノウハウも重要です。
そして買収する会社は、足し算以上の利益を得ることができるように、現在行っている事業とのシナジー効果が得られるようM&Aを進めたいと考えています。
そこで、M&Aアドバイザリーは、買収する会社と買収される会社が持っている技術・ノウハウを考慮して、被買収会社の提案を行います。
売却する側の利益最大化
売却する側の利益を最大化させる項目は、主に以下の2つです。
- M&Aを行うときの売却価格
- M&Aにおける売却後の条件設定
まず一つ目は、M&Aを行うときの売却価格です。M&Aにより会社を売却すると、その対価を創業者は受け取れます。
当然ですが、会社売却の対価を受け取れば、創業者はできるだけ多くの利益を受け取りたいと考えます。
M&Aアドバイザリーは、売却価格をできるだけ最大化できる会社を探索し、買収してくれる会社の提案を行います。
二つ目は、M&Aにおける売却後の条件設定です。特に、売却する会社が中小企業の場合、M&Aで自社の従業員の雇用維持を望むことが多いです。
そのため、M&Aアドバイザリーはその希望を実現できる会社の探索・交渉を行います。
このように、M&Aアドバイザリーは、買収する側・売却する側どちらの利益も最大化できるように業務を行っています。
M&Aアドバイザリーの別名はファイナンシャルアドバイザー(FA)
M&Aについてインターネットで検索すると、ファイナンシャルアドバイザー(FA)という言葉が出てきますが、ファイナンシャルアドバイザーは、M&Aアドバイザリーと同じ意味で用いられます。
M&Aアドバイザリーには、専門別に3種類に分類でき、かつては、その中でM&Aの財務に関する専門知識を持っている人をファイナンシャルアドバイザーと呼んでいました。
しかし、現在ではM&Aアドバイザリーの中に占める、ファイナンシャルアドバイザーの割合がとても多いため、区別なく呼んでいます。
ファイナンシャルアドバイザーとM&Aアドバイザリーは同じ意味で使用されているので、混乱しないように注意しましょう。
弁護士業務、会計士業務を含むこともある
基本的に、M&Aについて相談をする場合は、ファイナンシャルアドバイザーに依頼します。
大手・中堅クラスのファイナンシャルアドバイザー会社は、グループ会社として設立している場合が多く、グループ内に税理士事務所や弁護士事務所を持っている場合がほとんどです。
グループ会社を設立している場合が多い理由は、M&Aでは企業監査(デューデリジェンス)を実施するためです。
企業監査とは、M&Aを行う相手の会社が被買収会社として適しているかを、ビジネス面・財務面・法務面から分析することです。
ファイナンシャルアドバイザーは、M&Aに向けた戦略の構築、相手企業の探索・交渉が主な業務内容であるため、ビジネス面の分析は専門業域となります。
しかし、ファイナンシャルアドバイザーは財務面や法務面については専門領域ではないため、弁護士や会計士などの法務・財務の専門家に依頼します。
案件ごとに専門家に調査・分析を依頼すれば、その報酬も支払わなくてはならないため、M&Aの依頼料が高くなります。
また、信頼できる専門家を探す時間がかかる場合がありますが、グループ会社の場合は専門家を探す手間が省けるだけでなく、依頼料を安く抑えるメリットがあります。
一方、規模の小さいM&A会社の場合は、弁護士や公認会計士がファイナンシャルアドバイザー業務を行っていることが多く、2つの業務(M&Aとそれぞれの専門業務)の両方をこなしています。
例えば、弁護士の場合は法務アドバイザーとして、公認会計士の場合は会計・税務アドバイザーとして業務を行っています。
多才な能力を必要とするM&Aアドバイザーの仕事
M&Aアドバイザーの仕事は「財務会計・税務・法律のるつぼ」ともいわれるくらい、幅広い業務範囲があり能力や知識も要ります。
プロのM&Aアドバイザーになるには、財務会計・税務・法律について知るだけでなく、経営について理解することも必要です。また、交渉やファシリテーションなどにおける高いコミュニケーション能力も不可欠です。
さらに一流のM&Aアドバイザーになるには教養、経験、道徳もすべて備えなければならないため、それまでには苦労を伴うことが少なくありません。しかし、M&Aアドバイザーの仕事は大きなやりがいがあるでしょう。
3. M&Aアドバイザリーの業務内容
M&Aアドバイザリーには、いろいろな業務内容があります。ここでは、以下の5つの業務について紹介します。
- 相手を見つける
- 交渉する
- 契約する
- 統合プロセスの実施
- 資料作成
①相手を見つける
M&Aアドバイザリーは、M&Aを行う際の買収先もしくは売却先の探索を行います。一般的に、M&Aアドバイザリーは、自社に蓄積されている買収先もしくは売却先のリストをもとに探索します。
しかし場合によっては、M&Aアドバイザリー自身が持っている独自のネットワークをもとに顧客のニーズに合う会社を探索することがあります。
もし、このようなM&Aアドバイザリーに依頼すれば、マッチングする確率は上がるといえるでしょう。
②交渉する
M&Aアドバイザリーは、M&Aを行うときの交渉を買収先・売却先いずれかの代理で行います。
交渉には経験が必要となるため、交渉に慣れていない経営者がM&Aの交渉を行うと、失敗する可能性が高く、大きな損害を被ることになります。
そのため、M&Aに関しての知識と経験を持つM&Aアドバイザリーに、M&A交渉の代理を依頼するのが一般的です。
③契約する
M&Aアドバイザリーは、M&Aを行うときの契約を買収先・売却先いずれかの代理で行います。契約代理の業務はM&A交渉に比べたら時間もかからないため、セットで業務を行うことが多いです。
④統合プロセスの実施
M&Aアドバイザリーの業務には、M&A後の統合プロセスの実施があります。M&A後の統合作業は、M&Aで一番重要なプロセスであり、M&A後にすぐに利益を出すためには素早い統合が重要です。
しかし、経営者が本業を行いながら統合作業の指揮を執るのは困難であるため、M&A後の統合作業についてM&Aアドバイザリーにアドバイスをもらいます。
M&A後の統合作業には、大きく分けるとハード面とソフト面があります。ハード面での統合作業は、人事システムや経理システムの統合などです。
ハード面の統合作業に関係する部署は、日常業務を行いながら統合作業を行う必要があり、M&A後はかなりの負荷がかかります。そのため、M&Aアドバイザリーは効率的に統合作業が行えるよう、アドバイスをします。
ソフト面の統合作業は、企業文化の統合や組織再編などです。ソフト面の統合は、経営者だけでなく従業員も協力して行わなければならないため、統合完了までには時間を要します。
そのため、M&AアドバイザリーはM&A前の買収会社・被買収会社の社風などを分析して、効率よく統合作業が進められるようアドバイスを行います。
⑤資料作成
資料作成は、M&Aアドバイザリー業務の中でも重要な業務です。その理由は、依頼された会社の経営者だけでなく、買収先もしくは売却先のM&Aアドバイザリー・経営者に対しても、M&Aについての説明・報告をする必要があるからです。
まず、依頼された会社に対してM&Aアドバイザリーは、今後行っていくM&A戦略などを説明する必要があります。また、M&Aの交渉・契約を依頼された会社の代理で行う場合には、進捗状況を説明する義務があります。
一方、買収先もしくは売却先のM&Aアドバイザリー・経営者に対しては、希望する契約条件の説明やクロージング(M&Aの実施)まで流れの説明などを行う必要があります。
このほかにも、M&Aの一連作業で、常にレポート作成やプレゼン資料作成なども行います。
4. M&Aアドバイザリーの手数料
M&Aアドバイザリーの手数料は、M&Aを行う際の各段階で設定されています。詳しくは後で説明しますが、ここではM&Aの成功報酬について解説します。
M&Aアドバイザリーへの成功報酬は、レーマン方式に沿って算出されます。レーマン方式とは、M&A契約により移動させた金額(取引金額)をもとに算出する方式のことです。
【算出手数料の相場】
取引価格 | 手数料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超~ | 1% |
M&A取引価格が11億円である例を参考に、成功報酬について紹介します。この場合、成功報酬は「(5億×5%)+((10-5)億×4%)+((11-10)億×3%)=4,800万円」と算出されます。
したがって、M&A取引価格が11億円のとき、M&Aアドバイザリーへ支払う成功報酬は4,800万円となります。
5. M&Aアドバイザリーと仲介業務の違い
M&Aを行う形態には2種類あります。それが、M&AアドバイザリーとM&A仲介の2つの形態です。M&Aアドバイザリーと仲介業務の違いについて解説します。
M&Aアドバイザリーはどちらかに付く
M&Aアドバイザリーは、買収する側と売却する側それぞれどちらかの側に付いてM&Aの交渉・契約を行います。主に上場企業など大会社同士がM&Aを行う際に取る形態です。
買収する側と売却する側の間を取り持つM&A仲介の形態に比べて、M&Aアドバイザリーの形態は会社専属で契約してM&Aの交渉・契約を行うため、より会社の利益最大化のために努めます。しかし、M&Aアドバイザリーへの手数料はその分割高です。
M&A仲介は間に入る
M&A仲介では、買収したい会社や売却したい会社を募集してそれぞれの希望条件に合うようにマッチングを行います。そのあと、M&A仲介会社が間を取り持ってM&Aの交渉・契約を行います。
主に、中小企業のM&Aを行う際は、M&A仲介の形態をとることが多いです。
6. M&Aアドバイザリーと経営コンサル業務の違い
M&Aアドバイザリーと似ている業務として経営コンサル業務があります。次は、M&Aアドバイザリーと経営コンサル業務の違いについて紹介します。
経営コンサルは抽象的で幅広い
経営コンサルの業務は、一般的に抽象的で幅広いです。その理由は、経営は多くの要素から成り立っているからです。財務やM&A以外にも、組織論・システム・法務などがあります。
大手経営コンサル会社の場合は、各専門分野のアドバイザーが在籍しています。そのため、複数の経営の相談について対応するケースもあります。
しかし、コンサル会社ですべての経営相談を受けられないため、相談内容に応じてコンサル会社を選ぶ必要があります。
中小企業の場合は、中小企業診断士に相談する方法もあります。中小企業診断士は、中小企業の経営についてすべてを網羅している専門家です。
また、ネットワークが広い中小企業診断士に相談すると、相談内容によっては弁護士や社労士など専門家を紹介してもらえます。
個人で運営する中小企業診断士への報酬は、大手経営コンサル会社へ支払う報酬よりも安価な場合が多いです。
M&Aアドバイザリーは目的が具体的
M&Aアドバイザリー業務の目的は、経営コンサルに比べて具体的です。つまり、M&Aアドバイザリーの業務は、経営のいろいろな要素の中でM&Aに特化しているため、経営コンサル業務よりも具体的であるといえます。
M&Aアドバイザリーは、M&Aに関しての専門家のネットワークも構築しているので、専門家を迅速に紹介してもらえます。
7. M&Aアドバイザリー活用の際の注意点
M&Aを行う際は、M&Aアドバイザリーと契約を締結する必要があります。M&Aアドバイザリーは自社のために努力するというメリットがある半面、注意しなければならないことがいくつかあります。
この章では、M&Aアドバイザリーを活用する際の注意するべき事項について、以下の3つを紹介します。
- コストパフォーマンス
- 情報漏えい
- M&Aアドバイザリーの選択
①コストパフォーマンスを考える
まずは、M&Aでのコストパフォーマンスを考える必要があります。M&Aアドバイザリーへの手数料には、成功報酬以外に、取引着手の前段階や取引着手の段階に手数料を支払う場合があります。
取引着手前段階では、M&Aでの相手会社の探索などを行いますが、相手会社を紹介してもらうだけでM&Aアドバイザリーへ支払う手数料が発生します。
また、取引着手段階では実際にM&Aの交渉を行いますが、これに対しても手数料が発生します。
このように、M&AのすべてをM&Aアドバイザリーに依頼すると成功報酬以外にも手数料がかかります。
このことを踏まえたうえで、M&A後に成功報酬と手数料の合計額に見合うだけの利益を出せるか、経営戦略をしっかりと考えておく必要があります。
②情報漏えいに注意
M&Aを行う際は、情報漏えいに注意しなければなりません。特に、売却を行う場合、M&Aアドバイザリーはその会社の価格を算出するために会社の調査を行います。
したがって、会社の売却価格を最大化させるために、会社の技術・ノウハウなどの情報も、M&Aアドバイザリーに開示する必要があります。
しかし、社外秘の情報が漏えいしてしまうと、売却する会社の価値が大きく下がってしまう可能性があります。
そのような事態を防ぐため、M&Aアドバイザリーと機密保持契約を締結します。また、M&Aアドバイザリーと機密保持契約を交わす際は、契約内容をしっかりと確認することも必要です。
目的に合ったM&Aアドバイザリーを選択
M&Aを行う際は、目的に合ったM&Aアドバイザリーを選択する必要があります。先ほども紹介しましたが、M&Aアドバイザリーや仲介会社には、それぞれ得意としている分野があります。
例えば、中小企業を専門とするM&Aアドバイザリーや、その地域でのM&A情報を多く持つM&Aアドバイザリーなど、いろいろな得意分野を持つM&Aアドバイザリーがいます。
自社の利益を最大化するM&Aを行うためには、M&Aアドバイザリーを選択することが非常に重要です。
8. まとめ
M&Aアドバイザリーの業務について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?この記事をまとめると以下になります。
- M&Aアドバイザリーの業務内容について
- M&Aアドバイザリーへ支払う成功報酬の基準について
- M&Aアドバイザリーと仲介業務、コンサル業務の違いについて
- M&Aアドバイザリーを依頼するときの注意点について
M&Aを行う際に一番重要なのは、自社の戦略をしっかりと考えることです。M&Aの戦略がよくなければ、利益を最大化することはできません。
M&Aでは大きな資金が動くため、サポート役となるM&Aアドバイザリー・M&A仲介会社選びは、非常に重要です。
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