不動産管理会社設立による節税対策とは?事業承継まで考えて設立をしよう

提携本部 ⾦融提携部 部⻑
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

不動産管理を個人業務で行っているならば、法人化によって節税が可能です。そして、不動産管理会社を設立するならば、後日の事業承継についても考慮しましょう。不動産管理会社の現状、メリット・デメリット、事業承継などについて解説します。

目次

  1. 不動産管理会社の設立によって事業承継時の節税につながるか?
  2. そもそも不動産管理会社とは
  3. 不動産管理会社を立ち上げるメリット・デメリット
  4. 不動産管理業界の将来はあまり明るくない
  5. 不動産管理会社の事業承継とは
  6. 不動産管理会社の3つの承継先
  7. 不動産管理会社をM&Aで事業承継するときの3つの事例
  8. 設立時から計画的に!高値で会社を譲渡する2つのコツ
  9. 不動産管理会社の事業承継や節税対策は専門家へ相談しよう
  10. まとめ
  11. 不動産管理業界の成約事例一覧
  12. 不動産管理業界のM&A案件一覧
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1. 不動産管理会社の設立によって事業承継時の節税につながるか?

さて、早速ですが、事業承継時、不動産管理会社を設立することで節税につながることがあります。以下の2つの方法を確認していきましょう。

  1. 設立によって節税できる
  2. 相続財産を減らすことで相続税の負担が軽くなる

順番に確認しましょう。

①設立によって節税できる

個人で不動産の管理・経営をしている場合に、収入の増えてきたタイミングで不動産管理会社を設立するといった流れをとることがよくあります。

それは、不動産管理会社を設立することで、節税できることが多いからです。基本的に、個人で税金を納めるよりも、会社で納税した方が税率は下がります

つまり、不動産管理会社を設立することで、具体的には以下のような節税が期待できるでしょう。

  • 所得税の節税
  • 給与所得控除の適用によって課税対象の減額

個人の所得税は、累進課税制度により最高税率が45%+住民税10%で合計55%にもなりますが、中小法人の実効税率は約33%前後であり、税率に大きな差があります。

いずれにしろ、売上高や所得金額によって節税できる額は変わりますから、一度概算してみるとよいでしょう。

②相続財産を減らすことで相続税の負担が軽くなる

不動産管理会社を設立しておくと、相続財産を減らせることから相続税の負担を軽くできます。

たとえば、個人で収入を得ていたとしましょう。このとき、収入は全て自分の財産となります。自分が死んでしまって財産を相続する家族は、その分の相続税を支払わなければなりません。

一方、不動産管理会社を設立し家族に給与を支払えば、不動産管理会社を通して収入を分け合えます。そうすることで、相続財産は減り、相続税の負担も軽くなるのです。

不動産管理会社でも事業承継税制は使える!

不動産管理会社でも事業承継税制を適用できます。事業承継税制とは、事業承継をするときに、後継者が取得した資産に対する贈与税や相続税の納税を猶予(場合によっては免除)する制度のことです。

「事業承継税制は、賃貸不動産を持つ不動産所有法人に適用されない」と思われていることがありますが、実際は適用されます。

確かに、資産保有型法人や資産運用型法人であれば、適用はされないでしょう。資産保有型法人や資産運用型法人とは、単に投資用の不動産や金融商品を持っているだけの会社のことです。

しかし、不動産管理会社なら賃貸経営を行う事業と見なされます。ただし、特定資産(投資用不動産や金融資産など)が、会社の持つ資産の70%を上回ってしまうと、資産保有型法人や資産運用型法人と見なされ事業承継税制は適用されません

また、個人事業主であっても法人であっても、事業承継税制はあります。しかし、両社には違う点もありますから、以下の表で確認しておきましょう。

  法人版(特定措置) 個人版
事前の計画策定 5年以内の特例承継計画の提出 5年以内の個人事業計画の提出
対象資産 非上場株式 特定事業用資産
適用期間 10年以内の贈与・相続など
納税猶予割合 100%
贈与要件 一定数の株式などを贈与すること その事業にかかわる特定事業用資産の
全てを贈与すること
承継人数 最大3人 先代1人から後継者1人
雇用確保要件 あり なし
円滑法認定の
有効期限
申告期限から5年間 最初の承継(贈与・相続)から2年間

法人と個人事業では上表のような違いがあるので、その点は注意してください。

以上が、不動産管理会社を使った節税方法でした。ただし、売上状況によっては節税につながらないこともあります。

不動産管理会社を設立したからといって、「必ず節税できるわけではない」ことは覚えておきましょう。

【関連】中小企業庁の事業承継税制って何?要件・注意点・手続きの流れを解説

2. そもそも不動産管理会社とは

不動産管理会社とは、不動産のオーナーが、所有する賃貸物件の保有・管理を行う会社のことです。不動産オーナー自身が、不動産管理会社を設立することもあります。

この不動産管理会社を設立する方式は、以下の3つです。

  1. 管理委託方式
  2. 不動産保有方式
  3. 転貸方式(サブリース方式)

順番に確認していきましょう。

①管理委託方式

管理委託方式とは、会社に対して、不動産オーナーが不動産事業から得られる収入を管理費として支払う方式です。

会社に入った管理費は、経費や従業員の給与に当てます。お金の流れは、以下のとおりです。

  • 賃借人から不動産オーナーへ賃貸料が支払われる
  • 不動産オーナーから不動産管理会社に管理料が支払われる
  • 不動産管理会社から経営者や従業員に給与が支払われる

不動産オーナーが経営者と同一人物だった場合は、受け取った賃料の一部を管理費として不動産管理会社に支払うことになります。

管理費はおよそ賃料の5〜10%と限られるため、会社に多くのお金を入れたい場合には向かない方式です。

②不動産保有方式

不動産保有方式とは、不動産オーナーの持つ賃貸不動産を不動産管理会社へ譲渡する方式です。不動産管理会社が、直接不動産を所有することになります。

不動産オーナー個人で得ていた不動産事業の所得を、全額、不動産管理会社へ移転させることが可能です。お金の流れは、以下のようになります。

  • 賃借人から不動産管理会社に賃料を支払う
  • 不動産管理会社から経営者や従業員に給与が支払われる

とてもシンプルな流れでわかりやすいため、不動産保有方式を採用するオーナーが多いです。

一方で、不動産管理会社へ不動産の名義変更をしなければなりません。手続きは複雑化し、登録免許料などの料金が発生することを覚えておきましょう。

③転貸方式(サブリース方式)

転貸方式(サブリース方式)とは、オーナーが持つ賃貸用不動産を一括賃貸して、不動産管理会社が転貸する方式です。

そのため、賃貸料は、不動産管理会社へ直接支払われることになります。お金の流れは、以下のとおりです。

  • 賃借人から不動産管理会社へ賃貸料が支払われる
  • 不動産管理会社から不動産オーナーに賃貸料が支払われる
  • 不動産管理会社から経営者や従業員に給与が支払われる

不動産オーナーと不動産管理会社の経営者が同一の場合であっても、不動産管理会社から不動産オーナーへの賃貸料は支払われます。不動産管理会社は、経費として処理することが可能です。

以上が、不動産管理会社を設立する3つの方式でした。

方式によって、行わなければならない手続きや確定申告の内容、お金の流れは変わります。一般的には、手続きがシンプルである不動産保有方式が採用されやすいです。

3. 不動産管理会社を立ち上げるメリット・デメリット

不動産管理会社の設立方式について確認してみると、「ややこしそうだなあ」と印象を持つかもしれません。最終的に不動産管理会社を設立するかどうかは、メリット・デメリットを確認し、総合的に判断することをおすすめします。

そこで、不動産管理会社を立ち上げるメリットとデメリットを確認していきましょう。

メリット

不動産管理会社を立ち上げるメリットは、2つあります。

  • 所得税の節税ができる
  • 事業を拡大していける

それぞれのメリットを確認していきましょう。

所得税の節税ができる

不動産管理会社を立ち上げることで、所得税の節税につながる可能性が高いです。

前項でも述べたとおり、個人の所得税は累進課税制によって課税されます。したがって、収入が高ければ高いほど課税率は高くなってしまう仕組みとなっているのです。

課税所得が4,000万円を超えると税率は45%で、さらに住民税10%が加わります。

一方、不動産管理会社の課税は法人税です。法人住民税、法人事業税、地方法人税など全てを含めた法人税の実効税率は約33%ほどですから、個人として税率33%を超える課税所得(具体的には1,800万円以上の収入)を得ているのであれば、節税が可能です。

また、法人化することで、給与所得控除や退職所得控除を受けて課税所得を減額できます。さらに、医療保険などに加入したり、欠損金を繰り越ししたりするなど、節税対策の幅は広がるのです。

事業を拡大していける

不動産管理会社を立ち上げることで、事業を拡大できます。

もちろん、個人でも資金力があれば事業拡大は可能です。しかし、大きな取引は個人だと相手にしてもらえないことも多く、「法人ならでは」の信用によって取引が始まることもあります。

今までは自分の持っている不動産のみの事業だったとしても、今後は他のオーナーからの委託管理を行ったり、不動産の所有を増やしたりできるでしょう。

このように、不動産管理会社を立ち上げることで事業拡大の可能性が高まります。

デメリット

不動産管理会社を立ち上げることで得られるメリットがある一方で、デメリットもあります。それは、費用が増えてしまうことです。

不動産管理会社を立ち上げることで発生する費用は、以下の3つが想定されます。

  • 会社設立の費用
  • 不動産の所有の移動による費用
  • 税理士への報酬費用

順番に確認しましょう。

会社設立の費用

まず、会社を設立するためには、法定費用がかかります。株式会社の場合、定款認証手数料と登録免許税、定款の謄本の保存料で最低20万円以上かかるでしょう。

そのほかにも、雑費がかかります。たとえば、電子定款の作成費用や会社の実印、印鑑証明の登録などです。

このように、会社設立だけでも20万円以上+αの費用がかかることを覚えておきましょう。

不動産の所有の移動による費用

もし、不動産保有方式で不動産管理会社を設立するのであれば、不動産の所有権移転登記が必要になります。

所有権移転登記とは、不動産や土地の持ち主が変わったときに行わなければならない手続きのことです。このとき、登録免許料(不動産の固定資産税評価額の2%)が発生します。

税理士への報酬費用

不動産管理会社を立ち上げて節税対策をするのであれば、税理士への報酬も発生します。決算申告や法人申告が必要となるため、自分の知識だけでは申告ができないでしょう。

このように、節税できる額が少なければ、会社設立によってかえって出費が増えることも考えられます。最終的な支出を抑えられるのはどちらなのか、よく検討しましょう。

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4. 不動産管理業界の将来はあまり明るくない

残念ながら、不動産管理業界の将来は明るいものとはいえないのが現実です。

もともと不動産所有をしていて税金対策で不動産管理会社を設立するのであれば、あまり収入の増減は気にしないかもしれません。

しかし、今後、不動産会社を設立し、経営していくのであれば、業界動向をしっかりと把握しておくべきです。業界の特徴としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 少子高齢化による顧客の減少
  2. 過酷な労働環境
  3. 地域の特性に合わせた営業の必要性

順番に確認していきましょう。

①少子高齢化による顧客の減少

少子高齢化が進む中、日本の人口は急速に減っています。したがって、国内市場が縮小しているため、顧客も減少しているのです。

また、少子高齢化に伴って賃貸契約をする若い世代が減っています。不動産管理会社の収入源は賃貸料にあるため、大きなダメージです。

2025(令和7)年には団塊世代が後期高齢者になり、さらに高齢化率の上昇が予測されます。

顧客が減ることによって、空室が増えることになるでしょう。しかし、不動産管理会社は、空室も管理しなければなりません。

いつでも入居できるように設備管理や清掃を怠れないのです。そのため、賃料は入ってこないのに経費だけがかかってしまうなどということにもなりかねません。

このように、少子高齢化による顧客の減少は深刻です。東京首都圏であれば人口は増加していますが、地方で不動産管理会社を営み続けることはかなり厳しいでしょう。

②過酷な労働環境

不動産管理の仕事は、意外と過酷な労働環境の中に置かれています。その理由は、不動産オーナーと賃借人との板挟みになりやすいのです。

たとえば、ある設備が壊れていたとしましょう。当然、入居者からクレームが入ります。不動産管理会社は管理をしているだけですから、故障などがあれば通常、費用を負担するのは不動産オーナーです。

しかし、「管理会社のチェック不足だ。そっちで補填しろ」といってくる不動産オーナーもいます。

補填をすると、会社の赤字につながりかねません。なんとか工面をして修理をしても、「対応が遅い」と入居者に怒られてしまいます。

このように、不動産管理の仕事は、常に不動産オーナーと賃借人との板挟みです。従業員は疲弊し、離職してしまうこともあります。

③地域の特性に合わせた営業の必要性

不動産管理事業は、地域の特性によって経営戦略を変えていかなければ生き残れません。人口や世帯の特徴、年齢構成などを的確に把握し、それに合わせた間取りや賃貸料を設定していきましょう。

一例としては、大学の周りだと4年間だけ下宿する人が多く、短期間で人が入れ替わります。したがって、常に新しい入居人を確保し続けなければならないのです。

一方、郊外であれば賃貸であっても住み続ける人が多く、長期入居が見込めます。

このように地域の特性を見抜き、入居者ニーズに合う物件を用意しなければならないのです。このようなリサーチ力がなければ、不動産管理の仕事もなくなっていくでしょう。

以上が、不動産管理業界の特徴でした。

不動産管理業界の特徴・動向を見ていると、「設立後、やっていけるか?」と不安になる方もいるかもしれません。

その場合、自分がリタイアしたときのことまで考えたうえで、不動産管理会社を設立するとよいでしょう。

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5. 不動産管理会社の事業承継とは

事業承継とは、経営者が後継者へと代替わりすることです。

ただし、不動産管理会社の場合は、サラリーマンをリタイアしてから立ち上げるケースも多いでしょう。その場合、不動産管理会社の経営者が高齢であることも珍しくありません。当初から事業承継のことを考えておいても、早過ぎることはないでしょう。

自分が不動産管理会社をリタイアするタイミングで事業承継を誰にするのか、設立時から考えておくことでスムーズな承継ができます。いつ、体調を崩してしまっても大丈夫なように備えておきましょう。

もしかすると「息子に承継しよう」などと親族への承継しか考えていない人もいるかもしれません。確かに、所有している不動産を親族に譲りたいと思う気持ちは理解できます。

しかし、承継先は、ほかにもあることを知っておくべきです。次の項で、不動産管理会社の承継先について確認していきましょう。

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6. 不動産管理会社の3つの承継先

不動産管理会社には3つの承継先があります。

  1. 親族
  2. 従業員
  3. M&Aによる第三者

不動産管理会社のほとんどが、子供などの親族へ事業承継しています。しかし、ほかの承継先のメリット・デメリットを知ったうえで判断すべきです。

それでは、3つの承継先について、詳しく確認していきましょう。

①親族

まずは、親族を後継者とする方法です。子供、配偶者、おい、めい、子供の配偶者など親族へ承継することを、親族内事業承継といいます。

不動産管理会社は、親族へ承継しているケースが多いです。元来、税金対策のため不動産管理会社を作っているので、従業員として家族に給与を与えていることも少なくありません。

したがって、家族への承継を考えている人も多く、せっかくの資産は家族に譲り渡したいと考えるのです。

親族であれば、贈与でも相続でも会社の資産を譲れます。そのため、ギリギリまで経営者の名前を書き換えずに、相続によって事業承継をすることも可能です。

もし、相続によって事業承継をするのであれば、生前に後継者をはっきり任命し周りの理解を得ておきましょう。なぜなら、相続人が複数いると、1人にだけ大きな会社を譲り渡すことに不満を抱く親族もいるかもしれないからです。

事前に「経営者は長男だが、給与は配偶者にも次男にも平等に与える」と条件をつけるなどして納得してもらいましょう。そうでなければ、せっかく後継者を決めていても、自分の死後、親族内の相続争いに発展する恐れがあります。

生前にしっかり話し合いの場を設け、遺言状も書いておくと安心です。

また、後継者に任命したら早いうちから後継者育成を始めましょう。一緒に働いていれば、おおよその業務は理解できていると思います。そして、後継者育成では会社の理念や経営方針などを伝え、今後の事業計画などを一緒に話し合っていきましょう。

②従業員

不動産管理会社の承継先として、会社の従業員や役員も選べます。不動産管理会社を運営していく中で、従業員を雇っているのであれば、選択肢として考えましょう

一緒に働いてきたのであれば、ノウハウや経営理念もわかっているはずです。後継者になってほしい人がいるのであれば、思いを伝えておきましょう。

ただし、親族以外の人に事業承継する場合、会社の株を買い取ってもらうか、経営者の持つ会社の財産を贈与するかのどちらかの方法となります。なお、贈与の場合は、後継者側は贈与税を納付しなければなりません。

つまり、どちらの方法にせよ、後継者個人に多額の費用負担が発生します。また、相続人となる親族がいる場合、「自分が譲り受けたい」ともめる原因にもなるでしょう。そのような環境下では、やはり、事前の話し合いが必要です。

③M&Aによる第三者

親族や従業員への事業承継以外に、M&Aも活用できます。M&A(Mergers and Acquisitions=合併買収)とは、この場合、不動産管理会社を第三者である会社や個人に売却することです。

近年、M&Aを活用した事業承継の例も増えてきています。以下のような場合は、M&Aを活用した事業承継を検討しましょう。

  • 後継者が身の周りにいないが事業を継続させたい
  • リタイア時にまとまったお金が欲しい
  • 不動産管理会社をさらに成長させたい

具体的にどういうことか確認しましょう。

後継者が身の周りにいないが事業を継続させたい

親族や従業員の中に後継者として任せられる人がいなくても、M&Aを活用することで会社を存続させて事業継続できます。

今まで培った取引先や従業員との関係を終わらせないためにも、事業は継続したいものです。せっかく今まで経営してきた会社を、廃業してしまうことに寂しさを感じる経営者も多いでしょう。

しかし、M&Aならば、たくさんの企業から買い手企業を選べます。今は買い手企業候補がいなくても、M&A仲介会社に相談すれば複数の買い手候補を選出してくれるので安心です。

身の周りに後継者がいないなら、M&Aでの事業承継を検討しましょう。

リタイア時にまとまったお金が欲しい

M&Aを活用すれば、リタイア時にまとまったお金を手にできます。なぜなら、M&Aをすることで会社の譲渡に対する対価を受け取れるからです。

不動産管理会社の会社売却の相場は、営業利益×2〜3年+会社の時価となっています。保有している不動産が多いなら、その分、譲渡対価の価額は上がるでしょう。

ただし、不動産だけ自分の手元に残して、ほかの事業を売ったお金は家族に残したいと考える人もいると思います。その場合は、事業譲渡というM&Aの手法を活用すれば、売るものと売らないものに分けることが可能です。

引退する際にお金が欲しい場合は、ぜひ検討してみましょう。

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不動産管理会社をさらに成長させたい

M&Aで事業承継することで、不動産管理会社をさらに成長させられる可能性があります。自分の引退後も、会社が成長し続ける姿を見るのは嬉しいことでしょう。

今後も会社を成長させ続けたいと思うのであれば、シナジー効果が得られる会社を買い手に選ぶことです。シナジー効果とは、互いの持つ経営素材や強みを掛け合わせることで、足し算以上の結果(売上)をもたらすことを指します。

たとえば、ブランド力のある不動産業界の大企業や同じエリアで活動する不動産会社は、シナジー効果を得られやすいです。

不動産管理会社をさらに成長させたいと思うのであれば、M&Aも検討してみましょう。

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7. 不動産管理会社をM&Aで事業承継するときの3つの事例

親族や従業員への事業承継であれば、なんとなくイメージできても、M&Aと聞くと具体的に想像しにくいかもしれません。

そこで、M&Aによって事業承継された不動産管理会社の事例を確認していきましょう。

  1. GA technologiesが不動産賃貸管理事業を子会社に事業承継
  2. FREアセットマネジメントによるRISEへの事業承継
  3. イタンジのGA technologiesへの事業承継

以上、3つの事例について詳しく確認しましょう。

①GA technologiesが不動産賃貸管理事業を子会社に事業承継

①GA technologiesが不動産賃貸管理事業を子会社に事業承継

RENOSY ASSET MANAGEMENT

出典:https://renosy-am.co.jp/

2020(令和2)年5月、GA technologiesは、これまで行ってきた不動産賃貸管理事業を100%子会社であるリー ガル賃貸保証に事業承継しました。承継には、簡易吸収分割というM&A手法が用いられています。

なお、完全親子会社間の吸収分割であるため、譲渡対価は発生していません。また、この事業承継を機に、リー ガル賃貸保証は、RENOSY ASSET MANAGEMENTに商号変更しました。

従来、RENOSY ASSET MANAGEMENTは、不動産賃貸借の保証業務サービスを提供する会社でしたが、この事業承継により、お互いの人的資源と資産を有効活用し、賃貸管理事業と賃料保証事業の収益力・成長力向上を図るもくろみです。

②FREアセットマネジメントによるRISEへの事業承継

②FREアセットマネジメントによるRISEへの事業承継

RISE

出典:http://www.rise-i.co.jp/

2019(令和元)年5月、FREアセットマネジメントはRISEへ事業承継しました。譲渡対価は7億1,500万円と公開されています。

FREアセットマネジメントは、不動産の所有や不動産管理受託業務、スポーツ施設の運営管理などを行っている会社です。M&Aを行うことにより経営者を交代、シナジー効果を生み出すことに成功しています。

RISEは不動産の開発や賃貸などを行う不動産会社ですが、これまでは、不動産管理の事業を行っていませんでした。今回の事業承継によって、両社は協業して不動産における一貫したサービス提供ができるようになったのです。互いに収入は伸びていくと予想されています。

③イタンジのGA technologiesへの事業承継

③イタンジのGA technologiesへの事業承継

GA technologies

出典:https://www.ga-tech.co.jp/

2018(平成30)年11月、イタンジはGA technologiesへ事業承継しました。なお、譲渡価額は公開されていません。

GA technologiesは、AIを生かした中古不動産の総合的プラットフォームの開発・運営を行っている会社です。顧客のメインは個人となっています。

一方、イタンジは、不動産仲介会社向けの営業支援クラウドシステムを提供している会社です。こちらは企業向けのサービスであり、GA technologiesとのM&Aによって顧客層の拡大が期待されています。

さらに、両社のITテクノロジーやノウハウ、データなどを活用し、新たなサービス提供も目指すとのことです。

以上、不動産管理会社のM&Aによる事業承継の事例を見てきました。M&A手法を用いることで、単に事業承継するだけでなく、相互の成長へとつながります

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8. 設立時から計画的に!高値で会社を譲渡する2つのコツ

もし、リタイアするときにM&Aで事業承継したいと思うのであれば、できるだけ高く売れる会社になるよう経営していくべきです。

高値で不動産管理会社を譲渡するコツは、2つあります。

  1. 地域の特性を理解して営業する
  2. 従業員の労働環境をよくする

順番に確認していきましょう。

①地域の特性を理解して営業する

地域の特性を理解したうえで営業することで、高値で譲渡できる可能性が高くなります。

なぜならば、地域に特化したサービスを提供していくことで、買い手が魅力的に感じるからです。一例として、「群馬県で事業を行っている会社が事業拡大を目的に、隣県である栃木県で特化したサービスを行っている会社を買収する」などのケースがあります。

地域の特性を理解するためには、人口や年齢層、世帯層、人の入れ替わりなどをリサーチしましょう。そのうえで、どんなサービスに需要があるかを考え、提供していくことが重要です。

②従業員の労働環境をよくする

従業員の労働環境がよくなるよう努めましょう。不動産管理会社の業務は大変なことが多く、離職しやすい業種です。

そのような中、長年働いている従業員が社内にいることは、M&Aをするときにアピールできるポイントとなります。

長期間、働いているということは、会社のノウハウを持っていることにつながるからです。買い手企業は、買収後もできるだけ人や手を加えずに、そのまま事業継続したいと考えています。

経営者がリタイアした後でも、業務を任せられる従業員を育てていきましょう。

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9. 不動産管理会社の事業承継や節税対策は専門家へ相談しよう

不動産管理会社の事業承継や節税対策を考えているのであれば、必ず専門家へ相談しましょう。それは、通常の仕事と違って、専門的な知識が不可欠だからです。

本記事では、一般的な節税対策や事業承継の方法をお伝えしました。節税対策をするにも事業承継をするにも、その会社の状況に合った最適な方法を見つけるためには専門家の力が必要です。

まず、節税対策をしたいなら税理士へ相談しましょう。

不動産管理会社を設立すべきか、事業承継税制をどのように活用すべきか、贈与税・相続税の節税はどうすべきかなど、状況に合わせたアドバイスをもらえるはずです。

また、事業承継のことならM&A仲介会社に相談しましょう。事業承継は時間がかかるので、早くから準備しておくことに越したことはありません。

中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所であれば、不動産管理会社の事業承継に詳しいM&Aアドバイザーが、専任となってフルサポートします。後継者選びから事業承継方法までご相談ください。

M&A総合研究所は、着手金・中間金完全無料の完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)の料金体系です。安心してリーズナブルにM&Aの実現が目指せます。随時、無料相談を受けつけておりますので、不動産管理会社の事業承継や節税対策の際は、お気軽にお問い合わせください。

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10. まとめ

不動産管理会社の設立によって節税につながる可能性があります。不動産管理会社のメリット・デメリットを理解したうえで、設立すべきか判断しましょう。

また、設立時には経営者が高齢となっていることが多いかもしれません。設立時から事業承継について考えておくと、スムーズにリタイアできます。

税理士やM&A仲介会社に賢く頼りながら、節税や事業承継を進めていきましょう。

M&Aという言葉になじみがなく相談先がわからない場合には、M&A総合研究所にご相談ください。不動産管理会社の事業承継に詳しいM&Aアドバイザーが専任サポートいたします。

11. 不動産管理業界の成約事例一覧

12. 不動産管理業界のM&A案件一覧

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