中小M&Aガイドラインとは?概要やポイント、事業引継ぎガイドラインについて

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

中小企業のM&Aをさらに促進するために、中小M&Aガイドラインが策定されました。事業引継ぎガイドラインの内容に、M&Aの基本事項などが加味されて改定したものです。中小M&Aガイドラインの構成内容やポイント、改定理由などをまとめました。

目次

  1. 中小M&Aガイドラインとは?
  2. 中小M&Aガイドラインの構成
  3. 中小M&Aガイドラインのポイント
  4. 事業引継ぎガイドラインが改訂された理由
  5. 中小M&Aガイドラインのまとめ
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1. 中小M&Aガイドラインとは?

中小M&Aガイドラインは中小規模のM&Aの手引書として策定されました。平成27年3月に策定した事業引継ぎガイドラインを全面改訂したものです。M&Aをさらに促進させるために、中小事業者やM&A支援機関へM&Aの指針を明示することを目的としています。

M&Aの基礎的なことや仲介手数料の目安などが主な内容です。事業引継ぎガイドラインに不足していたM&Aの知識が簡易的にまとめられています。

中小M&Aガイドラインよりもさらにコンパクトな内容の、中小M&AハンドブックというPDFも公開されています。ハンドブックの後に中小M&Aガイドラインを読むことでより理解が深められる旨のPRもあります。

この記事では、M&Aを検討する経営者に向けて、中小M&Aガイドラインのポイントや事業引継ぎガイドラインに関して解説しましょう。

中小企業M&Aのスキーム

中小企業M&Aスキームには、以下のような種類があります。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 会社分割
  • 合併
  • 業務提携・資本提携

代表的なM&Aは株式譲渡と事業譲渡で、M&Aではこの2種類が最も多く行われています。それぞれの種類を簡単に説明しましょう。

【株式譲渡】
対象企業の株主から株式を取得し、対価として現金を受け取ります。会社が丸ごと引き継がれるため、資産や負債だけでなく、取引先や従業員との契約も基本的にはそのまま存続するのが特徴といえます。手続きは事業譲渡より比較的簡便です。

【事業譲渡】
対象企業の事業全部または一部を取得し、対価として現金を受け取るものです。譲渡の内容には、不動産などの資産や負債、営業権や従業員の雇用も含まれます。手続きは株式譲渡よりも煩雑になるため注意が必要です。

【会社分割】
事業全部または一部を分割し、他社に承継させる手法です。吸収分割と新設分割の2種類があります。

【合併】
複数の企業が一つに統合され、存続する1社以外は消滅会社となります。合併スキームの種類には、吸収合併・新設合併・三角合併があります。

【業務提携・資本提携】
業務提携は、複数の企業間で契約を締結し、業務などを協力して行う関係となることをさします。資本提携は、企業間で株式を持ち合ったり、一方が出資したりする関係となることで、株式の移動を伴います。

2. 中小M&Aガイドラインの構成

中小M&Aガイドラインは、後継者不在の中小企業向けの第1章とM&A支援機関向けの第2章で構成されています。事業引継ぎガイドラインの改訂により、国(経済産業省)が提示した手引きは信ぴょう性が高く、今後のM&Aの指針になると考えられています。

第1章の内容「後継者不在の中小企業向けの手引き」

M&Aを検討する際の手引きとなる指針がまとめられています。ただし、M&Aの実務では個別的な事情を考慮する必要があるので、目安程度にとどめておき、支援機関との相談をもって判断することが望ましいでしょう。

後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義等

まずは、中小M&Aガイドラインの意義やM&Aの事例などについてです。中小M&Aガイドラインの参照で得られる利点や、M&Aの際の姿勢などもまとめられています。

①後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義

中小企業における事業承継は、親族内あるいは社内から後継者を選定して事業を引き継ぐことが多いです。しかし、親族内や社内に後継者候補がいない中小企業は、第三者に事業を引き継ぐしか会社を存続する手段がありません。

第三者に対する事業引継ぎはM&Aで実現できますが、譲り渡し側はM&A未経験であることがほとんどでしょう。M&Aの知識・経験が乏しいことも少なくありません。

中小M&Aガイドラインでは、譲り渡し側の視点からのM&Aの一般的な説明やM&A中小独自の特徴もまとめられているので、M&Aを検討する際の指針として活用できます。

②中小M&Aの事例

中小企業のM&Aは、案件ごとに個別的な事情があるため、事業規模や業種によって一概に類型化できません。企業によっては、赤字経営や後継者不在などの経営課題を抱えていることがあるでしょう。

これらはマイナス材料として扱われますが、決してM&Aの成立が目指せなくなるものではありません。M&A成約事例の中には、経営状態が悪化している企業や、廃業を予定していた企業も挙げられているのです。

深刻な状態だからM&Aを諦めるのではなく、まずはM&Aの可能性を模索することが大切だとしています。

③譲り渡し側にとっての基本姿勢

従来の中小企業のM&Aは、「M&Aに対する不安」や「外部からの評価引き下げ」などのネガティブなイメージが強くありました。それゆえ、M&Aに対して後ろ向きな考えを持つ経営者が比較的多かったことが指摘されています。

しかし近年は、譲り渡し側が積み重ねてきた事業価値を、譲り受け側が正当に評価したことで実現する友好的な取引という認識が広がっている状況です。M&Aが浸透しつつあることも示されています。

④譲り渡し側にとっての留意点

譲り渡し側の留意点は、早期決断の重要性が挙げられています。M&Aが成立するまでには数ヵ月~1年前後の期間を要することが多いため、状況悪化を防ぎ、できるだけよい状態で引き継ぐためにも早期決断が求められるのです。

M&Aを進行するうえでは、秘密保持の徹底も重要です。情報管理が徹底されていない場合、M&A成立前に外部に情報が漏洩するとトラブルに発展し、交渉が破断しかねない事態になることもあります。

中小M&Aの進め方

第2節では、M&Aの進め方が取り上げられています。一般的な進め方とその内容がまとめられているので、大まかな流れを確認する際に活用できるでしょう。

①中小M&Aフロー図

中小M&Aガイドラインでは、M&Aの進め方がフロー図で示されています。M&A支援機関によって多少前後することはありますが、基本的に以下のフローに沿って進められることが一般的です。
 

  1. 意思決定
  2. バリュエーション
  3. 譲り受け側の選定
  4. 交渉
  5. 基本合意の締結
  6. デュー・デリジェンス
  7. 最終契約の締結
  8. クロージング
  9. クロージング後(ポストM&A)

②中小M&Aに向けた事前準備

事前準備に関しては、意思決定の難しさが挙げられています。第三者に対する会社の譲り渡しを、経営者が単独で決断するのは容易ではないとして、進めておくべき事前準備がまとめられています。

特にピックアップされている内容は、支援機関への相談です。M&Aによる売却意思を決定するためには判断材料が欠かせないので、支援機関に委託して情報を整理することが望ましいとしています。

③中小M&Aにおける一般的な手続の流れ(フロー)

M&Aフロー図の各工程に関する簡易的な説明です。各所で取り組むべき内容やM&Aで利用することが多いスキームが取り上げられています

中小M&Aガイドラインの各項目では、日常の業務では聞きなれない単語が多く登場します。支援機関に一任するだけではなく、自身でもある程度理解しておくことが求められるでしょう。

M&Aプラットフォーム

近年、急速に普及しつつあるM&Aプラットフォームに関する内容です。利用によって得られる利点や、注意すべき事項などがまとめられています。

①M&Aプラットフォームの基本的な特徴

M&Aプラットフォームは、譲り渡し側・譲り受け側がウェブ上のシステムに登録することで、M&Aの手続きを比較的低コストで進行できるサービスです。仲介手数料の負担の問題から、M&Aを断念していた小規模事業者のM&Aのハードルが引き下げられました。

それ以外にも、迅速な進行・交渉が実現しやすくなったことが挙げられています。

②M&Aプラットフォーム利用の際の留意点

M&Aプラットフォームは利便性の高いサービスです。そこで、M&Aに有効活用するための留意点がいくつか挙げられています。

第一の留意点は、情報の取り扱いです。システムに登録した情報は不特定多数が閲覧できる状況になるため、特定されないように開示範囲を決めておく必要があります。

利用するプラットフォームの選択も重要です。プラットフォームによって仕組みが異なる場合があるので、自社の求めるサービス内容であるかを事前に確認しておくようにしましょう。

③M&Aプラットフォームの手数料

現在、M&Aプラットフォーム市場は発展途上にあります。そのため、譲り渡し側に仲介手数料が発生しないサービスが多いです。

しかし、今後の市場発展により利用件数が急増した場合、立場に関係なく手数料がかかるサービスが主流になる可能性も示されています。

事業承継・引継ぎ支援センター

中小企業の引継ぎを円滑にすることを目的に設立された公的機関に関する内容です。手掛けている事業内容などが取り上げられています。

①事業者同士の中小M&Aの支援

M&Aの当事者同士で話し合うと交渉を進めるのは難しいものです。センターによるM&Aに関するアドバイスや登録機関、士業家の紹介などの支援を介して成立を目指すことが推奨されています。

M&Aに関連したセミナーを開催しているセンターも多いので、業界の専門家や同じ悩みを持つ経営者とのネットワークを構築するために利用することも可能です。

②その他の支援

M&A支援のほかには、後継者人材バンクと呼ばれる事業も行っています。後継者問題を抱える中小企業と起業を目指す個人を引き合わせるシステムです。

業種や事業規模を考慮したうえで適正の高い後継者候補とのマッチングを自動で行います。事業引継ぎの可能性を拡大強化できるので、積極的な利用が推奨されています。

仲介者・FA の手数料についての考え方の整理

支援機関に仲介を委託した際に発生する手数料に関する内容です。中小M&Aガイドラインでは、手数料の種類や具体例などが紹介されています。

①手数料の種類

M&Aの仲介手数料である着手金・月額報酬・中間金・成功報酬などを取り上げています。支援機関が採用することの多いものです。最終的に支払う手数料の総額を把握するためにも、各手数料の概要を確認しておくことが重要です。

これら手数料に関する法的な定めはなく、報酬体系は支援機関独自の裁量に依存するため、注意が必要と呼びかけています。

②レーマン方式

手数料のなかで最も高額となる成功報酬の算出では、レーマン方式の採用が一般的です。レーマン方式は、基準価格に一定の料率をかけることで成功報酬を算出する方法です。多くの支援機関が採用しています。

料率は支援機関によって異なる場合があるため、注意しましょう。なお、多くの場合は下記の料率が使用されています。

  • 取引金額5億円まで・・・5%
  • 取引金額5億円を超え10億円まで・・・4%
  • 取引金額10億円を超え50億円まで・・・3%
  • 取引金額50億円を超え100億円まで・・・2%
  • 取引金額100億円を超える部分・・・1%

③具体例

レーマン方式を用いた手数料の計算例が3つ紹介されています。ここでは、計算例を1つピックアップして紹介します。
 

  • 着手金:100万円
  • 月額報酬:無料 
  • 中間金:無料 
  • 成功報酬:一般的なレーマン方式
  • 取引金額:1億円

上記の設例の場合、取引金額5億円までは料率5%が適用されるので成功報酬は500万円です。後は着手金と消費税を加えると以下のようになります。
 
  • 手数料 = (着手金100万円 + 成功報酬500万円) × 1.1倍 = 660万円

④業務内容と手数料の関係

支援機関の手数料は法的な定めがなく一律ではないため、業務内容と手数料が見合うものになるとは限りません。求めるサービスを受けられなかったり高すぎる手数料を支払ったりすると、M&Aが失敗に終わってしまう可能性も高くなります。

相談先の業務内容や手数料が相場に釣り合っているものか、事前に確認しておくようにしましょう。

問い合わせ窓口

M&Aでは、専門的な知見によるアドバイスが欠かせません。中小M&Aガイドラインでは、アドバイスを受ける際に利用が推奨されている窓口が2箇所紹介されています。

事業承継・引継ぎ支援センターでは、中小M&Aの全般的な内容に関するアドバイスを受けられます。経済産業省と各地方自治体との連携で設立されている問い合わせ窓口です。各都道府県に存在するので有力な相談先候補となるでしょう。

日本弁護士連合会は、日本全国の連合会や弁護士会で構成される集まりです。M&Aには法務の知識も欠かせないため、状況に合わせた利用を推奨しています。

第2章の内容「支援機関向けの基本事項」

中小M&Aガイドラインの第2章は、支援機関のM&Aへの取り組み方が取り上げられています。依頼者側も把握しておきたいポイントが多いので、中小M&Aガイドラインの全体に目を通しておくことが望ましいでしょう。

①支援機関としての基本姿勢

中小M&Aガイドライン第2章は、国が支援機関に求める姿勢や役割が主に取り上げられています。M&Aは支援機関の関与が必要不可欠なので、中小M&Aガイドラインに示される支援機関の在り方を押さえておくと迅速に進めやすくなるでしょう。

②依頼者(顧客)の利益の最大化

M&Aを検討する経営者は、日常の業務を行いながらM&Aを進めるため、正しい判断を下すことが難しい立場にあります。支援機関に求められていることは、M&Aの大事な局面でも依頼者が的確な判断を行えるよう支援することです。

依頼者はM&Aの知識が不足していることを前提に、依頼者の利益の最大化を中心に進めることが重要としています。

③それぞれの役割に応じた適切な支援

M&Aの支援機関は、M&A専門業者・金融機関・士業家など、多岐にわたります。それぞれ得意とする領域があるため、国としては各機関の役割に応じた支援を求めています

例えば、M&A専門業者には独自に保有するネットワークを利用したマッチング、金融機関は融資を介した資金調達や財務状況の把握などがあります。

④支援機関間の連携

M&Aは幅広い分野の知識が必要です。特定の支援機関だけでは全てを担当することが難しくなる場面もあるので、支援機関同士の連携により補い合うことが求められます。

各機関が連携を取り合うことにより、多数の案件に対して質の高い支援を実現し、M&Aの迅速化が期待できます。

M&A専門業者

中小M&Aの実現において重要なポジションにいるM&Aの専門家です。M&A専門業者には、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザーが該当します。

①M&A専門業者による中小M&A支援の特色

各分野の専門家が集結した業者であるため、専門性が高い点が特徴です。近年の急増するM&A需要にも的確に応えており、M&A市場の拡大に多大な貢献をしています。

その一方で、業務に求められる資格が定められていないので、M&A能力の乏しい業者が一定数存在することが問題視されています。

②行動指針策定の必要性

これまでの行動指針は各M&A専門業者に委ねる形をとっていました。しかし、M&A市場の拡大や業者の増加が進む現状を考慮して、一定の指針が示されるべきという考え方が広まりつつあります。

依頼者としても、行動指針が曖昧な状況では透明性や公正性がないため、なかなか安心して相談できません。一定の指針が示されていれば、M&Aの意思決定も行いやすくなります。

③各工程の具体的な行動指針

M&Aの各工程におけるM&A専門業者の行動指針が取り上げられています。いずれの工程でも、意思決定に必要な情報提供を欠かさないことが示されています。

国(経済産業省)が専門業者に求める行動指針なので、M&A専門業者の比較で判断材料として活用できるでしょう。

④仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策

M&A仲介の場合、利益相反が起こる可能性もあります。依頼者の利益の最大化に矛盾するものであり、M&A仲介の構造自体の問題が以前から指摘されていました。

M&A仲介では一定の利益相反は避けられないため、最低限の対策をとることが求められています。仲介により利益相反がおこる恐れがあることを明示するなどの措置が必要です。

⑤専任条項の留意点

M&A仲介を専門業者に委託するとアドバイザリー契約を締結します。契約内容には、ほかのM&A専門業者に相談・依頼を禁ずる条項(専任条項)が盛り込まれることがあります。

いたずらに情報を拡散しない点では合理性が認められるものでしょう。しかし、特定の専門家の知見だけでは妥当性の判断が難しいため、完全な制限は好ましくないとしています。

⑥テール条項の留意点

テール条項とは、M&A交渉の破棄などにより契約が終了した後、一定期間内のM&Aの成立で専門業者に手数料を支払わなければならない条項です。

これは、意図的に支払いを回避する行為に対する防衛策として機能するものです。しかし、長すぎるテール期間は依頼者の経営判断を損なう恐れが懸念されるため、長くても2~3年が適切とされています。

金融機関

金融機関は、資金調達とM&A支援の両面でM&Aに携わっています。取引先の銀行は依頼者の財務状況も把握しているため、有力な相談先候補と触れられています。

①金融機関による中小M&A支援の特色

本業の融資とM&A支援の両立によるいくつかの特徴があります。M&A先の選定では、候補を外部から探すのではなく、本業で培った顧客基盤から探せます

その一方で、金融機関は属人的な体質が強いデメリットがあるでしょう。ノウハウや人員体制に違いがあるため、満足な支援を受けられない可能性もゼロではありません。

②主な支援内容

主なM&A支援は、「経営状況の見える化」や「企業価値を高める磨き上げ」です。依頼者からの相談を受けるのは営業店であることがほとんどです。必要に応じて、本店との連携により的確に応えられる体制が必要とされています。

中小M&Aガイドラインでは、M&Aの実施後のポストM&A(PMI)も重要な役割とされています。経営に関するアドバイスを通じて、継続的に支援を行います。

③中小M&A支援に関する留意点

M&A支援では、金融機関の個人保証・担保を注意しなくてはなりません。M&Aの際に解除・引継ぎするのが一般的なので、M&A先の返済能力などを考慮したうえで見直しを図ることが求められます。

商工団体

地域に密着した組合・組織であり、地域の社会的・文化的な面からも多大な貢献をしています。代表例としては、商工会議所が挙げられます。

①商工団体による中小M&A支援の特色

商工団体は、M&Aに関連する知識ではなく、中小企業を対象とした制度を熟知している組合です。そのため、経営上の相談が多い特徴があります。

該当地域の中小企業の事業状況などを把握しているので、身近な相談窓口として活用されています。

②主な支援内容

M&A支援に関しては、適切な支援機関との橋渡しを行っています。依頼者からの相談を受けて必要な支援を的確に判断し、解決に必要なスキル・知識を持つ専門家を紹介しています。

ただし、橋渡しをしただけではM&Aが成功するとは限りません。経営状況が悪化する恐れもあるため、接点を持ちつつ経営面の支援を続けることも役割とされています。

③中小M&A支援に関する留意点

商工団体では、情報漏洩のリスクの高さが懸念されています。地域内のネットワークが強固である強みを持っていますが、引き合わせた当事者同士が顔見知りとなる事態も珍しくなく、意図せず情報が漏洩してしまうこともあり得ます。

情報が漏洩すると適切なM&A進行が難しくなるため、情報の取り扱いには注意しなければなりません。

士業等専門家

それぞれ得意とする分野が異なっており、求められる役割が明確化されています。M&A実務の際に不足する分野は、必要に応じて連携で補うことが期待されています。

①公認会計士

公認会計士は、企業の監査・会計を専門分野とする国家資格です。特に、監査は独占業務となっており、財務諸表の信頼性・公正性を確保するための大切な役割を担っています。

M&Aでは、バリュエーションや財務デューデリジェンスを担当します。客観性の強い専門家による適正な評価を行い、公正なM&Aの実現に努めることが期待される点です。

②税理士

税理士は、税務を専門分野とする国家資格です。中小企業では、顧問契約により確定申告や税務処理を委託することが多いです。

M&Aに関しては、税務デューデリジェンスを担当することが多く見られます。M&A対象の税務リスクを調査するものであり、信ぴょう性の高いデータを提示してM&Aの取引価格が適正であるかを判断する役割を持ちます。

③中小企業診断士

中小企業診断士は、経営課題の解決のために診断・アドバイスを行う専門家です。企業の成長戦略の策定が主な業務内容となっています。

M&Aにおける役割は、全般的な支援です。幅広い分野に関する知識を持ち、自身での解決が難しい場合は、専門家との橋渡しによりM&Aの迅速な進行に努めることが求められます。

④弁護士

弁護士は、法務を専門分野とする国家資格です。一般企業法務・契約交渉・コンプライアンスなど、法務分野を幅広く手掛けています。

M&Aでは、M&A契約書の作成や法務デューデリジェンスを担当します。法務チェックを徹底することで、M&Aの正当性・有効性を明示する役割が求められるのです。

M&Aプラットフォーマー

M&Aプラットフォーマーは、ウェブ上のサービスを利用して、M&A当事者同士をマッチングさせるシステムを運営する者のことです。運営に注力する機関もあれば、M&A仲介と並行している機関もあります。

①M&Aプラットフォーマーによる支援の特色

特色としてまず挙げられるのは、M&Aを迅速に進められることです。仲介の過程を飛ばしてコンタクトを取れるので、通常のM&Aよりも早い成立が目指しやすいメリットがあります。

利用手数料も比較的安めに設定されているものが多いため、コストを抑えられることも大きな利点です。手数料負担が厳しい事業者にとって有効な選択肢とされています。

②主な支援内容

M&Aプラットフォーマーに求められる支援は、マッチングの場の提供です。M&A当事者が気軽にコンタクトを取れる場を提供することにより、M&Aのハードルを引き下げる役割を果たしています。

中小だけでなく小規模事業者の案件も掲載しやすいことから、M&A市場の拡大に大きく貢献している事業者といえるでしょう。

③中小M&A支援に関する留意点

気軽に利用できるシステムですが、掲載案件の信頼性や実在性が懸念されています。M&Aのハードルを引き下げる目的で容易に登録できるシステムになっているため、誤った情報が記載されている可能性も考慮する必要があるでしょう。

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3. 中小M&Aガイドラインのポイント

前章では中小M&Aガイドラインに触れてきましたが、従来の事業引継ぎガイドラインにはなかった変更点がいくつか見られます。重要なポイントは以下の3点です。

【中小M&Aガイドラインのポイント】

  • 事業引継ぎガイドラインの全面改訂
  • 後継者問題に悩む中小企業向けのM&Aガイド
  • M&Aに関わる業者向けの行動指針

事業引継ぎガイドラインの全面改訂

中小M&Aガイドラインのポイント1つ目は、事業引継ぎガイドラインが全面改訂された点です。タイトルにM&Aという文言が加わることで、M&Aの重要性が強く感じられるようになっています。

事業引継ぎガイドラインは現在も閲覧可能です。M&Aではなく親族への事業引継ぎを主眼とする場合は、事業引継ぎガイドラインの情報が有効活用できます。ケース次第で、中小M&Aガイドラインと使い分けることをおすすめします。

後継者問題に悩む中小企業向けのM&Aガイド

中小M&Aガイドラインのポイント2つ目は、後継者不在の中小企業を対象にした手引きという点です。事業引継ぎガイドラインは事業承継に関する内容も含まれていましたが、中小M&AガイドラインはM&Aに特化した内容になっています。

M&Aで会社を存続させるための手順が記されています。中小M&Aガイドラインを読むだけで大まかな流れがつかめるでしょう。

譲り渡し側にとって、M&Aは最初で最後の経験になることがほとんどです。失敗に終わることがないように、中小M&Aガイドラインで情報を収集した上で取り組む必要があります。

M&Aに関わる業者向けの行動指針

中小M&Aガイドラインのポイント3つ目は、M&Aの支援機関の行動指針が明示された点です。一定の指針が示されたことで、中小M&A市場の透明性が飛躍的に向上しました。

中小M&Aガイドラインに示される行動指針は、M&Aの工程ごとに区切られて明記されています。関連知識が薄くても分かりやすいようになっているので、依頼先の専門家と相談しながら進められます。

4. 事業引継ぎガイドラインが改訂された理由

中小M&Aガイドラインは、中小企業庁が2015年3月に策定した事業引継ぎガイドラインを改訂したものです。事業引継ぎガイドラインにもM&Aに関する手引きは記載されていました。しかし、M&Aに前向きな姿勢をみせる中小企業は限定的である問題がありました。

現状のまま中小企業の廃業が続くと、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが喪失する見方が強まっています。そのため、中小企業のM&A支援が急務とされていました。

2020年に入ってからは新型コロナの影響もあり、事業引継ぎガイドラインのままでは状況の改善が難しいという判断がされました。今回の事業引継ぎガイドラインの改訂もM&A支援の一環です。

中小企業の経営者がM&Aの判断材料を得やすくするため、事業引継ぎガイドラインを改訂して、中小M&Aガイドラインの策定へと至っています。

中小企業のM&Aのご相談はM&A総合研究所へ

中小M&Aガイドラインや事業引継ぎガイドラインは、簡潔にまとめられているので読みやすいメリットがあります。しかし、基本的な内容に収まっているため、専門的な分野に関する知識は得られにくい問題もあります。

中小M&Aガイドラインや事業引継ぎガイドラインでは得にくい専門分野のサポートは、M&A仲介会社がおすすめです。M&Aをご検討の経営者様は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所は、M&A・事業承継の支援を得意とする仲介会社で、豊富な実績を有しています。さまざまな業種で支援実績のあるM&Aアドバイザーが、ご相談からクロージングまでを徹底サポートいたします。

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5. 中小M&Aガイドラインのまとめ

中小M&Aガイドラインは、M&Aの促進を目的に事業引継ぎガイドラインを改訂した手引書です。M&Aの知識が簡潔にまとめられており、中小M&Aガイドラインを読むだけで一通りの基本を押さえられるでしょう。

M&Aを検討している場合は、売却・買収のどちらであっても全体に目を通すことをおすすめします。中小M&Aガイドラインや事業引継ぎガイドラインで不明な箇所がある際は、専門家への相談で解消できます。

【中小M&Aガイドラインのまとめ】

  • 中小M&AガイドラインはM&Aの手引書
  • 中小M&AガイドラインはM&Aの意思決定の材料を獲得しやすくするために改訂

【中小M&Aガイドラインのポイント】
  1. 事業引継ぎガイドラインの全面改訂
  2. 後継者問題に悩む中小企業向けのM&Aガイド
  3. M&Aに関わる業者向けの行動指針

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