2020年11月11日更新
事業承継したい個人事業主に!メリットや注意点や手続きの流れまで

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。
個人事業主が事業承継すれば、後継者問題を解決でき新規事業に転換できるといったメリットがあります。ただし複雑な手続きが必要で、好条件の買い手が見つからないおそれもあるのです。事業承継で悩んだらM&A仲介会社に相談し、個人事業主ならではの不安を解消しましょう。
目次
1. 個人事業主の事業承継にある背景とは?
中小企業庁が発表した「令和元年中小企業実態基本調査」(2018年度決算実績)によると、経営者(個人事業主)の事業承継については、「今はまだ事業承継について考えていない」の割合が35.3%と最も高く、次いで、「現在の事業を継続するつもりはない」が28.2%でした。
そして「親族内承継を考えている」が26.6%となっています。事業承継先については、親族に加え、役員・従業員、会社、個人への引継ぎなど、いくつかの選択肢の中で承継を考えている人の割合が全体の34.1%となっています。
近年は職業選択の自由や少子高齢化の影響を受けて、後継者となる子供が不足しています。それだけでなく、後継者候補となる子供がいても、苦労を考えると継がせたくないと考えている経営者も少なくありません。
そのようなときに有効策となるのが、M&Aを利用した第三者への事業承継です。M&Aを活用すれば親族外承継を実現できるため、後継者問題を解決できます。
認知の高まりを受け、M&Aによる個人事業主の事業承継は増加傾向です。そして売却資金を得られるメリットなども相まって、今後も魅力的な事業承継手段であり続けるのが予想されています。
個人事業の中でも事業承継が比較的しやすい業種があるのです。
ここからは個人事業主が事業承継しやすい業種をまとめたので確認しておきましょう。
参照:中小企業庁「令和元年中小企業実態基本調査速報」(2020年)
個人事業主が事業承継をしやすい業種
個人事業主が事業承継しやすい代表的な業種は、以下のようなものです。
- WEBサイト運営
- 学習塾
- 各種スクール
- 整体院
- 古民家・民泊施設
これら5つの業種では売り手と買い手の数が多く、好条件でのM&Aが成約しやすいです。とりわけ上記の業種を営む個人事業主であれば、M&Aでの事業承継を検討すべきといえます。
以上、個人事業主が事業承継しやすい業種を紹介しました。ここまで読んで、事業承継に興味を持った個人事業主の方も多いはずです。
そこで「M&A以外の手法で事業承継できるの?」と疑問に感じる人もいるでしょう。ここからは個人事業主が事業承継するときに採用される手法をまとめたので確認しておきましょう。
2. 個人事業主の事業承継時に採用される手法
個人事業主が事業承継するときに採用される手法は、以下の3つです。
- M&A
- 贈与
- 相続
それぞれ確認してみましょう。
①M&A
個人事業主が事業承継する1つ目の手法は、M&Aです。
M&Aによる売買を利用すると、第三者に事業を承継でき、売却に際して利益を獲得できます。これは親族内承継が難しいケースや、売却資金を手に入れたいケースにおいて大きなメリットです。
M&Aによる事業承継を検討する際には、マッチングサービスや事業承継センターを利用するほか、M&A仲介会社に相談・依頼する方法があります。
もし、相談先が決まらないのであればM&A総合研究所をご利用ください。
個人事業主のM&Aの相談は、案件規模が小さく収益性が小さいことから、相手にされないケースが多いです。しかし、M&A総合研究所では個人事業主も対象としているので安心してM&Aを進めていただけます。
料金体系には完全成功報酬型を採用し、着手金・中間金・月額費用は無料です。
M&A仲介会社であるM&A総合研究所は、経験豊富なアドバイザーが親身になってサポートいたします。また、弁護士が在籍しておりますので、法律面でも安心かつ確実なM&Aを実現できます。
②贈与
個人事業主が事業承継する2つ目の手法は、贈与です。
この手法は親族内承継だけでなく、第三者への事業承継シーンにも広く活用されています。なお贈与で事業承継する場合、生前贈与が主流です。
贈与による事業譲渡は安心感があるものの、売却益を獲得できない点でデメリットがあるともいえます。
③相続
個人事業主が事業承継する3つ目の手法は、相続です。
相続は贈与とは異なり、個人事業の経営者が亡くなって相続が発生した場合に事業が承継されます。相続時に相続財産の一部として自社株や営業権を後継者に引き継ぐ手法です。
相続による事業承継では、しっかりと遺言が残されていない場合に遺産分割協議が行われます。これにより経営者の希望に添えない事業承継が行われるおそれがある点に注意してください。
以上、個人事業主が事業承継するときに採用される手法を紹介しました。ここまで読んで、自身に最適な事業承継手法が見つかった個人事業主の方も多いはずです。
一方で「個人事業主が事業承継する利点はどんなものがある?」と疑問に思っている方もいるでしょう。ここからは、個人事業主が事業承継するメリットをまとめたので確認しておきましょう。
3. 個人事業主が事業承継するメリット3つ
個人事業主が事業承継によって得られるメリットは、以下の3つです。
- 後継者問題を解決できる
- 新規事業に転換できる
- 売却資金を獲得できる
①後継者問題を解決できる
個人事業主が事業承継する1つ目のメリットは、後継者問題を解決できることです。
個人事業を営んでいる人の中には、後継者の育成が間に合わなかったり、親族や従業員が引き継ぎを拒否したりと、後継者問題を抱えている個人事業主も少なくありません。
事業を何とか残したいと考えている経営者にとって、後継者問題で悩み続ける日々は大変です。
しかし、M&Aなどの手法で事業承継を行えば、事業経験のある同業者などの経営を任せられる人物に、安心して事業を譲り渡せるメリットがあります。
後継者問題を解決して、ゆっくりとした生活を送るのも良いでしょう。
②新規事業に転換できる
個人事業主が事業承継する2つ目のメリットは、新規事業に転換できることです。
個人事業主が事業承継する場合、新しい事業を興すことを目的とする場合も少なくありません。なお完全に新規の事業をスタートさせる場合だけでなく、並行して営む別事業に集中するために事業承継を選択する個人事業主の方も多いです。
③売却資金を獲得できる
個人事業主が事業承継する3つ目のメリットは、売却資金を獲得できることです。
M&Aにより事業承継する場合、個人事業主は売却益を獲得できます。売却益を利用して、事業で発生した借入金の返済や、リタイア後の生活費に充てることも可能です。
上記の理由から、事業承継を通じて資金を得たい個人事業主は、M&Aの手法を採用すると良いでしょう。
以上、個人事業主が事業承継で得られるメリットを紹介しました。ここまで読めば、事業承継にどれほどの利点があるのか理解できたでしょう。
ところが個人事業主が事業承継する場合には注意点もあり、知っておかないと不利益を被るおそれがあるのです。ここからは、個人事業主が事業承継する際の注意点をまとめたので確認しておきましょう。
4. 個人事業主の事業承継には注意点があることも理解しよう
個人事業主が事業承継する際の注意点は、以下の3つです。
- 煩雑な手続きが求められる
- 希望の買い手が見つからない可能性がある
- M&A仲介会社選びは慎重に検討すべき
トラブルの回避に役立ちますので、ぜひ確認してみてください。
①煩雑な手続きが求められる
1つ目の注意点は、煩雑な手続きが求められることです。
事業承継する場合、M&A・贈与・相続のいかなる手法を採用したとしても、書類作成などの煩雑な手続きが求められます。手続きが遅れてしまうと、適切に事業承継できないこともあるのです。
手続きに不安があれば、M&A仲介会社に相談してサポートを受けるようにしましょう。
②希望の買い手が見つからない可能性がある
2つ目の注意点は、希望の買い手が見つからない可能性があることです。
事業内容によっては、希望に合う買い手が見つからずM&Aを進められないこともあります。買い手探しには時間がかかる場合が多く、本当に見つかるのか不安になることも多いです。
もし、M&Aを検討したなら専門家に依頼しましょう。専門家であれば、買い手を見つけるサポートをしてもらえます。スピーディーに見つけるときにも役立ちますから、ぜひ検討してみてください。
③M&A仲介会社選びは慎重に検討すべき
最後の注意点が、M&A仲介会社選びの時点で難航する可能性があることです。
これは、サポート対象となる企業に制限を設けている可能性があるのが関係しています。例えば、中小企業のみ、大企業のみと単純に規模で制限がかかるなどです。
また、大規模な企業を対象としているM&A仲介会社であっても、小規模に対応していることはあるでしょう。しかし、料金面が厳しいといったようなケースが起きます。
ですから、自社に合ったM&A仲介会社を選ぶときに難航する可能性は考えておきましょう。
以上、個人事業主が事業承継する際の注意点を紹介しました。ここまで読んで、メリットと注意点を比較して事業承継を検討できるようになったはずです。
そこで「個人事業主はどのような手続きで事業承継すれば良いの?」と疑問に感じる方も多いでしょう。ここからは、個人事業主が事業承継する際の手続きをまとめたので確認しておきましょう。
5. 個人事業主が事業承継する手続きの流れを6ステップで解説
個人事業主が事業承継する際には、以下の6つのステップで手続きを取らなければなりません。
- 後継者を選ぶ
- 後継者を教育する
- 廃業手続きをする
- 開業手続きをしてもらう
- 屋号引き継ぎの処理をする
- 取引先に連絡する
やり直しの少ないスムーズなM&Aに近づけていきましょう。
①後継者を選ぶ
1ステップ目は、後継者を選ぶことです。
まずは後継者を選ばないことには、具体的なアクションを起こすことはできません。なお個人事業主の親族でも第三者でも後継者となれます。
親族内で後継者が見つからない場合は、第三者から後継者を探しましょう。M&A仲介会社に相談・依頼すると、有力な後継者探しをサポートしてもらえます。
②後継者を教育する
2ステップ目は、後継者の教育です。
後継者が決定すると、次は個人事業を引き継いでいきます。しかし、全てを一気に引き継ごうとしても事業に支障が出てしまうので、教育をしながら徐々に事業を引き継いでいくのです。
個人事業は信頼や人間関係の上に成り立つ場合が多いため、信頼を損なわないよう念入りに教育する必要があります。あわせて事業に使用する固定資産や顧客情報などの引き継ぎも行ってください。
業務に必要な書類など、後々後継者が困らないように引き継ぐのが必要不可欠です。
③廃業手続きをする
3ステップ目は、廃業手続きです。
法人の場合とは異なり、比較的簡単に行えます。現事業主の人は廃業の届出を提出するだけで手続きを終了させられるため、この手続きをもって、個人事業主としての仕事を終えられます。
なお廃業手続きをする際には、以下の書類を役所もしくは税務署に提出しましょう。
- 個人事業に関する廃業届
- 青色申告を行っている場合は、その申告を中止するための届け出
- 事業を廃止するための届け出
これら3つの書類を準備して、もれなく提出するのが大切です。
④開業手続きをしてもらう
4ステップ目は、後継者に開業手続きをしてもらうことです。
個人事業主が廃業手続きを済ませた後、後継者は開業手続きをしなければなりません。この手続きを完了して、ようやく後継者が個人事業主として認められ、事業譲渡は完了します。
なお開業手続きをする際には、後継者に以下の書類を役所もしくは税務署に提出してもらいましょう。
- 個人事業に関する開業届
- 所得税が発生する場合の青色申告承認書
- 青色申告者を採用する予定がある場合には、それに関する届け出
これら3つの書類を準備して、もれなく提出させるのが大切です。
⑤屋号引き継ぎの処理をする
5ステップ目は、屋号引き継ぎの処理です。
個人事業主がもともと使用していた屋号を後継者も使用したい場合には、開業届に引き継ぎたい屋号を記載しておく必要があります。これにより、屋号を引き続き使用するのが可能です。
屋号とは個人事業者の方が使用する商業上の名をさします。商標登録のように法的制限がないため簡単につけられますが、商号登記がされている屋号の場合は、会社法など競合阻止義務により同一市内で使用できないので注意してください。
なお商号登記のある屋号を引き継ぐ場合には、法務局に行き名義を変更する必要があることも押さえておきましょう。
⑥取引先に連絡する
6ステップ目は、取引先への連絡です。
前述のように、個人事業はクライアントとの信頼や人間関係によって成り立つケースが多いため、事業承継の際もおろそかにしてはいけません。
事業承継によって個人事業の代表が交代したら、今後も付き合いを継続する業者や取引先に、代表交代をした旨と引継ぎをした後継者のあいさつ周りを行ってください。
代表交代をして何も連絡がないと信用問題が起こります。事業がうまくいかないこともあるため、怠らずに実施しましょう。
ここまで手続きについてお話してきました。簡単に説明してきましたが、経費や債務について失敗する人は多くいます。次の項目で確認しておきましょう。
6. 個人事業主が事業承継した際に経費や債務はどう処理する?
失敗しやすい経費や債務の処理は、以下の2つです。
- 固定資産税は経費として計上できる
- 借入金は承継できる
やや難しく感じますが、良く確認して進めていきましょう。
①固定資産税は経費として計上できる
固定資産税は経費として扱えます。
個人事業主が親族や第三者に贈与を利用して事業承継するケースでは、不動産などの固定資産によって贈与額が高額になる場合が多いです。これは税額を少しでも減らしたい方にとって大きなデメリットです。
しかし固定資産を贈与ではなく使用貸借にしてしまうことで、後継者に貸している扱いとなるため贈与税を減らすのが可能です。
使用貸借では権利金を発生させずに実質無料で土地を貸せるので、後継者に土地を引き継ぎたい場合にとても便利といえます。それだけでなく使用貸借で生じる不動産の減価償却費、固定資産税、修繕費などは後継者に計上させる仕組みとなるのです。
ただしこの使用貸借では、無料で貸すことになるので地代も無料にしなければなりません。なお子供に使用貸借で贈与税を節税したとき、親側の固定資産税となりますのでこれを子供が払う場合は大丈夫です。
上記の理由から、固定資産による贈与税に悩む個人事業主は、使用貸借への切り替えを検討してください。
②借入金は承継できる
借入金は承継できます。
個人事業主の事業承継で引き継がれる資産の中には、借入金も含まれるのです。これは、事業承継で負債も引き継ぎたい個人事業主にとってうれしいメリットです。
ただし事業譲渡による代表交代をしても、事業自体の借入金はなくならないため、親族内で事業承継するケースでは注意しましょう。
つまり親族内承継では、債務である借入金をいかに対処するのかを、事業承継時に考えておかなければなりません。第三者に事業承継する際も、高値での売却を狙うならば、なるべく借入金を減らしておくのが得策です。
以上、個人事業主が事業承継したときに問題となる経費や債務について紹介しました。ここまで読んで、経費や債務の適切な処理方法を押さえられたはずです。
なお個人事業主の事業承継では、税金の発生も問題となります。ここからは個人事業主の事業承継時に問題となる税金についてまとめたので確認しておきましょう。
7. 個人事業主の事業承継時に問題となる税金まとめ
個人事業主の事業承継時に問題となる税金は、以下の4つです。
- 贈与税
- 所得税
- 消費税
- 相続税
それぞれ確認し、後で知らなかったとならないようにしておきましょう。
①贈与税
個人事業主の事業承継で代表的なのが、贈与税です。
親から子への親族内承継が多いですが、この場合は事業を無償で譲り受ける形になるので、贈与税が発生します。
資産と負債に分けて固定資産なども含めた資産額から借入金などの負債額を引いて計算します。
- 「資産」(不動産などの固定資産、預貯金、商品、機械類など)−「債務」(未払金、借入金、買掛金など)
この合計が110万円以下の場合には贈与税は発生せず、110万円を超えていれば、超えた部分に税率をかけて贈与税が課税されます。
なお事業承継による贈与税は、通常であれば暦年贈与です。つまりその年の1月1日から12月31日までに贈与された額が合計で110万円以上だった場合に110万円を超えた額に贈与税がかかります。
次に、事業承継の贈与による税率は以下のとおりです。
課税価格 | 一般税率 | 控除額 | 特例税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | − | 10% | − |
200〜300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
300〜400万円以下 | 20% | 25万円 | 15% | 10万円 |
400〜600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
600〜1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,000〜1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
1,500〜3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
3,000〜4,500万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 400万円 | 55% | 640万円 |
特例税率(特別贈与財産用)は、祖父母や父母から20歳以上の子供や孫へ贈与する場合に使用されます。また一般税率(一般贈与財産用)は、特例税率に該当しない場合に使用されることを押さえておきましょう。
参照:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
②所得税
所得税では個人が1月1日から12月31日までの1年間で得た「所得金額(収入ー経費)」から、「所得控除額」を差し引いた額を所得額として計算するのです。なお所得税には10種類ありますが、事業承継を売買(M&A)によって行う場合は譲渡所得にあたります。
また、親族内承継などで無償による事業承継をした場合には、事業承継後に後継者が得た収入が「事業所得」として課税されることを理解しておきましょう。
③消費税
事業承継を生前贈与によって行うのか、相続として行うのかで、消費税の計算方法が異なるため注意が必要です。
事業上、発生する消費税は年間売上高が1,000万円以上あるかどうかにより、課税か非課税かにわかれます。なお2年前の売上高から、納税義務の有無が判断されるのです。
はじめに事業承継を生前承継で行ったとき、後継者が他に事業をしていない場合では開業して1年目になるため、この年に1,000万円以上の売り上げがある場合は2年後に消費税の納税義務が課せられます。
つまり原則として開業から2年以内は納税義務が生じないことになり、それ以降も1年で1,000万円以上の売上高がないときには消費税は発生しません。
次に、事業承継を相続で行う場合にも、消費税の課税期間の変動などはないため、2年前の売上高が1,000万円以上の場合のみ納税義務が課せられます。
ただし相続による事業承継では、代表交代前で後継者が事業をしていない期間の会社の売上高も、消費税の課税対象となるのです。
たとえば2年前まで事業を行っていた親が年間1,000万円以上の売上高をあげていた事業を子供が2年後に相続により引き継いだ場合は、この年から消費税の納税義務が発生してしまいます。
なお、課税期間の途中で経営者が亡くなり後継者に代表交代した場合も同様なので、代表交代前が500万円の売上高で代表交代後が600万円の売上高とすると、年間1,100万円の売上高になるので消費税は課税されるのです。
④相続税
相続での事業承継では、相続が発生した時点を基準にして評価額が査定され課税されます。
事業承継では固定資産だけではなく、棚卸資産など不確定な要素が含まれるため、後継者への負担が大きくなることもあり注意が必要です。
なお、相続税では小規模宅地の特例が適用される場合があります。小規模宅地の特例とは、被相続人が住んでいた土地や事業のための土地など一定条件を満たしていれば、80%や50%評価額を減額してもらえる特例です。
これを活用したとき、相続税の評価額が1,000万円だった場合、200万円の評価額まで減額できるので後継者の負担はかなり少なくなります。
ただし、要件が少し難しくなっており、被相続人と同じ財布で生活した場合などの要件が含まれているため、他人に相続するときにはこの小規模宅地の特例は適用されません。また宅地の面積などにより減額割合が異なるので注意しましょう。
以上、個人事業主の事業承継時に問題となる税金を紹介しました。ここまで読んで、事業承継時の納税額について具体的なイメージが湧いた個人事業主の方も多いはずです。
個人事業主は事業承継税制の活用によって、税制上の優遇を受けられる可能性があります。ここからは個人事業主の方に押さえてほしい事業承継税制についてまとめたので確認しておきましょう。
8. 個人事業主は事業承継税制を有効活用すべき
個人事業主は事業承継税制を有効活用すべきです。
これまで事業承継税制は法人の事業承継シーンにおいて活用されてきましたが、2019年の法改正により、個人事業主の事業承継で生じる相続税について納税猶予が受けられるようになりました。
個人版の事業承継税制は先代が保有する事業用の資産を後継者がスムーズに引き継ぐ有効策であり、要件を満たせば個人事業主の資産相続にかかる相続税の納税が100%猶予される嬉しいメリットがあります。
注意すべきなのは、免除ではなく猶予である点です。そのため猶予期間経過後は納税しなければなりませんが、後継者が亡くなるまで事業が継続できれば、猶予は免除に変わることを知っておいてください。
以上、個人版の事業承継税制の概要を紹介しました。ここまで読んで、事業承継税制を活用したくなった個人事業主の方も多いはずです。
最後に、個人版事業承継税制を受けるための要件をまとめたので確認しておきましょう。
個人版事業承継税制を受ける要件まとめ
個人版の事業承継税制を受けるための要件は、以下の5つです。
- 個人事業承継計画の提出
- 経営者が満たすべき要件一覧
- 後継者が満たすべき要件一覧
- 担保の提供
- 継続届出書を3年ごとに提出
とても大切なことですから、必ず確認しておきましょう。
個人事業承継計画の提出
1つ目の要件は、個人事業承継計画の提出です。
後継者は、あらかじめ都道府県庁に対して個人事業承継計画を提出し、確認を受けましょう。承継計画は税理士などの認定経営革新支援機関の指導と助言を受けながら作成するのが得策です。
個人事業承継計画には、先代経営者名・後継者名・承継までの経営見通し・承継後の事業計画などを記載します。ここで注意すべきなのは、相続開始から8カ月以内に申請をしておかなければならない点です。
つまり相続税の申告期限である10か月よりも時期が早いので注意しなければなりません。それにくわえて制度上の提出期限が2019年4月1日から2024年3月31日までとなっていることも押さえておくべきです。
なお認定には都道府県知事の認定を受けてから2年間の有効期限があります。あわせて注意してください。
経営者が満たすべき要件一覧
2つ目の要件として、経営者が満たすべき要件をまとめて紹介します。
先代経営者である被相続人は、以下の要件を満たしてください。
- 青色申告書を提出済
- 資産管理型事業でない(引き継ぐ事業が対象)
- 性風俗関連営業でない(引き継ぐ事業が対象)
- 売上がゼロでない (引き継ぐ事業が対象)
上記に当てはまらない場合には、利用できない制度のため、良く確認をしましょう。
後継者が満たすべき要件一覧
3つ目の要件として、後継者が満たすべき要件をまとめて紹介します。
後継者は、以下のような要件を満たしていなければなりません。
- 相続により承継する事業の特定事業用資産の全てを取得していること
- 相続するとき、承継する事業かそれと同種の事業に従事していること
- 相続開始の日の翌日から5カ月を経過する日まで、特定事業用資産の全てを保有し、自己の事業の用に供していること
- 性風俗関連の事業でないこと
- 所得税法上の開業の届出書を提出していること
- 青色申告の承認を受けていること
- 個人事業承継計画の確認を受けていること
事業承継税制を活用するためには、これら7つの要件を最低限満たしているのが必要不可欠です。
担保の提供
4つ目の要件は、担保の提供です。
つまり、猶予される相続税の金額および利子税の金額に見合う担保を、税務署に提供しなければなりません。
継続届出書を3年ごとに提出
5つ目の要件は、継続届出書を3年ごとに提出する必要があります。
つまり制度適用時は、3年ごとに継続届出書を税務署に提出しなければなりません。そのため、適用を受けたからと安心せずに、要件を満たし続けられるよう努めましょう。
9. 事業承継に悩む個人事業主はM&A仲介会社に相談しよう
個人事業主の事業承継なら、M&A仲介会社に相談しましょう。
なぜなら、専門知識が必要となるだけでなく、手続きも多種多様に進める必要があるからです。
もし、従業員が少ないなどの影響で時間を用意できないとなれば、M&Aを進められない状態に陥ります。逆に、時間を用意できたとしても本業の利益が下がる可能性があるでしょう。
こうしたリスクを防ぐためにも、M&A仲介会社の専門家に協力を依頼するわけです。
また、事業承継税制を検討している人なら、リスクやデメリットにも着目して慎重に進めなければなりません。しかし、非常に時間と労力を必要としますから、安定して進めるのは難しいです。
制度を正しく使うためにもM&A仲介会社に依頼する方が良いといえるでしょう。
もし、相談先にお悩みでしたらM&A総合研究所へご連絡ください。事業承継税制からM&Aまでトータルサポートいたします。費用も完全成果報酬型を採用し、成立してからの請求ですから手持ちの資金に不安がある人でも問題ありません。
さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月で成約を実現します。
相談料も無料となっておりますので、お気軽なお声掛けを心からお待ちしております。
10. まとめ
個人事業主の事業承継について詳しくお話してきました。
もし後継者問題や経営課題の解決に悩んでいるのであれば、M&Aの手法を検討してみてください。多くのメリットが得られることから、現状を打開するきっかけになるはずです。
もし不安な点があれば、専門家に依頼してみましょう。
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