国内・海外スタートアップのM&A・買収の事例を紹介!IPOとの違いやM&Aを成功させるコツも解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、スタートアップのM&A・買収について、売却額や件数・成功させるコツを紹介します。近年、スタートアップが独自に確立した技術・ノウハウの取り込みを目的とした買収が、国内外で活性化しています。スタートアップのM&Aを検討している方は必見です。

目次

  1. スタートアップとは
  2. 国内・海外スタートアップのM&A・買収事例
  3. 国内・海外スタートアップのM&A・買収の売却額ベスト10
  4. 国内・海外スタートアップのM&A・買収の件数
  5. 国内・海外スタートアップのM&A・買収が増加している5つの理由
  6. スタートアップのM&AとIPOを比較
  7. スタートアップのバイアウト方法
  8. スタートアップのM&Aを成功させるコツ・ポイント
  9. スタートアップのM&Aにおすすめの相談先
  10. 国内・海外スタートアップのM&A・買収のまとめ
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1. スタートアップとは

スタートアップとは、事業の立ち上げから短期間で新たなビジネスモデルの確立を目指すことです。市場が成熟した既存のプロダクトではなく、新たなビジネスモデルを投入することで社会全体を大きく動かす役割を果たします。

少数精鋭で構成され、全てのメンバーが成功を目標にストイックに取り組む特徴から、その価値が高く見積もられ、大企業からも注目を集めることが増えています。

スタートアップの目的

スタートアップの目的には、社会貢献と売却益の獲得の2つがあります。まず、社会貢献の視点では、「社会の経済発展に大きく貢献できるビジネスモデルを作り上げたい」といった考えから、現在の社会に求められているものを基準にスタートアップの方向性を決定しましょう。

近年は特にIT業界での立ち上げが多く、IoT化やクラウドを活用したサービスを提供することで社会貢献を目指すスタートアップが増加しています。

売却益の獲得も目的に含まれています。スタートアップはVCや個人投資家より受ける融資で事業を展開することが多いため、資本回収するためのイグジットを定めなくてはなりません。

その際に大企業による買収が選択されることが多く、スタートアップのM&A・買収事例が多く見受けられるようになりました。

スタートアップのM&A事例については下記の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】スタートアップのM&A事例30選!売却額やスキームを解説!

2. 国内・海外スタートアップのM&A・買収事例

国内のスタートアップの買収事例も多く見受けられるようになりましたが、国外でもその勢いはとどまることを知りません。この章では、国内・海外スタートアップのM&A・買収事例を紹介します。

国内のスタートアップM&A・買収

まずは、国内で実施されたスタートアップM&A・買収事例を紹介します。

【国内のスタートアップM&A・買収】

  • ユナイテッドによるトライフォート買収
  • フィスコによるZaif買収
  • LINEによるFIVE買収
  • DMMによるBANK買収
  • KDDIによるソラコム買収
  • ポラリスによるBAKE買収
  • グリーによる3ミニッツ買収
  • mixiによるチケットキャンプ買収
  • KDDIによるnanapi買収
  • じげんによるリジョブの買収

ユナイテッドによるトライフォート買収

2018年9月27日、ユナイテッドがトライフォートの株式を取得して子会社化しました。売却額は36億円です。

トライフォートは、スマホアプリやWEBサービスの開発・運営を手がけています。創業以来、アパブリッシング事業やアライアンスアプリ事業で数々のヒットタイトルを生み出し、総合的な開発体制を構築するに至りました。

ユナイテッドは既存の中核事業からさらなる新規事業に進出するために今回の買収に至ったとしています。

フィスコによるZaif買収

2018年9月14日、フィスコがテックビューロの運営する仮想通貨取引所「Zaif」を事業譲渡で取得しました。売却額は55億円です。

運営元であるテックビューロは、同年9月のハッキングにより顧客分45億円、自社分25億円の流出事件を起こしていました。金融庁から3度目の業務改善命令を受けており、事業存続が困難と判断し今回の事業譲渡へと至ったとされています。

事業譲渡後はZaifを利用していたユーザーに対してはフィスコへの口座移動を促し、応じていなかったユーザーに対しては日本円による返金対応なども見せていました。

フィスコは今回の事業譲渡の目的を、テックビューロ倒産による資金回収不能のリスク回避や仮想通貨市場の縮小を抑制するためとしています。

LINEによるFIVE買収

2017年12月4日、LINEがFIVEの株式を取得して子会社化しました。売却額は51.1億円です。FIVEは、動画広告配信プラットフォーム「Video Network by FIVE」を提供しています。同サービスは、国内の動画広告市場で最大規模のユーザー数を誇るまで成長を見せました。

動画広告市場における実績と顧客を併せ持つFIVEを取り込むことで、LINEの動画広告事業を強化する狙いがあります。

DMMによるBANK買収

2017年11月21日、DMMがBANKの株式を取得して子会社化しました。売却額は70億円です。BANKは、アイテムを即座に換金できるアプリ「CASH」を運営しています。不要になり処分に困ったファッションアイテムなどの小物を、簡単に現金化できるとして若者を中心に広がりを見せていました。

DMMの経営資源を活用し、事業規模の拡大や新たなサービスのあり方を提供できるとして買収に至ったとされています。

しかし、買収からわずか1年後にBANKはMBOによりDMMから独立することとなりました。BANK代表の光本氏による独立で今後は同氏の新体制のもと運営していくと発表がされました。

一方のDMMグループの創業者である亀山氏は多くを語らず、敗軍の将とだけ発言を残されています。70億円を投資した巨大買収であったものの、DMMが想定したシナジーを発揮できなかったことが伺えます。

KDDIによるソラコム買収

2017年8月2日、KDDIがソラコムの株式を取得して子会社化しました。売却額は200億円です。

ソラコムは、通信プラットフォーム「SORACOM」を主力としていました。「SORACOM」は、IoT向けの無線回線をグローバルに提供することを実現させたシステムで、1回線からでもリーズナブルに利用できる特徴があります。

KDDIとソラコムがそれぞれ持つIoTビジネス基盤を合わせることで、ソラコムのIoTプラットフォームの強化やさらなるサービス・製品の開発に努めるとしています。

ポラリスによるBAKE買収

2017年7月31日、ポラリスがBAKEの株式を取得して子会社化しました。日本経済新聞によると売却額は100億~150億円と見られています。

BAKEは、チーズタルトを主力商品とする洋菓子店です。売上高は創業1年目から1億円を超え、3年目には37億円を記録するほどの大きな躍進を見せています。

大ヒットの要因はその味だけではなく、スタイリッシュな作りのWebサイトとモダンな店舗の組み合わせによるマーケティングと捉えられていました。店舗の工房は直接見えるようにガラス張りが徹底され、通りがかったお客が焼き上がるさまを楽しめる仕組みも大きく影響していると考えられます。

ポラリスはマーケティング力とブランド力に注力して今回の買収へと至りました。今後はポラリスの資金力を活用して積極的に海外展開を行い、将来的には株式上場も目指すとしています。

グリーによる3ミニッツ買収

2017年2月2日、グリーが3ミニッツの株式を取得して子会社化しました。売却額は43億円です。3ミニッツは、ファッション動画マガジン「MINE BY 3M」を主力としていました。オリジナル動画コンテンツは月間再生数1億回を超えるなど、圧倒的なマーケティング能力を有しています。

主にゲーム事業を手がけるグリーですが、今回の買収で本格的にプラットフォーム事業に参入することを明かしています。

mixiによるチケットキャンプ買収

2015年3月、mixiがチケットキャンプを運営するフンザの株式を取得して子会社化しました。売却額は115億円です。チケットキャンプは、コンサートやスポーツなどの公演チケットをユーザー同士で取引できる二次流通プラットフォームです。スマホのUIに最適化された作りは利便性が高く多くのユーザーから利用されていました。

mixiやモンスターストライクで培ったノウハウを生かすことでチケットキャンプの事業拡大を図っていくとしています。

KDDIによるnanapi買収

2014年10月16日、KDDIがnanapiの株式を取得して子会社化しました。売却額は77億円です。nanapiは、暮らしの情報サイト「nanapi」を運営しています。料理のレシピを中心に、趣味や雑学といった生活になじみのあるジャンルを扱うことでビュー数を着実に伸ばしていました。

2007年の創業から7年がたち、毎月黒字を出しているにもかかわらず今回の売却に至りました。nanapiの代表はその理由について、停滞感を感じたためと話しています。

IPO(新規上場)の選択肢はあったものの、よりインパクトのある事業展開を求めてnanapi側よりKDDIに持ちかけることとなりました。顧客基盤を持つKDDIとユーザー獲得力があるnanapiが協力することで、新たなメディア・サービスを提供していくとしています。

じげんによるリジョブの買収

2014年9月、じげんがリジョブの株式を取得し子会社化しました。リジョブは、美容やヘルスケアに特化した求人メディアを運営しています。美容師やアイリスト、鍼灸師(しんきゅうし)など、幅広い分野における求人掲載を行っており、求人を出す企業や求職者から高い支持を得ていました。

リジョブの代表は、次なる事業を手がけるために渡米を決意し、リジョブの株式をじげんに譲渡することとなりました。

海外のスタートアップM&A・買収

海外のスタートアップで目立つのはイスラエルのスタートアップのM&A・買収です。GoogleとAppleの間で繰り広げられているAIスタートアップ争奪戦の対象となることも多く、業界内をにぎわせています。

【海外のスタートアップM&A・買収】

  • Appleによるスペクトラル・エッジの買収
  • AppleによるRealFaceの買収
  • Appleによるプライムセンス買収
  • AppleによるAnobitの買収
  • GoogleによるVelostrata買収

Appleによるスペクトラル・エッジの買収

2019年12月13日、Apple(アメリカ)がスペクトラル・エッジ(イギリス)の株式を取得して子会社化することを発表しました。スペクトラル・エッジは、機械学習を応用したスマホ写真改善技術を保有するスタートアップです。大量の写真を読み込ませることでAIが自動的に写真を判断できるようになり、簡単に色彩を鮮やかにできる技術です。

今回の買収で獲得した技術は、今後発表される新型のiPhoneやiPadのカメラに応用されることに期待されています。

AppleによるRealFaceの買収

2017年2月19日、Apple(アメリカ)がRealFace(イスラエル)の株式を取得して子会社化することを発表しました。イスラエルのメディアによると売却額は数百万ドル相当とされています。

RealFaceは、顔認識ソフトウェアの開発を手がけるスタートアップであり、パスワード入力や指紋認証を不要とする顔認証は、スマートフォンのセキュリティに最適としてIT業界で注目を集めていました。

獲得した技術は、現在のiPhoneの「FaceID」に活用され、多くのユーザーに利用されています。

Appleによるプライムセンス買収

2013年11月24日、Apple(アメリカ)がプライムセンス(イスラエル)の株式を取得して子会社化することを発表しました。プライムセンスは、3D空間の物体を認識するチップやセンサーの開発を手がけるスタートアップです。奥行きを認識できるシステムは単純なタップ操作やコントローラ入力とは違う、幅広い分野への応用が期待されています。

スマートフォンやタブレット以外のさまざまな家電に応用できる可能性も含めて、将来的な価値を見いだしたものと考えられます。

AppleによるAnobitの買収

2011年、Apple(アメリカ)がAnobit(イスラエル)の株式を取得して子会社化することを発表しました。Anobitは、半導体の開発を手がけるスタートアップです。半導体の技術や開発エンジニアを多数抱えているAnobitは、スマートフォンを主力とするAppleにとって魅力的な企業だったことが分かります。

当時の買収で獲得した開発エンジニアによってAppleのiPhone開発体制が大幅に強化されたと見られています。

GoogleによるVelostrata買収

2018年5月9日、Google(アメリカ)がVelostrata(イスラエル)の株式を取得して子会社化することを発表しました。

Velostrataは、法人向けのクラウドサービスを手がけるスタートアップです。マルチハイブリッドクラウドを構築することで、社内にあるデータを数分でクラウド上に移行させることを実現させるサービスです。

Googleは、本技術を応用することでユーザー全体のワークフローの軽減が可能といった予測を立てています。

学生起業家のスタートアップ事例については下記の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】学生起業家のスタートアップ事例40選!成功ポイントやメリット、リスクを解説!

3. 国内・海外スタートアップのM&A・買収の売却額ベスト10

スタートアップのM&Aは特に2018年が活性化していたとされており、多くの高額事例が見受けられました。この章では、国内外のスタートアップのM&A・買収事例をランキング形式で紹介します。

【国内/海外スタートアップのM&A・買収の売却額ベスト10】

  • ウォルマートによるフリップカート買収
  • SAPによるクアルトリクス買収
  • マイクロソフトによるギットハブ買収
  • シスコによるデュオ・セキュリティー買収
  • ペイパルによるアイゼトル買収
  • トゥウィリオによるセンドグリッド買収
  • ロシュによるフラティロン・ヘルス買収
  • リクルートによるグラスドア買収
  • アマゾンによるリング買収
  • ヤフーによるdely買収

ウォルマートによるフリップカート買収

2018年5月9日、ウォルマート(アメリカ)がフリップカート(インド)の株式を取得することを発表しました。売却額は約160億ドル(約1兆7,000億円)です。フリップカートは、インドのEC最大手のスタートアップです。グループ内の物流子会社はインド国内の800以上の都市に配送網を持つなど、インドEC市場を担っていました。

ウォルマートは以前よりインドに進出していましたが、外資規制が強いことから思うように事業展開が行えていませんでした。今回の買収によってEC事業を中心にインドの市場獲得を進めようとする狙いがあります。

SAPによるクアルトリクス買収

2018年11月11日、SAP(ドイツ)がクアルトリクス(アメリカ)の株式を取得して子会社化したことを発表しました。売却額は80億ドル(約9,100億円)です。

クアルトリクスは、オンライン調査の実施・分析を支援するクラウドサービスを提供するスタートアップです。顧客や従業員を対象にしたアンケートの作成やその分析までをこなす総合的な機能を搭載しています。

上場直前であったクアルトリクスが買収に応じた理由は、SAPとの事業シナジーの創出で今後したいことの大幅に前倒しが可能になるためとしています。

マイクロソフトによるギットハブ買収

2018年10月26日、マイクロソフト(アメリカ)がギットハブ(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は75億ドル(約8,234億円)です。

ギットハブは、ソースコードの共有プラットフォームです。世界中のプログラマーが書いたソースコードを閲覧・利用できるサービスとして注目を集め、デベロッパーにとって必要不可欠なサービスにまで上り詰めました。

今回の買収の目的は、マイクロソフトのオープンソース戦略を推し進めるためだと考えられています。

シスコによるデュオ・セキュリティー買収

2018年8月2日、シスコ(アメリカ)がデュオ・セキュリティー(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は23億5,000万ドル(約2,600億円)です。

デュオ・セキュリティーは、セキュリティ・認証のクラウドサービスを提供するスタートアップです。スマートフォンのセキュリティの強度を高める二要素認証を提供しており、Facebookなどの大企業にも利用されています。

シスコはセキュリティ分野に力を入れており、デュオ・セキュリティーの技術やノウハウを獲得することで土台かためを図ります。

ペイパルによるアイゼトル買収

2018年5月17日、ペイパル(アメリカ)がアイゼトル(スウェーデン)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は22億ドル(約2,430億円)です。

アイゼトルは、モバイル決済サービスを提供するスタートアップです。スマートフォンやタブレットで決済を可能とするサービスで、クレカ決済の機械を導入する余裕がない個人店舗を中心に利用者が広がっていました。

ペイパルとアイゼトルのM&Aによって、アイゼトルの端末の利用者は爆発的に増加することが見込まれています。

トゥウィリオによるセンドグリッド買収

2018年10月15日、トゥウィリオ(アメリカ)がセンドグリッド(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は20億ドル(約2,200億円)でした。

センドグリッドは、メールのAPIを提供するスタートアップ企業です。メール送受信の確実性やDM用の大量送信機能などを始め、さまざまな機能を搭載するサービスです。月間600億通を超え、世界中の企業から利用されています。

今回の買収は、デペロッパーにとって使いやすいプラットフォームを構築することを目的としています。

ロシュによるフラティロン・ヘルス買収

2018年2月19日、ロシュ(スイス)がフラティロン・ヘルス(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は19億ドル(約2,060億円)です。

フラティロン・ヘルスは、がん治療や研究に活用できるデータプラットフォームを提供しているスタートアップです。200万人以上のがん患者のデータが寄せられており、登録した医師は情報を閲覧できる仕組みになっています。

ロシュはフラティロン・ヘルスの買収によって、がん患者に取り組みが医療業界全体で促進されることを期待することを明かしています。

リクルートによるグラスドア買収

2018年5月9日、リクルート(日本)がグラスドア(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は12億ドル(約1,300億円)です。

グラスドアは、求人情報検索サイトを運営するスタートアップです。社員や求職者の口コミを中心とした情報は信憑性(しんぴょうせい)が高いとされ、多くの求職者に利用されていました。

今回の買収は、オンライン求人検索や企業と求職者のマッチング事業を強化して業界における地位を確立させる狙いがあります。

アマゾンによるリング買収

2018年4月12日、アマゾン(アメリカ)がリング(アメリカ)の株式を取得して子会社化することを発表しました。売却額は11億ドル(約1,170億円)です。

リングは、ホームセキュリティー機器の開発を手がけるスタートアップです。スマートドアホンやセキュリティカメラが主力商品となり業績を伸ばしていました。

アマゾンは自社のセキュリティサービス「Amazon Key」に加えて、リングの買収でセキュリティサービスをさらに強化させていく狙いです。

ヤフーによるdely買収

2018年7月11日、ヤフー(日本)がdely(日本)の株式を取得し子会社化することを発表しました。売却額は93億円です。

delyは、レシピ動画サービス「クラシル」を運営するスタートアップです。簡単で美味しい料理のレシピを間日投稿することで多くのユーザーの支持を獲得し、リリースから2年で1,000万ダウンロードを突破するなど急成長を見せていました。

ヤフーが有するメディア・コマース事業の知見を生かすことで、クラシルひいてはdelyの企業価値を高めることにつながるとしています。

4. 国内・海外スタートアップのM&A・買収の件数

EY Japanの調査によると、スタートアップ企業のM&A案件数は増加傾向です。国内のスタートアップ企業を対象とした2021年のM&A件数は143件となり過去最高となりました。2017年以降、90件前後で推移していましたが、2021年にM&A件数が急増したのがわかるでしょう。

国内スタートアップ企業に対するM&Aは、買収金額も拡大しています。EY Japanが開示されている案件をリサーチしたところ、2021年に買収額が10億円以上となったのは18件、100億円以上の案件が3件でした。

一方、海外スタートアップのM&A・買収の件数ですが、明確なデータが出そろっていません。しかし、国内以上にスタートアップのM&A・買収事例が報じられていることを考えると、比較できないほどの件数であることが想像できます。

アメリカのM&A市場については下記の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】アメリカのM&A市場が2019年も好調!M&A件数が伸び続ける理由とは?

5. 国内・海外スタートアップのM&A・買収が増加している5つの理由

スタートアップのM&A・買収件数は、国内だけで見ても伸びていることがわかります。ここでは、国内/海外スタートアップのM&A・買収が増加している理由を解説します。

【国内/海外スタートアップのM&A・買収が増加している理由】

  • 既存事業とのシナジー効果
  • 勢いのある業界への新規参入
  • 事業拡大・新しい人材・技術の獲得
  • 企業イメージの向上・PR効果
  • 救済目的のM&A

既存事業とのシナジー効果

スタートアップが確立した技術をシナジー効果のある既存事業に応用すれば、業績を伸ばすことが期待されます。獲得した技術を自社製品に応用することでより良い製品・サービスを提供する一連の流れができあがりつつあります。

勢いのある業界への新規参入

事業の多角化を図るために既存事業から新規事業に参入するM&A・買収事例も存在します。スタートアップが開拓した市場を大企業の資金力を活用してさらに広げようとするケースです。

大企業はリスク回避のために複数の事業を展開することが一般的なので、全く新しい事業に参入することも珍しくありません。

事業拡大・新しい人材・技術の獲得

スタートアップは少数精鋭で構成されることが多いため、メンバー1人当たりの比重が大きく、高い専門性を持っていることが多いです。優秀な人材と技術を同時に獲得することで、該当分野の事業を拡大させようとする狙いがあります。

企業イメージの向上・PR効果

スタートアップのM&A・買収は、企業の方向性を世間にアピールする狙いもあります。大企業のM&A・買収はメディアによって大々的に報じられることが多く、企業にとって好材料となることも少なくありません。

救済目的のM&A

スタートアップの資金源はVCや個人投資家からの融資です。限られた資金でイグジットするのが求められていますが、全てのスタートアップが達成できるとは限りません。

魅力的な技術を開発しているにもかかわらず、資金不足が原因で解散危機に陥っているスタートアップも珍しくなく、これらを救済しようとM&A・買収するケースも見受けられます。

6. スタートアップのM&AとIPOを比較

スタートアップ企業にとってM&Aが効果的に作用する理由に関して、M&AとIPOのメリット・デメリットを把握しておくと良いでしょう。

IPOのメリットとデメリット

従来、スタートアップ企業は、IPOを優先する傾向にありました。IPOによって株式を公開すれと、株式市場への流通により多くの資金を獲得できるうえ、自社の知名度向上にもつながりました。そして、IPOにより、販路拡大・顧客増加・事業提携などのメリットも得られます。

一方、IPOにはデメリットもいくつか存在します。株式公開の手続きは煩雑であり、スタートアップ企業側は大きな負担となるでしょう。株式公開に時間がかかってしまうと、効率的な資金調達は難しいです。

株式公開を行うと多くの投資家が株主となるため、従来の少人数による経営が実施できなくなります。そのうえ、株主に対する説明責任も負います。このようなデメリットを考慮すると、株式公開をせず、従来の経営を進めた方が効果的なケースもあるでしょう。

IPOよりも効率的な資金調達の方法としてM&A挙げられるのがM&Aです。

M&Aのメリットとデメリット

多額の資金調達が必要な場合、M&AよりもIPOの方が効率的です。一方で、先述した通り、無理に株式公開をしても大きなメリットは得られないでしょう。

近年は、国内の未上場企業の資金調達額が増加しています。フォースタートアップスの調査によると、2020年に資金調達を実施したスタートアップの数は1,686社、累計資金調達額は6,800億円でした。

このように、無理に上場をしなくても資金調達できる状況を示しています。昨今は、スタートアップ企業が成長拡大するうえでIPO以外の手法としてM&Aも多く実施されています。

特にスタートアップ企業では、大企業による買収を狙う傾向が見られるでしょう。こうしたスタートアップ企業の動きは今後も増加すると考えられ10億円を超える大規模なM&A事例も目立ってきています。

一方で、M&Aにもデメリットが存在します。主なデメリットとして、M&Aの成功率の低さ、M&Aの行ううえで求められる専門的な知識です。これらのデメリットを回避する方法として、M&Aを検討する際は、M&A仲介会社など専門家からサポートを得ると良いでしょう。

7. スタートアップのバイアウト方法

スタートアップバイアウトの方法は、大きく「MBO」「EBO」「LBO」の3つです。MBO(エムビーオー)とはマネジメント・バイアウトの略で、会社経営陣が株主から自社株式を譲渡されたり、事業部門を事業譲渡されたりして、オーナー経営者として独立することをさします。

EBO(エンプロイー・バイアウト)は、従業員が株式を買い取り、事業の買収や経営権の取得をするもので、中小企業などを中心に広く実施されている手法です。MBOでは経営陣、EBOでは従業員が買収主体となって株式を買い取るのがわかるでしょう。

LBO(レバレッジド・バイアウト)は、買い手企業が売り手企業の資産やキャッシュフローなどを担保とし、金融機関から資金調達したうえで買収する方法です。

8. スタートアップのM&Aを成功させるコツ・ポイント

スタートアップのM&Aを成功させるコツ・ポイントは以下です。

  • M&Aのタイミングを見計らう
  • シナジー効果が見込まれる買い手を選ぶ
  • 従業員へのフォローを徹底する

M&Aのタイミングを見計らう

スタートアップのM&Aはタイミングが非常に重要です。

事業が発展途上状態だと、今後の事業リソース投下次第で多くの利益が見込めるかもしれません。中長期的な目線でも大きな発展が見込まれるタイミングでM&Aを行うことが必須です。

シナジー効果が見込まれる買い手を選ぶ

売り手・買い手ともに利益が出るようにM&Aを行うことも大切です。

例えば、大手企業がスタートアップ企業を買収するケースがあります。これらは頭打ちになっている事業をさらに伸ばしていくために行われることが多く、シナジー効果が見込まれる典型例です。

従業員へのフォローを徹底する

M&Aでは従業員へのフォローも大切です。

例えば、M&Aを行うことが従業員の耳に入り一斉退職されてしまったケースがあります。適切なタイミングで従業員へM&Aを行うことを伝え、フォローを徹底していく必要があります。

9. スタートアップのM&Aにおすすめの相談先

スタートアップのM&Aを進める上でハードルになるのが、M&A先の選定です。目的を達成するために必要な条件を持つ企業は、自身のみではなかなか見つけられません。

スタートアップのM&Aをご検討の方やお悩みの方は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は幅広い情報を活用してM&A先を探しますので、M&Aの目的の達成しやすさという点で大きなアドバンテージがあります。

無料相談は随時、受け付けていますので、スタートアップのM&Aをご検討の際はどうぞお気軽にご連絡ください。

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10. 国内・海外スタートアップのM&A・買収のまとめ

スタートアップのM&A・買収は国内外で活性化しているものでした。この流れは今後も強まっていくとされており、今後も業界動向から目を離せないといえるでしょう。スタートアップのM&Aは増加傾向にありますが、成功させるためには専門家のサポートのもと進めることがカギといえるでしょう。

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