2020年11月22日更新
中小企業庁の事業承継税制って何?要件・注意点・手続きの流れを解説

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中小企業庁の事業承継税制とは、贈与税・相続税の納税を猶予または免除する制度です。事業承継税制は、法人版と個人版の2種類にわかれています。内容が異なるので注意が必要です。事業承継税制について、中小企業庁が公開している情報を理解して、賢く節税をしましょう。
目次
1. 中小企業庁の事業承継税制を使って税金の猶予・免除を受けよう
親の会社を引き継ぐなどで事業承継をする場合は、中小企業庁の事業承継制度を利用して税金の猶予・免除を受けましょう。
事業承継税制とは、中小企業の事業承継において、条件を満たせば事業承継に関する贈与税や相続税の納税を猶予・免除される制度のことです。
中小企業庁が中小企業を支援するために、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)によって事業承継税制が定められています。
事業承継における後継者の税負担はとても重たいものです。そこで、後継者の税負担を軽減させて事業承継をしてもらいやすくするために制定されました。事業承継税制は、大きく以下の2つに分けられます。
- 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度(=法人版事業承継税制)
- 個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予制度(=個人版事業承継税制)
事業承継税制を利用する最大のメリットは、事業承継で発生する税金の納税が猶予・免除されることです。
事業承継をすると、引き継いだ資産に対して多額の税金が発生します。資産は株式、設備、店舗など、現金でないのがほとんどです。しかし、納税は現金で行われなければなりません。
後継者といっても一個人なので、資金力のない後継者は多いです。多額の現金が手元にないと、事業承継もできないことになります。
税金を理由に中小企業の後継者が事業承継を拒むことを回避するため、事業承継税制が作られました。
納税の猶予・免除によって、中小企業の事業承継を支援してくれるのです。
中小企業庁の事業承継税制の早わかり表
中小企業庁の事業承継税制を種類ごとに見ると以下のようにまとめられます。
個人版 | 法人版 (一般措置) |
法人版 (特例措置) |
|
事前の事業承継計画提出 | あり 2019年4月1日~2024年3月31日まで |
なし | あり 2018年4月1日~2023年3月31日まで |
制度利用期限 | 2028年末まで | なし | 2027年末まで |
猶予・免除対象 | 特定事業用資産 | 総株式の3分の2まで | 全株式 |
納税猶予割合 | 100% | 贈与税:100% 相続税:80% |
100% |
贈与者 | 先代事業者(経営者) | 複数の株主 | |
後継者の人数 | 1人 | 1人 | 最大3人 |
事業承継後5年間の雇用維持割合 | なし | 8割 | なし |
経営承継円滑化法の認定有効期限 | 最初の認定翌日から2年間 | 最初の申告期限の翌日から5年間 |
参照:国税庁「個人版事業承継税制」
国税庁「法人版事業承継税制」
2. 大きく変わった平成30年の事業承継税制の改正内容
事業承継税制は、平成30(2018)年度の税制改正において法人版事業承継税制に特例措置が設けられました。これにより改正前の税制を一般措置、改正後の税制を特例措置と分けるようになっています。
複数の株主から後継者(最大3人)への事業承継も対象
例えば、それまでは経営者から1人の後継者に事業承継される際の税金が対象でした。しかし、改正後は複数の株主から後継者(最大3人)への事業承継も対象となったのです。
つまり、1人の父親から3人の息子へ均等に株式を引き継いだ場合でも、事業承継税制の対象です。そのため、急な経営者の死による相続で3分割された株式でもそれぞれが優遇措置を受けられます。
このような改正によって、中小企業経営の実情に合わせた多様な事業承継を支援してくれるようになりました。
10年間限定の措置
ただし特例措置は、10年間限定の措置になります。
改正から5年以内の平成35(令和5・2023)年までに事業承継のための計画を提出し、10年以内の平成40(令和9・2027)年までに事業承継の実行をしなければなりません。
そのため、手続きを含めると平成30年から5年以内に事業承継する会社が利用できる措置です。
個人版事業承継税制が創設
また、令和元(2019)年度の税制改正で個人版事業承継税制が創設されました。個人版事業承継税制は、個人事業者の後継者が事業用宅地などの特定事業用資産を贈与または相続する際に利用できる制度です。
法人版の対象資産が株式等だったことに対し、個人版では特定事業用資産が納税猶予の対象となります。従業員数など事業規模の規定があり、株式のない小規模企業が利用する制度です。
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3. 中小企業庁の「法人版」事業承継税制とは
法人版事業承継税制は、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度です。
中小企業の後継者が経営承継円滑化法の認定を受けると、制度を利用して贈与税・相続税の納税を猶予または免除されます。
法人版事業承継税制には2種類あり、制度の内容が異なるのです。
- 一般措置
- 特例措置
一般措置と特例措置には、さまざまな違いがあります。
わかりやすく違いを以下の表にまとめました。
一般措置 | 特例措置 | |
事前の事業承継計画提出 | なし | あり |
制度利用期限 | なし | 2027年末まで |
猶予・免除対象株数 | 総株式の3分の2まで | 全株式 |
納税猶予割合 | 贈与税:100% 相続税:80% |
100% |
後継者の人数 | 1人 | 最大3人 |
事業承継後5年間の雇用維持割合 | 8割 | なし |
参照:国税庁「法人版事業承継税制」
特例措置は一般措置よりも条件が緩和されています。そのため、一般措置と特例措置のどちらも選べるなら、特例措置を選ぶことをおすすめします。
それぞれの措置の内容を順番に確認していきましょう。
一般措置
一般措置とは、平成30年4月における税制改正以前の制度のことです。一般措置のポイントは、次の2つです。
- 贈与・相続時の従業員数の8割を維持する
- 猶予継続贈与ができる
贈与・相続時の従業員数の8割を維持する
事象承継税制を利用している間、従業員数を減らしすぎると経営承継円滑化法の認定が取り消しになります。贈与・相続時の従業員数の8割を維持しなければならないのです。
たとえば、従業員が2人の場合、計算結果は1.6人となります。端数は切り捨てるため、従業員が1人いれば8割を維持していることとなるのです。
猶予継続贈与ができる
また、猶予継続贈与もできます。
猶予継続贈与を利用すると、事業承継税制を利用して贈与税や相続税の納税を猶予される後継者が、猶予期間中にさらに次の後継者に事業承継した場合、後継者の税額は免除となり、次の後継者は残りの猶予期間を継続できるのです。
条件や免除の内容を見ていきましょう。
一般措置における贈与税・相続税猶予の条件
一般措置では、後継者の贈与税は100%、相続税は80%猶予されます。ただし、贈与税が猶予されるのは株式等の総数の3分の2が上限です。
事業承継後、5年間は次の6つの要件を満たす必要があります。
- 後継者が会社の代表者であること
- 後継者が同族内で筆頭株主であること
- 雇⽤の8割以上を5年間平均で維持する
- 猶予対象となった株式を継続保有していること
- 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
- 資産保有型会社等に該当しないこと
資産保有型会社とは、⾃ら使⽤していない不動産等が70%以上ある会社やこれらの特定の資産の運⽤収⼊が75%以上の会社のことです。
事業承継後、5年経過すると猶予対象となった株式を継続保有していて、資産保有型会社等に該当しなければ、他の条件は満たさなくても引き続き納税を猶予されます。
一般措置における贈与税・相続税の免除
一般措置で免除される贈与税・相続税を表にまとめました。確認しましょう。
免除されるケース | 内容 |
先代経営者が死亡したとき | 後継者の贈与税は免除される。 ただし、贈与税に代わって相続税が発生。 都道府県の確認(切替確認)を受けることで、相続税の納税が猶予される。 |
猶予継続贈与したとき | 後継者の納税は免除され、次の後継者の納税が猶予される。 5年以内の猶予継続贈与の場合、「やむをえない理由」が生じた場合のみ後継者の納税が免除される。 |
後継者自身が死亡したとき | 贈与税・相続税の納税は免除される。 |
このような免除事由の場合、経営承継円滑化法の認定取り消しも同時に行われます。他にも会社の倒産した場合や同族関係者以外の者に株式等を全部譲渡した場合など、納税が免除されるのです。
しかし、詳しい要件は公開されていないため問い合わせをしましょう。事業承継税制に関する問い合わせは、中小企業庁または都道府県の担当課が受け付けています。また、中小企業庁のホームページでも事業承継税制の内容確認が可能です。
特例措置
法人版事業承継税制の特例措置は、一般措置よりも納税猶予割合を引き上げるなど、さらに手厚く支援してくれます。ただし、平成30(2018)年からの10年間限定の措置です。
特例措置では、一般措置で必要だった8割の雇用維持を満たさなくても、納税猶予を継続できます。また、一般措置では複数の株主から1人の後継者にしか事業承継できませんが、特例措置は最大3人後継者がいても制度を受けられるのです。
その他の特例措置と一般措置の違いについては、本記事の次の章『3-3.一般措置と特例措置の違い』で詳しく説明します。
特例措置における贈与税・相続税猶予の条件
特例措置では、後継者の贈与税・相続税は100%猶予されます。株式等の総数の全てが猶予対象です。
事業承継後、5年間は次の5つの要件を満たす必要があります。
- 後継者が会社の代表者であること
- 後継者が同族内で筆頭株主であること
- 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
- 猶予対象となった株式を継続保有していること
- 資産保有型会社等に該当しないこと
一般措置の条件である「従業員数8割の雇用維持」は含まれません。ただし、8割を下回った理由を都道府県に報告する必要があります。
特例措置における贈与税・相続税の免除
特例措置における贈与税・相続税の免除も一般措置とそこまで変わりません。
以下にまとめました。
免除されるケース | 内容 |
先代経営者が死亡したとき | 後継者の贈与税は免除される。 ただし、贈与税に代わって相続税が発生する。 都道府県の確認(切替確認)を受けることで、相続税の納税が猶予される。 |
猶予継続贈与したとき | 後継者の納税は免除され、次の後継者の納税が猶予される。 5年以内の猶予継続贈与の場合、「やむをえない理由」が生じた場合のみ後継者の納税が免除される。 |
後継者自身が死亡したとき | 贈与税・相続税の納税は免除される。 |
一般措置と特例措置の免除事由は同じですが、免除事由が全て公開されているわけではありません。
実際に免除になるかは、必ず中小企業庁や都道府県に確認しましょう。中小企業庁のホームページでも特例措置の内容確認が可能です。
4. 中小企業庁の「個人版」事業承継税制とは
個人版事業承継税制は、個人の事業用資産に対する贈与税や相続税の納税猶予制度です。
個人事業者の後継者が経営承継円滑化法の認定を受けることで、制度を利用して贈与税・相続税の納税を猶予・免除といった優遇措置を受けられます。
個人版事業承継税制のポイントは、「特定事業用資産」です。特定事業用資産とは、先代事業者が使用していた宅地等、建物、減価償却資産の事業用資産のことをいいます。
詳しい内容は、以下の表のとおりです。
特定事業用資産 | 内容 |
宅地等 | 事業用に使われていた土地や⼟地の上に存する権利(借地権、賃借権など) |
建物 | 事業用に使われていた建物 |
減価償却資産 | 固定資産税が課税される償却資産(構築物、機械装置、船舶など)、営業用の自動車など |
参照:国税庁「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の 納税猶予・免除(個人版事業承継税制)のあらまし」
これら3つの特定事業用資産が、納税猶予の対象となります。特定事業用資産であっても、あらかじめ申請しなければ納税猶予の対象とならないのです。
贈与税・相続税の納税猶予制度
法人版と違って個人版事業承継税制の場合、後継者の贈与税・相続税は全て猶予されます。維持すべき条件はありません。
ただし、収入が0になったり、資産保有型事業等に該当したりするなどの条件に当てはまると経営承継円滑化法の認定が取り消されます。同時に納税猶予されなくなるので注意しましょう。
また、次のような場合は、免除または減免の申請が可能です。
- 先代事業者(経営者)が死亡した場合(贈与税は免除され、相続税に切り替わります。)
- 後継者自身が死亡した場合
- 後継者が重度の障害・疾病など事業継続できない状態になった場合
- 猶予継続贈与した場合(事業承継の5年後以降)
- 後継者が破産した場合
個人版事業承継税制の免除事由についても、全ての事由が公開されていません。免除になるか必ず中小企業庁や都道府県に確認しましょう。
5. 事業承継税制を活用するための3つの条件
せっかく「事業承継税制を使おう」と考えていても、条件を満たしていなければ猶予や免除といった優遇措置を受けられません。
ここで紹介する3つの条件を、それぞれ満たす必要があります。
- 会社
- 後継者
- 現経営者
法人版事業承継税制(以下、法人版)と個人版事業承継税制(以下、個人版)でも条件が異なります。
それぞれの条件について事前に確認しておきましょう。
①会社
事業承継税制を使える会社は以下に当てはまるところだけです。
- 対象の中小企業者である
- 総収入金額が0を超えている
- 非上場企業である
- 風俗営業会社、資産管理会社ではない
中小企業者に当てはまるのはどのような企業かを以下の表にまとめました。
法人版に当てはまるなら資本金と従業員数を、個人版に当てはまるなら従業員数を見て判断してみてください。
業種目 | 資本金 | 従業員数 |
製造業 | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
参照:国税庁「平成30年度改正関係(法人版事業承継税制抜粋)」
会社の条件だけでいうと、例えば製造業で資本金が3億円で従業員数が100人であれば法人版に当てはまるので使えます。
法人版・個人版の両方に当てはまる場合は、承継するものが株式なら法人版、特定事業用資産なら個人版を選びましょう。
ただし、医療法人・社会福祉法人・外国会社・士業法人は事業承継税制の対象となる中小企業に当てはまりません。
②後継者
後継者は、20歳以上で3年以上事業に従事していなければなりません。事業承継税制を受けるためには、まず後継者が自社で働いているのが条件です。
その他の条件は、法人版(一般措置・特別措置)・個人版のそれぞれで異なります。順番に見ていきましょう。
法人版における後継者の条件
- 20歳以上で役員就任から3年以上たっている
- 取得した株式などを継続して所持している(承継後)
- 後継者と同族関係者(親族等)で発⾏済議決権株式総数の50%超の株式を所持し、同族内で筆頭株主となる(承継後)
- 会社の代表者である
上記に加えて、特例措置の場合は「事前に提出する計画に記載された後継者であること」と「一般措置の適用を受けていないこと」が求められます。
個人版における後継者の条件
- 事業承継計画の認可を受けた後継者である
- 20歳以上で、3年以上事業に従事していた(※2022年以降は18歳以上に改正予定)
- 開業の届出書を正しく出している(円滑化法申請時まで)
- ⻘⾊申告の承認を受けている、または受ける⾒込みである(円滑化法申請時まで)
- 特定事業⽤資産の全てを取得している
- 事業の取引を記録し、帳簿書類の備え付けを⾏っている
- 特定事業⽤資産のうち納税猶予の適⽤を受けようとする資産の全部を申請基準⽇まで引き続き有し、⾃⼰の事業に使用している、または使用する⾒込みである
このように、どの事業承継税制の措置を受けるのかによって条件が異なるので注意しましょう。
③現経営者
経営者(贈与者)にも条件があります。
まずは、法人版の先代経営者の主な条件を確認しましょう。
- 先代経営者が総議決権数の過半数を保有しており、筆頭株主であった(制度の適⽤を受ける後継者を除く)
- 会社の代表者であった
- 贈与時に代表者でない
- 後継者に一定数以上の株主等を贈与する
個人版の先代経営者の主な条件は、以下のとおりです。
- 贈与した特定事業⽤資産に関する事業を廃⽌した旨の届出を出している(円滑化法申請時まで)
- 贈与年の前々年から贈与年において、事業所得に関する⻘⾊申告書を提出していた者である
事業承継税制を使うならこれらに当てはまらなくてはなりません。
また、法人版と個人版で条件が異なるので注意が必要です。中小企業庁のホームページから条件をしっかり確認しましょう。
6. 中小企業庁の事業承継税制を活用するための申請の流れ
中小企業庁の事業承継税制の適用を受けるためには、認定の申請をしなければなりません。
準備から税務署への申告までの5つの流れがこちらです。
- 事業承継計画の提出
- 認定支援機関の確認申請
- 贈与・相続の実行
- 認定の申請
- 税務署への申告
①と②は、法人版(特別措置)と個人版の事業承継税制の適用を受けるときにのみ必要です。
法人版(一般措置)を活用するときには、③「贈与・相続の実行」からを参考にしてください。それでは順番に見ていきましょう。
①事業承継計画の提出
法人版(特別措置)と個人版の事業承継税制の適用を受けるときには、事業承継計画の策定・提出が必要となります。
提出するのは、特例措置の場合「特例承継計画」、個人版の場合「個人事業承継計画」です。一般措置においては不要となります。
事業承継計画には、会社や後継者、事業承継した後の経営計画を記載しましょう。
また、2018年4月1日〜2023年3月31日までに提出しなければなりません。ただし、個人事業承継計画は、2019年4月1日〜2024年3月31日までに出しましょう。
事業承継計画は、認定申請と同時に提出しても大丈夫でが、認定支援機関の確認書を添付する必要があります。
②認定支援機関の確認申請
事業承継計画と一緒に確認書を添付するために、認定支援機関の確認の申請を行いましょう。
確認書とは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)が計画の内容を確認した上で指導・助言を受けたことを証明する書類です。
認定支援機関とは、国によって定められた中小企業の経営相談を行える専門家・専門機関のことをいいます。具体的に商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが認定支援機関です。
すでに3万件以上が認定支援機関として認められています。
都道府県ごとに多くの認定支援機関があります。中小企業庁「経営革新等支援機関認定一覧について」で最寄りの認定支援機関をしてみましょう。
法人版(特別措置)・個人版の事業承継税制を活用したいときには、ここまでの準備を行った上、事業承継を実行しましょう。
準備が整っていなければ、優遇措置を受けられないので、注意してください。
③贈与・相続の実行
準備が整ったら、贈与または相続を行って事業承継を実行しましょう。
特例措置の場合、2018年1月1日以降の贈与・相続が対象です。個人版の場合、2019年1月1日以降の贈与・相続が対象となります。期限はそれぞれの制度が終わる年の12月31日までです。
ただし、事業承継計画の提出期限は各制度の創設から5年以内になります。そのため計画提出期限前に贈与・相続を行えなくても問題ありません。
実際の贈与・相続が先の場合、事業承継計画は提出しておき、その後計画に沿って制度適用期限内で贈与・相続を実施しましょう。
④認定の申請
事業承継を行った後は、認定の申請をしていきます。法人版(一般措置)であれば、認定申請手続きから行いましょう。
事業承継税制の適応を受けるためには経営承継円滑化法の認定申請が必要となります。贈与税なら贈与年の10月15日〜翌年1月15日までに申請をしなければなりません。
相続税の場合、相続発生後5カ月を経過する日の翌日〜8カ月を経過する日までに申請してください。
申請書は、利用する制度で様式が異なります。最新の様式を中小企業庁で確認した上でダウンロードしましょう。
法人版の場合、申請書以外に以下のような書類も必要です。贈与か相続により、適宜必要な書類を用意しましょう。
- 定款の写し
- 株主名簿
- 登記事項証明書
- 贈与契約書
- 贈与税額の見込み額を記載している書類
- 遺言書または遺産分割協議書の写し
- 相続区税額の子見込み額を記載している書類
- 従業員数証明書
- 決算書類
- 各誓約書
- 戸籍謄本
個人版では、2つの書類を出します。
- 先代経営者の前年の青色申告書
- 貸借対照表および損益決算書その他の明細書の写し
法人版(特例措置)と個人版では、事業承継計画を提出していなければ事業承継計画と確認書を同時に提出してください。
⑤税務署への申告
申請が通れば、認定書を取得できます。認定書の写しとともに、贈与税または相続税の申告書を税務署に提出しましょう。
贈与の場合は贈与年の翌年3月15日まで、相続の場合は相続の開始があったことを知った日の翌日〜10カ月以内に申告してください。
このとき、納税猶予税額・利子税に対する担保を用意しなければなりません。申告時に税務署に提供するようにしましょう。
事業承継税制が認定されると、納税猶予期間中は報告書または届出を提出してください。定期的に出す必要のある報告書・届出は3つです。
- 年次報告書
- 継続届出書
- 実績報告書
3つのほかにも、経営状況や申請内容に変更があった場合は、随時都道府県に報告しなければなりません。各報告書については、中小企業庁のホームページからダウンロードできます。
年次報告書、継続届出書、実績報告書をそれぞれどこに出すのか、どの制度で必要となるのか確かめましょう。
7. 事業承継税制の注意点
事業承継税制の認定を受けた後も、注意しなければならない点があります。
事業承継税制を活用するときの注意点は以下の3つです。
- 認定後に書類の提出をしなければならない
- 5年間は事業を継続させなければならない
- 認定取消によって猶予額と利子額を納付しなければならない
3つの注意点について詳しく確認していきましょう。
①認定後に書類の提出をしなければならない
事業承継税制の認定を受けた後も、書類を提出する必要があるので注意しましょう。
納税猶予期間中には、以下の3つの書類の提出が必要です。
- 年次報告書
- 継続届出書
- 実績報告書
これらを提出し、事業継続がなされているのか、申請条件を継続して守れているのかをチェックされます。
これらの書類は中小企業庁のホームページで確認、ダウンロードできるので、最新のものを確認しましょう。
②5年間は事業を継続させなければならない
事業承継税制を利用するなら、事業承継後5年間事業を継続させる必要があります。事業承継後5年以内に会社が倒産すると、認定が取り消されるので注意しましょう。
そもそも、事業承継税制を利用してもいずれ事業承継で発生した相続税や贈与税は納めなければなりません。そのため、事業承継時に経営状況が悪いのであれば、事業承継をすべきかを改めて検討すべきです。
一方、経営状況が悪いからといって現経営者が引退するのを機に倒産させてしまうのはもったいないです。もし、後継者に経済的余裕がないのであれば、M&Aを検討するのをおすすめします。
M&Aであれば、資金力に余裕のある経営者が事業を引き継いでくれるのです。
③認定取消によって猶予額と利子額を納付しなければならない
継続要件を満たせなかったり、総収入額が0になったりするなど認定取り消し事由に該当すると、猶予税額と利子を即座に納付する義務が発生します。
認定後5年以内に後継者の死亡などの免除事由以外で認定を取り消されると、猶予されていた猶予税額の全額と利子税を納付する必要があります。認定されて5年経過後は、場合によっては全額でなく一部納税となるのです。
たとえば、納税猶予対象の株式を認定5年以内に譲渡すると猶予税額を全額納付する必要があります。しかし、5年経過後なら一部納付となるのです。
認定取り消しとなると、納税のための資金を用意できない可能性があります。資金繰りで困らないよう、継続要件については維持するようにしましょう。
8. 事業承継税制を使いたいなら専門家に相談すべき
事業承継税制を利用するなら、必ず専門家に相談しましょう。
事業承継税制の内容は複雑で、満たすべき要件も多数あります。個人で要件に当てはまっているか確認するのは困難です。
税理士や会計士などの専門家に相談すれば、そもそも事業承継によってどれくらいの税金が発生するのかを事前に知れます。会社の状況に合わせて節税対策も任せられるでしょう。
早めに相談しておくことで、納める税金の額が少なくなる可能性が高いです。事業承継をするのが決まったら、必ず専門家に相談しましょう。
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9. まとめ
事業承継税制とは、中小企業庁が実施する贈与税・相続税の納税を猶予または免除する制度です。法人版事業承継税制と個人版事業承継税制があります。
法人版事業承継税制は、さらに一般措置と特例措置の2つに分けられます。法人版事業承継税制を利用するなら、特例措置を選択する方が継続要件も緩く使いやすいです。
ただし、特例措置と個人版事業承継税制はそれぞれ創設から10年間限定の制度のため、利用するなら早めに検討しましょう。事業承継税制利用の検討は、専門家に手伝ってもらうとスムーズに行えます。
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