事業承継による消費税の納税義務はある?生前贈与/相続どちらが得?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業承継には、生前贈与や相続などさまざまな方法があります。生前贈与や相続では消費税や法人税、相続税などそれぞれ異なる納税義務があり、課税されないパターンもあります。今回は、事業承継における消費税や納税義務についてまとめていきます。

目次

  1. 事業承継にかかる消費税
  2. 事業承継の消費税①:生前贈与の場合
  3. 事業承継の消費税②:相続の場合
  4. 事業承継の消費税③:売買の場合
  5. 事業承継の消費税に関するポイント
  6. 生前贈与の方が得なことが多い!
  7. 事業承継による消費税の納税義務まとめ
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1. 事業承継にかかる消費税

事業承継にかかる消費税

事業承継を実施するときに気になるのが消費税や法人税です。

ここでは、事業承継でかかる消費税と課税方式について解説していきます。

事業承継を検討している方は理解しておくべきことなので、しっかりと見ていきましょう。

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消費税とは

消費税は一般消費者でも納税義務があり、事業承継の場面でももちろん納税義務があります。

2020年5月現在では、商品・サービスにかかる消費税は10%です。

消費税とは、コンビニエンスストアの商品はもちろん、ホテルや飲食店で飲食代金や宿泊代金にも課税されます。

事業承継による消費税の納税義務

事業を始めるうえでは、法人税だけでなく消費税も気にしていかなくてはいけません。

消費税は全ての事業者が支払う納税義務はなく、売上高が1,000万円以下の小規模業者に納税義務はありません。

このようにビジネス面でも納税義務があるように、事業承継でも支払う必要があります。事業承継は会社や事業という商品に対する対価やそれ相応の資産を受け取るため、その部分に消費税が課税されます。

また、事業承継に関しても全ての案件に納税義務を負う必要はなく納税義務がない場合もあります。

事業承継は「どのような方法で」「個人と法人か」などによってパターンが分かれます。

事業承継の方法を見ると「売買」「譲渡」「相続」の3種類あり、「個人から個人」「個人から法人」など対象と方法を合わせると6パターンがあります。

この事業承継のパターンごとに消費税の納税義務や支払金額も大きく変わります。

事業承継に消費税の課税資産

事業承継により、会社を売却したときに消費税が課税される資産とは具体的にどのようなものがあるのか見ていきます。

有形固定資産としては下記のとおりです。
 

  • 建物
  • 車両運搬器具
  • 器具や備品
  • 機械などの装置
  • 船舶

次に無形資産としては下記のとおりです。
 
  • 漁業権など
  • 特許権
  • 商標権

上記が事業承継では課税対象となります。

事業承継では、棚卸資産などの企業が販売目的で保有する商品など在庫と呼ばれるものや、事業承継で得た資産負債の時価総額を上回るのれん代(営業権)が課税資産として指定されます。

棚卸資産は、商品や原材料などの仕掛品なので、その量や物によって消費税の額が変動しやすいです。

事業承継の方法

事業承継は、「売買」「生前贈与」「相続」などの種類に分かれます。

事業承継の方法により、課税方法や納税義務がかなり変わります。そのため、どのような方法で誰と事業承継を行うかを決めなければなりません。

ここでは、事業承継の方法を解説していきます。

生前贈与

生前贈与は「親族内事業承継」と「親族外事業承継」の2パターンがあり、生前贈与で最もポピュラーなのが親族内事業承継です。

これは個人事業主や前任の経営者が自分の子供や親族に会社を譲渡するイメージで、家族や親族が後継者となる方法なので一番安心感がある事業承継の方法です。

自社株式の評価額が低くなったときを見計らって、事業承継を進めることができ、生前贈与によって現経営者の相続財産も減少できます。

しかし生前贈与を個人と法人で行うときは、みなし譲渡所得が発生することがあります。

個人から法人への事業承継の場合、会社を無料で売却したとされるのでみなし譲渡所得税がかかる可能性があるのです。

相続

相続による事業承継とは、経営者が亡くなり相続が発生したとき、保有していた相続財産の一部として自社株式を後継者が取得することです。遺言がない場合は、遺産分割協議によって相続人同士の話し合いで決めるため現経営者の希望に添わない場合があります。

また、いつ起こるか不明で、仮に遺言書があったとしても実際に相続が発生したときには、会社の業績や経営方針が変わっている場合もあります。

この相続での事業承継では、相続が発生した時点での基準に評価額が査定され、相続税が課税されます。

このような不確定な要素と税負担を考えると、相続だけでの事業承継では自社株式を後継者に承継するのはリスクが高いといえるでしょう。

売買

売却による事業承継では、その後の値上がりなどの心配がなく、遺留分を計算するうえで対象外となるので相続や生前贈与の事業承継よりも後継者の権利が安定します。

譲渡所得税は金額や規模にかかわらず一定ですが、資金調達をどのようにするかが課題となります。

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2. 事業承継の消費税①:生前贈与の場合

事業承継の消費税①:生前贈与の場合

事業を営んでいる人も売り上げに対して 納税義務がかかる場合があります。

ここでは、事業承継の「生前贈与」で発生する消費税に関することをまとめていきます。

事業承継では、納税義務が課せられる場合と課せられない場合があるのでしっかりと理解をしておくことが大切です。

期間と課税売上高の要件

まず消費税の仕組みですが、年間の売上高が1,000万円以上あるかどうかで納税義務の有無が分かれますが、これは2年前の売上高を見て納税義務が判断されます。

個人事業主の場合、課税期間が1月から12月となっていて対象の年の課税売上高が1,000万円以上の場合には、2年後に消費税の納税義務が課せられます。

この消費税の納税義務を事業主が生きている間に、他の後継者に事業承継した場合を見ていきましょう。

事業承継を行うことは「譲渡者の事業廃止」と「譲受者の事業の開始」を意味するもので、後継者が事業承継を行う前に事業を起こしていないとしたら、事業承継をして「開業」という形になります。

この場合の消費税ですが、原則として開業後2年以内は消費税の納税義務は発生しません

また開業して何年経っても売上高が1,000万円を超えなければ、その後も消費税の納税義務がありません。

3. 事業承継の消費税②:相続の場合

事業承継の消費税②:相続の場合

次に譲渡者が亡くなったあとで事業承継を受ける「相続」の場合では、消費税がどのようになるのか見ていきます。

「譲渡者の事業廃止」と「譲受者の事業の開始」という点は生前贈与と同じです。

ただし、消費税の課税については違いがあるため注意しましょう。

期間と課税売上高の要件

事業承継では、相続の場合でも消費税の仕組みは変わりません。課税期間に変動はなく、年間の課税売上高が1,000万円以上のものに納税義務が課せられます。

また、その課税売上高にかかる消費税を2年後に納税します。

課税売上高を加算

事業承継の相続の場合、譲渡者の課税売上高についても後継者が譲り受ける形になるため、後継者が事業をしていない期間の会社の課税売上高も関係してきます。

例としては、平成27年に譲渡者が亡くなり、その年の譲渡者の課税売上高が700万円、後継者の課税売上高が、500万円だったとすると、譲渡者と後継者の課税売上高の合計が1,200万円になります。

そのため、事業承継後の後継者は消費税の納税義務が課せられ、2年後の平成29年に消費税を収める必要があります。

相続人が複数いる場合

相続人が複数いる場合の事業承継の消費税についてですが、単独の相続の場合では、「譲渡人の基準期間の課税売上高+相続人の基準期間の売上高が1,000万円以上」となっていてこの基本的な部分は変わりません。

ただし、相続人が複数の場合少し複雑になり、譲渡人の基準期間の課税売上高に各相続人の事業承継割合を乗せて計算します。

またこのときに、遺産分割が確定するまでは、その割合を法定相続分として計算します。

4. 事業承継の消費税③:売買の場合

事業承継の消費税③:売買の場合

M&Aによる事業承継などの売買には、税金が2種類課税されます。

この税金の種類とは、売却側に消費税と法人税で、これは個人にではなく企業に対してかかるものです。

法人税は売買する事業の純資産を超えたものが対象となり、消費税に関しては売却額の全てに課税されるわけではなく、課税資産と非課税資産に分けて計算されます。

売買の際、個人から個人への事業承継の場合でも個人から法人への事業承継の場合でも、売却側は所得税と消費税を払います。

必要書類

売買にて事業承継をした場合、消費税が課税されますが、消費税課税者になった場合には原則として課税制度を使い消費税を納税するのか、簡易課税制度を使い消費税を納税するのかを決めます。

課税制度や簡易課税制度を使うときには書類が必要です。

ここでは必要な書類や内容、誰が何のために提出するのかをまとめていきます。

事業廃止届出書

事業承継をするときに、事業承継する側は「個人の廃業届出書」を廃業から1ヶ月以内に所轄の税務署長に提出しなければなりません。

また、このときに事業承継にて譲渡する側が消費税の課税事業者である場合は「事業廃止届出書」を早めに提出する必要があります。それ以外に個人で取得していた許認可は引き継げないので、行政機関に廃業届を提出しなければなりません。

消費税簡易課税制度選択不適用届出書

粗利が大きいほど消費税の納税額が少なくなる消費税簡易課税制度は、年間総売り上げが5,000万円より高ければ使用できません。

また、原則課税制度のほうが簡易課税制度での納税より消費税を抑えられます。そのため、簡易課税選択届出書をすでに提出している場合は、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を出せば、原則課税制度が使えます。

売り上げに対する粗利益率が10%以下の場合は、原則課税制度のほうが納税額は少なくなるので原則課税制度で納税することをおすすめします。

個人事業主が廃業する場合で、消費税簡易課税制度選択不適用届出書や消費税課税事業者選択不適用届出書の提出書に事業廃止の旨を記入したときは、事業廃止届出書の必要はありません。

消費税課税事業者選択不適用届出書

この書類は、もともと課税事業者が免税事業者に戻ろうとするときに必要になります。

免税事業者とは年間売上高が1,000万円以下の事業者で、免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日までに提出しなければならないため、事業承継後に注意が必要です。

課税事業者の選択の効力は、この消費税課税事業者選択不適用届出書を提出するまで続くので、事業承継をして売上高が年間1,000万円以下になるときには提出しておくのが良いでしょう。

消費税課税事業者選択届出書

消費課税事業者選択届出書は、免税事業者が課税事業者になるときに必要な書類です。

免税事業者よりも節税効果がある事業としては輸入事業者で、免税事業者である場合は消費税額が0円ですが、輸入事業者の場合は課税事業者になることで、仕入れにかかった消費税を受け取ることができます。

この消費課税事業者選択届出書も課税期間の初日の前日までに提出する必要があるため、輸入業などの事業承継では注意が必要です。

また、課税期間中に年間1,000万円以上の棚卸資産や、調整対象固定資産が入った場合には例外として3年間に延長されます。

5. 事業承継の消費税に関するポイント

事業承継の消費税に関するポイント

ここでは、事業承継における消費税に関するポイントを解説します。

事業承継を行ううえでかかる消費税は変動するものが多いです。

事業承継を行うときに注意すべきポイントともいえるので、しっかりと理解を深めましょう。

のれん代の金額

非上場の中小企業などが事業承継を行う場合、売却価格は純資産にのれん代という営業利益が経営利益の3〜5年分を加えた額で決定されることが多いです。

事業承継のときにのれん代として評価されるノウハウなどがある場合には、消費税が課税されるのれん代も必然と大きくなってしまいます。

結果として事業承継にて大金を得ても、消費税によって自分の手元に残るお金が少なくなってしまうことがあるため、のれん代の金額が大きい場合には、事業承継以外の手法を検討しましょう。

確実性のない棚卸資産

棚卸資産は毎日のように変動するもので、事業承継前に事前に棚卸資産額を決めていても、最終的な事業承継を実施する日に棚卸資産の額が変わってしまうことがあります。

棚卸資産も消費税が課税される資産なので、もちろん消費税額が増えることもあります。

仮に棚卸資産を多く抱えている事業であれば、この影響を受けるので事業承継を検討するときに注意しなければなりません。

6. 生前贈与の方が得なことが多い!

生前贈与の方が得なことが多い!

事業承継に関する消費税の課税について解説してきましたが、事業承継で納税義務などを考えると生前贈与による事業承継が得をすることが多いといえます。

生前贈与では、基本的な税金の課税は売買によるものと変わりませんが、対価を支払っているかどうかという部分で大きく違いが出てきます。

売却側は対価として金銭が入らないため、譲渡側は税金を支払う必要がありません

7. 事業承継による消費税の納税義務まとめ

事業承継による消費税の納税義務まとめ

事業承継では、M&Aの株式譲渡などとは違い、税金や消費税などが課せられることから必要な手続きや書類が必要になります。

事業承継で支払う税金は消費税と法人税があり、消費税を算出するときには課税資産と非課税資産に分けて課税資産のみが納税義務として課せられます。

しかし、消費税が課税されない事業承継もあります。

また、のれん代や棚卸資産、消費税率によって支払う消費税額がかなり異なるということを理解しておきましょう。

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