中小企業庁の事業承継税制って何?要件・注意点・手続きの流れを解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

中小企業庁の事業承継税制とは、贈与税・相続税の納税を猶予または免除する制度です。事業承継税制は、法人版と個人版の2種類に分かれています。内容が異なるので注意が必要です。事業承継税制について、中小企業庁が公開している情報を理解して、賢く節税をしましょう。

目次

  1. 中小企業庁の事業承継税制とは
  2. 事業承継税制の平成30年度改正について
  3. 法人版事業承継税制
  4. 個人版事業承継税制
  5. 事業承継税制を利用できる会社・人の条件
  6. 事業承継税制を申請する流れ
  7. 事業承継税制の認定を受けた後の提出書類
  8. 事業承継税制の注意点
  9. 事業承継税制を利用するなら専門家に相談しよう
  10. まとめ
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1. 中小企業庁の事業承継税制とは

中小企業庁の事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から事業承継した場合に、条件を満たせば事業承継に関する贈与税・相続税の納税を猶予または免除される制度のことです。

中小企業庁が実施する中小企業経営承継円滑化法(以下、経営承継円滑化法)という法律があります。事業承継税制は、経営承継円滑化法の中の制度の1つです。中小企業を継ぐ後継者の税負担を軽減させて、事業承継をしてもらう狙いから制定されました。

事業承継税制は、大きく以下の2つに分けられます。
 

  1. 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度(=法人版事業承継税制)
  2. 個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予制度(=個人版事業承継税制)

事業承継税制を利用するメリットは、税金の納税が猶予・免除されることです。

事業承継をすると、引き継いだ資産に税金がかかります。資産と言っても株式、設備、店舗など、現金でないことがほとんどです。しかし、納税は現金で行われなければなりません。

すると多額の現金が手元にないと、事業承継もできないこととなります。税金を理由に中小企業の後継者が事業承継を拒むことを回避するため、事業承継税制が作られました。

つまり事業承継税制は納税を猶予・免除することで、中小企業の事業承継を支援する制度です。

2. 事業承継税制の平成30年度改正について

事業承継税制の平成30年度改正について

事業承継税制は、平成30年度(2018年度)の税制改正において法人版事業承継税制に特例措置が設けられました。これにより現在の法人版事業承継税制は、一般措置と特例措置に分けられます。

たとえば、それまでは先代経営者から1人の後継者に事業承継される際の税金が対象でした。しかし、改正後は複数の株主から後継者(最大3人)への事業承継も対象となったのです。

このような改正によって、中小企業経営の実情に合わせた多様な事業承継を支援してくれるようになりました。

ただし特例措置は、10年間限定の措置になります。改正から5年以内の平成35年(令和5年・2023年)までに事業承継に関する計画を提出し、10年以内の平成40年(令和9年・2027年)までに事業承継を実行しなければなりません。

そのため、手続きを含めると平成30年から5年以内に事業承継することを決められる会社が利用できる措置です。

また、令和元年度(2019年度)の税制改正で個人版事業承継税制が創設されました。個人版事業承継税制は、個人事業者の後継者が事業用宅地などの特定事業用資産を贈与または相続する際に利用できる制度です。

法人版の対象資産が株式等だったことに対し、個人版では特定事業用資産が納税猶予の対象となります。従業員数など事業規模の規定があり、株式のない小規模企業が利用する制度です。

事業承継税制の利用をご検討中なら、事業承継に詳しいM&A総合研究所にご相談ください。税金や制度についての疑問にお答えします。

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3. 法人版事業承継税制

法人版事業承継税制

法人版事業承継税制は、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度です。中小企業の後継者が経営承継円滑化法の認定を受けると、制度を利用して贈与税・相続税の納税を猶予または免除されます。

法人版事業承継税制には2種類あり、制度の内容が異なるのです。
 

  1. 一般措置
  2. 特例措置

それぞれ順番に詳しく説明します。

3-1.一般措置

法人版事業承継税制における一般措置のポイントは、次の2つです。
 

  1. 贈与・相続時の従業員数の8割を維持しなければならない
  2. 猶予継続贈与ができる

【従業員数の8割維持について】
事象承継税制を利用している間、従業員数を減らしすぎると経営承継円滑化法の認定が取り消しになります。贈与・相続時の従業員数の8割を維持しなければならないのです。
 

従業員数の判定は、「従業員数×80%」で計算します。ただし、計算時の小数点以下の端数は切り捨てです。たとえば、従業員が2人の場合、計算結果は1.6人となります。端数は切り捨てるため、従業員が1人いれば8割を維持していることとなるのです。

【猶予継続贈与について】
また、猶予継続贈与もできます。猶予継続贈与を利用すると、事業承継税制を利用して贈与税・相続税の納税が猶予されている後継者が、猶予期間中にさらに次の後継者に事業承継した場合、後継者の税額は免除となり、次の後継者は残りの猶予期間を継続できるのです。

①一般措置における贈与税・相続税猶予の条件

一般措置では、後継者の贈与税は100%、相続税は80%猶予されます。ただし、贈与税が猶予されるのは株式等の総数の3分の2が上限です。

事業承継後、5年間は次の6つの要件を満たさなければなりません。
 

  1. 後継者が会社の代表者であること
  2. 雇⽤の8割以上を5年間平均で維持すること
  3. 後継者が同族内で筆頭株主であること
  4. 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
  5. 猶予対象となった株式を継続保有していること
  6. 資産保有型会社等に該当しないこと

資産保有型会社とは、⾃ら使⽤していない不動産等が70%以上ある会社やこれらの特定の資産の 運⽤収⼊が75%以上の会社のことです。

事業承継後、5年経過すると猶予対象となった株式を継続保有していて、資産保有型会社等に該当しなければ、他の条件は満たさなくても引き続き納税を猶予されます。

②一般措置における贈与税・相続税の免除

一般措置における贈与税・相続税が免除されるのは、次のような場合です。
 

免除される場合 内容
先代経営者が死亡した場合 後継者の贈与税は免除されます。
ただし、贈与税に代わって相続税が発生するのです。都道府県の確認(切替確認)を受けることで、相続税の納税が猶予されます。
猶予継続贈与した場合 後継者の納税は免除され、次の後継者の納税が猶予されます。
5年以内の猶予継続贈与の場合、「やむをえない理由」が生じた場合のみ後継者の納税が免除されるため注意が必要です。
後継者自身が死亡した場合 贈与税・相続税の納税は免除されます。

このような免除事由の場合、経営承継円滑化法の認定取り消しも同時に行われます。他にも会社の倒産した場合や同族関係者以外の者に株式等を全部譲渡した場合なども、納税が免除されるのです。

しかし、詳しい要件は公開されていないため問い合わせをしましょう。事業承継税制に関する問い合わせは、中小企業庁または都道府県の担当課が受け付けています。また、中小企業庁のホームページでも事業承継税制の内容確認が可能です。

3-2.特例措置

法人版事業承継税制の特例措置は、一般措置よりも納税猶予割合を引き上げるなど、さらに手厚く支援してくれます。ただし、平成30年(2018年)からの10年間限定の措置です。

特例措置では、一般措置で必要だった8割の雇用維持を満たさなくても、納税猶予を継続できます。また、一般措置では複数の株主から1人の後継者にしか事業承継できませんが、特例措置は最大3人後継者がいても制度を受けられるのです。

その他の特例措置と一般措置の違いについては、本記事の次の章『3-3.一般措置と特例措置の違い』で詳しく説明します。

①特例措置における贈与税・相続税猶予の条件

特例措置では、後継者の贈与税・相続税は100%猶予されます。株式等の総数の全てが猶予対象です。

事業承継後、5年間は次の5つの要件を満たす必要があります。
 

  • 後継者が会社の代表者であること
  • 後継者が同族内で筆頭株主であること
  • 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
  • 猶予対象となった株式を継続保有していること
  • 資産保有型会社等に該当しないこと

一般措置の条件である「従業員数8割の雇用維持」は含まれません。ただし、8割を下回った理由を都道府県に報告する必要があります。

②特例措置における贈与税・相続税の免除

特例措置における贈与税・相続税の免除は、一般措置と同様に先代経営者の死亡、猶予継続贈与、後継者の死亡が主な理由となります。
 

免除される場合 内容
先代経営者が死亡した場合 後継者の贈与税は免除されます。
ただし、贈与税に代わって相続税が発生するのです。都道府県の確認(切替確認)を受けることで、相続税の納税が猶予されます。
猶予継続贈与した場合 後継者の納税は免除され、次の後継者の納税が猶予されます。
5年以内の猶予継続贈与の場合、「やむをえない理由」が生じた場合のみ後継者の納税が免除されるため注意が必要です。
後継者自身が死亡した場合 贈与税・相続税の納税は免除されます。

一般措置と特例措置の免除事由は同じですが、免除事由が全て公開されているわけではありません。実際に免除になるかは、必ず中小企業庁や都道府県に確認しましょう。また、中小企業庁のホームページでも特例措置の内容確認が可能です。

3-3.一般措置と特例措置の違い

一般措置と特例措置には、様々な違いがあります。たとえば、猶予・免除対象株数が一般措置の場合3分の2までなことに対し、特例措置では全株式が対象になることです。

他の違いについては、以下の表をご覧ください。
 

  一般措置 特例措置
事前の事業承継計画提出 なし あり
制度利用期限 なし 2027年末まで
猶予・免除対象株数 総株式の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 贈与税:100%
相続税:80%
100%
後継者の人数 1人 最大3人
事業承継後5年間の雇用維持割合 8割 なし

特例措置は一般措置よりも条件が緩和されているため、一般措置と特例措置のどちらも選べるなら、特例措置を選びましょう。

4. 個人版事業承継税制

個人版事業承継税制

個人版事業承継税制は、個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予制度です。個人事業者の後継者が経営承継円滑化法の認定を受けると、制度を利用して贈与税・相続税の納税を猶予または免除されます。

個人版事業承継税制のポイントは、「特定事業用資産」です。特定事業用資産とは、先代事業者が使用していた宅地等、建物、減価償却資産の事業用資産のことを言います。詳しい内容は、以下の表の通りです。
 

特定事業用資産 内容
宅地等 事業用に使われていた土地、⼟地の上に存する権利(借地権、賃借権など)のこと。
建物 事業用に使われていた建物のこと。
減価償却資産 固定資産税が課税される償却資産(構築物、機械装置、船舶など)、営業用の自動車などのこと。

これら3つの特定事業用資産が、納税猶予可能となります。特定事業用資産であっても、申請しなければ納税猶予の対象になりません。

納税猶予の適用を受ける特定事業用資産のうち、相続税の納税猶予を受ける対象を「特例事業用資産」、贈与税の納税猶予を受ける対象を「特例受贈事業用資産」と呼びます。(ただし、本記事では特定事業用資産に統一)

4-1.贈与税・相続税の納税猶予制度

個人版事業承継税制の場合、後継者の贈与税・相続税は100%猶予されます。維持すべき条件はありません。

しかし、収入が0になったり、資産保有型事業等に該当したりするなど一定の条件に当てはまると経営承継円滑化法の認定が取り消され、納税猶予されなくなります。

また、次のような場合は、免除または減免の申請が可能です。
 

  • 先代事業者(経営者)が死亡した場合(贈与税は免除され、相続税に切り替わります。)
  • 後継者自身が死亡した場合
  • 後継者が重度の障害・疾病など事業継続できない状態になった場合
  • 猶予継続贈与した場合(事業承継の5年後以降)
  • 後継者が破産した場合

個人版事業承継税制の免除事由についても、全ての事由が公開されていないため、免除になるか必ず中小企業庁や都道府県に確認しましょう。

4-2.個人版と法人版の違い

個人版事業承継税制と法人版事業承継税制の違いは、以下の通りです。
 

  個人版 法人版
(一般措置)
法人版
(特例措置)
事前の事業承継計画提出 あり
2019年4月1日~2024年3月31日まで
なし あり
2018年4月1日~2023年3月31日まで
制度利用期限 2028年末まで なし 2027年末まで
猶予・免除対象 特定事業用資産 総株式の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 100% 贈与税:100%
相続税:80%
100%
贈与者 先代事業者(経営者) 複数の株主
後継者の人数 1人 1人 最大3人
事業承継後5年間の雇用維持割合 なし 8割 なし
経営承継円滑化法の認定有効期限 最初の認定翌日から2年間 最初の申告期限の翌日から5年間

このように制度によって、条件が異なります。より詳細な条件については、中小企業庁のホームページから確認しましょう。都道府県でも事業承継税制について、相談窓口を設けています。

5. 事業承継税制を利用できる会社・人の条件

事業承継税制を利用できる会社・人の条件

事業承継税制を利用できる会社や人の条件について、詳しく確認しましょう。
 

  1. 会社の条件
  2. 後継者の条件
  3. 先代経営者(贈与者)の条件

法人版事業承継税制(以下、法人版)と個人版事業承継税制(以下、個人版)でも条件が異なるのです。それぞれの条件について順番に説明します。

5-1.会社の条件

事業承継税制を利用できる会社の主な条件は、次の4つです。
 

  1. 中小企業であること
  2. 総収入金額が0を超えていること
  3. 上場企業、風俗営業会社に該当しないこと
  4. 資産保有型会社等ではないこと

中小企業であることについては、法人版と個人版で対象が異なります。

法人版の場合の中小企業は、以下の表で資本金または従業員数が該当する会社です。個人版の場合、資本金は関係なく従業員数だけで判断します。
 

業種目 資本金 従業員数
製造業 3億円以下 300人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

会社の条件だけで言うと、たとえば製造業で資本金が4億円で従業員数が200人の場合、法人版事業承継税制を利用できます。サービス業で従業員数が50人なら、法人版でも個人版でも利用可能です。

会社の条件がどちらでも当てはまる場合は、承継する対象が株式なら法人版、特定事業用資産なら個人版を選びましょう。

ただし、医療法人、社会福祉法人、外国会社、士業法人は事業承継税制の対象となる中小企業に該当しません。

5-2.後継者の条件

後継者の条件は、それぞれの制度で異なります。法人版の場合、主な条件は次の通りです。
 

  • 20歳以上で役員就任から3年以上経過していること
  • 事業承継後、後継者と同族関係者(親族等)で発⾏済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、同族内で筆頭株主となること
  • 事業承継後、取得した株式等を継続して保有していること
  • 会社の代表者であること

上記に加えて、特例措置の場合は「事前に提出する計画に記載された後継者であること」と「一般措置の適用を受けていないこと」が求められます。

個人版の場合の条件は、次の通りです。
 

  • 事前計画で確認を受けた後継者であること
  • 20歳以上で、3年以上事業に従事していたこと(※2022年以降は18歳以上となる)
  • 経営承継円滑化法の認定申請時までに、開業の届出書を提出していること
  • 経営承継円滑化法の認定申請時までに、⻘⾊申告の承認を受けていること、または受ける⾒込みであること
  • 特定事業⽤資産の全てを取得していること
  • 事業の取引を記録し、帳簿書類の備え付けを⾏っていること
  • 特定事業⽤資産のうち納税猶予の適⽤を受けようとする資産の全部を申請基準⽇まで引き続き有し、⾃⼰の事業に使用している、または使用する⾒込みであること

法人版と個人版のどちらも、後継者は20歳以上で3年以上事業に従事していなければなりません。事業承継税制を受けるためには、まず後継者が自社で働いている必要があるのです。

5-3.先代経営者(贈与者)の条件

先代経営者(贈与者)にも条件があります。まずは、法人版の先代経営者の主な条件を確認しましょう。
 

  • 先代経営者が総議決権数の過半数を保有しており、筆頭株主であったこと(制度の適⽤を受ける後継者を除く)
  • 会社の代表者であったこと
  • 贈与時に代表者を退任していること
  • 後継者に一定数以上の株主等を贈与すること

一方、個人版の先代経営者の主な条件は、以下の通りです。
 

  • 贈与年の前々年から贈与年において、事業所得に関する⻘⾊申告書を提出していた者であること
  • 経営承継円滑化法の認定申請時までに、贈与した特定事業⽤資産に関する事業を廃⽌した旨の届出を提出していること

事業承継税制を利用する場合は、先代経営者と後継者で条件に当てはまるか一緒に確認しましょう。

このように法人版と個人版で条件が異なります。中小企業庁のホームページから条件をしっかり確認しましょう。

6. 事業承継税制を申請する流れ

事業承継税制を申請する流れ

事業承継税制を利用したい場合の申請する流れについて、事前準備と申請に分けて説明します。
 

  1. 法人版(特例措置)・個人版の事業承継税制の申請前にすべきこと
  2. 事業承継税制を申請する共通の流れ

順番に確認しましょう。

6-1.法人版(特例措置)・個人版の事業承継税制の申請前にすべきこと

法人版の特例措置と個人版の事業承継税制の場合、申請前にすべきことがあります。法人版の一般措置の場合は必要ありません。

申請前の手続きは、次の3つです。
 

  1. 承継計画の提出
  2. 認定支援機関の確認を申請
  3. 贈与または相続

それぞれ詳しく説明します。

①承継計画の提出

まず、事業承継計画を策定し、都道府県に提出します。提出する事業承継計画は、特例措置の場合「特例承継計画」、個人版の場合「個人事業承継計画」です。

事前計画には、会社や後継者、事業承継した後の経営計画を記載します。

特例承継計画は、2018年4月1日から2023年3月31日までに提出しなければなりません。個人事業承継計画は、2019年4月1日から2024年3月31日までに提出しましょう。事前計画は、認定申請と同時提出も可能です。

また、事前計画提出には認定支援機関の確認書を添付する必要があります。

②認定支援機関の確認を申請

事前計画に添付する確認書とは、認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)が計画を確認して指導および助言を受けたことを示す書類です。

認定支援機関とは、国が認定した中小企業が安心して経営相談を行える専門家のことを言います。具体的には、商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士などが認定支援機関です。

すでに、3万件以上が認定支援機関として認定されています。各都道府県に複数認定支援機関があるため、中小企業庁のホームページにある「経営革新等支援機関認定一覧について」から近くの認定支援機関を探しましょう。

③贈与または相続

実際に贈与または相続を行います。

特例措置の場合、2018年1月1日以降の贈与・相続が対象です。個人版の場合、2019年1月1日以降の贈与・相続が対象となります。期限はそれぞれの制度が終わる年の12月31日までです。

ただし、事前計画の提出期限は各制度の創設から5年以内になります。そのため計画提出期限前に贈与・相続を行えなくても問題ありません。

実際の贈与・相続が先の場合、事前計画は提出しておいて、その後計画に沿って制度適用期限内で贈与・相続を実施しましょう。

6-2.事業承継税制を申請する共通の流れ

ここからは、事業承継税制を申請する共通の流れを解説します。申請手順は、2つです。特別措置・個人版も同様の内容となります。
 

  1. 認定申請
  2. 税務署への申告

それぞれ詳しく確認しましょう。

流れ1.認定申請

事業承継税制を利用するための経営承継円滑化法の認定申請は、贈与税なら贈与年の10月15日から翌年1月15日までに申請します。相続税の場合、相続発生後5ヶ月を経過する日の翌日から8ヶ月を経過する日までに申請してください。

申請書は、利用する制度で様式が異なります。最新の様式を中小企業庁のホームページからダウンロードしましょう。

法人版の場合、申請書以外に以下のような書類も必要です。贈与か相続により、適宜必要な書類を用意しましょう。
 

  • 定款の写し
  • 株主名簿
  • 登記事項証明書
  • 贈与契約書
  • 贈与税額の見込み額を記載した書類
  • 遺言書または遺産分割協議書の写し
  • 相続区税額の子見込み額を記載した書類
  • 従業員数証明書
  • 決算書類
  • 各誓約書
  • 戸籍謄本

個人版の場合、提出が必要な書類は以下の2つです。
 

  • 先代経営者の前年の青色申告書
  • 賃借対照表および損益決算書その他の明細書の写し

特例措置または個人版の場合、事前計画を提出していないならば事前計画と確認書を同時に提出します。

流れ2.税務署への申告

申請が通れば、認定書を取得できます。認定書の写しとともに、贈与税または相続税の申告書を税務署に提出しましょう。

贈与の場合は贈与年の翌年3月15日まで、相続の場合は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告してください。

申告時に納税猶予税額および利子税の額に見合う担保を、税務署に提供する必要があります。

7. 事業承継税制の認定を受けた後の提出書類

事業承継税制の認定を受けた後の提出書類

事業承継税制の認定を受け、納税猶予期間中は報告書または届出を提出しなければなりません。定期的に提出しなければならない報告書・届出は3つあります。
 

  1. 年次報告書
  2. 継続届出書
  3. 実績報告書

この他、経営状況や申請内容に変更があった場合は、随時都道府県に報告しなければなりません。各報告書については、中小企業庁のホームページからダウンロードできます。

年次報告書、継続届出書、実績報告書をそれぞれどこに提出するか、どの制度が提出しなければならないのか確認しましょう。

提出書類1.都道府県へ年次報告書を提出

法人版事業承継税制の場合、1年に1回年次報告書を都道府県へ提出する必要があります。個人版事業承継税制の場合は提出しません。

年次報告書の提出は認定を受けて5年間です。継続要件を維持していることを記載します。継続要件とは、以下の内容のことです。
 

  • 後継者が会社の代表者であること
  • 雇⽤の8割以上を5年間平均で維持すること(一般措置の場合)
  • 後継者が同族内で筆頭株主であること
  • 上場会社、⾵俗営業会社に該当しないこと
  • 猶予対象となった株式を継続保有していること
  • 資産保有型会社等に該当しないこと

継続要件を満たさない場合は、認定を取り消され、納税猶予されている税金の全額または一部を納税しなければなりません。

提出書類2.税務署へ継続届出書を提出

事業承継税制を利用している間は、税務署へ継続届出書を提出する必要があります。継続届出書を提出することで、引き続き納税猶予の特例を受けたい旨の届け出です。

提出しなければ納税猶予が継続されないため、必ず提出しなければなりません。法人版、個人版どちらも必要です。

法人版の場合、認定後5年間は1年に1回提出します。6年目以降は、3年に1回の提出です。個人版の場合、初めから3年に1回提出します。

提出書類3.都道府県へ実績報告書の提出

法人版の特例措置を利用していて、認定5年経過後に雇用が5年平均8割を下回った場合に都道府県へ実績報告書を提出する必要があります。

実績報告書は、雇用が8割を下回った理由を記載し、認定支援機関の所見とともに提出しなければなりません。特例措置の場合、雇用が8割を下回っても認定取り消しにはならないのですが、認定支援機関から指導や助言を受ける必要があります。

8. 事業承継税制の注意点

事業承継税制の注意点

事業承継税制を利用する際の注意点を、確認しましょう。事業承継税制には、2つの注意点があります。
 

  1. 認定取消で猶予額と利子額を納付しなければならない
  2. 5年間は事業を継続させなければならない

注意点を順に説明します。

注意点1.認定取消で猶予額と利子額を納付しなければならない

継続要件を満たせなかったり、総収入額が0になるなど認定取り消し事由に該当したりする場合、猶予税額と利子を納付しなければなりません。

認定後5年以内に後継者の死亡などの免除事由以外で認定を取り消されると、猶予されていた猶予税額の全額と利子税を納付します。認定されて5年経過後は、場合によっては全額でなく一部納税となるのです。

たとえば、納税猶予対象の株式を認定5年以内に譲渡すると猶予税額を全額納付しなければなりません。しかし、5年経過後なら一部納付となるのです。

認定取り消しとなると、納税のための資金を用意できない可能性があります。資金繰りで困らないよう、継続要件については維持するようにしましょう。

注意点2.5年間は事業を継続させなければならない

事業承継税制を利用している場合、後継者によって5年間事業を継続させなければなりません。5年以内に会社を倒産させると、認定が取り消されてしまいます。

しかし、もともと事業が軌道に乗っていなかったり、経営状況が悪かったりする場合、納税猶予をしてもその後事業を継続できるか分かりません。納税猶予は要件を満たす限り継続できます。しかし、一生猶予を受けるのは大変なことで、どこかの時点で支払うこととなります。

そのため、事業承継税制を利用する前に、贈与税・相続税がどのくらいかかるか把握することが必要です。税金がどれくらいかかるか把握した上で、事業承継税制を利用するかどうか、先代経営者と後継者はしっかり話し合いましょう。

9. 事業承継税制を利用するなら専門家に相談しよう

事業承継税制を利用するなら専門家に相談しよう

事業承継税制を利用するなら、専門家に相談しましょう。事業承継税制の内容は複雑で、満たすべき要件も多数あります。個人で要件に当てはまっているか確認するのは困難です。

そのため、贈与税・相続税の計算や事業承継税制を利用できるかどうかの相談を専門家に行いましょう。

M&A総合研究所は、事業承継に詳しい会計士が税金の相談もお受けします。相談は無料です。ぜひ、お気軽にお問合せください。

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M&Aのプロに相談する

10. まとめ

中小企業庁の事業承継税制まとめ

事業承継税制は、中小企業庁が実施する贈与税・相続税の納税を猶予または免除する制度です。法人版事業承継税制と個人版事業承継税制があります。

法人版事業承継税制は、さらに一般措置と特例措置の2つに分けれます。法人版事業承継税制を利用するなら、特例措置を選択する方が継続要件も緩く使いやすいです。
 

  個人版 法人版
(一般措置)
法人版
(特例措置)
事前の事業承継計画提出 あり
2019年4月1日~2024年3月31日まで
なし あり
2018年4月1日~2023年3月31日まで
制度利用期限 2028年末まで なし 2027年末まで
猶予・免除対象 特定事業用資産 総株式の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 100% 贈与税:100%
相続税:80%
100%
贈与者 先代事業者(経営者) 複数の株主
後継者の人数 1人 1人 最大3人
事業承継後5年間の雇用維持割合 なし 8割 なし
経営承継円滑化法の認定有効期限 最初の認定翌日から2年間 最初の申告期限の翌日から5年間

ただし、特例措置と個人版事業承継税制はそれぞれ創設から10年間限定の制度のため、利用するなら早めに検討しましょう。事業承継税制利用の検討は、専門家に手伝ってもらうとスムーズに行えます。

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