事業承継のメリット・デメリットを徹底解説!手続きの流れ、税金、公的支援も

企業情報第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業承継には親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継があるので、それぞれのメリットとデメリットを理解して、最適な方法を選択することが重要になります。本記事では、事業承継のメリットとデメリット、成功させるポイントなどを解説します。

目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継を行う目的
  3. 事業承継しない場合に起こる問題
  4. 事業承継の方法とメリット・デメリット
  5. 事業承継の成功事例3選
  6. 事業承継税制とは
  7. 事業承継に役立つ補助金
  8. 事業承継を行う手続き・流れ
  9. 事業承継で課される税金
  10. 事業承継を成功させるポイント
  11. 事業承継に関する相談先
  12. 事業承継のまとめ
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1. 事業承継とは

事業承継とは、会社や個人事業の経営を後継者に引き継ぐプロセスです。現経営者が高齢や病気などで経営を続けられなくなった場合でも、事業承継により新しい経営者に引き継げば会社を存続させられます。

事業承継は、誰に事業を引き継ぐかによって親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3種類に分けられます

【事業承継の分類】

  • 親族内事業承継
  • 親族外事業承継
  • M&Aによる事業承継

事業承継の英訳

事業承継は、英語でBusiness Successionと言います。

事業承継に明確な定義はないものの、「事業」そのものを「承継」する取組み全般を指すのが事業承継であり、英語圏でも同様の意味で用いられるのが一般的です。

英語圏では、事業を承継する際に、Succession planning(事業承継計画)を立案します。

Succession planningは、会社のリーダーとしての役割(多くの場合、会社のオーナーシップ)を従業員や従業員グループに引き継ぐための戦略です。

Succession planningは、「replacement planning(リプレイスメント・プランニング)」とも呼ばれ、企業にとって最も重要な人材が新たな機会に移ったり、退職したり、亡くなったりした後も、ビジネスを円滑に継続できるようにするための戦略です。

2. 事業承継を行う目的

近年は、不況や経営者の高齢化の影響で、以下のような理由で事業承継を行うケースが増えてきています。

【事業承継を行う理由】

  • 経営者の高齢化が深刻
  • 後継者がいない
  • 廃業・倒産を避けたい

中小企業経営者の平均年齢は、昔は40代だったものが、現在は60代後半にまで上昇しており、この傾向は団塊世代の経営者が引退するまで変わらないケースがほとんどです。

中小企業が全て廃業してしまうと日本経済にとって大きなダメージとなるため、M&Aなどの手段で事業承継するのが重要な課題になっています。

かつて、事業承継というと現経営者の子供や親族が継ぐという価値観がありましたが、近年は子供が他の業種で働くケースも多くなり、さらに少子化もあって後継者がいないケースも増えています。親族に後継者がいない会社が、M&Aによる事業承継で会社を存続させる事例は今後も増加していくでしょう。

経営に行き詰まった会社が、廃業・倒産を避けるためにM&Aで事業承継するというケースもあります。倒産しそうな債務超過の会社ではM&Aの相手は見つかりにくいですが、もし見つかれば売却先企業の経営基盤のもと会社を存続させられます。

事業承継と業績向上の関係性

中小企業庁「中小企業白書(2016年)」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap6_web.pdf

上の図表は、経営者交代(事業承継)があった企業と経営者交代がなかった企業の業績(経常利益率)の推移を示したものです。

経常利益率は、売上に対する経常利益の割合を見る指標ですが、経営者の交代があった企業が、経常利益率が高いことが示されています。逆に、経営者の交代がない企業は、経常利益率が低いのがわかります。

経営者の交代があったかないかによって、各年度において1%以上もの差がついていることからもわかるように、事業承継の問題は会社の業績にも大きな影響を与えるのです。

3. 事業承継しない場合に起こる問題

中小企業庁「中書企業白書(2021年)」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf

上の図表をみると、中小企業経営者の平均年齢は60代前半にさしかかっており、2020年は約5万件もの中書企業が、休廃業・解散しているのがわかります。つまり、約5万件もの中小企業庁が事業を承継できなかったのです。

事業承継の形態は親族内事業承継が多かった一昔前に比べて、現在は親族外事業承継やM&Aによる事業承継が増えており、承継の形態は多様化しています

60歳以上の中小企業経営者の約50%、個人事業主の約70%が事業承継せずに廃業する予定であるというデータもあるなど、今後、事業をどのように承継していくかは中小企業にとって極めて重要な問題です。

このなかには、もともと自分の代でやめるつもりだったという経営者が約40%もおり、本当は事業を継続したいが後継者がいないために廃業する経営者は、約30%ほどとなるなど、事業の継続が問題となっています。

後継者不在を理由とする廃業

中小企業庁「中小企業白書」

出典:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf

これは後継者不在企業の割合の推移を見たものです。

後継者不在率は2017年の66.5%をピークに近年は微減傾向にあり、足元の2020年は65.1%となっています。実に65%以上の中小企業が後継者の不在にあえいでいる現状をうかがい知ることができます。

会社の事業を承継する後継者がいなければ、会社は廃業するしかありません。そうなれば、これまで培ってきた会社のノウハウなどは失われてしまいます。

事業・企業の発展停止や業績悪化

後継者の有無と企業パフォーマンスの関係について研究した論文では、両者には相関関係があると指摘されています。

後継者がいる企業がいない企業に比べて業績が良く、業績が良い企業が後継者がいるケースが多いのが示されているのです。

たとえば、負債比率・有利子負債利子率が高く、売上高成長率が低い企業は、後継者が不在となる確率が高くなると示されています。中小企業庁が公表している中小企業白書でも、後継者がいる企業が売上高成長率が高いと示されています。

逆に言えば、事業を承継する後継者がいない場合、売上高の成長が見込めません。売上の減少は会社全体の業績の悪化要因となりますし、事業・企業の発展を停滞させてしまいます。

4. 事業承継の方法とメリット・デメリット

親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、それらを理解したうえで、自社にとって最適な手法を選択する必要があります。

この章では、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継のそれぞれについて、メリットとデメリットを解説します。

親族内事業承継

親族内事業承継とは、現経営者の子供や姪・甥などの親族を新しい経営者とする事業承継です。

かつては、事業承継といえば多くが親族内事業承継でしたが、年々その割合は減少し、近年では親族でない人物(または企業)に事業承継するのが主流となりつつあります。

その理由はいろいろありますが、親族内に経営に向いた人物がいなかったり、他の職業に就いていたりするので後継者にできないケースが多く見られます。

親族に有力な後継者候補がいても、会社経営の苦労をさせたくないという理由で、現経営者が承継を断るケースも少なくありません。

親族内事業承継のメリット

親族内事業承継の主なメリットには、以下の3つがあります。

【親族内事業承継のメリット】

  • 従業員や取引先から心情的に受け入れられやすい
  • 後継者を教育する時間を十分とれる
  • 相続等によって財産や株式を後継者に移転できるので、所有と経営の分離を回避できる。

現経営者の親族であれば、従業員や取引先から受け入れられやすいというメリットがあります。

もともと会社の従業員として働いている場合はもちろん、他の職業に就いていて事業承継のために転職してくる場合でも、現経営者の親族であれば安心感があります。

親族を後継者にすると、実際に事業承継を行うかなり前の時期から、後継者を教育できます。M&Aによる事業承継では、通常、実際に事業承継が行われる直前まで後継者がわからないため、こういった教育期間をとれません。

事業承継後の教育期間も、旧経営者の親族であればじっくりと時間をかけて教育できます。相続によって会社の株式を移転できるため、会社から株式が流出するのを防げます。

親族内事業承継のデメリット

親族内事業承継の主なデメリットには、以下の2つがあります。

【親族内事業承継のデメリット】

  • 後継者に適した親族がいるとは限らない
  • 資産の相続をめぐりトラブルになることがある

身近な親族に後継者が見つかればそれが一番よいですが、親族内に後継者に適した人物が見つかるとは限らないのは、デメリットの一つといえるでしょう。

自分の子供を後継者にしたいと考えていても、子供が経営者としての素質がないというのはよくある事例です。経営の資質と意欲を持っている後継者が自分の身内にいるとは限らないのです。

親族内事業承継では、事業にかかる資産を相続や贈与で後継者に承継するのが一般的ですが、この場合は、後継者以外の親族と相続トラブルにならないように注意しなければなりません。

旧経営者が会社の株式や不動産などを個人名義で所有していた場合、旧経営者が死亡すると本来は法定相続人に資産が相続されます。それが会社の後継者に相続されるとなれば、資産を相続できるはずだった親族から反発を招く恐れもあります。

親族外事業承継

親族外事業承継とは、現経営者の親族でない人に会社を引き継がせるプロセスです。

基本的には、もともとその会社で働いている従業員を後継者に据えるケースが多いですが、社外から新しい経営者を招へいするようなケースもあります。

親族外事業承継は、親族に適任者がいなくても事業承継できるのがメリットですが、株式を譲渡して経営権を譲るときに、その資金をどう捻出するかなどの問題があります。

資金がない場合は、資金調達のために設立するMBOが必要になったりと、親族内事業承継よりも手間がかかったりする傾向があります。

親族外事業承継のメリット

親族外事業承継の主なメリットには、以下の2つがあります。

【親族外事業承継のメリット】

  • 事業内容や会社の内情に詳しい人間を後継者に選べる
  • 親族内事業承継に比べ後継者の選択肢が多い

血縁がなくとも、長い間会社で働いている従業員や役員であれば、会社の事業内容や内情をよく把握していると考えられます。会社内の人間関係についても理解しているはずです。

そのため、親族外の後継者に事業を承継すれば、役員・従業員の士気向上が期待できたり、役員・従業員から理解を得やすかったりすると言えるでしょう。

近年では、事業承継に親族外事業承継を選択する企業が増えてきています。会社をよく知る人物が後継者になれば、会社と全く関係がない人物を後継者にするのに比べて安心感があるのは大きな利点です。

一般的に、親族外事業承継は、親族内事業承継に比べて後継者候補の選択肢が多いのもメリットの一つです。従業員や役員を選択肢とするので、比較的幅広い選択肢から後継者を選べます。

親族外事業承継のデメリット

親族外事業承継の主なデメリットには、以下の2つがあります。

【親族外事業承継のデメリット】

  • 買収資金の捻出が困難なことがある
  • 優秀な従業員が優秀な経営者とは限らない
  • 個人債務保証の引き継ぎが問題となりやすい

親族外事業承継では、親族内事業承継と違って資産の相続や贈与ができないので、株式などの資産の承継は売却によって行われます。

しかし、従業員として給与所得で生活していた人が、会社の株式を買い取れるだけの資金を持っているケースはほとんどありません

もし、従業員が会社の買収資金を捻出できない場合は、MBOなどの資金調達手段を利用しなければならず、手続きに手間がかかってしまいます

優秀な従業員を後継者に据えても、その従業員が経営者として手腕を振るえるかどうかはわかりません。従業員が経営者として素質があるかどうかは、実際に事業承継してみないとわからない部分が多く、不確定要素があるはデメリットといえるでしょう。

【関連】MBO(マネジメント・バイアウト)とは?方法・目的、メリットを解説【事例15選】

第三者への事業承継(外部から招聘)

親族内にも、会社にも、適切な後継者候補がいないのであれば、外部から招聘するという方法もあります。

「事業を何らかの形で他者に引継ぎたい」と考えている中小企業の多くがこの方法による事業の承継を行っています。

外部から第三者を招聘する事業承継は、中小企業の後継者不在に直面した経営者の後継者問題を解決する有力な選択肢として認識されるようになりました。この方法は、一般に、第三者への事業承継と呼ばれます。

以下では、第三者への事業承継のメリット・デメリットについて説明します。

第三者への事業承継のメリット

第三者への事業承継のメリットとしては以下の2点を挙げられます。

  • 身近に後継者がいない場合でも、広く候補者を募れる。
  • 現在の経営者が会社売却の利益を得られる

身内や社内に適切な後継者候補が見つからなかったとしても、適切な人材を外部に見つけられるかもしれません。候補者の数自体は多くなる分、適切な人材が後継者候補となる可能性が高くなります。

現在の経営者が保有する株式を後継者に売却して会社経営を任せるので、会社を売却した利益を現経営者は得られます。

第三者への事業承継のデメリット

第三者への事業承継のデメリットとしては以下の2点を挙げられます。

  • 希望する条件を満たすような候補者(買い手)を見つけるのが難しい
  • 役員や従業員から反発を招きやすい(理解を得られない)

第三者を候補者として招聘する場合、候補者の数そのものは増えるかもしれません。しかし、会社の提示する条件に合致する候補者となるとかなり数が絞られてしまいます。経営方針や給与・待遇面などで折り合いがつかないこともままあります。

全く会社を知らない第三者が経営に携わるわけですから、これまで会社にいた役員や従業員からは反発されやすくなります。

M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継とは、M&A仲介会社などを利用して、親族でも従業員でもない第三者に会社を譲渡するプロセスです。

M&A仲介会社は、会社の売却や買収を希望する候補者のデータベースを持っており、幅広い選択肢のなかから最適な承継先をマッチングできます。

M&Aというと、かつては大企業の組織再編や事業拡大を目的としたものが多かったですが、近年は中小企業の事業承継手段としての活用も多くなってきています。

M&Aによる事業承継のメリット

M&Aによる事業承継の主なメリットには、以下の4つがあります。

【M&Aによる事業承継のメリット】

  • 幅広い選択肢から後継者を選べる
  • シナジー効果が得られる
  • 売却益が得られる
  • 廃業コストがかからない

親族や従業員は選択肢が限られているのに対して、M&Aによる事業承継では、M&A仲介会社が有しているネットワークから幅広く後継者を選べます。

自社の所在地と全く違う地域の会社と事業承継を成功させたり、全く違う業種との事業承継で高いシナジー効果を得たりする事例もあります。

シナジー効果とは、買い手企業と売り手企業がお互いの強みを生かして、相乗効果により単独では成し得なかった事業発展を実現するプロセスです。

M&Aによる事業承継では、高いシナジー効果が期待できる承継先を、幅広い選択肢から選べます。売却によって得られた対価は経営者や会社の利益となります。その利益は、事業の資金や負債の返済に充てたり、経営者の個人的な資産としたりするのも可能です。

廃業する予定だった会社を、M&Aによる事業承継で売却して処分するのも有効な方法です。廃業すると、今まで育ててきた会社がなくなるだけでなく、在庫処分や賃貸している店舗の原状回復など、思った以上に廃業コストがかさむケースがあります。

しかし、M&Aによる事業承継を利用すれば、廃業コストをかけずに会社を処分できます。廃業する予定だった会社を、M&Aによる事業承継で売却して処分するのも有効な方法です。

【関連】M&Aのシナジー効果とは?シナジー効果の事例5選!

M&Aによる事業承継のデメリット

M&Aによる事業承継の主なデメリットには、以下の2つがあります。

【M&Aによる事業承継のデメリット】

  • 適切な相手が見つかるとは限らない
  • 納得いく条件で成約できるとは限らない

M&Aによる事業承継は、幅広い選択肢から承継先を選べます。それが最大のメリットです。しかし、納得いく相手が見つけるとは限りませんし、見つかるまでにかなりの時間を要します。

たとえ長い期間をかけて相手を探しても、適任が見つからないという事例も少なくないばかりか、前の経営者とは会社の雰囲気が180度変わってしまうということもありえます。

これに加え、M&Aによる事業承継は、買い手と売り手双方の意見により条件が決まるので、納得いく条件で成約できるとは限りません。経験を積んだ経営者を後継者にしたいと思っても、高額な契約金が必要となるかもしれません。それだけの資金を用意できるでしょうか?

このように、M&Aによる事業承継にも多くのデメリットが存在します。

5. 事業承継の成功事例3選

中小企業の経営者にとって、事業時承継の問題は喫緊の課題ではあるものの、まだまだ手を付けられていないところも多いのが実情です。事業を承継できても、その後の事業がうまくいかないこともままあります。

以下では、事業承継が成功した3社の事例について解説します。

たかはし式典による親族内事業承継

東京都墨田区で葬儀総合サービス業を営む「たかはし式典」は、親族内承継によって事業承継に成功しました。祖父・父のあとを次いで3代目の社長に就任する形となりました。

新社長就任前に同業他社で経験を積み、葬祭業の現場を一通り学んで、新社屋が完成するタイミングでたかはし式典に入社した新社長は、父である前社長や従業員からお客様に対する接し方や見積もりの方法などの学んだそうです。

このように、親族内事業承継の最大のメリットは、承継の前に十分な教育を施せる点です。やはり、承継される側と承継する側の信頼関係がないと、円滑な事業承継は進みません。

事業承継には、経営面に加えて、資産の引き継ぎなど時間がかかります。早めに各種引き継ぎを済ませ、計画的に承継を進められたのが、親族内事業承継を成功できた要因です。

イーグルメンテナンスによる親族外事業承継

オフィスビル、ショッピングセンター、商業店舗、病院、分譲マンションなどの事業系施設において、建物清掃業務全般を受託する企業であるイーグルメンテナンスは、親族外事業承継を成功させました。

新社長は、2010年に営業全般の責任者としてイーグルメンテナンスの取締役に就任し、2016年4月に先代の入院を機に事業を従業員承継しています。前社長が急に逝去したのもあり、準備された事業承継ではなかったものの、商工会議所のサポートも得て、事業の立て直しにも成功しています。

創業社長は親方気質で社員から慕われていたものの、会社は債務超過に陥るなど、経営は逼迫していました。しかし、新社長が親族外事業承継してから、会社の資金繰り計画などを見直し、会社を立て直すのに成功しました。

日伸運輸による事業承継型M&A

一般貨物自動車運送事業を営む「日伸運輸」は、事業承継に悩む先代が所属する商工会議所の会議で紹介された事業引継ぎ支援センターのサポートを受けつつ、​M&Aによる第三者承継を成功させました。

日伸運輸から事業を承継したのは東亜物流という会社です。東亜物流はM&Aを行うあたって、徹底した調査を実施し、無借金経営であった点を高く評価して事業を承継するのを決めました。

事前に秘密保持契約を結び、提供された資料から事業内容や財務内容を社内で十分に検証し、M&Aの交渉を開始した点が成功要因となりました。専門家によるデューデリジェンスだけではなく、交渉中も自社で日伸運輸の調査を徹底的に行っています。

M&A後は、従業員への情報開示を重要視し、日伸運輸の従業員からの信頼を獲得しました。

6. 事業承継税制とは

事業承継税制は、後継者が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。

この税制は、中小企業の事業承継を早期に実施するという観点から、2008(平成20)年に創設されました。これまで、後継者に事業を引き継ぐ際、株式等の承継による多額の贈与税・相続税が円滑な承継を妨げていました。しかし、この制度を活用すれば後継者は負担を軽減できます。

あとで説明するように、2018(平成30)年度の税制改正では、特例措置が設けられるなど、さらに有用な制度へと進化しています。

事業承継税制制度を使って納税猶予を受けるためには、先代経営者と後継者が一定の要件を満たさなければなりません。

贈与税・相続税の納税猶予を受けるためには、都道府県知事による認定を受けた後、税務申告の際に別途手続きが必要です。

平成30年度の改正

中小企業の事業承継をより一層後押しするのを目的として、平成30年度税制改正では、事業承継税制が大きく改正されています。

事業承継税制の対象株式数の上限が撤廃され全株式が適用されるようになりました。納税猶予割合を80%から100%に拡大することで承継時の税負担が0となっています。

従来は、一人の先代経営者から一人の後継者への贈与・相続される場合のみに限定されていた税制の対象が、親族外を含む複数の株主から代表者である後継者(最大3名)への承継も対象となりました。

これによって、中小企業の実状に合わせた多様な事業承継がサポート対象となりました。

事業承継税制の適用要件

事業承継税制の特例措置の適用を受けるためには、前経営者と後継者それぞれがクリアしなければならないいくつかの要件があります。

中小企業への該当

事業承継税制の適用を受けるためには、以下の要件を、会社・後継者・先代経営者がそれぞれ満たす必要があります。

事業承継税制では、贈与税と相続税が猶予及び免除されますが、贈与税の優遇と相続税の優遇で要件が異なるため、それぞれの要件を確認しましょう。

ここでは、贈与税と相続税に共通する会社の要件についてのみ説明します。

優遇を受けられる会社の主な要件:次の会社のいずかに該当した場合、優遇を受けられません。

  • 上場会社
  • 中小企業者に該当しない会社
  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社

特例承継計画の策定

事業承継税制の特例措置の適⽤を受けるためには、2018年4⽉1⽇から2023年3⽉31⽇までに特例承継計画を都道府県庁に提出し、確認を受けなければなりません。

特例承継計画には、後継者の⽒名や事業承継の予定時期、承継時までの経営⾒通しや承継後5年間の事業計画等を記載し、その内容について認定経営⾰新等⽀援機関による指導及び助⾔を受ける必要があります。

より具体的には、特例承継計画は、会社が作成し、認定経営⾰新等⽀援機関 (商⼯会・商⼯会議所・⾦融機関・税理⼠等)が所⾒を記載したものを、都道府県庁へと提出します。

承継計画を提出しない場合は、従来の事業承継税制の一般措置の適用となり、特別措置の適用を受けられません。

事業承継税制の活用メリット

中小企業の事業承継を円滑化させるために、自社株の承継時に前経営者や後継者個人に課税される贈与税や相続税の猶予又は免許ができる制度である事業承継税制は、上手に活用すればさまざまな優遇を受けられます。

以下では、事業承継税制を活用するメリットについて具体的に説明しましょう。

課税の免除

事業承継税制の適用を受けて、納税が猶予されている贈与税・相続税については、後継者が死亡するなど一定の条件を満たした場合、課税が免除されます。

課税額の再計算・免除

原則として、最初の事業承継税制の適用に係る贈与税又は相続税の申告期限の翌日から5年を経過する日までの期間の間、贈与税・相続税の課税が免除されます。

この期間は一般に「経営贈与承継期間」と呼ばれるものです。経営贈与承継期間を過ぎた場合、税の猶予は行われなくなります。

ただし、破産手続き開始決定や事業の継続が困難となるなど、一定の事由が生じた場合には、会社に譲渡・解散した場合には、その時点において納税猶予税額の再計算が行われ、再計算後の納税猶予税額で納税猶予を継続できる場合があります。

納税猶予

先代の経営者から後継者に株式などが譲渡されると、当然、その財産には贈与税や相続税が課税されます。

しかし、事業承継税制が適用されれば、贈与税や相続税が一定期間猶予されるので、納税のために現金を用意する必要がなくなります。

なお、事業承継税制の対象となる株式とは、議決権に制限のない株式に限るので注意が必要です。

一般措置の適用を受ける場合、贈与税の100%、相続税の80%が猶予され、特例措置の適用を受ける場合は両者100%の課税額が猶予されます。

相続時精算課税の適用可能範囲

相続時精算課税とは、受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けとれる制度です。贈与者が亡くなると、贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算して一括して相続税として納税できます。

相続時精算課税制度と事業承継税制は、中小企業の事業承継を推進する目的がありますが、平成29年の税制改正まで、事業承継税制の認定が取り消された場合には、その適用を受けた株式などについては、相続時精算課税制度の適用を受けられませんでした。

しかし、これが改正されて事業承継税制と相続時精算課税が併用できるようになりました。

7. 事業承継に役立つ補助金

中小企業の事業承継を推進するために、国や地方自治体はさまざまな補助金制度を用意しています。ここからは、そのような事業承継補助金について簡潔に説明します。

事業承継補助金

事業承継補助金は、事業承継をきっかけとして経営革新を行う中小企業に対して、その取組みに必要となる経費の一部を補助するためのものです。

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)と事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の2種類の補助金から構成されているので、以下では、それぞれを分けて説明します。

経営革新

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)には、創業支援型、経営者交代型、M&A型の3種類があります。類型によって補助上限額が異なりますので、どの申請類型に該当するのか、経営自ら確認したうえで、交付申請を行わなければなりません。

専門家活用

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)には、買い手支援型、売り手交代型の2種類があります。この補助金を活用すると、それぞれの類型に合わせて専門家によるアドバイスを受けられ、その経費について補助を受けられます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模な事業者の生産性を向上すること、持続的な発展を図ることを目的に実施されて補助制度です。

これを活用すれば、小規模事業者の販路開拓などの取組みや、地道な販路開拓と併せて行われる業務効率化の取組みを支援するため、それに必要となる経費の一部を補助してもらえます。

8. 事業承継を行う手続き・流れ

事業承継は、それぞれの会社が置かれた状況によって、その方法は異なって当然です。しかし、ある程度、共通して行うべき手続き・流れというものがあります。そこでここからは、事業承継を行う一般的な手続き・流れについて解説します。

①準備内容の把握

事業承継を行うに際して必要なのが事前準備です。

後継者教育などの準備に必要となる期間を考えて、現在の経営者が60歳となった頃には、事業承継の準備に取りかかる必要があります。事業承継の準備に着手し、専門家のもとを訪れたときにはすでに手遅れというケースも少なくありません。

したがって、事業承継を行うにあたっては、その準備内容を事前に十分に把握し、必要であれば外部の専門家に相談するなど、サポートを受ける必要があります。

②経営状況・課題の可視化

事業承継は、 何よりもまず経営状況や経営課題、経営資源等を可視化し、現状を正確に把握する努力から始めなければなりません。なぜなら、まずは自社が置かれた状況を正確に把握する必要があるからです。

自社が置かれた状況に応じて、事業承継のスタイルは異なります。

経営状況・経営課題などをもとにして、現在の事業がどれくらい成長できるのか、商品力・開発力はどの程度か、利益を確保する仕組みはあるかなどを、再度見直して自社の強みと弱みを把握しなければなりません。強みをいかに伸ばすか、弱みをいかに改善するかの方向性を見いだしましょう。

③企業価値の磨き上げ

事業承継は経営者交代を機として、飛躍的に会社の事業を発展させる機会となりうるものです。

現経営者は、次世代の後継者に経営権というバトンを渡すまで、事業の維持・発展に努めなければなりません。たとえ親族内に後継者がいる場合でも、経営改善に努め、より良い状態で後継者に事業を引き継ぐ姿勢を持つ必要があります。

つまり、現経営者は、現在の会社の強み・弱みをきちんと理解することを通じて、企業価値の磨き上げを行う必要があるのです。

④事業承継方法の選択

すでに説明したように、事業承継の方法は大きく分けて3つの方法があります。親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3つです。

事業承継の方法によって、承継の前に準備しなければならない内容が異なるので、事前にどの方法で事業を承継しようとするのかを考えなければなりません。

親族内・親族外事業承継のケース

親族内・親族外事業承継のケースでは、税負担への対応や株式・事業用資産の分散防止、債務の承継への対応に関して特に大きな課題が発生しやすいため注意が必要となります。

事業承継を進めていくにあたって、経営者は自分の会社を取り巻く環境を整理したうえで、会社の将来を見据え、いつ、誰に、何を、どのように、承継するのか、具体的な計画を立案できるようにします。

ここで立案される計画は、一般に事業承継計画と呼ばれ、計画の完成後、取引先、従業員、取引金融期間などと事業承継に向けた話し合いを行い、会社としてどのように対応するかを事前に決めておくことが重要です。

M&Aによる事業承継のケース

M&Aを選択する場合、専門的なノウハウを有する仲介機関に相談を行う必要があります。

M&A専門業者や取引金融機関、士業等専門家なども存在していて、仲介機関の選定にあたっては、日頃の付き合いやセミナーなどへの参加を通じて、信頼できる仲介機関を事前に見つけておくとスムーズに話が進みます。

事前に第三者への売却条件を検討しておくのが、M&Aによる事業承継のケースでは非常に重要です。

9. 事業承継で課される税金

事業承継のときに課される税金としては贈与税と相続税があります。以下では、どのようなときに贈与税と相続税が課されれるのかについて具体的に説明します。

相続・贈与時に課される税金

すでに説明した事業承継税制を使わない場合、経営者から後継者に贈与・相続があれば、それぞれ後継者となる経営者と先代の経営者に贈与税と相続税が課されます。

何も準備をせずに、事業を承継すると、その際に課される税金の多額さに驚くかもしれません。その支払額の多さのために、事業承継を諦める経営者もいるほどです。

したがって、相続・贈与時にどの程度税金が課されるのかを理解しておかなければなりません。

株式譲渡時に課される税金

日本には、一定の所得については、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を収めるという「申告分離課税制度」の対象となっている税金があります。その一つが「株式等の譲渡所得等」です。

株式等の譲渡所得等は、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分したうえで、他の所得とは区別して税金の額を計算しなければなりません。

上場株式と一般株式の区分に応じて、次の税率で課税されます。

  • 上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20%(所得税15%、住民税5%)
  • 一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)20%(所得税15%、住民税5%)

事業譲渡時に課される税金

株式を譲渡した場合、通常、株式の売手となる企業が、買手となる企業に株式を売却して、売却代金を受け取ります。したがって、株式を売却して受取った利益(譲渡所得)に対し所得税が課されます。売却した翌年の確定申告で、この譲渡所得については申告・納税しなければなりません。

他方で、事業譲渡では、売手企業が買手企業に事業に関する資産を売却し、売却代金は売手企業が受け取ります。そのため、これによる事業譲渡による利益は法人税の課税対象となります。

10. 事業承継を成功させるポイント

事業承継は今まで育ててきた会社の今後を左右するターニングポイントなので、どの経営者の方も成功させたいと考えるでしょう。

事業承継を成功させるポイントとしては、以下のような点が考えられます。これらの点を押さえたうえで事業承継に臨めば、うまくいく可能性も高くなります。

【事業承継を成功させるポイント】

  1. 適切な承継方法を選ぶ
  2. 事前に企業価値を向上させる
  3. 重要な書類などを保管・整備する
  4. 後継者の育成を行う
  5. 専門家に相談する

①適切な承継方法を選ぶ

事業承継には、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継があるので、その中から適切な承継方法を選ぶのが重要です

M&Aによる事業承継の場合は、株式譲渡事業譲渡などのスキームのなかから、どれを選択するかというのも重要なポイントになります。

事業承継では普通は株式譲渡を利用しますが、M&A仲介会社の助言も得ながら、柔軟に対応していくのも大切です。

②事前に企業価値を向上させる

M&Aによる事業承継で買い手を見つけてよい条件で成約するためには、本格的な事業承継の手続きに入る前に、企業価値をできるだけ高めておく「磨き上げ」という作業が重要になります

磨き上げは、たとえば自社の強みをあらためて洗い出しておくとか、買い手にとってリスクとなる簿外債務がないかチェックする作業などがあります。

同じ価値を持つ会社でも、磨き上げによって買い手によい印象を与えられるかどうかで、成約の可能性が大きく変わってきます。

③重要な書類などを保管・整備する

事業承継では、手続きにおいてさまざまな書類が必要になるので、重要な書類をあらかじめ保管・整備しておくと手続きがスムーズに進みます

M&Aによる事業承継の場合は、買い手企業に自社を理解してもらいやすくするために、事業内容や主力製品を簡潔に説明する資料を用意したり、従業員の一覧表など会社の基本的な情報を記載した書類を作成したりするのもおすすめです。

④後継者の育成を行う

事業承継は資産や経営権の移動を行えば終わりではなく、後継者がその後の経営を円滑に行えるように、旧経営者が育成を行うのが重要になります

M&Aによる事業承継の場合、事前に誰が後継者になるか知れないので、事業承継の手続きが終わった後に、統合プロセス(PMI)によって後継者を育成するのです。

親族内事業承継と親族外事業承継の場合は事前に後継者が誰かわかっているので、事業承継を行う数年前くらいから、徐々に後継者の教育を行っていくことになります

⑤専門家に相談する

零細企業の親族内事業承継なら、経営者が自分だけで手続きを済ませるのも不可能ではありませんが、規模の大きい会社の事業承継やM&Aによる事業承継では、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けるのが必須といえるでしょう

親族内事業承継や親族外事業承継では、税理士や行政書士などに各種手続きを依頼したり、商工会議所などの機関に相談したりして進められます。

しかし、M&Aによる事業承継の場合は買い手を探さなければならないので、買い手のネットワークを持つM&A仲介会社を利用するのがおすすめです

近年は、国も事業引継ぎ支援センターなど、M&Aによる事業承継をサポートする機関を設置しているので、このような公的機関を利用する選択肢もあります。

11. 事業承継に関する相談先

事業承継はほとんどの経営者にとって一生に一度であるため、どのように手続きを進めるのかわからず不安になる方も多いでしょう。事業承継をご検討の方やにお悩みの方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。

M&A総合研究所には事業承継の経験豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、案件ごとにフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は随時お受けしていますので、事業承継をご検討の方やお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
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12. 事業承継のまとめ

事業承継には親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継の3種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

メリット・デメリットを理解して、自社にとって最適な選択をすることが重要です。

【事業承継の種類】

  1. 親族内事業承継
  2. 親族外事業承継
  3. M&Aによる事業承継

【事業承継を成功させるポイント】
  1. 適切な承継方法を選ぶ
  2. 事前に企業価値を向上させる
  3. 重要な書類などを保管・整備する
  4. 後継者の育成を行う
  5. 専門家に相談する

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